JP2818866B2 - 膜素材における酸素透過係数の測定方法 - Google Patents

膜素材における酸素透過係数の測定方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンタクトレン
ズ、人工皮膚、あるいは家庭用野菜ラップ等膜素材等に
おける酸素透過係数の測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】膜素材は各種産業分野で多岐にわたり利
用されている。膜機能を活用した利用技術の多様化がめ
ざましい。膜素材における気体、イオン等の低分子物質
の透過に関連した利用形態は次のように様々である。エ
レクトロニクス工業では無菌水の製造に水溶質分離膜が
使用され、食品工業ではワインなどの製造に無菌濾過膜
が、ジュースの濃縮用に限外濾過膜が使用され、化学工
業では薬品溶液の粒子の除去用として精密濾過膜が使用
され、発酵工業では無菌水、無菌空気の調製用に限外濾
過膜が利用される等、各産業分野で幅広く利用が図られ
ている。その他、気体透過性や気体の選択透過性を活用
した医用分野での利用としての酸素選択透過膜(酸素富
化膜)の利用も盛んになっている。
【0003】気体の透過機能を活し気体の膜分離を可能
とする新材料も次々に開発されている。気体分離膜にお
ける気体透過係数は、膜の単位透過面積、単位時間、単
位厚さ当たりの透過気体量を0℃、1気圧の標準状態で
表されるのが一般的である。
【0004】酸素透過性に優れた素材は、血液バッグを
始めとする医用材料として先端的な分野で利用できる。
また酸素透過性に優れた素材は、視力補正用のコンタク
トレンズにも利用される。この視力補正用のコンタクト
レンズは、角膜上皮に酸素を補給するために高度な酸素
透過機能が必要とされる。コンタクトレンズ素材の酸素
透過係数が劣悪になると、角膜の代謝系に阻害が起こ
り、グリコーゲンが消失し、乳酸が蓄積し、まれには角
膜上皮の膨潤浮腫さえおこる危険性が指摘されている。
【0005】コンタクトレンズ素材膜を対象とする酸素
透過係数を測定する主要な方法は、 1)ガスクロマトグラフィーによる分析、2)電極法、
3)ポーラログラフィー法の3種類があるものの、各方
法にはそれぞれ以下のような問題がある。
【0006】1)ガスクロマトグラフィー法:試料膜を
隔て高圧側と真空側とチャンバーを装備し、高圧側より
被検試料を通して低圧側に透過する気体の濃度をガスク
ロマトグラフィーで分析する方法である。測定システム
としては、ガス透過率測定装置、透過ガスを検出するガ
スクロマトグラフィー、など高性能で大規模な測定装置
が必要である。また、測定には化学的な知識と技能が必
要である。精度良く酸素透過係数を測定するには測定技
術の熟練が必要である。低圧側の圧力は、高圧側より流
れ込むガスにより次第に上昇してしまうため低圧側の圧
力上昇が一定の幅以内での気体透過が可能であるに過ぎ
ない。また、基準セル寸法では、透過面積と試料膜の寸
法をそれぞれ15.2cm2、60mmφに設定する必
要があり試料の形状に厳しい制約がある。膜厚の上限は
1mmと設定されている。したがって簡易で経済的とは
いい難く、またサンプル形状が任意の膜素材の酸素透過
係数の測定には十分な対応ができない。
【0007】2)電極法:電極部と固定用リングとにス
ペーサーと試料とを挟み込んで、35℃、0.9%の食
塩水中で試料膜を透過する溶存酸素を酸素電極で測定す
るものである。電極からの正常電流値を測定することで
酸素透過係数が測定できる。同一素材で厚さの異なるサ
ンプル5枚を対象にして、3組分の素材を測定しなけれ
ばならず簡易な酸素透過係数測定とはいい難い。このよ
うに試料調整上の制約があり、必ずしも容易な測定方法
とはいえない。
【0008】3)ポーラログラフィー法:試料膜を窒素
と水蒸気の混合気体側と酸素と水蒸気の混合気体側とに
隔てる。試料膜を通して酸素が窒素と水蒸気側に透過す
る。この透過酸素をポーラログラフィー酸素電極で計測
するものである。精度の高い測定装置が必要となり、測
定上の技術や熟練が必要である。
【0009】以上のとおり、コンタクトレンズの酸素透
過係数を測定するには、サンプルのサイズが制約されて
おり、酸素透過係数の測定には熟練した技能と経験が必
要とされ、簡易にしかも精度良く測定できる技術の出現
が強く望まれてきた。
【0010】また、ソフトコンタクトレンズの着装状態
を詳細に見ると、コンタクトレンズが角膜に接する側
(以下裏面と略記)は涙液で満たされており、角膜とは
反対の側(以下表面と略記)は水蒸気を含んだ空気相に
接している。すなわち、コンタクトレンズは角膜の上皮
に直接接するように装着され、涙液を介して酸素が角膜
上皮に補給される。コンタクトレンズ素材であるポリメ
タクリル酸メチルはハードコンタクトレンズに用いられ
ており吸湿性は良好ではないが、瞬きをする際にコンタ
クトレンズと角膜との間の涙液が交換する。これにより
酸素が角膜に補給される。従って、吸湿性に欠けるハー
ドコンタクトレンズに対して、含水状態において使用す
るソフトコンタクトレンズ素材の酸素透過性を論ずるに
は、一方の面の大気相の湿度が他方の面の大気相の湿度
と異なる環境下にコンタクトレンズを置いた場合の酸素
透過係数を論議する必要があるが、従来は測定上の技術
的な困難さからコンタクトレンズ裏面、表面側の湿度差
を考慮した酸素透過係数の評価は可能ではなかった。
【0011】コンタクトレンズや人工皮膚あるいは家庭
用野菜ラップ等膜素材の気体透過性を論議するには従来
の気体透過係数の測定方法では十分な情報が得られな
い。即ち、膜素材の内側は高湿度環境の状態にあり、外
側は低湿度環境になっているため、内外表面層における
膜素材の吸湿率の違いが気体の透過に影響を及ぼす。そ
のため、内外での湿度差を考慮した酸素透過係数測定法
の開発が望まれている。
【0012】本発明では、被検試料の一方を微生物培養
地に接するようにセットする。表面側に接する気体相の
湿度は、除湿程度が異なる無菌空気を連続的に送風する
ことで任意の水蒸気を含んだ気体相を準備することがで
きる。このように、試料の一方が気体相と接し他方が液
体相と接する場合の酸素透過係数を測定することは実用
上極めて重要である。また、従来の測定技術ではコンタ
クトレンズ固有の酸素透過係数を測定するにとどまり、
角膜に関する実用に近い酸素補給に関する評価(EO
P;Equivalent oxygen perce
ntage)の重要性を考えると、こうした測定が可能
な装置が必要であった。それにも拘らず、評価が困難で
あったのは目的に合致する測定装置の開発が進んでいな
いためである。実用に近い酸素補給に関する簡易な評価
法の出現が望まれている。
【0013】さらに、従来の測定においては該して大型
で精密な測定装置が必要であり、一回の測定で1サンプ
ルの酸素透過係数の評価しか可能でなく、サンプルの取
り付け方や測定方法で測定結果がバラツク等の再現性に
問題があった。従って、少量のサンプルであっても経済
的に効率よく酸素透過係数を測定する技術の出現が望ま
れてきた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、こうした従
来技術の問題点を解決し、膜素材における酸素透過係数
を簡便に経済的に効率よく、しかも精度良く測定できる
方法を提供することをその課題とする。また、本発明
は、膜素材の表面、裏面側での湿度差を考慮した膜組成
における酸素透過係数測定方法を提供することを別の課
題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは好気性の微
生物が増殖するには十分な酸素が必要であることに着目
し、細菌培地に接触する被検試料直下の培地における細
菌の増殖量が被検試料の酸素透過係数と密接に関係する
ことから、細菌の増殖量を評価することによって被検試
料の酸素透過係数を簡単に評価できることを見出し、本
発明を完成するに至った。即ち、本発明によれば、微生
物を懸濁させた平板状の栄養培地の表面に被検試料を置
いた状態で微生物を一定時間培養し、被検試料直下の微
生物増殖量と被検試料が無い培地の微生物増殖量とを比
較することにより、該被検試料の酸素透過係数を求める
ことを特徴とする膜素材における酸素透過係数の測定方
法が提供される。
【0016】本発明の方法では、微生物が使用される
が、人間や動物に感染しないこと、測定者にとって安全
であることの観点から、好気性の微生物、特に好気性の
植物病原細菌の使用が好ましい。好気性の微生物であれ
ばどのようなものであっても利用することができる。こ
のような好気性の微生物は、一般の細胞培養とは違って
37℃の恒温での培養は不必要である。本発明の方法に
おいて培養温度は凡そ20〜30℃あれば十分であるた
め、微生物に植物病原細菌を用いるメリットは大きい。
【0017】本発明の方法において、培地としては細菌
が増殖できる栄養培地ならばどのような培地でも利用で
きるが、キングB培地(以下、KB培地と略記)、ジャ
ガイモ煎汁・グルコース培地、半合成脇本培地などが好
ましい。また、本発明の方法では、培地として固形平板
培地として用いるが、固化剤としては細菌の増殖を阻害
することがなく、透明度の高いものであればいずれの固
化剤でも利用でき、寒天、ジュランガム、ゼラチンが特
に好ましい。
【0018】好気性微生物を培地と混合して培養する
と、微生物が増殖する前には濁りが無く透き通っていた
培地は菌体の増殖に伴い、1〜2日で白濁し培地の透明
度(以下、培地透明度と略記)は低下する。培地表面に
酸素透過性に優れた被検試料を置いた場合、被検試料直
下でも細菌の増殖は容易なため、細菌の増殖と共に培地
は濁り、培地を透過する光量が減少する。しかし、被検
試料が酸素を通さない場合は、試料直下では細菌が増殖
できないために培地は透明のままである。従って、培地
の透明度と細菌の増殖度とは逆の関係があるので、培地
透明度と被検試料直下の培地透明度とを比較すれば被検
試料の酸素透過係数が簡単に評価できることになる。
【0019】本発明は、被検試料を微生物培養用の培地
に接触させておき、被検試料直下の培地透明度を計測す
ることで、酸素透過係数の測定を行う。被検試料の裏面
は液体状の培地、すなわち、水分含有の培地面に接し、
表面は乾燥あるいは任意の湿度を含む気体相に接してい
る。本発明は、このように被検試料の酸素透過係数を微
生物の増殖状態を培地透明度の違いから測定するもので
あり、特別な設備を用いることなく、簡易に評価できる
点に特徴がある。
【0020】本発明ではシャーレに微生物を懸濁させた
培地に被検試料の小片を同時に多数セットすることが可
能なので、酸素透過係数の評価を多種の試料について行
う場合には特に効率的で経済的となる。
【0021】また、本発明においては、被検試料の一方
側は微生物培養用の培地に接しており、他方側は任意の
湿度を含む気体相と接するような状態で測定を行うこと
ができる。被検試料の表面を高湿度の気体相に接するよ
うにするには、微生物培養容器を密封すれば100%の
湿度の気体相が得られる。また、除湿調整装置により任
意の湿度を含む無菌処理済みの空気を微生物培養容器に
連続的に送り込むと培養容器の湿度を制御させることが
できる。
【0022】本発明によるこのような酸素透過係数の測
定方法はバイオマテリアルの気体透過評価に大変有効で
ある。例えば、生体組織に触れる人工皮膚の下部は熱傷
による体液滲出液で湿潤状態にあるが、上部は乾燥した
大気相(空気相)に触れており乾燥した状態にある。本
発明による酸素透過係数の評価方法ではこうした状況下
にある人工皮膚素材の酸素透過係数をも適切に評価でき
る。
【0023】本発明の方法で用いる好気性植物病原細菌
としては、トマトかいよう病菌、レタス腐敗病菌、アブ
ラナ科野菜黒腐病菌が例示できる。また、胞子を作って
増殖する植物病原糸状菌としては、稲の病原糸状菌で黒
い胞子を形成し、生物検定にも多く利用されているイネ
ゴマ葉枯病菌、ならびに、Fusarium属菌の中で
も胞子を多量に形成するクワ芽枯病菌soluni
が例示できる。本発明に用いることができる植物病菌と
その学名の一例を下記に示す。Corynebacterium michiganese pv.michiganese トマトかいよう病菌Pseudomonas cichorii 各種腐敗病菌(レタス)Xanthomonas campestris pv.campestris アブラナ科野菜黒腐病菌 植物病原糸状菌:Biporaris leersiae イネごま葉枯病菌Fusarium solani f.sp. mori クワ芽枯病菌
【0024】培地透明度は、微生物を懸濁させた栄養培
地上に被検試料をセットした後、一定時間培養した後に
測定する。被検試料が不透明であれば培地から剥がし、
透明であればそのまま反対側に黒または白い紙を置いた
状態で、培地を透過する透過光を写真に撮り、画像処理
することによって培地透明度を評価することができる。
また、低倍率の顕微鏡で培地を透過する光量をこれに連
動した写真の露出時間を測定することによっても簡単に
評価できる。
【0025】試料に接触する細菌培地の透明度と被検試
料の酸素透過係数との関係は、細菌増殖阻害度と酸素透
過係数との検量線を作成しておけば、任意の被検試料に
おいても細菌増殖阻害度から被検試料の酸素透過係数が
明らかになる。また、標準膜を2〜3枚用意し、対照と
して置くことにより微生物濃度や培養条件による増殖阻
害の差を補正できる。被検試料の厚さと細菌増殖阻害度
の検量線を作成することにより、膜厚が薄くでも、厚く
ても簡単に補正でき、容易に各厚さごとの酸素透過係数
を評価することができる。本発明で被検試料の酸素透過
係数を測定するには、従来法のようにサンプルのサイズ
を厳密に規制する必要が無いので、小片でもよいし任意
の形態であっても良い。また、試料は従来法と全く異な
り酸素透過係数測定装置の治具で力を加えてしっかりと
取り付ける必要がないので、被検試料は、膜、粉末、水
を含んだゲル状物、繊維状物、塊状物等色々な形態のも
のでも同様に利用できる。こうした試料の中で、特に本
発明の威力を発揮するのは、力を加えると変形し易いゲ
ルを対象にした場合である。
【0026】被検試料の表面に凹凸があって培地表面が
デコボコになって透明度が不均一になる場合は、水を一
滴滴下し、上に透明膜を置いて平らにすることによって
測定できる。従来、酸素透過係数の測定装置は各種ある
が、1回の測定には1サンプルのデータしか得られない
が、本発明によると、微生物を懸濁した栄養培地表面に
被検試料の小片を複数セットすることで一度に多数の測
定が可能となる。
【0027】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明する。な
お、実施例中の評価は次の方法によった。 A.細菌増殖阻害度の評価方法 加熱溶解後55℃に保持した半合成脇本培地あるいはキ
ングB培地15mlと、検定菌(濃度109〜1010
/ml)2mlを混合してシャーレに流し込んで平板状
に固めた。この菌液混合平板培地上に円板あるいは正方
形(1cm2)に切った被検試料の切片を置き、ピンセ
ットで注意深く培地に被検試料全体が接触するように置
床させた。2日間20〜25℃に保った後、被検試料直
下の培地における細菌増殖阻害度を下記の判定基準によ
り4段階で評価した。 +++:強い(菌はほとんど増殖せず、培地透明度は高く透明ガラスの感じ) ++:やや強い +:弱い(菌はわずかに増殖するため、培地透明度は透明ガラスとすりガ ラスの中間程度) ±:軽微(菌の増殖は1/5程度であり、培地透明度はすりガラス程度) −:菌は良く増殖し、培地は不透明 なお、被検試料が透明であれば培地表面にセットしてあ
る試料直下の培地透明度を被検試料を剥がすことなくそ
のまま透過法により評価することができる。被検試料が
不透明なものであれば、細菌を含む培地で一定時間培養
した後、不透明な被検試料を剥がし、被検試料直下の培
地透明度を評価することで細菌の増殖量を評価できる。
【0028】B.微生物に対する抗菌活性の評価方法 あらかじめシャーレの底に被検試料を置き、その上から
加熱溶解55℃に保持していたPSA培地と検定菌の胞
子液(濃度105〜106/ml)2mlの混合液を静か
に流し込んで平板状に固め、上記Aの評価方法と同様に
観察した。試料直上部において菌の増殖が阻害された場
合、試料は抗菌活性を有すると判定した。
【0029】C.培地透明度 微生物を懸濁させた培地に酸素を全く通さない透明な膜
試料および被検試料をセットして一定時間培養した後、
連動する顕微鏡で培地を観察する。各試料における露出
計の表示値を測定し、培地透明度を次式(1)により算
出した。 培地透明度(%)=(1−(b−a)/(c−a))×100 (1) 但し、aは酸素を実質的に通さない透明な膜試料(例え
ばポリ塩化ビニリデン)における露出計表示値、あるい
は培養前の培地の露出計表示値、bは被検試料直下の露
出計表示値、cは膜試料がなく細菌が増殖した培地の露
出計表示値を意味する。
【0030】実施例1 酸素透過係数が既知の被検試料をトマトかいよう病細菌
を含む培地にセットし、被検試料直下の培地における細
菌の増殖阻害度を評価した。培地には、キングB培地を
用いた。抗菌性評価の結果はセット後25℃に2日間保
ったものである。得られた結果を表1に示した。なお、
文献(最新医用材料開発利用便覧、1986)より引用
した酸素透過係数の単位は、cc/m2・hr・atm
である。
【0031】
【表1】 * 単位:cm/m2・hr・atm.
【0032】なお、本発明における被検試料の内で酸素
透過性が最も良好なシリコンシートを培地の表面に置い
た場合、被検試料を介して細菌の増殖に必要な酸素が十
分に補給されるので細菌の増殖は極めて良好であり、細
菌の増殖阻害は全く観察されない。表1に見る通り、酸
素透過係数が大きい被検試料ほど、試料直下の栄養培地
での細菌の増殖性が良好であるため細菌の増殖に伴い培
地が濁り、培地透明度は低下する。培地透明度を定量化
することで被検試料の酸素透過性を評価できる。被検試
料直下における培地での培地透明度を次のようにして評
価した。ニコン顕微鏡を用いて以下の方法により露出計
の露出時間(s)の表示値を読み取った。顕微鏡の倍率
は、4×2.5である。細菌の培養シャーレを顕微鏡に
セットし、菌を増殖させない培地あるいは実質的に酸素
を阻止するポリ塩化ビニリデン膜直下の露出時間をほぼ
1.00秒となるように顕微鏡下部の照明ランプ光源の
強さを便宜的に調節する。次に、培地上に接触した各被
検試料を顕微鏡の視野に置き、それぞれの露出時間を計
測し、最後に試料を乗せていないバックグラウンド(細
菌が増殖し不透明になっている)の露出時間を計測す
る。
【0033】実施例2 実施例1の追加調査として被検試料の抗菌性の有無を調
べた。シャーレの底に試料番号1−4の被検試料の切片
を置き、その上からトマトかいよう病細菌を含むKB培
地を被検試料が浮き上がらないように十分注意して静か
ら流し込んで2日間培養し、細菌増殖阻害度を調べた。
その結果、試料番号1〜4の被検試料直上の培地にも細
菌が良好に増殖し、試料による細菌増殖阻害は観察され
なかった。このように、試料は抗菌性を有しなかったこ
とから、表1に見られた細菌増殖阻害度が酸素透過に基
づくものと判断できる。
【0034】実施例3 実施例1で用いた試料番号3のセルロースチューブ膜の
枚数を変えKB培地にセットし、被検細菌にトマトかい
よう病細菌を用いて細菌増殖阻害度を評価した。得られ
た結果を表2に示す。
【0035】
【表2】 厚さ;μm
【0036】試料膜の厚さと細菌増殖阻害度の関係を示
す検量線を作成することにより、膜厚には関係無く、試
料膜の一定の厚さにおける酸素透過度を簡単に補正表示
できる。
【0037】実施例4 酸素透過係数の異なる絹フィブロイン膜を調製し、その
酸素透過度を次のようにして調べた。熟蚕体内より後部
絹糸線を取り出し、液状絹フィブロインを蒸留水に分散
させて、蒸留水で約0.85倍に希釈した。25℃に設
定した恒温槽内でポリエチレン膜に絹フィブロイン水溶
液を拡げ蒸発乾固させて絹フィブロイン膜を調製した。
次に、得られた膜を水不溶性にするため、50重量%の
メタノール水溶液に1、10、30分間処理してから取
り出した後、室温で1昼夜乾燥させた試料の酸素透過係
数を測定した。なお、膜の酸素透過係数の値は酸素電極
法により求めた。即ち、酸素電極の感応部に絹フィブロ
イン膜を装着し、30℃の酸素飽和水中にその電極を浸
漬し、得られる電極値から酸素の透過係数値を測定し
た。膜の厚さは約40μmであった。但し、酸素透過係
数の単位は、cm3(S.T.P)・cm/cm2・s・
cmHg)である。得られた結果を表3に示す。酸素電
極法で調べた酸素透過係数を表3に併せて示す。
【0038】
【表3】 ** 単位:cm3(S.T.P)・cm/m2・s・cmHg
【0039】培養後に培地の透明度が高いということ
は、試料膜における酸素透過性が低いためであり、細菌
が増殖しにくいことを意味する。メタノール溶液で絹膜
を浸漬処理すると、処理時間が長くなるつれ酸素を通さ
ない傾向を示す。それは、通常、不溶化処理で絹フィブ
ロイン分子の形態がランダムコイル型からβ型に移行
し、これに伴い分子の凝集構造が緻密になるために酸素
透過係数が減少するためと考えられている。表3から分
かるように、本法でも酸素電極法で測定した酸素透過係
数と同様の結果が得られた。
【0040】
【発明の効果】本発明は、微生物を含む培地表面に被検
膜を接触させ一定時間培養し、微生物の増殖度を生物学
的手法を用いて計測することで、被検試料における酸素
透過係数を測定するという簡易さに特徴がある。従来の
物理学化学的な手法で被検試料における酸素透過係数を
測定するのではないため、酸素透過係数測定のための測
定装置は不必要である。さらに、本発明法は被検試料の
数が多いほど経済的に優れた効果を奏する。それは、微
生物を懸濁した培地表面に多数の被検試料の小片をセッ
トすることでサンプルの酸素透過係数の評価が同時に可
能になるからであり、この点においても従来にはない酸
素透過係数の測定法といえる。本発明は、一方が溶液
相、他の一方が任意の湿度を含む気体相に接する被検試
料の酸素透過係数の測定が可能となる点において従来に
例を見ない特徴をもつ。また、サンプルのサイズを厳密
に規制する必要が無いので、試料片でもよいし任意の形
態であっても良いため、被検試料は、膜、粉末、水を含
んだゲル状物、繊維状物、塊状物等色々な形態のもので
も同様に利用できる点でも従来の方法より優れている。
さらに力を加えると変形し易いゲルを対象にした場合で
も測定できるという特徴を持っている。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微生物を懸濁させた平板状の栄養培地の
    表面に膜素材被検試料を置いた状態で微生物を一定時間
    培養し、被検試料直下の微生物増殖量と被検試料が無い
    培地の微生物増殖量とを比較することにより、該被検試
    料の酸素透過係数を求めることを特徴とする膜素材にお
    ける酸素透過係数の測定方法。
  2. 【請求項2】 好気性微生物を用いることを特徴とする
    請求項1記載の膜素材における酸素透過係数の測定方
    法。
  3. 【請求項3】 膜素材被検試料の一方側が液体相あるい
    は固体相に接し、他方側が任意の湿度を含む気体相に接
    する状態で測定を行うこと特徴とする請求項1記載の膜
    素材における酸素透過係数の測定方法。
JP27998696A 1996-10-01 1996-10-01 膜素材における酸素透過係数の測定方法 Expired - Lifetime JP2818866B2 (ja)

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