JP2823839B2 - モータの軸受構造 - Google Patents

モータの軸受構造

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JP2823839B2 JP18306996A JP18306996A JP2823839B2 JP 2823839 B2 JP2823839 B2 JP 2823839B2 JP 18306996 A JP18306996 A JP 18306996A JP 18306996 A JP18306996 A JP 18306996A JP 2823839 B2 JP2823839 B2 JP 2823839B2
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清喬 松川
耕三 石原
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日本科学冶金株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、モータの軸受構造
に関し、更に詳しくは、4倍速以上のCD−ROM等の
ディスク媒体を回転させるモータや、レーザープリンタ
等のポリゴンミラーを回転させるモータのような高速回
転を要求されるモータ、あるいは、回転による発熱を余
儀なくされるモータの回転軸を支承する軸受構造に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の軸受では、オイル粘度を
低くしたり、焼結含油軸受とシャフトとのクリアランス
を拡げたり、焼結含油軸受のシャフトとの接触面積を減
らすことで軸ロス(モータ消費電流値)の低減を追求し
ていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、オイル
粘度の低減は、オイルの飛散流出をもたらし、オイル切
れによる寿命に問題があった。また、クリアランスの拡
大は、シャフトの軸振れを惹起するという問題があっ
た。更に、接触面積の減少にあっては、軸受摩耗による
寿命に問題があった。
【0004】本発明は、従来技術の有するこのような問
題点に鑑み、軸受構造内部に滞留する空気がシャフトの
高速回転に伴う発熱により膨張し、さらに空気の巻き込
み現象、キャビテーションの発生により空気圧が上昇
し、空気の粘性抵抗の増大により軸ロスが増加するとい
う知見に基づいてなされたものであり、軸受構造内部の
空気を外部に逃がして空気圧の上昇を皆無あるいは低減
することにより、軸ロスを低減できるモータの軸受構造
を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明のうちで請求項1に記載の発明は、ハウジン
グと、該ハウジング内に圧入された2つの焼結含油軸受
とを有し、該焼結含油軸受の軸孔に遊挿されたシャフト
を支持する軸受構造において、上記ハウジングと上記焼
結含油軸受と上記シャフトにより取り囲まれた空間部を
外部に連通する連通路を形成し、シャフト回転時、上記
連通路を介して上記空間部内の空気の一部を外部に排出
することにより上記空間部の圧力上昇を低減するように
したことを特徴とする。
【0006】また、請求項2に記載の発明は、上記連通
路が、上記焼結含油軸受の少なくとも一方の外周面に軸
方向に形成された少なくとも一つの凹溝であることを特
徴とする。
【0007】さらに、請求項3に記載の発明は、上記連
通路が、上記焼結含油軸受の少なくとも一方の軸方向に
形成された少なくとも一つの貫通孔であることを特徴と
する。
【0008】また、請求項4に記載の発明は、上記連通
路が、上記ハウジング内周面の軸方向に形成された少な
くとも一つの凹溝であることを特徴とする。
【0009】また、請求項5に記載の発明は、上記連通
路が、上記ハウジングの半径方向に形成された少なくと
も一つの貫通孔であることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、図面を参照しながら説明する。本発明にかかる軸受
構造には、後述するようにハウジング、焼結含油軸受お
よびシャフトで囲まれた部分の空気を抜くための凹溝あ
るいは貫通孔が設けられている。
【0011】図1及び図2は、本発明の第一実施形態に
かかる軸受構造2を示しており、例えば円筒状のハウジ
ング4と、このハウジング4内に圧入され所定距離離間
した二つの焼結含油軸受6,8とからなる。
【0012】各焼結含油軸受6,8の外周面には、軸方
向に延在し半円形断面を有する少なくとも1条の通し凹
溝6a,8aが形成されており、ハウジング4と、二つ
の焼結含油軸受6,8と、軸孔に遊挿されたシャフト1
0により取り囲まれた空間部12は、連通路としての通
し凹溝6a,8aを介して外部と連通している。
【0013】上記構成の軸受構造2において、シャフト
10が高速回転すると、シャフト10と軸受6,8との
接触部で発熱し、空間部12に存在する空気の圧力が上
昇する。圧力上昇した空気の一部は、空気を抜くための
凹溝6a,8aを介して確実に外部に排出されるので、
空間部12内の空気圧が上昇することはなく、空気の粘
性抵抗が増大することもない。従って、シャフト10の
摺動抵抗が低減し、円滑な回転が可能となる。
【0014】また、凹溝6a,8aの大きさにより空気
の排出量が決定されるので、凹溝6a,8aの大きさを
適宜設定することにより軸ロス(モータ消費電流値)の
制御が可能となる。
【0015】図3は、2つの焼結含油軸受6,8の外周
面に凹溝6a,8aを設けた軸受試料をモータに組み込
み、常温で毎分6500回転で測定した場合の凹溝6
a,8aの大きさ(深さ)と軸ロスの関係を示すグラフ
である。凹溝6a,8aの大きさは、図4に示されるよ
うに、凹溝6a,8aの半径方向断面の曲率半径で示し
たものである。
【0016】このグラフからわかるように、凹溝6a,
8aが大きくなる(溝深さが深くなる)にしたがって、
軸ロスの値は低下し、溝深さ0.3mm以上では、ほぼ
収束している。
【0017】従って、凹溝6a,8aの寸法設定によ
り、オイル粘度、シャフトと軸受間のクリアランス、シ
ャフトと軸受との接触面積等を変えることなく、軸ロス
を適宜制御することができる。
【0018】なお、上記実施形態において、凹溝6a,
8aは二つの軸受6,8の両方に形成されているが、い
ずれか一方の軸受に形成した場合でも、ハウジング4内
部の空間12は外部と連通し、上記実施形態と同様な効
果を奏する。
【0019】また、凹溝6a,8aは、図2の断面形状
に限定されるものではなく、図5(a),(b),
(c)の断面形状等種々の断面形状が考えられる。
【0020】図6及び図7は、本発明の第二実施形態に
かかる軸受構造2Aを示しており、第一実施形態と同
様、例えば円筒状のハウジング4と、このハウジング4
内に圧入され所定距離離間した二つの焼結含油軸受6,
8とからなる。
【0021】各焼結含油軸受6,8は、軸方向に延在し
円形断面を有する少なくとも1条の貫通孔6b,8bを
有し、ハウジング4と、二つの焼結含油軸受6,8と、
軸孔に遊挿されたシャフト10により取り囲まれた空間
部12は、貫通孔6b,8bを介して外部と連通してい
る。
【0022】上記構成において、貫通孔6b,8bは、
前述した凹溝6a,8aと同様、シャフト10の回転に
伴い空間部12内で圧力上昇した空気を抜くためのもの
であり、軸受6,8のいずれか一方に形成してもよい。
また、貫通孔6b,8bは円形断面に限定されるもので
はなく、矩形断面等他の種々の断面形状が考えられる。
【0023】なお、上記第一及び第二実施形態におい
て、凹溝6a,8aや貫通孔6b,8bは、焼結含油軸
受6,8の原料となる粉末を圧縮する工程で形成するこ
とができるので、焼結含油軸受6,8の製造工程が増加
することはない。
【0024】図8及び図9は、本発明の第三実施形態に
かかる軸受構造2Bを示しており、第一及び第二実施形
態と同様、例えば円筒状のハウジング4と、このハウジ
ング4内に圧入され所定距離離間した二つの焼結含油軸
受6,8とからなる。
【0025】ハウジング4の内周面には、軸方向に延在
し半円形断面を有する少なくとも1条の凹溝4aが形成
されており、ハウジング4と、二つの焼結含油軸受6,
8と、軸孔に遊挿されたシャフト10により取り囲まれ
た空間部12は、凹溝4aを介して外部と連通してい
る。
【0026】上記構成において、凹溝4aの作用は、前
述した凹溝6a,8aあるいは貫通孔6b,8bの作用
と同一なので、その説明は省略する。
【0027】また、凹溝4aは、図9の断面形状に限定
されるものではなく、図10(a),(b),(c)の
断面形状等種々の断面形状が考えられる。
【0028】図11及び図12は、本発明の第四実施形
態にかかる軸受構造2Cを示しており、第一、第二及び
第三実施形態と同様、例えば円筒状のハウジング4と、
このハウジング4内に圧入され所定距離離間した二つの
焼結含油軸受6,8とからなる。
【0029】ハウジング4には、半径方向に延在し円形
断面を有する少なくとも1条の貫通孔4bが形成されて
おり、ハウジング4と、二つの焼結含油軸受6,8と、
軸孔に遊挿されたシャフト10により取り囲まれた空間
部12は、貫通孔4bを介して外部と連通している。
【0030】上記構成において、貫通孔4bの作用は、
前述した凹溝6a,8a、貫通孔6b,8bあるいは凹
溝4aの作用と同一なので、その説明は省略する。ま
た、貫通孔4bは円形断面に限定されるものではなく、
矩形断面等他の種々の断面形状が考えられる。
【0031】なお、上記第三及び第四実施形態におい
て、凹溝4aや貫通孔4bは、ハウジング4を射出成形
あるいは鋳造する工程で形成することができるので、ハ
ウジング4の製造工程が増加することはない。
【0032】ここで、本発明にかかる2体の軸受試料
と、比較用として従来法により得られた1体の軸受試料
について寿命試験を行った。図13は、これらの軸受試
料をモータに組み込み、毎分800回転〜6500回転
に変化させながら、5000時間軸受の寿命評価を実施
した時の軸ロス(モータ消費電流値)の変化を示すグラ
フであり、軸ロスの測定は、常温で6500回転にて行
なった。
【0033】図13のグラフにおいて、aは凹溝部を持
たない従来品、bは2つの焼結含油軸受の外周面に凹溝
(半円1条溝・溝深さ0.5mm)を設けた発明品、c
はハウジング内周面に凹溝(半円1条溝・溝深さ0.5
mm)を設けた発明品の結果をそれぞれ示している。
【0034】このグラフに示されるように、焼結含油軸
受の外周面に凹溝を設けた発明品(b)、及び、ハウジ
ング内周面に凹溝を設けた発明品(c)は、凹溝を持た
ない従来品(a)よりも軸ロスが小さく、シャフトの回
転負荷が減少している。また、発明品は5000時間経
過後も軸ロスの変化はわずかで、良好な潤滑効果が得ら
れている。
【0035】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成され
ているので、以下に記載されるような効果を奏する。本
発明のうちで請求項1に記載の発明によれば、ハウジン
グと二つの焼結含油軸受とシャフトにより取り囲まれた
空間部を外部に連通する連通路を形成し、この連通路を
介して空間部内の空気を外部に排出できるようにしたの
で、シャフトの回転に伴う空間部の圧力上昇が低減する
とともに、シャフトの回転負荷が減少し、シャフトの円
滑な回転が可能となる。
【0036】また、請求項2あるいは3に記載の発明に
よれば、シャフトの回転時、二つの焼結含油軸受の軸方
向に形成された凹溝あるいは貫通孔を介して空間部内の
空気の一部が外部に排出されるので、簡単な構成でシャ
フトの回転負荷を減少させることができる。
【0037】さらに、請求項4あるいは5に記載の発明
によれば、シャフトの回転時、ハウジングに形成された
凹溝あるいは貫通孔を介して空間部内の空気の一部が外
部に排出されるので、簡単な構成でシャフトの回転負荷
を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一実施形態にかかる軸受構造の縦
断面図である。
【図2】 図1の線II−IIに沿った断面図である。
【図3】 図1の軸受構造に取り付けられる焼結含油軸
受を凹溝の深さを変えて種々作製し、各軸受構造をモー
タに組み込み、常温でシャフトを毎分6500回転させ
た時の軸ロスの変化を示すグラフである。
【図4】 図3のグラフに示されている溝深さの説明図
である。
【図5】 図1の線II−IIに沿った断面図であり、
(a)は凹溝の変形例を、(b)は別の変形例を、
(c)は更に別の変形例を示している。
【図6】 本発明の第二実施形態にかかる軸受構造の縦
断面図である。
【図7】 図6の線VII−VIIに沿った断面図である。
【図8】 本発明の第三実施形態にかかる軸受構造の縦
断面図である。
【図9】 図8の線IX−IXに沿った断面図である。
【図10】 図8の線IX−IXに沿った断面図であり、
(a)は凹溝の変形例を、(b)は別の変形例を、
(c)は更に別の変形例を示している。
【図11】 本発明の第四実施形態にかかる軸受構造の
縦断面図である。
【図12】 図11の線XII−XIIに沿った断面図であ
る。
【図13】 凹溝を持たない従来の軸受試料と本発明に
かかる2体の軸受試料を各々モータに組み込み、寿命試
験を実施した時の軸ロスの変化を示すグラフである。
【符号の説明】
2,2A,2B,2C 軸受構造 4 ハウジング 4a ハウジングの凹溝 4b ハウジングの貫通孔 6,8 焼結含油軸受 6a,8a 焼結含油軸受の凹溝 6b,8b 焼結含油軸受の貫通孔 10 シャフト 12 空間部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) F16C 33/10

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ハウジングと、該ハウジング内に圧入さ
    れた2つの焼結含油軸受とを有し、該焼結含油軸受の軸
    孔に遊挿されたシャフトを支持する軸受構造において、 上記ハウジングと上記焼結含油軸受と上記シャフトによ
    り取り囲まれた空間部を外部に連通する連通路を形成
    し、シャフト回転時、上記連通路を介して上記空間部内
    の空気の一部を外部に排出することにより上記空間部の
    圧力上昇を低減するようにしたことを特徴とするモータ
    の軸受構造。
  2. 【請求項2】 上記連通路が、上記焼結含油軸受の少な
    くとも一方の外周面に軸方向に形成された少なくとも一
    つの凹溝である請求項1に記載のモータの軸受構造。
  3. 【請求項3】 上記連通路が、上記焼結含油軸受の少な
    くとも一方の軸方向に形成された少なくとも一つの貫通
    孔である請求項1に記載のモータの軸受構造。
  4. 【請求項4】 上記連通路が、上記ハウジング内周面の
    軸方向に形成された少なくとも一つの凹溝である請求項
    1に記載のモータの軸受構造。
  5. 【請求項5】 上記連通路が、上記ハウジングの半径方
    向に形成された少なくとも一つの貫通孔である請求項1
    に記載のモータの軸受構造。
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