JP2833058B2 - カテコールアミン類の分析方法 - Google Patents

カテコールアミン類の分析方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は、細孔内部にのみホウ酸基を持つ樹脂を用い
て試料中のカテコールアミン類を分析するカテコールア
ミン類の分析方法に関する。
〈従来の技術〉 生体試料(血清、血漿、尿等)中のカテコールアミン
類の分析を行うには高速液体クロマトグラフィーを用い
て行われることが多い。しかし、生体試料中には多くの
成分が共存しているため、直接高速液体クロマトグラフ
ィーに注入して分析を行うことは難しく必ず前処理が必
要となっている。このような前処理法の代表的なものと
しては、アルミナゲルを用いた吸着法がある。この吸着
法は、試料をアルミナカラムに注入しカテコールアミン
類を吸着させた後、カラムを洗浄することでタンパク質
等の不要成分を洗い出し、その後カテコールアミン類を
アルミナカラムから脱着させ、高速液体クロマトグラフ
ィーで分析を行うという方法である。
しかし、この吸着法はカテコールアミン類の回収率が
非常に低く、またアルミナカラムの再生操作が煩雑であ
るため、高速液体クロマトグラフィー等に組み込みオン
ラインで前処理を行うことは困難であるという欠点があ
る。
上記前処理方法の第2のものは、アガロース等の基材
にホウ酸官能基を導入した樹脂を用いる方法である。こ
の樹脂は、例えばアルドリッチ社より販売されており、
粒子径0.1〜0.4mmのアガロースゲルにスペーサを介して
20〜40μmol/gのホウ酸が導入されているものである。
この樹脂は、主に糖タンパク質類の選択的な補足を目的
につくられたものであるが、カテコール型物質に対して
も特異的な吸着能を示すため、カテコールアミン類の吸
着樹脂としても使用可能である。このホウ酸導入アガロ
ースゲルを用いた前処理法及び分析法については既にい
くつか報告されている。
しかし、上記ホウ酸導入アガロースゲルを高速液体ク
ロマトグラフィー等に組み込みオンラインで前処理を行
うにはいくつかの問題点がある。即ち、アガロースゲル
は、アガロースをエピクロロルヒドリン等により架橋し
たもので、非常に軟質であるため、微粒子化による高性
能化をすることはできない。そのため、使用できる粒子
径は大きくなり結果として吸着特性の流速依存性が強く
なる。また、基材の軟質さのために高速液体クロマトグ
ラフィー等で使用するには、ホウ酸ゲルの長期的な安定
性という点で問題である。
一方、cis−グリコール型及びカテコール型物質がホ
ウ酸と弱塩基性緩衝液中で陰イオン性の錯体を形成する
ことは周知であり、ホウ酸基を有する充填剤を用いるこ
とにより、これらのcis−グリコール型及びカテコール
型物質を吸着・濃縮することが可能であることは容易に
推察できる。このような考えに基づきいくつかの提案が
なされている。しかし、ホウ酸ゲルに吸着する物質はカ
テコールアミン類のみならず、糖類や糖タンパク質も同
様に吸着される。市販アガロース−ホウ酸ゲルの場合、
糖タンパク質の吸着をスムーズにさせるためスペーサを
用いてホウ酸基を導入しているが、糖タンパク質以外の
低分子物質のみを吸着させるには必ずしもスペーサは有
効ではない。つまり、試料中のカテコール型低分子物
質、例えばカテコールアミン類を吸着させようとする場
合、試料中に共存する糖類や糖タンパク質なども同様に
吸着されるため選択的な吸着を行うことができず、余剰
成分吸着によりカテコールアミン類の吸着量が低下した
り再現性が悪くなるという問題もある。
このように従来から行われているホウ酸ゲルによるオ
ンライン前処理法は、種々の問題点を持ち合わせている
ものの、理論的にはオンライン前処理−高速液体クロマ
トグラフィー法あるいはオンライン前処理−フローイン
ジェクション法を行う上でもっとも有効な方法である。
しかし、ホウ酸ゲルには、カテコールアミン以外に糖類
や糖タンパク質が吸着し、カテコールアミン類の分析を
妨害する。また、本法のような分析法においてもっとも
重要な分析の再現性に関してはホウ酸ゲルによるオンラ
イン前処理法にあり、ホウ酸ゲルの吸着再現性や安定性
が大きな問題となる。
〈発明が解決しようとする課題〉 本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、
その目的は、ホウ酸ゲルの安定性及び再生操作の煩雑さ
に関する問題点を解消させ、オンライン前処理−高速液
体クロマトグラフィー法あるいはオンライン前処理−フ
ローインジェクション法を行う上でもっとも有効なカテ
コールアミン類の測定方法を提供することにある。
〈課題を解決するための具体的な手段〉 本発明は、カテコールアミン類の分析方法において、
予めpH8〜9.5の緩衝液と細孔内部にのみホウ酸基が導入
された樹脂が充填された前処理カラムとを用いてカテコ
ールアミン類を含む試料の中からカテコールアミン類を
選択的に吸着・濃縮させ、その後、pH2〜3.5の緩衝液で
ホウ酸ゲルから前記カテコールアミン類を脱着させて、
このカテコールアミン類を分析する分析方法であって、
前記ホウ酸ゲルは、蛋白質が浸透できない大きさの細孔
径を持つ親水性の高分子ゲルを基材とし、この基材の表
面に陰イオン性の高分子層を持ち、且つ、前記細孔の内
部にのみホウ酸基を有することを特徴とするものであ
る。
〈実施例〉 以下、本発明について図を用いて詳しく説明する。第
1図は本発明に係わるホウ酸ゲルの構造と吸着機構を示
す図であり、図中、14は基材、15は細孔、16はホウ酸
基、17は基材14の表面に設けられた弱陰イオン性の表面
高分子層、18はイオン排除とサイズ排除の両方を受ける
陰イオン性タンパク質、19は弱いイオン交換とサイズ排
除を受ける陽イオン性タンパク質、20はイオン排除と分
子サイズに応じたサイズ分離の両方を受ける陰性イオン
性低分子、21は弱いイオン交換と分子サイズに応じたサ
イズ分離を受ける陽イオン性低分子、22は錯体を形成し
ているカテコールアミン類である。
また、本発明に使用されるホウ酸ゲルは、20重量%以
上の架橋度を持つ、比較的親水性の多孔性架橋高分子ゲ
ルで、試料中に存在するタンパク質等の高分子物質が浸
透できないかあるいはわずかしか浸透できない程度、お
およその目安としては、排除限界分子量が10,000以下、
好ましくは3,000〜8,000程度の細孔を持つ樹脂を基材と
し、その表面にのみ陰イオン性官能基を持つ親水性の高
分子層が結合されており、細孔内部にのみ吸着基となる
ホウ酸基が高密度に導入された樹脂である。例えば、エ
ポキシ基が導入されたポリヒドロキシメタクリレートゲ
ルの表面にカルボキシメチルセルロースを結合させ、そ
の後、細孔内部の未反応残存官能基にアミノフェニルホ
ウ酸を代表とするアミノ基を持つアルキルホウ酸を結合
させた樹脂が利用できる。このようにして得られたホウ
酸ゲルを適当な大きさのクロマト管に充填し前処理カラ
ムとして使用する。
このような前処理カラムへのカテコールアミン類の吸
着用の緩衝液としては、酢酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝
液、リン酸緩衝液等を用いることが出来るが、生体試料
の場合エチレンジアミン四酢酸の2ナトリウム塩を含む
リン酸緩衝液を用いることが好ましい。通常、カテコー
ルアミン類はpH7〜10.5の間でホウ酸基と錯体を形成す
るが、前処理カラムにカテコールアミン類を吸着させる
ための緩衝液のpHとしては、8〜9.5であることが必要
である。吸着用緩衝液のpHがこの範囲外でもカテコール
アミン類とホウ酸との錯形成が起こるが、共存成分の妨
害をなくしカテコールアミン類に対する選択性を向上さ
せるには、カテコールアミン類とホウ酸が強く錯形成す
るpHに合わせる必要がある。また、このpH範囲を用いる
ことで、後記する再吸着のための活性化操作が不必要に
なる。
カテコールアミン類の前処理カラムからの脱着用緩衝
液としては、pH2〜3.5に調整された酢酸緩衝液、塩酸緩
衝液、リン酸緩衝液が利用できる。溶出後の分析を逆相
分配カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーで行う
時には、脱着用緩衝液でそのまま分析が可能であるpH2.
5〜3のリン酸緩衝液が効果的である。
カテコールアミン類の前処理カラムよりの脱着は上記
のような緩衝液で行われるが、脱着用緩衝液のpHが低い
ため、前処理カラムはこのままではカテコールアミン類
を吸着することが出来ないため、再吸着させるためにホ
ウ酸基の再生・活性化が必要となる。従来より行われて
いるホウ酸前処理法では、強アルカリ性溶液をカラムに
通過させ、吸着物質を洗い出し同時に活性化を行ってい
る。しかし、本発明のホウ酸ゲル被測定成分以外の試料
成分の吸着がほとんどないため、強アルカリ性溶媒での
洗浄は不必要である。そのため、特に洗浄用の溶媒は用
いず、前記吸着用緩衝液をカラムに通過することで洗浄
・活性化が可能である。
ところで、第1図で詳述したような構造の樹脂(内面
ホウ酸樹脂)を用いてカテコールアミン類を吸着させる
とき、試料成分の充填剤への保持挙動は次のようである
と考えられる。即ち、 タンパク質は両性電解質で、その置かれるpHにより負
の電荷になったり、正の電荷になったりする。一般的な
主なタンパク質は4.5〜8の等電点を持ち、pH9以上の緩
衝液中では負に帯電している。また、充填剤の表面高分
子層が持つ酸性基のpKaが6であると、pH9の緩衝液中で
は当然負の電荷を帯びている。このとき、細孔内部のホ
ウ酸基は、pH9ではカテコールアミン類と強い錯を形成
しやすくなっている。
緩衝液のpHが9であるとき、本提案のホウ酸ゲルにカ
テコールアミンが近づくと、細孔内部に入り細孔内のホ
ウ酸と錯を形成し吸着される。この充填剤に等電点が緩
衝液のpHより小さいタンパク質が近づくと、負の電荷を
帯びているため、充填剤表面の負の電荷によりイオン的
な排除を受ける。更に、タンパク質は分子量が大きく細
孔内部には浸透できないため充填剤に保持されることな
しに溶出してしまう(イオン排除効果とサイズ排除効
果)。等電点が移動相のpHより高いタンパク質の場合
は、先ほどとは反対に正の電荷を帯びているため充填剤
の表面高分子層の官能基とイオン交換吸着を起こすが、
表面高分子層は充填剤の表面にのみ有るため、イオン交
換能は非常に小さく、移動相の塩濃度が余り高くなくて
も簡単に溶出してしまう。(非常に弱いイオン交換とサ
イズ排除効果)糖タンパク質であっても、細孔内部には
浸透できないためホウ酸基に吸着を起こすことはない。
尚、低分子物質は、細孔内部に浸透できるためタンパ
ク質のようにサイズ排除効果は得られないが、ホウ酸基
と錯を形成しなければ、最大浸透溶出容量のところまで
には溶出してくる。(サイズ排除クロマトグラフィーの
原理)実際には、若干の疎水的吸着があるため、充填剤
には若干保持される。しかし、カテコールアミンとホウ
酸基との錯が非常に強く形成されるpH(例えば、pH8〜
9.5の間)を選択することでこの問題は容易に解消でき
る。
一方、第2図は本発明実施例を説明するための図であ
り、(イ)は吸着・濃縮システムを示し(ロ)は分析シ
ステムを示している。また、ホウ酸ゲルへの吸脱着の原
理については第1図を用いて詳述した通りであるが、実
際の吸着・濃縮システムについて、以下、第2図(イ)
を用いて詳しく説明する。
本発明に係わる吸着・濃縮システムは、第2図(イ)
に示すように吸着用及び脱着用の2つの緩衝液(1及び
3)とそれらを送液するための2台の送液ポンプ(2及
び4)、試料注入装置5、上記前処理カラム7を装着し
た6ポートの流路切り替えバルブ6から構成されてい
る。また、試料注入装置5に満たされたカテコールアミ
ン類を含む被測定試料は、ポンプ2により送られている
吸着用緩衝液1(pH8〜9.5のリン酸緩衝液)により搬送
され、前記切り替えバルブ6の6a−6bのポートを経て前
処理用カラム7に注入される。被測定試料中のカテコー
ルアミン類は、前述の原理により前処理カラム7に吸着
されるが、タンパク質などの余剰の成分は前処理カラム
7に吸着されること無くカラム外に溶出し、前記切り替
えバルブ6の6e−6fのポートを通って分析システム外
(廃液口9)に流出される。
次いで、前処理カラム7に吸着されたカテコールアミ
ン類の脱着は、前記切り替えバルブ6を切り替え脱着用
緩衝液3を通液する事で行える。まず、前記切り替えバ
ルブ6が切り替わるとき、ポンプ4により送液されてい
る前記脱着用緩衝液3(pH2〜3.5のリン酸緩衝液)は、
前記切り替えバルブ6の6c−6bのポートを通って前記前
処理カラム7に送られる。前記前処理カラム7に吸着さ
れていたカテコールアミン類は、緩衝液のpH変化により
ホウ酸官能基との錯形成力が無くなり前記脱着用緩衝液
3により前記前処理カラム7から溶出される。溶出され
たカテコールアミン類は、前記切り替えバルブ6の6e−
6dを通って分析システム8に送られる。
ここで、分析システム8は本発明の中で規定されてい
るものではないが、例えば、高速液体クロマトグラフィ
ーやフローインジェクション法が適用できる。また、高
速液体クロマトグラフィーによる分離分析法の場合、疎
水性官能基を持つ充填剤を用いた逆相分配クロマトグラ
フィーやイオンペアクロマトグラフィー、陰イオン性官
能基を持つ充填剤を用いた陽イオン交換クロマトグラフ
ィーが適用できる。検出法としては、電気化学検出器や
ケイ光検出器、紫外吸収検出器などが適用できるが、検
出感度的には電気化学検出器やケイ光検出器が好まし
い。但し、ケイ光検出の場合には、カテコールアミン類
を分離後発ケイ光物質に誘導体化し検出を行う。
第2図(ロ)は、電気化学検出器を用いた場合のシス
テム構成を示している。試料中のカテコールアミン類は
前処理カラムより溶出後、第2図(イ)に示すような分
析システムへの流路8(即ち、第2図(ロ)に示すよう
な分析システム)に送り込まれて分析される。しかし、
切り替えバルブ6はカテコールアミン類が分析システム
8に送り込まれた後、再び切り替えられ初期の位置に戻
り、前記前処理カラム7には前記吸着用緩衝液1が通液
される。この状態で、前記前処理カラム7は洗浄される
と共にホウ酸基の活性化が行われる。この洗浄・活性化
は数分有れば十分であり、一般的には分析システムで分
析している間(10〜30分)、通液を行っておけばよい。
このようにしてカテコールアミン類は再現性よく測定が
行われる。次に、本発明者らが行なった具体的な実施例
について更に詳しく説明する。
まず、最初に、ホウ酸ゲルの調整を行なう。即ち、エ
チレングリコールジメタクリレートとグリシジルメタク
リレートの共重合体(架橋度35重量%)を酸加水分解し
て得られたヒドロキシメタクリレートゲル(平均粒子径
11μm、排除限界分子量3000[糖類で測定])5gとエピ
クロルヒドリン3gを1Nの水酸化ナトリウム溶液50ml中で
40℃1.5時間反応させエポキシ基を導入した。
このエポキシ基が導入されたヒドロキシアルキルメタ
クリレートゲル5g(湿潤重量)を、30mlの1%カルボキ
シメチルセルロース水溶液中に分散させ、100μlのホ
ウフッ化亜鉛(45%水溶液)を添加後、40℃のインキュ
ベータの中で4時間反応させた。反応後、上記樹脂を純
水と0.1Mの塩化ナトリウム溶液で十分洗浄した。
反応後の樹脂を、1%のテトラブチルアンモニウムハ
イドロオキサイド水溶液に分散し、m−アミノフェニル
ホウ酸0.5gを添加溶解後、40℃で4時間反応させた。
反応後の樹脂を純水とアルコールで洗浄後、再度純水
と0.1Mの塩化ナトリウムで洗浄した後、純水分解し1晩
放置した。
次に、ホウ酸ゲルの吸着特性を調べた。即ち、上記ホ
ウ酸ゲルを、内径4.6mm、長さ10mmのステンレス製カラ
ムに充填し、50mMのリン酸緩衝液(pH9.4)を送液しカ
テコールアミン類3種(エピネフィリン、ノルエピネフ
ィリン、ドーパミン)を各20μg/ml含む標準液と血清及
び前記標準液を添加した血清を注入しカテコールアミン
類及びその他の物質の吸着度合いを調べた。移動相の流
量は1ml/minで、試料注入量は20μlで行った。検出器
には、ダイオードアレー型の紫外吸収検出器を用い、20
0〜400nmの範囲で溶出成分をモニターした。カラム温度
は40℃で行った。
カテコールアミン類は3min以降に非常に幅の広いピー
クとなって溶出した。血清及びカテコールアミン類を添
加した血清を注入した場合では、約0.1minのところから
大きなピークの溶出が始まった。このピークは約1.6min
のところでペースラインに戻り、カテコールアミン類の
ピークとはまったく重ならなかった。
上記緩衝液と同様の緩衝液を用いてアルブミンとリゾ
チームの回収率を求めた。
アルブミンは98%、リゾチームは99%で良好な回収率
を示した。
更に、測定流量を2ml/minに上げて同様の測定を行っ
てみたが、吸着能力には変化がなく、高流量で使用可能
であることがわかった。
その後、ホウ酸ゲルを用いたカテコールアミン類の分
析を行なった。即ち、前述のホウ酸ゲルを内径4.6mm、
長さ10mmのステンレス製カラムに充填し前処理カラムと
し、尿中のカテコールアミン類の測定を行った。測定条
件を以下に示す。
吸着用緩衝液;50mMリン酸緩衝液、pH8.5、流量1ml/mi
n、脱着用緩衝液;50mMリン酸緩衝液、pH3.0、流量1ml
/min、分離カラム;オクタデシルシラン結合シリカゲ
ル、粒子径5μm、内径4.6mm、長さ250mm、分離用
移動相;脱着用移動相と同じ、流量1ml/min、検出
器;電気化学検出器、測定を行ったシステム構成;第
2図(ロ)に示したものと同じ。尚、試料としての尿
は、常法に従い塩酸で加水分解を行った後、1μlを前
処理カラムに注入し測定を行った。
上述のような測定条件下で8回連続して測定した結果
を下表に示す。保持時間についてはまったく変動がなく
非常に再現性のよい測定が行えた。濃度については、若
干のバラツキがあるがエピネフィリン(E)、ノルエピ
ネフィリン(NE)、ドーパミン(DA)を数%以内の変動
で測定することが出来た。この測定には内部標準物質を
用いず行ったが、実際の測定には内部標準物質を添加し
測定を行うほうがより再現性のよい測定が行える。内部
標準物質としては、ジヒドロキシベンジルアミンなどが
適用でき、内部標準物質も本発明の前処理カラムで吸着
・濃度出来ることを確認できた。
〈発明の効果〉 以上詳しく説明したように、本発明は、タンパク質が
浸透できないような細孔径を持ち、基材表面に陰イオン
性の高分子層が結合され、細孔内部にのみホウ酸基を有
するホウ酸ゲルを前処理カラムとし、流路切り替えバル
ブ中に装着し、吸着用緩衝液でカテコールアミン類のみ
を前処理カラム中に吸着させ、不要成分の溶出後脱着用
緩衝液に切り替え、カテコールアミンを前処理カラムよ
り脱着させ分析システムに送り込むように構成されてい
る。このため、タンパク質などの余剰成分の妨害極力抑
えることが可能になり、再現性よく測定することが可能
となった。
本発明のホウ酸ゲルを用いてpH8〜9.5の緩衝液でカテ
コールアミン類を吸着させる場合、タンパク質を代表と
する両性電解質及び陰イオン性の試料のほとんどは負に
荷電しているため、充填剤表面の陰イオン性官能基のた
めにイオン的に排除され、ホウ酸ゲルへの吸着は極力抑
えられるため、特殊な洗浄行程を必要としない。また、
吸着用緩衝液のpHが高く、前処理カラムの活性化の必要
もないため、洗浄操作不要という点と合わせると、測定
システムは非常に簡単になり、測定時間も大幅に短縮で
きる。
前処理カラムからのカテコールアミンの脱着は、pH2
〜3.5の緩衝液で行うが、この緩衝液のpHはカテコール
アミン類の脱着をスムーズにさせるという点で必須の条
件であるが、前処理カラムにイオン交換的に保持された
物質を洗浄できるという副次的効果もある。更に、この
脱着用緩衝液は、逆相分配モードでカテコールアミン類
を分離分析する際の移動相としてそのまま使用できるた
め、逆相分配モードの高速液体クロマトグラフィーを用
いた分析法では最適な脱着用緩衝液ともなり得る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の前処理カラム用ホウ酸ゲルの構造と吸
着機構を示す図、第2図は本発明実施例を説明するため
の図であって第2図(イ)は本提案の分析法の吸着・濃
縮システムの構成を示し第2図(ロ)はカテコールアミ
ン類の分析システムを示す図でる。 1,3…緩衝液、2,4…ポンプ、5…試料注入器、6…流路
切換バルブ、7…前処理カラム、8…分析システムへの
流路、9…廃液ポート、10…分離カラム、11…検出器、
12…廃液、14…基材、15…細孔、16…ホウ酸基、17…表
面高分子層、18…陰イオン性タンパク質、19…陽イオン
性タンパク質、20…陰イオン性低分子、21…陽イオン性
低分子、22…カテコールアミン類
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G01N 35/08 G01N 35/08 C (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 30/00 - 30/96 G01N 33/48 - 33/52 G01N 33/58 - 33/98 JOIS

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】予めpH8〜9.5の緩衝液と細孔内部にのみホ
    ウ酸基が導入された樹脂が充填された前処理カラムを用
    いてカテコールアミン類を含む試料の中からカテコール
    アミン類を選択的に吸着・濃縮させ、その後、pH2〜3.5
    の緩衝液でほう酸ゲルからカテコールアミン類を脱着さ
    せて、このカテコールアミン類を分析する分析方法であ
    って、前記ホウ酸ゲルは、蛋白質が浸透できない大きさ
    の細孔径を持つ親水性の高分子ゲルを基材とし、この基
    材の表面に陰イオン性の高分子層を持ち、且つ、前記細
    孔の内部にのみホウ酸基を有することを特徴とするカテ
    コールアミン類の分析方法。
  2. 【請求項2】前記ホウ酸ゲルへのカテコールアミン類の
    吸着を、pH8〜9.5のリン酸ナトリウム緩衝液で行うこと
    を特徴とする請求項(1)記載の分析方法。
  3. 【請求項3】前記ホウ酸ゲルからのカテコールアミン類
    の脱着を、pH2〜3.5のリン酸緩衝液で行うことを特徴と
    する請求項(1)記載の分析方法。
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