JP2828185B2 - 浴用剤組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、アトピー性皮膚炎の症
状改善に有効な浴用剤組成物に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】アトピー（ａｔｏｐｙ）とは、喘息、
アレルギー性鼻炎、湿疹にかかりやすい家族的傾向、
異種タンパクに対する過敏症、血清中の高レアギン
（ＩｇＥ）値、血液の好酸球増多などの特徴を有する
アレルギーの一つの型である。アトピー性皮膚炎の臨床
像には幾つかの型があり、皮疹の形態と年齢の関係は厳
密なものではないが、年齢との間には、ある程度の相関
関係があるといわれている。また、皮疹に共通している
ことは、慢性の湿疹であるということ、左右対称性、汎
発性に生じているということである。

【０００３】現在のところ、このアトピー性皮膚炎に対
する根本的な治療法はなく、ステロイド外用剤および鎮
痒剤の内服薬に頼らざるを得ないのが現状である。アト
ピー性皮膚炎の疾患が、慢性の湿疹であるという特徴を
有することから、これら内服薬を用いるには継続的に、
規則正しく、内服薬を服用する必要がある。しかし、実
際には規則正しく内服薬を服用することは難しく、不規
則に内服薬を服用してしまうという問題点がある。ま
た、薬物自体も継続的な作用による、疾患部以外の身体
部分への副作用も心配されるのである。

【０００４】そこで、アトピー性皮膚炎の臨床皮膚所見
では、乾燥型のものが多く、表皮の乾燥状態を改善する
ことが重要であることから皮膚の保湿能を向上させる浴
用剤を用いれば、入浴を行うことでアトピー性皮膚炎の
症状を改善させることができ、患者の負担を取り除くこ
とができる。そのような目的を持った浴用剤組成物の開
発が望まれていた。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、そのような
要望に応えたアトピー性皮膚炎に有効な浴用剤組成物を
提供することを課題としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記浴用
剤を得るべく鋭意研究を重ねた結果、無機塩類とカンゾ
ウ抽出末と油性成分とを配合した浴用剤組成物により、
上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成する
に至った。すなわち、本発明は、無機塩類とカンゾウ抽
出末と常温で液状又はペースト状の油性成分とを主成分
とする浴用剤組成物を提供するものである。以下、本発
明を詳細に説明する。

【０００７】本発明において用いられる無機塩類として
は、硫酸ナトリウム、炭素水素ナトリウム、炭酸ナトリ
ウム、セスキ炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化ア
ンモニウム、硝酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、
リン酸ナトリウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、
酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウ
ム、炭酸マグネシウム、塩化カリウム、硫化カリウム、
炭酸カリウム、ミョウバン等が挙げられ、その塩の保湿
能により単独で、又は２種以上を適宜選択、配合でき
る。又、これらの中では炭酸水素ナトリウム、塩化ナト
リウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナト
リウム、セキス炭酸ナトリウムが好ましく、さらに炭酸
水素ナトリウム（重曹）が特に好ましい。全組成に対す
る配合比は１０〜９５％（重量）であるが、好ましくは
５０〜９５％（重量）である。

【０００８】本発明に用いられる油性成分としては、ラ
ノリン、液状ラノリン、ホホバ油、スクワラン、オレン
ジラフィーオイル、ワセリン、流動パラフィン、流動イ
ソパラフィン、オリーブ油、マカデミアンナッツ油等の
天然油、合成油、シリコン類等が挙げられ、単独で、又
は２種以上を適宜選択、配合できる。又、これらの中で
は、ホホバ油、スクワラン、オレンジラフィーオイル、
ローズヒップオイルが好ましく、さらにホホバ油が特に
好ましい。全組成に対する配合比は、０．１〜２０％
（重量）であるが、好ましくは１〜１０％（重量）であ
る。この配合比が過少であると入浴時のなめらかさ及び
入浴後の肌への充分な保湿効果が得られず、また過剰で
あると肌がべたつくなど好ましくない。

【０００９】本発明に用いられる生薬末はカンゾウの抽
出末であり、その抽出末は常法により水、熱水、溶剤等
で抽出したカンゾウエキス又は更に分画して得たものを
乾燥、粉末化することにより得られたものである。全組
成に対するカンゾウ抽出末の配合比は０．１〜１０％
（重量）であるが、好ましくは０．５〜１０％（重量）
である。この配合比が過少であると所期の効果が奏され
ず、過剰であってもその増量分に見合った効果の向上は
望めない。

【００１０】又、前記の油性成分などの配合比として
は、油性成分の量が生薬抽出末の０．００５倍〜２００
倍、好ましくは０．２倍〜１０倍がよい。更に本発明の
浴用剤組成物には、前記成分の他に、必要に応じて界面
活性剤類、高分子類、有機酸類、ビタミン類、酵素等を
添加することが出来る。それらの具体例を以下に示す。

【００１１】界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリ
ウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリ
ウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ラ
ウリン酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレングリ
コールモノステアレート等がある。高分子としては、カ
ゼイン、ポリエチレングリコール、デンプン、ポリビニ
ルアルコール、トラガント、ポリビニルピロリドン等が
ある。

【００１２】有機酸としては、コハク酸、リンゴ酸、フ
マル酸、酒石酸、クエン酸などがある。ビタミン類とし
ては、ビタミンＡ、Ｂ、Ｃ、Ｄ、Ｅ等がある。酵素とし
ては、パパイン、ペプシン、トリプシン、フィシン、パ
ンクレアチン等がある。その他、色素、香料、化粧用微
粉体等を使用できる。

【００１３】混合機は、粉体を攪拌、混合するために使
用されるものであればどのようなものでも使用できる。
具体的にはバートオーミキサー、ナウターミキサー、万
能混合攪拌機、リボンミキサー、Ｖ字型混合機などを挙
げることができる。混合時間は、成分が均一に混合する
のに必要な時間であれば良く、上記の例に挙げた混合機
を使用する場合には、通常５〜５０分間でよい。本発明
の剤型としては、粉末状、顆粒状、錠剤状のいずれにも
限定されない。

【００１４】

【作用】アトピー性皮膚炎患者に対し本願発明の浴用剤
組成物を用い、４週間の連浴での入浴治療法を施行し、
開始後４週間後の臨床上の皮膚所見（皮膚掻痒感、皮疹
の状態、皮膚乾燥状態）と角質水分量の測定を行ったと
ころ、入浴療法施行前に比較して、角質水分量の上昇、
臨床上の皮膚所見も皮膚掻痒感、皮疹、皮膚乾燥状態に
ついて、良好な改善効果が得られた。又、本発明の浴用
剤組成物には、液状又はペースト状の油性成分が他成分
に含浸しているので、製造工程中で油性成分に由来する
流動性の低下を防止でき、さらに同じ作用効果により保
存時及び使用時にもサラサラとした流動性を保つことが
できる。

【００１５】

【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの例によって限定されるもの
ではない。

【００１６】実施例１ 炭酸水素ナトリウム８３．４重量部にホホバ油１０．０
重量部と香料０．５重量部と色素０．１重量部の混合物
を添加した後、カンゾウエキス末６．０重量部加え、均
一にかき混ぜて目的とする浴用剤組成物を得た。

【００１７】実施例２ 実施例１と同様にして下記の配合によるアトピー性皮膚
炎用浴用剤組成物を製造した。この浴用剤組成物も実施
例１の浴用剤組成物と同様の優れた効果を有している。 塩化ナトリウム ８９．４重量部 スクワラン ６．０重量部 甘草エキス末 ４．０重量部 香料 ０．５重量部 色素 ０．１重量部

【００１８】実施例３ 実施例１と同様にして下記の配合によるアトピー性皮膚
炎用浴用剤組成物を製造した。この浴用剤組成物も実施
例１の浴用剤組成物と同様の優れた効果を有している。 硫酸マグネシウム ９３．４重量部 オレンジラフィーオイル ４．０重量部 甘草エキス末 ２．０重量部 香料 ０．５重量部 色素 ０．１重量部

【００１９】実施例４ 実施例１と同様にして下記の配合によるアトピー性皮膚
炎用浴用剤組成物を製造した。この浴用剤組成物も実施
例１の浴用剤組成物と同様の優れた効果を有している。 硫酸ナトリウム ９１．４重量部 ローズヒップオイル ５．０重量部 甘草エキス末 ３．０重量部 香料 ０．５重量部 色素 ０．１重量部

【００２０】実施例５（アトピー性皮膚炎に対する本発
明浴用剤組成物の有効性試験） アトピー性皮膚炎患者２１名を、夫々実施例１で得た浴
用剤組成物３０ｇを２００リットルの浴湯中に溶かした
４０℃の浴湯に１０分間入浴せしめる方法で４週間連浴
させた。各患者に対し、問診表、ケースカードを用いて
２週間毎に臨床検査、自覚症状の改善度を調べ、且つ医
師による判定を行い、最後に４週間目に総合判定を行い
アトピー性皮膚炎に対する有効性を評価した。

【００２１】その結果を表１、表２、表３に示す。表
１、表２、表３にみるように本発明の浴用剤組成物を用
いると、入浴療法施行前に比較して角質水分量が上昇
し、臨床上の皮膚所見も皮膚掻痒感、皮疹、皮膚乾燥状
態について良好な改善効果があることがわかる。

【００２２】比較例１ 比較例１として、下記の配合による従来の浴用剤組成物
を用いて実施例５と同様の試験を行った。その結果を表
４、表５、表６に示す。なお、比較例１のパネラーは２
０名とした。 硫酸ナトリウム ９４．４重量部 スクワラン ５．０重量部 香料 ０．５重量部 色素 ０．１重量部

【００２３】

【表１】

【００２４】

【表２】

【００２５】

【表３】

【００２６】

【表４】

【００２７】

【表５】

【００２８】

【表６】

【００２９】実施例６（本発明の浴用剤組成物の粉末流
動性及び官能評価） 実施例１で得た浴用剤組成物の流動性をパウダーテスタ
ー（ホリカワミクロン社製）を用いて安息角を測定し、
次の評価基準で評価を行ったところ○（流動性良好）で
あった。 ○……流動性良好 △……すこしボタつく ×……流動性が乏しく、ボタつく又は固化する

【００３０】次にパネラー３０名により、実施例１で得
た浴用剤組成物を３０ｇ／２００リットルの割合で浴湯
に使用した時の入浴時のなめらかさ及び入浴後の保湿感
について官能評価を行った。評価基準は次の通りであ
る。 ○……なめらかさ、保湿感ともあり △……どちらともいえない ×……なし 結果は○であった。

【００３１】

【発明の効果】本発明の浴用剤組成物にはアトピー性皮
膚炎の症状を改善するという効果がある。又、アトピー
性皮膚炎の患者でない一般の人が使用した場合において
も、入浴時の感触がなめらかであるとともに、入浴後充
分な保湿感を与えるという効果がある。更に本発明の浴
用剤組成物では、油性成分を多量配合しても、粉体の流
動性を経時的にも損なうことがないので、製造の際のト
ラブルがなく、又、容器からの取り出しも容易となると
いう効果もある。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 諸橋 正昭 富山県富山市呉羽水上町64−59 (56)参考文献 特開 平４−108727（ＪＰ，Ａ) 特開 昭61−286317（ＪＰ，Ａ) フレグランスジャーナル臨時増刊、Ｎ ｏ．６（1986）ｐ．161−170 (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) A61K 7/50 ADA A61K 35/78

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 無機塩類とカンゾウ抽出末と常温で液状
   又はペースト状の油性成分とを主成分とする浴用剤組成
   物。
2. 【請求項２】 無機塩類が炭酸水素ナトリウムである請
   求項１記載の浴用剤組成物。
3. 【請求項３】 油性成分がホホバ油である請求項１また
   は２記載の浴用剤組成物。