JP2832140B2 - 重量機器用の上下免震装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、大型の皿ばねを積層し
て可動円筒内に装着することにより、免震対象物（大型
重量機器あるいはそれらの機器を搭載するスラブ構造）
の自重を支持し、同時に上下方向地震力に対する免震効
果（加速度入力の低減）を発揮する装置に関するもので
ある。この上下免震装置は、例えば原子炉容器の支持な
どの原子力分野において特に有効であるが、それに限ら
ず一般産業分野においても広く利用可能である。

【０００２】

【従来の技術】大型の重量構造物を免震支持する場合、
従来技術としては、多数のコイルばねを構造物にあわせ
て例えば円形に配列する構成が採用されている。その場
合も、多数のコイルばねのケーシングとして円筒（内筒
あるいは外筒）を使用することは行われている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしコイルばねを使
用する場合、免震要素の設置個数が膨大となり、配置上
の問題（配列の困難性）が生じるばかりでなく、メンテ
ナンスのための空間の確保が難しかった。また、並置さ
れている複数の免震要素（コイルばね）が独立に変位し
得る構造であり、そのため小さな水平方向の地震入力に
対しても過大なロッキング動（水平面内の軸に対する回
転運動）が生じることは本質的に避けられない。そこ
で、そのロッキング動を抑制するために付加的な支持装
置の設置が不可避となる等の問題もあった。

【０００４】本発明の目的は、構成が簡単で、免震要素
の配置上の問題を解決でき、十分な上下免震効果を発揮
でき、しかも免震要素の高さを低減でき、ロッキング動
が生じないような重量機器用の上下免震装置を提供する
ことである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、下端がベース
プレートに固定され上端に内向縁を有する外筒と、該外
筒内に可動的に収納され上下端にそれぞれ外向縁を設け
た内筒と、それら外筒と内筒の間の環状空間に上下面交
互に積層した複数の皿ばねと、該皿ばねの最上部に位置
し前記環状空間内を昇降自在で且つ内面下端部に内筒上
部の外向縁と係合可能な内向縁を設けた押圧輪と、複数
の連結ボルトにより該押圧輪に結合され免震対象物を搭
載する上部プレートとを具備している重量機器用の上下
免震装置である。

【０００６】

【作用】上部プレート上に載置される免震対象物（大型
重量機器など）が下方向に動く場合には、押圧輪を介し
てその力が皿ばねに伝達される。逆に免震対象物が上方
に動く場合には、可動構造となっている内筒の外向縁を
介してその力が皿ばねに伝達される。このようにして免
震対象物からの上下両方向の慣性力は、全て皿ばねに伝
達され、振動が皿ばねの圧縮変形によって緩衝される。
皿ばねは、その構造上、円周状につながっており拘束さ
れるため、円周上の各点で独立した変形は生じず、ロッ
キング動に対する剛性が高い。また複数の皿ばねの組み
合わせは、皿ばね間の摩擦による減衰効果を生じ、免震
効果を一段と高める。

【０００７】

【実施例】図１は本発明に係る重量機器用の上下免震装
置の一実施例を示す全体構成図である。免震対象物Ｗ
は、ここでは原子炉容器などの竪型円筒構造物（仮想線
で示す）を想定しており、容器の外側に設けたフランジ
部を上部プレート上に載置して免震支持する状態を示し
ている。この上下免震装置は、主として、同軸状に配設
した外筒１０及び内筒１２、両者の間の環状空間に積層
した複数（ここでは５個）の大型の皿ばね１４、免震対
象物Ｗを載置する上部プレート１６、前記環状空間内で
昇降自在の押圧輪１８などからなる。

【０００８】外筒１０は、その下端がベースプレート２
０にボルト２２で固定され、上端に内向縁１０ａを有す
る構造の円筒体である。ベースプレート２０は建屋等の
コンクリート構造２４にボルト固定されている。内筒１
２は、前記外筒１０内に同軸状に挿入されている可動の
円筒体である。この内筒１２の上下両端には、それぞれ
外向縁１２ａ，１２ｂが一体的に設けられている。この
ような外筒１０と内筒１２の間の環状空間内に上方から
押圧輪１８が挿入され昇降自在となっている。この押圧
輪１８は、その内面下端部に内筒上部の外向縁１２ａと
係合可能な内向縁１８ａを一体的に設けた構造である。
この押圧輪１８の上に上部プレート１６が位置し、等ピ
ッチで配設した複数の連結ボルト２６により結合する。
上部プレート１６は免震対象物（重量機器）Ｗを直接支
持するものである。複数の皿ばね１４は、外筒１０と内
筒１２の間の環状空間に上下面交互に積層され、最上端
は円環体２８を介して外筒１０の上部内向縁１０ａに、
最下端は内筒１２の下部外向縁１２ｂに係止されてい
る。積層した皿ばね１４は、押圧輪１８によって前記円
環体２８を介して押圧可能となっている。

【０００９】本装置の動作を図２及び図３により説明す
ると次の通りである。地震時には免震対象物Ｗが上下方
向に振動する。上昇時には図２に示すように、押圧輪１
８が内筒１２を押し上げ、これにより皿ばね１４に圧縮
力が加わる。逆に下降時には図３に示すように、押圧輪
１８が直接皿ばね１４を圧縮する。いずれの場合も、免
震対象物Ｗの振動は皿ばね１４の圧縮変形によって緩衝
される。このように本発明装置では、上昇時も下降時
も、加わる力は皿ばねに対して圧縮方向で伝達され、そ
れが一つの特徴となっている。このように皿ばねを圧縮
変形でのみ用いているので、安定した特性が得られる。

【００１０】地震時にコンクリート構造物が上下方向に
振動すると、その振動は皿ばね１４の緩衝を介して免震
対象物Ｗに伝達される。ここで免震対象物Ｗと皿ばね１
４の剛性（ばね定数）により決まる固有振動数を適切な
値に設定（通常１〜５Hz）することにより、伝達される
加速度は顕著に低減される。また複数の皿ばねを組み合
わせて用いることにより、皿ばね間の摩擦による減衰効
果も発現する。皿ばね１４は、円周状につながってお
り、各部で拘束されているので局部的な自由な変形は不
可能であり、コイルばねとは異なり、ロッキング動に対
する剛性は非常に高い。なお本発明では外筒は装置全体
のケーシングの機能も果たす。

【００１１】

【発明の効果】本発明は上記のように、大型の皿ばねを
積層し、これを可動円筒内に装着した構成であり、免震
対象物の振動が皿ばねの圧縮変形によって緩衝されるた
め、安定した免震効果が得られる。また本発明では皿ば
ねを使用するため、円周状に連続しており、円周上の各
部での独立した動きは許容されないため、装置自体がロ
ッキング動に対して非常に高い剛性を有しており、免震
対象物にロッキング動が生じるのを本質的に回避でき
る。更に本発明では、皿ばねを用いることで、構成が簡
素化され、免震要素の高さを低減できるばかりでなく、
免震要素の配置上の困難性も生じず、メンテナンスのた
めの空間も容易に確保できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る重量機器用の上下免震装置の一実
施例を示す全体構成図。

【図２】その免震対象物の上昇時の動作を示す説明図。

【図３】その免震対象物の下降時の動作を示す説明図。

【符号の説明】

１０ 外筒 １２ 内筒 １４ 皿ばね １６ 上部プレート １８ 押圧輪 Ｗ 免震対象物

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) F16F 15/02 - 15/08 E04H 9/02

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 下端がベースプレートに固定され上端に
   内向縁を有する外筒と、該外筒内に可動的に収納され上
   下端にそれぞれ外向縁を設けた内筒と、それら外筒と内
   筒の間の環状空間に上下面交互に積層した複数の皿ばね
   と、該皿ばねの最上部に位置し前記環状空間内を昇降自
   在で且つ内面下端部に内筒上部の外向縁と係合可能な内
   向縁を設けた押圧輪と、複数の連結ボルトにより該押圧
   輪に結合され免震対象物を搭載する上部プレートとを具
   備している重量機器用の上下免震装置。