JP2829804B2 - オフセット印刷装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、印刷装置、特に簡易な
小型オフセット印刷装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、オフセット印刷機は、一般に版
胴、ブランケット胴、圧胴を有し、多色刷りの場合は、
これら３胴からなるユニットを色数に応じてタンデムに
連結して、順次ユニットを通すことによって、多色刷り
が行われる。前記版胴は、表面に版を固定するクランプ
を有するシリンダで構成され、また、ブランケット胴
は、ブランケットを巻きつけるシリンダであり、前記版
胴と同様に外周部にクランプを収容する凹部が形成され
ている。通常、前記版胴及びブランケット胴は、その有
効周長が版１枚の長さ以上であり、１回転で１枚の版を
転写し、印刷するようになっているが、版胴及びブラン
ケット胴の有効周長が版２枚分になるように、版胴及び
ブランケット胴径を２倍にして、１回転で２種の刷版か
ら印刷できるようにしたオフセット印刷機も知られてい
る。

【０００３】従来、大型のオフセット枚葉輪転印刷機、
オフセット巻取輪転印刷機から、Ｂ４サイズやＡ４サイ
ズを印刷する小型のオフセット印刷機まで種々の規模の
オフセット印刷機が知られているが、オフセット印刷機
は基本的には版胴及びブランケットの有効周長が、版長
さ以上を有していることが必要であるため、小型化に制
限を受け、従来Ｂ４サイズ用の小型オフセット印刷機と
して知られているものでも、その高さが２０cm以上もあ
る。また、オフセット印刷機は、他の製版方式の印刷機
に比較して迅速性、簡便性、経済性に優れ多く普及して
いるが、湿し水やインキの微調整や３胴の急速な着脱
等、機構が複雑で熟練を要する等の難点があり、機械の
大きさやその高価さと相俟って専ら印刷専門業者による
使用が殆どであり、多版・小ロットの印刷を必要とする
一般の事務用等に手軽に使用できる小型で安価で取扱が
簡単なものが未だ提供されていないのが現状である。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来の
オフセット印刷装置は、版胴及びブランケット胴の有効
周長が直接印刷する版の長さ以上なければならないの
で、大きい版や複数の版を取付ける場合は、それだけ版
胴及びブランケット胴の胴径を大きくしなければならな
い。即ち、版胴及びブランケット胴の胴径で、版長が制
限を受けることになり、印刷機の丈高を低くすることに
制限を受け、丈高の低いオフセット印刷機を得ることが
できない。また、従来のオフセット印刷機は、版胴、ブ
ランケット胴の単価が高く、装置全体が高価であった。
さらに、版胴及びブランケット胴がそれぞれシリンダで
あるため、シリンダの周面に接触するように、給水装
置、インキ着肉装置、クリーニング装置及び乾燥装置を
集中的に設けなければならず、構造が複雑であり、操作
取扱が面倒である等の問題点を有している。特に、小型
のオフセット印刷機の場合、前述のように版胴の周りの
狭い空間に給水装置、インキ着肉装置を配置するため、
エッチング装置までも版胴周りに備えることは困難であ
り、通常エッチング装置は別個に設けている。そこで、
本発明は、上記従来のオフセット印刷機の問題点を解消
しようとするものであり、高さを低くして構造が簡単で
小型化することができ、安価で取扱が簡単なオフセット
印刷機を提供することを技術的課題とするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに種々研究した結果、本発明者は版胴、ブランケット
胴を従来のシリンダに代えて無端ベルトで形成し、且つ
これらの無端ベルトの外周部に配置するエッチング装
置、インキ着肉装置、給水装置、クリーニグ装置、及び
乾燥装置を一体にカセット式に構成して印刷機本体に着
脱自在に設けることを見出し、本発明に到達したもので
ある。即ち、本発明のオフセット印刷装置は、版担体と
ブランケット担体がそれぞれ無端ベルトで構成され、前
記版担体とブランケット担体は前記版担体に保持された
版とブランケット担体が回転接触できるように配置され
たオフセット印刷装置であって、前記版担体の外周部に
エッチング装置とインキ着肉装置及び給水装置とが接触
可能に配置され、前記ブランケット担体の外周部にクリ
ーニグ装置と乾燥装置が接触可能に配置され、且つ前記
エッチング装置、前記インキ着肉装置、前記給水装置、
前記クリーニグ装置及び前記乾燥装置とを、一体に一つ
のユニットフレームに設けて印刷機本体に着脱自在にカ
セット式に構成することによって、取り扱いが簡単で手
軽に使用でき、且つより小型で安価なオフセット印刷機
を得ることができ、上記問題点を解決したものである。
なお、前記無端ベルトは、該無端ベルトを懸け渡して回
動するプーリ間の距離を選定することによって、高さを
高くせずにその有効周長を長くすることができ、版一枚
の取り付け有効周長から複数枚の版を取付ける有効周長
まで任意に構成することができる。

【０００６】

【作用】版担体及び又はブランケット担体を無端ベルト
で形成することによって、従来のように胴の直径を大き
くしなくても、有効周長を長くとることができ、例え
ば、両側のプーリの直径を５cmとし、該プーリの軸間距
離を１４cm程度取れば、Ｂ４サイズへの用紙の印刷が十
分可能な印刷機が得られる。従来のシリンダ式の版胴及
びブランケット胴では、Ｂ４サイズの用紙を長手方向に
送って印刷が可能であるためには、各胴径を１３cm以上
にしなければならないのに比べて、飛躍的にその高さを
低く且つコンパクトに構成することができる。また、版
担体及びブランケット担体の有効周長を自在に長くとる
ことができるから、一つの版担体に複数のマスターペー
パーを取付けることができ、一印刷サイクルで複数版の
印刷が可能である。

【０００７】また、その場合、ブランケットに重ね塗り
して転写が可能なら、インキ着肉装置も取付版数に合わ
せて複数個配置し、所定の版が通過する毎に揺動して異
なる色のインキを着肉するようにすれば、同時に多色刷
りも可能となる。また、従来の製造コストの高い版胴及
びブランケット胴に代えて、比較的安価に得ることがで
きる無端ベルトを採用しているので、従来と比較して低
コストの印刷機を得ることが可能である。

【０００８】

【実施例】以下、本発明に係るオフセット印刷装置の実
施例を図面を基に詳細に説明する。本実施例のオフセッ
ト印刷装置は、従来の版胴及びブランケット胴に相当す
る版担体及びブランケット担体がそれぞれ無端ベルトで
構成されている場合を示す。版担体１は、合成樹脂を基
材とする複合材料で形成された無端ベルトで構成され、
プーリ２、３間に掛けわたされている。また、ブランケ
ットを取付けるブランケット担体４は、版担体１と同様
に合成樹脂を基材とする複合材料で形成された無端ベル
トで構成され、プーリ５、６間に掛けわたされている。
プーリ５はシリンダ装置等で作動される可動フレームに
軸受けされた軸７に設けられ、該可動フレームを上下に
移動させることによって、ブランケット担体は該プーリ
外周部で前記プーリ２外周部に位置する前記版担体との
回転接触を着脱自在にし、両者を回転接触させることに
よって版担体に取付けられている版の画線像をブランケ
ット担体に保持されたブランケット表面に転写すること
ができる。版担体１及びブランケット担体４は、図示し
ない同一の駆動手段により伝動手段を介して同期して強
制的に回転駆動されるようになっている。

【０００９】版担体１には、版１０を取付けるためのグ
リッパー１１が設けられ、図示のように版供給位置に設
けられた第１グリッパー作動カム１２に接触することに
よってグリッパーを作動させて、版供給トレー１４から
供給された版を挟持するようになっている。また、版排
出位置には、グリッパーを開き挟持されている版を版排
出トレー１６に排出するための第２グリッパー作動カム
１５が取付けられている。なお、１７は版供給トレーに
設けられた版供給ローラ装置であり、１８は版排出トレ
ーに版を排出するための版排出ローラ装置である。

【００１０】本実施例では、ブランケットは無端状に形
成されたブランケットを採用し、ブランケット担体４の
外周面に該ブランケットが無端状に積層されており、ブ
ランケット担体と一体になっている。ブランケット担体
には、図示しない金属又は適宜の位置表示体が適宜位置
に設けられており、その回転の外側固定位置には、該表
示体を検出する近接スイッチや光電センサー等の位置検
出手段１９が設けられており、ブランケットの位置を検
出できるようになっている。しかしながら、ブランケッ
トは従来と同様にシート状のものを採用し、ブランケッ
ト担体の外周部にグリッパー等で着脱自在に取付けるよ
うにすることももちろん可能である。

【００１１】圧胴２０は、版担体と接触する反対側のプ
ーリ６の外周面でブランケット担体外周面に圧接して回
動するように、可動ブラケットに軸受けされた軸２１に
支持されており、プーリ６と圧胴２０との軸間距離が任
意に調節できるようになっており、印刷圧の微調整及び
着脱ができる。印刷用紙２５を貯留する給紙トレー２６
は、図示の実施例ではブランケット担体下方に位置する
ように設けられ、その上部端にトレー上の印刷用紙２５
を一枚づつ分離して給紙ローラ装置２８に送る分離ロー
ラ２７が設けられている。

【００１２】前記版担体１とブランケット担体４は、図
示のように、プーリ２、プーリ５側で転写が行われるよ
うに近接し、プーリ３とプーリ６側は、その間に断面三
角形状の空間が形成されるように離れて互いに傾斜して
配置され、その空間にインキ着肉装置等が配置できるよ
うにして、コンパクトに形成できるようになっている。
版担体１の外周には、着脱自在にエッチング装置３０、
給水装置３１、インキ着肉装置３２が順に設けられ、ま
た、ブランケット担体４の外周部には、クリーニング装
置３３、乾燥装置３４がブランケット担体に適宜接触位
置に移動できるように着脱自在に配置されている。本実
施例は、これらの装置を一つのユニットフレーム３５に
設けてカセット式に一体に印刷機本体から着脱できるよ
うにして、取扱が簡便にできるようになっているが、も
ちろん各装置を別々に着脱自在に配置しても良い。

【００１３】次に、以上のように構成された本実施例の
オフセット印刷装置の作動を説明する。版１０は、ＰＳ
版等従来公知の版を使用することができるが、本実施例
の装置は、自動エッチング装置を内蔵しているので、未
エッチングのオフセットマスターペーパーを使用するこ
とができる。印刷開始前までは、ブランケット担体４
は、図示破線の位置に位置して版担体１と接触しないよ
うに切り離された状態にある。この状態で、図示しない
制御パネル部に印刷枚数等の印刷条件等を設定し、印刷
機を作動させると、給版テーブルに載置されたマスター
ペーパーが、適宜のタイミングで自動的に版担体１に供
給され、第１グリッパー作動カム１２によりグリッパー
１１が作動してマスターペーパーを挟持して定速度で回
動する。まずエッチング装置のエッチングローラがマス
ターペーパーと接触して、エッチ液で画像被膜を除去し
て親油層を露出させるエッチング処理が行われる。エッ
チング処理が終了すると自動的にエッチングローラが切
り離され、次いで給水装置の給水ローラがマスター面と
接触することにより、マスターペーパー表面への給水が
行われ、非画線部に水分が付着する。次に給水ロールが
切り離され、インク着肉装置のインクロールが接触し、
マスターペーパーの画線にインキが付着される。

【００１４】版担体が回動してインキが均らされて印刷
準備が完了すると自動的にプーリ５が揺動して、ブラン
ケット担体に担持されたブランケットが版担体に担持さ
れたマスターと圧接しながら回動してブランケット上へ
画線の転写が行われる。その際、版とブランケットの位
置合わせは、ブランケット位置検出センサ１９がブラン
ケットの基準位置を検出することにより、所定のタイミ
ングでプーリ５が揺動してブランケット担体を版担体に
接触させることにより行われる。そして、ブランケット
の位置とタイミングをとって給紙トレーから給紙装置に
よって圧胴とブランケット担体との間に給紙されて印刷
が行われ、印刷された用紙は図示しない排紙テーブル上
に排紙される。なお、版担体表面から突出しているグリ
ッパーがブランケット担体との接触部を通過する際、プ
ーリ５が揺動してブランケット担体を突出しているグリ
ッパーから逃している。

【００１５】所定枚数の印刷が終了すると、第２グリッ
パー作動カム１５が作動し、グリッパー１１を開きマス
ターペーパーを開放し、版担体から版を排版トレー１６
上に排出し、プーリ５が揺動して、プーリ５とプーリ２
との間隔を拡げ、次の印刷に備える。次いで、２頁目の
マスターが自動的に供給され、前記の動作が繰り返され
る。その間に、ブランケット担体に支持されたブランケ
ットクリーニング装置によって洗浄され、クリーニング
完了後に乾燥装置によって乾燥されて次の画像の転写に
備えられる。

【００１６】以上、本発明の好適な一実施例を示した
が、本発明は該実施例に限らず、種々の設計変更が可能
である。例えば、無端ベルトは、必ずしも一つの一体の
幅広ベルトに限らず、例えば担体幅方向の両端に細幅の
チェーン又はベルトを設け、該ベルト間に版又はブラン
ケットを支持するするのに十分な有効長さを有する屈曲
可能な柔軟な支持プレートを固定し、該支持プレート上
に版又はブランケットを支持させるようにしても良い。
従って、特許請求の範囲に記載された無端ベルトの概念
は、必ずしも一枚の幅広の無端ベルトのみに限定される
ものでなく、担体幅方向の両端に設けられた細幅のチェ
ーン又はベルト等、２個のプーリ間をエンドレス状に版
を搬送することができるような一切の手段を含むものと
解釈されるべきである。

【００１７】また、版担体及びブランケット担体への版
やブランケットの取り付け、上記グリッパーに限らず、
バキューム等任意の手段が採用できる。さらに、版担体
及びブランケット担体の配置も上記実施例に限らず、必
要に応じて種々の配置が可能である。さらに、インキ着
肉装置等の配置も任意に選定することができることは云
うまでもない。特に本実施例では、版担体及びブランケ
ット担体に無端ベルトを採用してあるので、従来のよう
にシリンダ周面に集中的に給水装置やインキ着肉装置等
を設ける必要がなく、平坦部等任意の位置に分散して設
けることが可能であり、エッチング装置もコンパクトに
収納することができる。なお、本発明は水なしオフセッ
ト印刷装置にも適用でき、その場合前記実施例のように
給水装置を設ける必要はない。

【００１８】

【発明の効果】本発明のオフセット印刷装置は、以上の
ように構成され次のような格別の効果を有する。版担体
及び又はブランケツト担体を無端ベルトで形成すること
によって、従来のように胴の直径を大きくしなくても、
有効周長を長くとることができ、飛躍的にその高さを低
く構成することができ、小型化が可能である。また、版
担体及びブランケット担体の有効周長を自在に長くとる
ことができるから、一つの版担体に複数のマスターペー
パーを取付けることができ、一印刷サイクルで複数種の
印刷及び多色刷りが可能である。さらに、機械加工によ
って得られる従来の版胴及びブランケット胴に代えて、
比較的製造コストが安い無端ベルトを採用しているの
で、従来と比較して低コストのオフセット印刷装置が得
られる。特に、本発明では、従来別々に設けられていた
エッチング装置、インキ着肉装置、給水装置、クリーニ
グ装置及び乾燥装置とが、一体に一つのユニットフレー
ムに設けて印刷機本体に着脱自在にカセット式に構成さ
れているので、非常にコンパクトに構成することがで
き、且つ取り扱いが簡単で手軽に使用でき、使用後の清
掃等保守も容易で、製版から印刷までできる少量・多ロ
ットの印刷に適した小型のオフセット印刷装置を得るこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るオフセット印刷機の実施例の側面
概略図である。

【符号の説明】

１ 版担体 ２、３ 版担体
用プーリ ４ ブランケット担体 ５、６ ブラン
ケット担体用プーリ １０ 版 １４ 給版
トレー １６ 排版トレー ２０ 圧胴 ２５ 印刷用紙 ２６ 給紙
トレー ３０ エッチング装置 ３１ 給水
装置 ３２ インキ着肉装置 ３３ クリ
ーニング装置 ３４ 乾燥装置

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鴨井 光一 東京都渋谷区渋谷２丁目15番１号 東邦 生命ビル25階 グラドコ株式会社内 (72)発明者 水野 守 東京都世田谷区中町２丁目１番９号 (56)参考文献 特開 昭60−234844（ＪＰ，Ａ) 特開 昭58−203058（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−139263（ＪＰ，Ａ) 実開 平１−148342（ＪＰ，Ｕ) 特公 昭51−15766（ＪＰ，Ｂ２) 実公 昭57−57967（ＪＰ，Ｙ２) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) B41F 5/24 B41F 7/02 - 7/14 B41F 13/10 B41F 31/30 - 31/38 B41F 35/00 - 35/06

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 版担体とブランケット担体がそれぞれ無
   端ベルトで構成され、前記版担体とブランケット担体は
   前記版担体に保持された版とブランケット担体が回転接
   触できるように配置されたオフセット印刷装置であっ
   て、前記版担体の外周部にエッチング装置とインキ着肉
   装置及び給水装置とが接触可能に配置され、前記ブラン
   ケット担体の外周部にクリーニグ装置と乾燥装置が接触
   可能に配置され、且つ前記エッチング装置、前記インキ
   着肉装置、前記給水装置、前記クリーニグ装置及び前記
   乾燥装置とを、一体に一つのユニットフレームに設けて
   印刷機本体に着脱自在にカセット式に構成してなること
   を特徴とするオフセット印刷装置。