JP2833664B2 - 血液細胞処理剤 - Google Patents

血液細胞処理剤

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、血液細胞に作用して有用物質を産生させ得
る血液細胞処理剤に関する。
(従来の技術) 生理活性物質を不溶性担体に固定化したものはアフイ
ニテイークロマトグラフ用吸着剤、治療用血液処理剤、
抗菌性材料その他分析用試薬などとして広く利用されて
おり、今後さらに幅広い応用が期待される重要な物質で
ある。
治療用血液処理剤のなかでも血液細胞を対象としたも
のとしてはグラム陰性菌細胞壁由来のリポ多糖体を固定
化したもの(特開昭59−21145)やポークウツドマイト
ジエン等の植物レクチンを固定化したもの〔須賀原ほ
か、人口臓器18(3),1401(1989)〕等が知られてい
るが、これ等は毒性の強い物質を固定化したものであ
る。従つて、それらの使用時にこれらリガンドの溶出が
あつてはならないが、化学構造が複雑な天然物を固定化
したものであるため、その可能性が皆無である補償がな
い欠点があり、また、リガンドが高分子であるためその
分子の中に複数の活性部位を持ち、それ故その作用が複
雑である欠点がある。
(発明が解決しようとする課題) 本発明者らは、かかる従来技術の問題点に鑑み、毒性
のない低分子化合物を不溶性担体に固定化し、これを血
液細胞と接触させることによつて有用なサイトカイン等
を産生させられないか検討した結果、リポ多糖体の構成
成分である3−デオキシ−D−マンノ−2−オクチュロ
ソン酸を固定化したものが単核球系細胞にインターロイ
キン−1、インターロイキン−6、TNF、G−CSFおよび
GM−CSF等を産生させることを見出し、本発明に到達し
た。
(課題を解決するための手段) 本発明は、以下の(1)〜(6)の技術的手段から構
成される。
(1)不溶性担体の表面に3−デオキシ−D−マンノ−
2−オクチュロソン酸をアミド結合で固定化して成る血
液細胞処理剤。
(2)不溶性担体が、シヤーレ、瓶、膜、繊維、中空
糸、粒状物またはこれ等を用いた組み立て品であること
を特徴とする上記(1)記載の血液細胞処理剤。
(3)白血球を上記(1)記載の血液細胞処理剤と接触
させることを特徴とするサイトカインの製造方法。
(4)サイトカインが、インターロイキン−1であるこ
とを特徴とする上記(3)記載のサイトカインの製造方
法。
(5)サイトカインが、コロニー刺激因子であることを
特徴とする上記(3)記載のサイトカインの製造方法。
(6)サイトカインが、インターロイキン−6であるこ
とを特徴とする請求項第(3)項記載のサイトカインの
製造方法。
(7)不溶性担体がスチレンまたはα−メチルスチレン
を主体とするビニル重合体成型品の表面にアミノメチル
基を導入したものであることを特徴とする上記(1)記
載の血液細胞処理剤。
本発明でいう不活性担体とは、実質上不溶性で、第1
級または第2級アミノ基を有し、かつ、3−デオキシ−
D−マンノ−2−オクチュロソン酸(以下KDOと略称す
る)をアミド結合で固定することのできる担体を意味す
る。該不活性担体の形状はシヤーレ、瓶、管、膜、繊
維、中空糸、粒状物またはこれ等を用いた組み立て品の
いずれでもよいが、とりわけ、これ等に光透過性がある
と細胞の観察が容易にでき、細胞の管理がしやすいので
好ましい。
本発明でいう不溶性担体の具体例をあげると、スチ
レンまたはα−メチルスチレンの単独重合体もしくはこ
れらを主成分とする芳香族ビニル系共重合体をシヤー
レ、試験管、管、フイルム、瓶、注射筒、カテーテルな
どに成型したものの表面にアミノメチル基を導入したも
の、スチレン/エチレン・ブチレンのABAブロツクコ
ポリマの膜にアミノメチル基を導入したもの、ポリプ
ロピレン補強ポリスチレン繊維の表面にアミノメチル基
を導入したもの、ポリスチレンまたはスチレン・ジビ
ニルベンゼン共重合体ビーズに、アミノメチル基を芳香
核置換基として導入したもの、アミノプロピル化ガラ
スビーズなどがあげられるが、これ等に限定されるもの
ではない。また、これらのなかでも、とが光透過性
が高く、且つ、取り扱いやすいので、特に、好ましく用
いられる。
の場合、成型品の厚みには特に制限はないが、実用
に耐える強度を維持するためには、通常、100ミクロン
以上の厚みを持つものが好ましく用いられる。その光透
過性に関しては該成型品の底面または側面の反対側に存
在する物質の形を確認可能にするに十分な光透過性を有
することが望ましい。該成型品の光透過性は主として表
面での散乱によつて決まるので、表面が完全に平滑でな
ければならない。該成型品の場合、500〜700ナノメータ
ーの波長の光に対する吸光度が3以下であることが必要
である。この吸光度が小さいほど該成型品の光透過性が
良く、吸光度が1以下であればさらに好ましい。
本発明血液細胞処理剤の製造は、不溶性担体をKDOと
カルボジイミドの混合溶液に加えるか、N−ヒドロキシ
スクシンイミドエステルで代表されるKDOの活性エステ
ルの溶液中に浸漬することにより容易に達成される。
本発明でいうサイトカインとはインターロイキン−
1、インターロイキン−2、インターロイキン−6等で
代表されるインターロイキン類、GM−CSF、G−CSF等で
代表されるコロニー刺激因子、インターフエロン、TNF
等を意味する。
本発明で用いるKDOはグラム陰性菌細胞壁由来のリポ
多糖体の構成成分であるが、有機合成の手段で得ること
ができる。実施例3に示めされるように、この物は固定
化しない状態ではサイトカインの誘導能はない。不溶性
担体に固定化して初めて活性ができる。
コロニー刺激因子は軟寒天中で顆粒球、マクロフアー
ジの幹細胞を刺激して、成熟した顆粒球やマクロフアー
ジから成るコロニーを形成させる特異的刺激因子として
知られている糖蛋白質である。コロニー刺激因子の中に
は、GM−CSF、G−CSF、M−CSF等があることが知られ
ている。また、これ等は単球、マクロフアージ、線維芽
細胞、血管内皮細胞、骨髄ストローマ等によつて産生さ
せることが知られている。GM−CSFは白血球の数の増加
だけでなく、顆粒球機能の亢進の作用もあることが知ら
れており、骨髄性白血病の治療、AIDSや癌の化学療法後
の白血球減少症の治療のためにも使われている[実験医
(15)(増刊)198−203(1989)〕。また、G−CS
Fも同様に重症感染症の予防や治療に用いられる〔実験
医学(15)(増刊)191−197(1989)〕。
インターロイキン−1は白血球が産生する発熱物質と
して古くから知られているが、最近ではいろんな作用の
あることが知られており、特に抗腫瘍効果や造血促進作
用があり、臨床への利用が試みられている〔実験医学
(15)(増刊)170−177(1989)〕。
血液細胞を本発明の血液細胞処理剤と接触させながら
培養すると、血液細胞は活性化されて、実施例3に示す
ように高濃度の種々のサイトカインを産生した。この場
合、血液細胞の中から単球だけを取り出して処理するこ
ともできるし、いろんな血液細胞の混合物を処理する利
用方法もある。産生されたサイトカインはin vivoおよ
びin vitroでの白血球増加剤として利用できる。
本発明の血液細胞処理剤の利用としては血液回路、細
胞培養用器具、体外循環用カラム充填材料等への利用が
あげられる。
(発明の効果) 本発明の血液細胞処理剤は、サイトカイン等の有用
物の産生に用いることができること、化学的に安定な
アミド結合で固定化されているので、溶出の心配がない
こと、万一、溶出しても無毒な化合物であること、
細胞を傷めない等の利点を有する。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明す
る。
なお、実施例中の評価方法は、以下に従つた。
1.芳香族ビニル系重合体成型品の化学的解析成型品を塩
化メチレンでソックスレー抽出すると不溶性の膜状物が
得られるので、これを真空乾燥し、重量を量り、赤外線
吸収スペクトル測定等を行つた。
2.赤外線吸収スペクトル 島津フーリエ変換赤外分光光度計FTIR−4300を用いKB
r錠剤法で測定した。
3.成型品の光透過性の測定 島津分光光度計UV2100を用い、500ナノメーターで板
状成型品に垂直方向の吸光度を測定した。対象として同
じ厚さのポリスチレン板状成型品の吸光度を測定し、両
者の差をA500とした。従つて、その値が小さいほど成型
品の光透過性が高いことになる。
4.KDOの定量 シアル酸の定量法(生化学実験法23糖蛋白質実験法17
頁学会出版センター)に準じて、蛍光標識1,2−ジアミ
ノ−4,5−メチレンジオキシベンゼンを反応させ、高速
液体クロマトグラフイーで定量した。
5.サイトカインの定量 GM−CSF、G−CSF、インターロイキン−1はMTT法
〔T.Mosman,ジヤーナル オブザ イミユノロジカル
メソツズ 65 55〜63(1983)〕により分析した。
インターロイキン−6はインターロイキン−6依存性
細胞の増殖率により分析した。
TMFはL929をインジケーターセルとした殺細胞能によ
り定量した。
実施例1. 1−ニトロプロパン500mlと硫酸272mlの混合溶液を0
℃に冷却し、20.4gのN−メチロール−α−クロルアセ
トアミドを加え、0〜10℃で溶解した。
この溶液を10℃に昇温したのち、φ3.5cm×1.2cm Hの
ポリスチレン製培養皿(厚み1mm)に11mlずつ入れ、室
温で1hr反応させた。反応液を捨て、培養皿に零下20℃
のメタノールに侵し、さらにメタノールおよび水で洗つ
た後、真空乾燥して、内部表面だけクロルアセトアミド
メチル化された成型品Aを得た。この成型品のA500は0.
050であつた。
上記で得た成型品A1個を、塩化メチレンでソツクスレ
ー抽出したところ、薄膜状の不溶物3.1mgが得られた。
培養皿の反応面は表面積は21cm2であるので、反応部の
厚みは大体1.2μと考えられる。また、この不溶物の赤
外線吸収スペクトルでは、1659cm-1(アミド−I)、15
29cm-1(アミド−II)および3297cm-1(N−H)にアミ
ド基の強い吸収が認められたことからその構造を確認し
た。
上記で得た成型品A40個を、2000mlの10%ジメチルア
ミノエタノール・ジメチルスルホキサイド溶液中に浸
し、室温で18hr静置した後、2000mlの10%ジメチルアミ
ノエタノール水溶液中、70℃で2hr加熱した。成型品を
水洗後、乾燥して、アミノメチル化成型品Bを得た。こ
の成型品のA500は0.05であつた。
上記本発明の成型品B1個を、塩化メチレンでソツクス
レー抽出したところ、薄膜状の不溶物2.3mgが得られ
た。この不溶物の赤外線吸収スペクトルでは、成型品A
で認められた1659cm-1(アミド−I)および1529cm
-1(アミド−II)の第一級アミド基の強い吸収cm-1が完
全に消失していたことからその構造を確認した。
上記本発明の成型品B10個を500mlの水に浸し、N/100
−塩酸でpH5〜6に調整した後、成型品Bの内部に0.2mg
/mlのKDO水溶液4mlと1−エチル−3−(3−ジメチル
アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩8mlを加え、室
温で48hr静置した。反応液を捨て、水洗して、本発明の
血液細胞処理剤である成型品Cを得た。母液中のKDOの
濃度から0.028mg固定化されたことが確認された。ま
た、成型品上のKDOはN/40−NaOHで洗浄しても溶出のな
いことを確認した。
実施例2. ポリスチレン製細胞培養用マルチプレート12F(住友
ベークライト製)の各ウエルに実施例1のアミドメチル
化反応液を5mlずつ入れ、室温で60min.反応させた。反
応液を捨て、零下20℃のメタノールに投じ、実施例1と
同様に処理して、内部表面だけクロルアセトアミドメチ
ル化された成型品Dを得た。
これを実施例1と同様に10%ジメチルアミノエタノー
ル・ジメチルスルホキサイド溶液および10%ジメチルア
ミノエタノール水溶液で処理して、内部表面だけアミノ
メチル化された成型品Eを得た。
成型品Eを1000mlの水に浸し、N/100−塩酸でpH5〜6
に調整した後、風乾し、次に、成型品Eの6個のウエル
に0.2mg/mlのKDO水溶液2mlと1−エチル−3−(3−ジ
メチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩4mgを加
え、室温で48hr静置した。反応液を捨て、水洗して、本
発明の血液細胞処理剤である成型品Fを得た。母液中の
KDOの濃度から0.026mg固定化されたことが確認された。
実施例3 マウスマクロフアージ株TME9(小川恭喜ほか、日本免
疫学会総会・学術集会記録、17 599(1987)〕を3×10
-5Mの2−メルカプトエタノール、50U/mlのペニシリン
(万有)、50μg/mlのストレプトマイシン(明治製菓)
およびウシ胎児血清を10%含むRPMI 1640(Gibco)に3
×105個/ml浮遊したものを、実施例2で得られた成型品
F1個(紫外線照射減菌)のKDOを固定化した6個のウエ
ルとKDOを固定化しなかつた6個のウエルとに1mlずつ入
れ、インキユベーター中(37℃、5%CO2)で20hr培養
した。細胞の様子の顕微鏡で観察したが、少し損傷を受
けている様子が認められた。培養上清を取つてその中に
サイトカインを調べたところ、KDOを固定化した6個の
ウエルではGM−CSFは8.3U/ml、G−CSFは29.1U/ml、IL
−1は11.7U/ml、1L−6は2.8×104U/ml、TNFは7.0U/ml
といずれも高い活性が認められた。一方、KDOを固定化
しなかつた6個のウエルでは、GM−CSFは1.6U/ml以下、
G−CSFは、1.2U/ml以下、IL−1は1U/ml以下、1L−6
は9U/ml、TNFは2U/ml以下といずれも活性が認められ無
かつた。また、市販の培養用シヤーレ(FALCON 1008)
を用い、KDOを3μg/mgを加えて、上記と同様に培養し
た系ではGM−CSFは1.6U/ml以下であつた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI (C12P 21/00 C12R 1:91) (72)発明者 須藤 哲央 神奈川県横浜市栄区田谷町1番地 株式 会社バイオマテリアル研究所内 (56)参考文献 特開 平2−167071(JP,A) 特開 平1−165371(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12N 5/06,5/08

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】不溶性担体の表面に3−デオキシ−D−マ
    ンノ−2−オクチュロソン酸をアミド結合で固定化して
    成る血液細胞処理剤。
  2. 【請求項2】不溶性担体の形状が、シャーレ、瓶、膜、
    繊維、中空糸、粒状物またはこれ等を用いた組み立て品
    であることを特徴とする請求項第(1)項記載の血液細
    胞処理剤。
  3. 【請求項3】白血球を請求項第(1)項記載の血液細胞
    処理剤と接触させることを特徴とするサイトカインの製
    造方法。
  4. 【請求項4】サイトカインが、インターロイキン−1で
    あることを特徴とする請求項第(3)項記載のサイトカ
    インの製造方法。
  5. 【請求項5】サイトカインが、コロニー刺激因子である
    ことを特徴とする請求項第(3)項記載のサイトカイン
    の製造方法。
  6. 【請求項6】サイトカインが、インターロイキン−6で
    あることを特徴とする請求項第(3)項記載のサイトカ
    インの製造方法。
  7. 【請求項7】不溶性担体がスチレンまたはα−メチルス
    チレンを主体とするビニル重合体成型品の表面にアミノ
    メチル基を導入したものであることを特徴とする請求項
    第(1)項記載の血液細胞処理剤。
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