JP2829517B2 - 高強度螺旋鉄筋の製造方法 - Google Patents

高強度螺旋鉄筋の製造方法

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JP2829517B2 JP62211483A JP21148387A JP2829517B2 JP 2829517 B2 JP2829517 B2 JP 2829517B2 JP 62211483 A JP62211483 A JP 62211483A JP 21148387 A JP21148387 A JP 21148387A JP 2829517 B2 JP2829517 B2 JP 2829517B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は鉄筋コンクリート造梁,柱等の剪断補強用と
して使用される高強度螺旋鉄筋の製造方法に関する。 (従来の技術) 近来、鉄筋コンクリート造梁,柱等を構築する場合、
剪断補強用の螺旋鉄筋としてPC鋼棒規格に規定される鋼
棒と同等の高強度線材を螺旋状に形成した高強度螺旋鉄
筋を使用れば、構造物の剪断終局耐力が向上するとして
業界の注目を集め、急速に普及する傾向にある。 この場合、降伏点強度が130Kgf/mm2以上に高強度化さ
れた線材からなる螺旋鉄筋は、剪断終局耐力を飛躍的に
向上させる顕著な作用があり、従つて鉄筋比を小となし
得るので、螺旋鉄筋の重量を軽減して配筋作業を容易に
する等,各種の効果がある。 高強度螺旋鉄筋を製造する場合、線材を曲げ加工した
後に高強度化する方法と、線材を連続的に高強度化工程
に付した後に曲げ加工する方法とがあるが、後者のほう
が前者より遥かに生産効率が高いので、通常後者の方法
で製造されている。 線材を連続的に熱処理して高強度化する場合として
は、素材鋼線材を連続的に焼入れ,焼戻する場合と、熱
間線材圧延の最終段階で線材を直接急冷・焼入れした
後,連続的に焼戻する場合とがある。 上記の如く線材を高強度化した後に螺旋状に成形する
曲げ加工は、その強度ゆえにかなりの困難を伴う。 例えば、降伏点強度130Kgf/mm2以上に高強度化された
線材を角型螺旋鉄筋に成形する場合、あるいは円型螺旋
鉄筋であつても端末を折り曲げる場合には、曲げ加工の
難度が大であるばかりでなく、塑性加工による線材の強
度低下が懸念される。それ故、当該螺旋鉄筋は冷間で曲
げ加工されていること,かつ曲げ内側直径を5d以上(d
は線材の直径。従来の引張り強さ30〜40Kgf/mm2クラス
の螺旋鉄筋では3d以上)とすること等が設計指針とされ
ており、斯くすることによつて前述した飛躍的な断終局
耐力の向上作用を可及的に阻害しないように配慮してい
る。 (従来技術に存する問題点) 例えば、角型螺旋鉄筋は周知の如く梁,柱等の平行な
側面を構成するための4本の主筋それぞれの外周に接触
しつつ螺旋状に巻回・配置される。 この場合、引張り強さ30〜40Kgf/mm2クラスの構造用
鋼線材からなる従来角型螺旋鉄筋では、曲げ加工が容
易,かつ曲げ加工による強度低下を恐れる心配もないの
で、主筋の直径に応じて可及的に小(前掲3d以上)の曲
げ内側直径で曲げ加工してあり、従つて第9図(a)に
示すように,当該螺旋鉄筋F″は各辺を構成する主筋M
・Mそれぞれに外接して両者間をほぼ直線的に結ぶ状態
で配設し得た。 これに対し、高強度化線材からなる角型螺旋鉄筋は,
前述したとおり,曲げ角を従来引張り強さ30〜40Kgf/mm
2クラスの場合の3dには曲げ加工することが許されない
ので、第9図(b)に示す如く,高強度螺旋鉄筋F′は
各辺を構成する主筋M・Mそれぞれと点接触で外接し、
破線で示す両者間を結ぶ直線からやや外方へ膨らんだ状
態で配設される。 ところで、鉄筋コンクリート造梁,柱等を構築する場
合には、コンクリートに包蔵されている鉄筋は,腐食防
止の見地から,コンクリートのかぶり(鉄筋の表面を被
覆するコンクリートの厚み)が3Cm以上であることが設
計上必要であると規定されている。 それ故、上記のように角型高強度螺旋鉄筋を用いて構
築された鉄筋コンクリート造梁,柱等は従来角型螺旋鉄
筋を使用した場合に比べ、主筋M・M間を結ぶ直線から
外方へ膨らんだ配設状態に相当する分だけ仕上がり寸法
が大となりがちであり、特に線材が降伏点強度130Kgf/m
m2以上の角型高強度螺旋鉄筋では必然的に大となつた。 斯様に耐腐食性の要求を満足するため、仕上がり寸法
が大となつた梁,柱等は強度計算上での強度向上に少し
も貢献せず、逆にコンクリートをはじめ外装材,塗料等
資材の使用量を増加させ、建築コストを高めることとな
るので、解決策が希求されていた。 (発明の目的) 本発明は、鉄筋コンクリート造梁,柱等の剪断補強用
として使用される高強度螺旋鉄筋に存する上述の問題点
を解消するためになされたもので、鉄筋コンクリート造
梁,柱等の剪断終局耐力を飛躍的に向上可能な降伏点強
度130Kgf/mm2以上の線材からなる高強度螺旋鉄筋とし
て、曲げ加工部分を含む線材の降伏点強度を130Kgf/mm2
以上に維持しつつ,しかも曲げ加工部の曲げ内側直径を
可及的に小とした高強度螺旋鉄筋を提供するにあり、特
に角型高強度螺旋鉄筋の場合には上記に加えて鉄筋コン
クリート造梁,柱等の仕上がり寸法を小とし、資材の節
減と軽量化とを達成することを目的とする。 (発明の構成) 本発明の要旨とするところは、高強度螺旋鉄筋の製造
方法において、所定の降伏点強度に仕上げるための最終
加熱に高周波誘導加熱手段を用い、当該最終加熱が上記
所定降伏点強度に仕上げる通常の場合に比べ、極めて短
少時間内に十分高い温度まで線材表面を昇温させる如く
設定し、上記加熱後に線材を急冷することにより製造さ
れた、中心部は高硬さ、表層部は低硬さでかつ全断面平
均降伏点強度が130kgf/mm2以上に維持されている線材を
使用し、曲げ加工部分における線材の曲げ内側直径を線
材直径の3倍以上5倍未満にすることを特徴とする高強
度螺旋鉄筋の製造方法である。 ここにおいて前記最終加熱が、素材鋼線材を焼入れ、
焼戻する場合の上記焼戻加熱であるか、または熱間圧延
された線材を直接焼入れしたのち、当該線材に施される
焼戻加熱であることも特徴とする。 前掲の如く、従来の降伏点強度130Kgf/mm2以上に高強
度化した線材からなる高強度螺旋鉄筋では、曲げ加工が
特に困難であり、かつ曲げ加工による強度低下を考慮し
て曲げ内側直径が線材直径の5d以上とするように規制さ
れており、現行の線材直径7.4〜13.0mmの角型螺旋鉄筋
の角部や円型螺旋鉄筋の端末折り曲げ部は曲げ内側直径
がそれぞれ線材直径の5d以上となつている。 従来の降伏点強度130Kgf/mm2以上に高強度化した線材
を使用した角型高強度螺旋鉄筋では、後記実験例で開示
するが,前掲規制を無視して曲げ内側直径を4dに曲げ加
工した場合には,当該曲げ加工部分の降伏点強度を確実
に130Kgf/mm2以上に確保するのは難しく、また3dに曲げ
加工した場合には,当該曲げ加工部分の降伏点強度は13
0Kgf/mm2以下となる。円型高強度螺旋鉄筋の端末折り曲
げ部分についても、上記と全く同様なことが言える。 本発明は表層部が低硬さの線材を使用して線材の曲げ
内側直径を、引張り強度が通常のレベルの材料における
値と同等の3d以上の範囲とする。一方、中心部は高硬さ
にすることにより全断面平均降伏点強度は規格の要求を
満足する130Kgf/mm2以上に維持する。これは曲げ加工に
おいては曲げの曲面の最外周の部分に最大の引張応力が
かかり、最内周の部分に最大の圧縮応力がかかり両応力
とも内部に行くに従って小さくなるので、材料の表層部
の降伏点を低くすることによって曲げ加工を容易にする
とともに曲げによる材質の劣化を防止するものである。
なお線材の曲げ内側直径の上限は、高強度螺旋鉄筋にお
ける従来からの設計指針である5d以上では螺旋鉄筋が主
筋の外側に膨らむのを防止するという本発明の目的が達
成できないので5d未満とする。 またさらに本発明は、上記本発明の高強度螺旋鉄筋を
製造するために適した線材の製造方法も提供する。すな
わち線材を連続的に熱処理して高強度するにあたり、最
終加熱温度は線材の仕上がり降伏点強度を決定すること
は公知である。 通常、最終加熱の加熱手段としては誘導加熱、直接通
電抵抗加熱、あるいは輻射加熱等がある。いずれの加熱
手段による場合であっても、最終加熱温度は線材の含有
化学成分に応じ、かつ仕上がり目標降伏点強度に応じ
て、それぞれ実験や経験則からあらかじめ設定されてお
り、線材全断面を上記温度まで昇温させたのち冷却して
所定降伏点強度に仕上げるようにしている。 これに対し本発明は、焼入れ時の加熱は所望の加熱手
段を用いてよいが、最終加熱手段を高周波誘導加熱に限
定し、上記通常の各所定降伏点強度に仕上げるための加
熱温度をはるかに超える高温まで線材表面を極めて短時
間で昇温させるようにし、当該加熱が線材中心部まで完
全に熱伝導して平均化しないうちに冷却する。これによ
り、例えば線材の仕上がり目標降伏点強度を130kgf/mm2
に設定した場合には、表層部の降伏点強度が100kgf/mm2
程度まで軟化していても、中心部の降伏点強度が160kgf
/mm2程度の降伏点強度を維持可能な硬さとし、線材の全
断面平均降伏点強度が結果的に130kgf/mm2以上であるご
とく仕上げることを特徴とするものである。 この場合、最終加熱とは、素材線材を連続的に焼入
れ、焼戻しする場合では焼戻加熱を指し、また熱間線材
圧延の最終工程で線材を直接焼入れし、焼入れ線材を連
続的に再加熱して所定降伏点強度とする場合では当該再
加熱を指す。 なお、付言すれば、線材を連続的に熱処理する場合の
焼戻加熱に高周波誘導加熱手段を用いるのは周知技術で
あるが、従来用法は線材全断面を所定均一温度とするた
めの一加熱手段として位置づけられていて、本発明にお
けるがごとき上述の特徴ある用法ではない。この点は、
後記実験例において従来用法と本発明用法とを対比して
いるので、明確に理解されるであろう。 (作用) 本発明は高強度螺旋鉄筋が確実に降伏点強度130Kgf/m
m2以上に見合う剪断終局耐力を確実に発揮することを保
証する作用、さらに角型高強度螺旋鉄筋にあつては上記
保証作用に加えて、梁,柱等の側面を形成する主筋間へ
の配筋状態を外方に脹らませない作用がある。 上記主筋間への配筋状態についての作用を具体的数値
で示すこととする。 例えば、直径13mmの線材を従来法に従つて降伏点強度
130Kgf/mm2以上に高強度化して5.4dに曲げ加工した従来
角型高強度螺旋鉄筋と、本発明の4dに曲げた角部をふく
む線材の全断面平均降伏点強度が130Kgf/mm2以上に確保
されている角型高強度螺旋鉄筋とを、それぞれ主筋群の
周囲に配筋した場合を比較する。第1図は梁,柱等の主
筋群Mに配設された従来品を破線F′で,本発明品を実
線Fで示すが、一側では0.14d,相対向する両側では0.28
d,即ち螺旋鉄筋の平面対向配筋間隔を4mm弱狭くするこ
とが可能であり、その結果,長尺立方体である梁,柱等
は細く仕上げられるので、体積および重量の減少量は大
きくなる。 (実験例;1) 本発明者は本発明を完成する過程で多数の実験を行つ
たが、その一部を以下に開示する。 ☆実験内容説明:本実験例は素材鋼線材を連続的に焼入
れ,焼戻する工程に付して高強度化する場合であり、そ
れぞれ含有化学成分が異なる2種類の素材鋼線材を熱処
理ラインで処理した。当該熱処理における焼入れは素材
鋼線材それぞれの含有化学成分に対応して異なる温度ま
で加熱のうえ急冷・焼入れした。 本発明に使用する線材の製造方法の特徴として位置付
けされる高周波誘導加熱手段による焼戻加熱では、素材
鋼線材それぞれについて供試体を作製するにあたり,一
定の送り速度で走行する線材に対して加熱コイルが付与
する加熱エネルギーを各供試体とも同一、しかしピツチ
を一定として巻回してある加熱コイルの巻回数を変え、
その結果,本発明法は加熱エネルギー付与時間を従来法
の場合に比べて極めて短少とするようにし、線材表面の
加熱温度と加熱時間とを種々変えた複数の供試体を作製
する。付与加熱エネルギーを一定とした理由は得られる
各供試体を全て後記の同一目標引張強さに仕上げるため
の配慮からである。また、上記目標引張強さは本実験例
供試体を使用して製造される本発明の高強度螺旋鉄筋が
後記目標降伏点強度を維持し,かつ当該目標降伏点強度
がPC鋼棒規格に規定される機械的性質と同等以上である
如く仕上げようとするからである。以下に実験要項を示
す。 ☆使用素材鋼線材: ○含有化学成分;第1表に示すA,Bの2鋼種 ○線材の直径;鋼種A,Bともに直径12mmを11mmに引抜
きして使用した。 ☆熱処理ライン;第2図に示す熱処理ラインを用いた。
図における1はペイオフスタンド、2は矯直機、3は加
熱装置3aおよび冷却ジヤケツト3bからなる焼入装置、4
は高周波誘導加熱手段である加熱コイル4aおよび冷却ジ
ヤケツト4bからなる焼戻装置、5は巻取りスタンドであ
る。尚,本熱処理ラインでは、上記焼入装置3における
加熱装置3aとして誘導加熱手段を用いた。 ☆供試体作製時における諸条件: ○線材送り速度 ……220mm/sec (ただし、全供試体について同一) ○焼入れ加熱温度;第2表に示すとおりとする。 ○焼戻;焼入後の線材を焼戻するにあたり、第2表に
示す巻回数の異なる加熱コイルを個別に通過させ、加熱
時間と線材表面の加熱温度とをそれぞれ変えて(ただ
し,付与加熱エネルギーは同一)焼戻加熱のうえ,急冷
し、鋼種Aについては従来法に従つた供試体a0および本
発明法に従つた供試体a1〜a3を、鋼種Bについては従来
法に従つた供試体b0および本発明法に従つた供試体b1〜
b3を作製した。 注記;加熱コイル4a・冷却ジヤケツト4b間の間隔
は一定であり、当該間隔は従来法に従つて焼戻加熱され
る供試体a0およびb0が全断面均一温度状態となつて急冷
される距離であり、従来法との対比を図る。 ○焼戻加熱電源;全供試体について同一である。 出 力 ……200KW 周波数 ……140KHz ○供試体線材の仕上がり目標引張強さ……150Kgf/mm2 ○供試体線材を使用して製造される螺旋鉄筋の仕上が
り目標降伏点強度 ……130Kgf/mm2以上 (PC鋼棒JIS G 3109規格のSBPR 130/145またはSBPD 1
30/145として規定される降伏点強度。以下規格130Kgf/m
m2クラスという。) 上記条件に従つて得た熱処理済供試体を各種確性試験
に付した。 ☆硬さ測定試験:各供試体の切断断面の硬さをマイクロ
ビツカース硬さ試験機を用いて測定した。測定結果を第
3図(a)〜(h)に示す。 ○試験結果;各供試体ごとに試験結果を並記した第2
表の最外周硬さ,軟化層深さ(MHv 440以下の表面から
の距離),および中心部硬さの相関関係について比較・
検討すれば、従来法に従つた供試体a0,b0それぞれが全
断面にわたりほぼ同一硬さに仕上がつているのに対し、
本発明法に従つた供試体a1〜a3およびb1〜b3それぞれは
表面硬さが低い。また表面硬さが低く,かつ軟化層が深
くまで形成されている供試体ほど中心部の硬さが従来法
に従つた供試体a0,b0以上の高硬さを保つおり、当該相
関関係から各供試体はほぼ同一目標引張強さに仕上がつ
ていることが予測された。 ☆機械的性質測定試験:各供試体をJIS規格に定めた試
験方法に従つた引張試験に付して機械的性質を調べた。
その一部である供試体a2およびb2それぞれの引張試験結
果を第4図(a)および(b)に示し、第5図に試験結
果から得られた各供試体それぞれの引張強さ,降伏点強
度,降伏比,破断伸びおよび絞りを鋼種A,Bごとにまと
めた線図として示す。 ○試験結果;各供試体ごとに試験結果を並記した第2
表から、各供試体ともほぼ目標引張強さに仕上がつてい
ることが確認された。 また、従来法に従つた供試体a0およびb0に比べて本発
明法に従つた供試体a3およびb3が降伏点強度においてや
や低下してはいるものの、勿論目標降伏点強度以上であ
り、破断伸び,絞りでは従来法供試体とほぼ同一である
ことが明らかにされた。 尚、鋼種A,B間では、焼入れ加熱温度の違いから降伏
比に4%程の差が生じ、またC含有量の違いにより焼戻
加熱昇温温度に差を生ずるため、絞りに差があることが
判明した。 上記実験結果から、本発明法に従つた各供試体は表層
を軟化してあつても、前掲規格130Kgf/mm2クラスに規定
される機械的性質を十分に上回つていることが実証され
た。 そこで、本発明者は本発明法に従つた各供試体の軟化
した表層が曲げ加工時の加工性に如何に寄与するか、ま
た曲げ加工による塑性変形が機械的性質をどの程度低下
させるかを調査するため、以下の実験を行つた。 (実験例:2) ☆曲げ加工試験:上記実験例;1に従つて得た各供試体a0
〜b3それぞれを180゜曲げ加工試験に付し、その難易度
を調査した。 ○曲げ加工試験方法;第6図(a)に示す曲げ加工機
を用いた。当該曲げ加工機は固定された軸部材からなる
治具6と、当該治具6の外周と線材直径に相当する間隔
を維持しつつ,矢印方向へ遊星運動する押さえ曲げロー
ル7とを備え、所定長さのTPとして示す供試体の一端を
チヤツク8で把持・固定し、治具6に対する曲げロール
7の遊星運動により供試体TPの中央部を治具6外周沿い
に曲げ加工可能である。而して、供試体TPの直径11mmに
対して曲げ内側直径が5d,4dおよび3dとなる直径の治具
6それぞれを用いて供試体a0〜b3を第6図(b)に示す
如く曲げ加工した。 ○試験結果;いずれの曲げ角度を得る場合でも、従来
法供試体a0およびb0は加工難度が高く、特に3dとする場
合に顕著であり、これに比べて本発明供試体は極めて容
易に曲げ加工し得た。本発明供試体に限つて言えば、同
一曲げ内側直径に曲げる場合には軟化層の深さが深い程
曲げ加工が容易であり、また曲げ内側直径が5dから4d
へ,4dから3dへと小さくなるに従つてスプリングバツク
が大きくなり、3dに加工する場合は4dに加工する場合に
比べてやや難しいことが確認された。 ☆曲げ加工部の引張試験:曲げ加工された各供試体a0〜
b3を引張試験に付し、塑性加工後の機械的性質を調査し
た。 ○試験方法;第7図に示す引張試験機を用いた。同図
において、81は供試体の両端を把持するチヤツク,9は曲
げ内側直径5d,4dおよび3dそれぞれに合わせた引張試験
用の治具であり、当該治具9を固定,チヤツク81を下方
移動とすることにより、供試体TPの両端それぞれには荷
重Pが負荷されるので、治具9外周に当接する供試体TP
の曲げ加工部には荷重2Pが負荷されることとなる。 ○試験結果;第3表は各供試体a0〜b3の破断荷重を示
し、第8図(a)および(b)はそれぞれ鋼種Aおよび
Bごとに供試体の示す上記破断荷重を曲げ内側直径と焼
戻加熱温度との関係において母材(曲げ前の供試体)の
破断荷重(ただし,上記曲げ後の供試体には荷重2Pが負
荷されているので、第2表の引張荷重×2として計算)
と対比し、塑性加工による強度低下の百分率%とした強
度比線図であり、第4表はその一覧表である。 上記試験結果から、塑性加工によつて強度低下がある
のは当然であるが、その低下率は従来法による供試体に
おいて最も大きく、本発明法に従つた供試体の低下率は
意外に小であり、特に鋼種Aでは供試体a2,a3、または
鋼種Bでは供試体b3の如く、極小加熱時間条件が塑性加
工による強度低下防止にとつて最適であることが確認さ
れた。 ☆規格値との比較:曲げ後の上記供試体a0〜b3それぞれ
の引張試験データを用いて規格130Kgf/mm2クラスの降伏
点強度と比較した。規格130Kgf/mm2クラスの降伏点強度
を100として計算した各供試体a0〜b3の降伏点強度の比
率を第5表として示す。(ただし,この場合も上記強度
比を計算した場合と同様に、規格値×2として対比す
る。) ○試験結果;同表から曲げ後の従来品供試体a0および
b0は曲げ内側直径を4dとした場合には規格値以上である
が、3dとした場合にはともに規格値以下となる。これに
対して本発明品供試体は曲げ内側直径を4dおよび3dとし
ても全て規格値ないし規格値以上である。 しかしながら、規格値を4〜5%上回ることが生産上
での安定性を確保するとすれば、曲げ内側直径4dへの曲
げ加工は鋼種A,Bともに供試体a1,a2,a3およびb1,b2,b3
に施した焼戻加熱条件での処理が曲げ加工の容易性と併
せて機械的強度を維持するうえで最適であり、また曲げ
内側直径3dへの曲げ加工は鋼種線材Aの場合にやや不満
があり、鋼種Bの場合では供試体b3に施した焼戻加熱条
件が機械的強度を維持するうえで好ましいと言える。 (他の実験例) 上記実験例における場合と同一線径の素材鋼線材を上
記実験例:1に従つてそれぞれ引張強さを120,130,140Kgf
/mm2に仕上げ、実験例:2に従つて曲げ加工した供試体に
ついて行つた曲げ加工部の引張試験結果も、上記実験
例:2と全く同様に,付与加熱エネルギーを一定とした極
小加熱時間条件ほど塑性加工による強度低下防止にとつ
て有効であることを示した。 上記実験例:1および2における試験結果ならびに多数
の実験例から得られた試験結果を綜合すれば、本発明に
使用する線材の製造方法は焼戻加熱における付与加熱エ
ネルギーを線径に対応し,かつ仕上がり目標降伏点強度
に対応した従来の場合と同一に設定するが、従来以上の
高温度まで極めて短時間で線材表面を昇温させることに
より、表層部を軟化層,中心部を高硬さとし、その全断
面平均降伏点強度が所定の降伏点強度を維持した線材に
仕上げるので、得られた線材は所定降伏点強度を維持し
つつ,極めて曲げ加工性に富み、高強度螺旋鉄筋用とし
て最適な線材の製造方法であることが確認された。 また、試験結果は本発明として提供する高強度螺旋鉄
筋が4d以下に曲げ加工されている加工部分をも確実に降
伏点強度130Kgf/mm2以上としていることを実証した。 さらに、本発明は線材鋼種の如何に殆ど左右されずに
実施可能であることも示している。 (発明の応用例) 上記各実験例は、素材鋼線材を熱処理ラインにより焼
入れ,焼戻して高強度化した場合であるが、本発明は熱
間線材圧延の最終工程で線材を直接焼入れし、得られた
線材をさらに再加熱して所定降伏点強度に仕上げる高強
度化熱処理工程による場合にも、上記再加熱を前記実験
例と同様に所定加熱条件で実施すれば、全く同様な作用
および効果が得られる。 (発明の効果) 本発明は最終加熱を所定条件とするだけで、所定の高
降伏点強度を維持しつつ,曲げ加工が容易な高強度螺旋
鉄筋用線材を製造可能とし、曲げ加工時の不満は解消さ
れる。また、鉄筋コンクリート造梁,柱等の剪断終局耐
力を飛躍的に向上させ得る降伏点強度130Kgf/mm2以上に
高強度化された線材からなる高強度螺旋鉄筋は曲げ加工
が容易で所定曲率の曲げ角で形成されており、円型螺旋
鉄筋においては端末折り曲げ部の主筋への密着性を高
め、また角型螺旋鉄筋においては梁,柱等の側面を構成
する主筋間の配筋をほぼ直線的として鉄筋コンクリート
造梁,柱等の仕上がり外寸を小となし、資材の節減と軽
量化を達成する。しかも曲げ加工部をふくむ線材の強度
が確実に保証されている。 上記効果は相乗的に作用して高強度螺旋鉄筋の信頼性
の増大と普及に資することとなるので、本発明が齎す効
果は顕著である。
【図面の簡単な説明】 第1図は本発明法に従つた高強度化線材からなる角型高
強度螺旋鉄筋と従来法に従つた高強度化線材からなる角
型高強度螺旋鉄筋との配筋状態を比較する平面断面図、
第2図は本発明法に従つた一実施例線材熱処理ラインの
正面図、第3図(a)〜(h)はそれぞれ実験例:1にお
ける各供試体の硬さ試験結果を示す線図、第4図(a)
および(b)は実験例:1における引張試験結果の一部を
示す線図、第5図は実験例:1で求めた各供試体の機械的
性質を鋼種A,Bごとに示す線図、第6図(a)は実験例:
2における曲げ加工機の正面図、第6図(b)は曲げ加
工後供試体の正面図、第7図は実験例:2における引張試
験機の正面図、第8図(a)および(b)はそれぞれ曲
げ加工後の各供試体の曲げ角度に応じた母材に対する強
度比を鋼種AおよびBについて示す線図、第9図(a)
は構造用鋼線材からなる螺旋鉄筋の配筋状態を示す平面
断面図、第9図(b)は従来角型高強度螺旋鉄筋に存す
る問題点を示す平面断面図である。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C21D 9/60 102 C21D 8/08

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.高強度螺旋鉄筋の製造方法において、所定の降伏点
    強度に仕上げるための最終加熱に高周波誘導加熱手段を
    用い、当該最終加熱が上記所定降伏点強度に仕上げる通
    常の場合に比べ、極めて短少時間内に十分高い温度まで
    線材表面を昇温させる如く設定し、上記加熱後に線材を
    急冷することにより製造された、中心部は高硬さ、表層
    部は低硬さでかつ全断面平均降伏点強度が130kgf/mm2
    上に維持されている線材を使用し、曲げ加工部分におけ
    る線材の曲げ内側直径を線材直径の3倍以上5倍未満に
    することを特徴とする高強度螺旋鉄筋の製造方法。 2.最終加熱が素材鋼線材を焼入れ、焼戻する場合の上
    記焼戻加熱である特許請求の範囲第1項記載の高強度螺
    旋鉄筋の製造方法。 3.最終加熱が熱間圧延された線材を直接焼入れしたの
    ち、当該線材に施される焼戻加熱である特許請求の範囲
    第1項記載の高強度螺旋鉄筋の製造方法。
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