JP2808722B2 - 偏向ヨーク - Google Patents

偏向ヨーク

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【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明はテレビジョン受像機等の陰極線管に設置する
偏向ヨークに関するものである。
従来の技術 以下、図に基づいて従来の偏向ヨークの一例を説明す
る。第13図において、51は絶縁枠、52および53は絶縁枠
51の内側に装着された鞍型水平偏向コイル、54は絶縁枠
51の外側に装着された環状磁性コアである。鞍型の水平
偏向コイルは蛍光面側の大口径部にベンドアップ部52a,
53aを備え、電子銃側の小口径部にベンドアップ部57を
備えている。
ところで鞍型の水平偏向コイルを備えた偏向ヨークに
おいて、この水平偏向コイルによって生じる磁界の中の
一部のものが偏向ヨーク外部に漏れるのは避け難い。特
に第14図に示すように水平偏向コイルの大口径部と小口
径部付近において、水平偏向コイルによって生じる磁界
が大きく外部へ飛び出す現象が生じる。しかもその磁界
は水平偏向コイルに流れるのこぎり波電流によって生じ
たものであり、非常に短い時間内にその方向が反転する
ので、いったん大きく飛び出すと完全には戻りきれなく
なり、それが電磁波として放出され、これが不要輻射と
なってしまう。特に大型陰極線管用のものでは、その不
要輻射はかなり強いものであった。
第14図の例はそのような漏れ磁界を押さえ、不要輻射
を低減させるためのキャンセルコイル58,59を設けたも
のである。
以下、キャンセルコイル58,59の作用を説明する。例
えば水平偏向コイル52,53のみに電流を流すと第14図の
実線で示すように磁界が生じる。またキャンセルコイル
58,59のみに電流を流すと第14図の破線で示すように磁
界が生じる。キャンセルコイル58,59と水平偏向コイル5
2,53には同時に同じ波形の水平偏向電流が流れ、またそ
の方向は図に示すように本偏向ヨークの前方部分と後方
部分付近でお互いの磁界がほぼ逆方向になるよう構成さ
れている。各点における磁界の強さは水平偏向コイル5
2,53によって生じる磁界の強さとキャンセルコイル58,5
9によって生じる磁界の強さの合成となる。そしてこの
場合は、本偏向ヨークの前方部分と後方部分付近では双
方の磁界が同じ向きに逆方向に働く事となり、この部分
での磁界は非常に弱くなり、磁界密度も低下する。すな
わち、偏向ヨークの前方部分および後方部分へ飛び出し
て来る磁界はキャンセルコイル58,59によって生じる磁
界によって抑えられている。
発明が解決しようとする課題 ところで以上のような構成では、キャンセルコイル5
8,59の動作効率が非常に悪いものであった。つまり水平
偏向コイルに流す偏向用電流の一部を流すので、水平偏
向に向けられるエネルギーを保ちながらキャンセルコイ
ル58,59による磁界をより強くするためには電流供給原
のとして比較的大きな容量のものが必要であった。ま
た、所望のキャンセル効果を得ようとキャンセルコイル
58,59の巻数を大きくすると、キャンセルコイル内にお
ける熱損失が比較的大きくなってしまい、全体的に電力
損失が増加してしまっていた。
また、以上のような構成のキャンセルコイル58,59は
大口径部の外周部に大きく出っ張る事となり、スペース
の有効利用がなされていなかった。
本発明はこのような課題に鑑みて成されたものであ
り、スペースの有効利用が出来、より少ない電流で有効
な漏れ磁界のキャンセル効果を得るキャンセルコイルを
備えた偏向ヨークを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段 本発明は以上の課題を解決するため、双方のキャンセ
ルコイルを環状磁性コアを挟んでほぼ向かい合うように
配置するとともに、上記環状磁性コアに上面が上記キャ
ンセルコイルに対向するように突出部を設けるか、また
このキャンセルコイルを貫通するとともに端部が上記環
状磁性コアの側面に接した磁性コアを設けた。
作用 以上のように構成する事により、キャンセルコイルと
環状磁性コアとの間の磁気抵抗を大幅に低下させる事と
なり、上記環状磁性コアがキャンセル用磁界を作るため
の磁路として有効に作用する事となり、強力なキャンセ
ル用磁界を得る事が出来る。
実 施 例 以下、図面に基づいて第1の発明の実施例について説
明する。第1図は本実施例における偏向ヨークの斜視図
である。第1図において、1は絶縁枠、2は絶縁枠1の
外側に装着された環状磁性コア、3および4は絶縁枠1
の内側に装着された鞍型水平偏向コイルである。5は鞍
型垂直偏向コイルの小径側のベントアップ部である。垂
直偏向コイルは絶縁枠1とその外側に装着された環状磁
性コアとの間に挟まれるような状態になっている。
6および7はキャンセルコイルである。キャンセルコ
イル6,7それぞれは環状磁性コア2に対向するように配
置されている。8はキャンセルコイル6を保持するため
の保持部材であり、保持部材8絶縁枠1の大径側外周部
に固定されている。なお保持部材8が設けられてる部分
の反対側にはキャンセルコイル7を保持するための保持
部材(第3図に示す)が設けられている。そして双方の
保持部材は本偏向ヨークの中心軸とほぼ平行に小径側へ
伸びており、その先端部にキャンセルコイル6,7が装着
されている。
第3図および第4図において、10および11は環状磁性
コア2に突設された突出部である。突出部10はキャンセ
ルコイル6に対向する部分に突設され、突出部10の上面
はキャンセルコイル6の面に平行となるように構成され
ている。また突出部11も突出部10と同様にキャンセルコ
イル7に対向する部分に突設され、突出部11の上面はキ
ャンセルコイル7の面に平行となるように構成されてい
る。
13は本偏向ヨークの中心軸を示す。そしてθはキャン
セルコイル6の傾斜すなわちキャンセルコイル6の面が
偏向ヨークの中心軸13に対して成す角度を表す。
なお、キャンセルコイル6,7は電気回路上では互いに
直列に接続され、またこれが水平偏向コイル3,4に対し
て直列に接続されており、キャンセルコイル6,7には水
平偏向用電流が流れるようになっている。
以下、動作を説明する。第4図において、実線14は水
平偏向コイル3,4による磁界、また破線15はキャンセル
コイル6,7による磁界を示すものである。また実線14お
よび破線15上の矢印は磁界の方向を示す。ここで、キャ
ンセルコイル6,7による磁界は、 B=LI/nS (1) また、 L=μn2Sσ (2) で表される。但し、Bは磁界密度、Lはインダクタン
ス、Iは電流、nはコイル巻数、Sはキャンセルコイル
6,7の開口面積である。またμは透磁率、σは比例定数
である。
上記2式より となる。
式(3)より、μが大きくなればIまたはLを変えず
とも上記Bを大きく出来る。そして前述のように環状磁
性コア2にはキャンセルコイル6,7に接近した突出部10,
11が設けられており、この突出部10,11によってキャン
セルコイル6,7と環状磁性コア2との間の部分の透磁率
μは大きくなる。従って、この突出部10,11によってキ
ャンセルコイル6,7と環状磁性コア2との間に新たな磁
路が形成され、環状磁性コア2がキャンセル用磁界を作
るための磁路としての作用を発揮出来るようになる。す
なわちこのように構成する事により、キャンセル用磁界
を作るための磁路の磁気抵抗を大幅に低下させる事とな
り、より小さな電流で十分なキャンセル用磁界を作る事
が可能となる。
第6図はキャンセルコイルと環状磁性コアとの距離に
対する不要輻射の実測値の変化を示したグラフである。
その測定は次のように行った。すなわち、第5図に示す
ようにキャンセルコイルを中心軸13と平行にし、環状磁
性コアの大径側端面を含む面上にキャンセルコイルの一
片を合わせ、キャンセルコイルを矢印の方向すなわち中
心軸に対して垂直にかつ互いに逆方向に移動させた。そ
してそのように双方のキャンセルコイルを移動させなが
ら不要輻射の値を測定していった。また、不要輻射の測
定点は陰極線管の中心軸上のフェース面からの約30cmの
位置であった。
この実験結果から分かるようにキャンセルコイルを環
状磁性コアに近付け、キャンセル用磁界を作るための磁
路の磁気抵抗を小さくすればそれだけ不要輻射が低減さ
れる。ところで従来構成のままでは環状磁性コアの外部
は円筒状になっており、キャンセルコイルをいくら環状
磁性コアに近付けても、磁気抵抗の低下はある程度高い
値まででとどまっていたが、本実施例では突出部10,11
を設けた事によりの磁気抵抗を大幅に低下させる事が出
来るのである。
また、たとえキャンセル用磁界の一部が環状磁性コア
2を通ったとしても、それは環状磁性コア2の外側を通
る事となり、本偏向ヨーク内部における偏向用磁界に与
える影響は非常に少ない。
次に、第2の発明の実施例について説明する。
第7図および第8図は第2の発明の第1の実施例を示
す。第7図において、16および17はキャンセルコイルで
ある。キャンセルコイル16,17は絶縁枠の大径部側の縁
の部分に固定されている。18および19はそれぞれキャン
セルコイル16,17を貫通するように配置された磁性コア
であり、磁性コア18,19の一端は環状磁性コア2に接触
し、環状磁性コア2と磁気的に結合している。20は磁性
コア18,19の向きを示す線であり、このように磁性コア1
8,19が本偏向ヨークの中心軸に対して成す角度によって
キャンセル磁界の分布が決定される。そしてこの角度を
変える事によって、大径側と小径側のキャンセル磁界の
バランスを変える事が出来る。
第9図および第10図は第2の実施例を示す。第9図に
おいて、21および22はそれぞれ断面Y字型の磁性コア、
23および24はそれぞれ上記磁性コア21,22に巻装された
キャンセルコイルである。25および26は磁性コア21およ
び磁性コア22を絶縁枠26からいくらか離れた位置に保持
するための保持部材である。磁性コア21,22の一端は保
持部材25に固定され、そして他端は環状磁性コア2に接
触し、環状磁性コア2と磁気的に結合している。そして
この磁性コア21,22によって第9図の破線によって示す
ように本偏向ヨークの小径側と大径側の双方に目的の部
分に絞って効率良くキャンセル磁界を発生させている。
第10図は磁性コア21を示すものであり、例えばこの磁性
コア21において、27は小径側に向いた端辺部、28は大径
側に向いた端辺部である。磁性コア22も磁性コア21と同
じ構成になっている。θは端辺部27が本偏向ヨークの
中心軸に対して成す角度を示し、θは端辺部28が本偏
向ヨークの中心軸に対して成す角度を示す。そしてθ
によって小径側の部分のキャンセル磁界分布が決定さ
れ、θによっ大径側の部分のキャンセル磁界分布が決
定される。すなわち本例においては小径側と大径側のそ
れぞれのキャンセル磁界の分布を個別に決める事が可能
である。
なお、磁性コア21,22の代わりに第11図および第12図
に示されるような磁性コア30,31を用いても良い。本例
ではこの磁性コア30,31を除いては前実施例のものとほ
ぼ同じ構成である。第12図に示すように磁性コア30は上
部に鍔状部を備えた構成になっており、前実施例とは異
なって両端部においても唾が形成され、全周に亙って磁
界が飛び出すように構成されている。また磁性コア31も
同じ構成である。そしてこの磁性コア30,31によって、
第11図の破線で示すように本偏向ヨークの小径側および
大径側だけでなく側部においても効率良くキャンセル磁
界を発生させる事が出来る。
発明の効果 以上のように本発明は、双方のキャンセルコイルを環
状磁性コアを挟んでほぼ向かい合うように配置するとと
もに、上記環状磁性コアに上面が上記キャンセルコイル
に対向するように突出部を設けるか、またこのキャンセ
ルコイルを貫通するとともに端部が上記環状磁性コアの
側面に接した磁性コアを設けた事により、キャンセルコ
イルと環状磁性コアとの間の磁気抵抗を大幅に低下させ
る事となり、上記環状磁性コアがキャンセル用磁界を作
るための磁路として有効に作用し、従来と同じ電流を流
した場合のキャンセル用磁界をさらに強力にする事が出
来る。従って、より少ない電流で有効な漏れ磁界のキャ
ンセル効果を得る事が出来、電力消費をより低減する事
が出来る。しかもキャンセルコイルを環状環状磁性コア
に寄せて配置するので、キャンセルコイルが大きく突出
してしまう事が無く、装置を比較的小さくまとめる事が
出来るので、スペースの有効利用が出来る。
またキャンセルコイルを貫通するとともに端部が上記
環状磁性コアの側面に接した磁性コアを設けた事によ
り、この磁性コアの形状および向きによってキャンセル
用磁界の分布を決めることが出来、目的の部分に絞って
より能率のよいキャンセル効果が得られる事となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は第1の発明の実施例における偏向ヨークの斜視
図、第2図は同偏向ヨークの環状磁性コアの斜視図、第
3図は同偏向ヨークの側面図、第4図は同偏向ヨークの
動作状態における水平偏向コイルの漏れ磁界及びキャン
セルコイルによって生じる磁界を示す説明図、第5図は
キャンセルコイルと環状磁性コアとの距離に対する不要
輻射の実測値の変化を示したグラフ、第6図はその不要
輻射の測定方法を示す説明図、第7図は第2の発明の第
1の実施例における偏向ヨークの斜視図、第8図は同偏
向ヨークの動作状態における水平偏向コイルの漏れ磁界
及びキャンセルコイルによって生じる磁界を示す説明
図、第9図は同発明の第2の実施例における偏向ヨーク
の斜視図、第10図は同実施例における磁性コアの斜視
図、第11図は同発明の第3の実施例における偏向ヨーク
の斜視図、第12図は同実施例における磁性コアの斜視
図、第13図は従来の偏向ヨークの斜視図、第14図は同偏
向ヨークの動作状態における水平偏向コイルの漏れ磁界
及びキャンセルコイルによって生じる磁界を示す説明図
である。 1……絶縁枠、2……環状磁性コア 3,4……鞍型水平偏向コイル 5……ベンドアップ部 6,7……キャンセルコイル 8,9……保持部材、10,11……突出部

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】絶縁枠と、水平偏向コイルと、垂直偏向コ
    イルと、環状磁性コアとを備え、 水平偏向電流が流れるように配線された一対のキャンセ
    ルコイルを、両者を結ぶ直線が水平偏向磁界とほぼ平行
    になるように互いに上記環状磁性コアを挟んで向かい合
    わせて配置し、 上記環状磁性コアに上面が上記キャンセルコイルに対向
    するように磁性材より成る一対の突出部を設けた事を特
    徴とする偏向ヨーク。
  2. 【請求項2】絶縁枠と、水平偏向コイルと、垂直偏向コ
    イルと、環状磁性コアとを備え、 水平偏向電流が流れるように配線された一対のキャンセ
    ルコイルを、両者を結ぶ直線が水平偏向磁界とほぼ平行
    になるように互いに上記環状磁性コアを挟んで向かい合
    わせて配置し、 上記キャンセルコイルを貫通するとともに端部が上記環
    状磁性コアの側面に接した磁性コアを設けた事を特徴と
    する偏向ヨーク。
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