JP2803040B2 - チオフェン化合物及び導電性高分子 - Google Patents

チオフェン化合物及び導電性高分子

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JP2803040B2
JP2803040B2 JP1276695A JP1276695A JP2803040B2 JP 2803040 B2 JP2803040 B2 JP 2803040B2 JP 1276695 A JP1276695 A JP 1276695A JP 1276695 A JP1276695 A JP 1276695A JP 2803040 B2 JP2803040 B2 JP 2803040B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、チオフェン化合物、導
電性高分子化合物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】1977年、ヨウ素をドープしたポリア
セチレンが高い導電性を示すことが発見され、π共役系
構造を持った高分子にドーピング等の処理を行うこと
で、導電性や半導体的特性が現れることが明らかになっ
た。このような高分子は導電性高分子と呼ばれ、一般に
アセチレン系化合物、芳香族化合物または複素環式化合
物等を重合して得られる。導電性高分子の利用に向けて
活発な研究開発が行われており、一部ではすでに電極及
び高分子バッテリー材として工業化されている(松永、
日本化学会第56春季年会、特1104(198
8))。
【0003】導電性高分子の設計の際、高い導電性を得
るためには長いπ共役系を作ることが重要であるといわ
れている。π共役系を長くすることで、π電子を励起し
て伝導電子を作るためのエネルギを低下させることがで
きるためである。
【0004】複素環式化合物のπ共役系高分子を得るた
めには、複素環の2位及び5位における連続的な重合反
応が必要である。2位及び5位における反応は、3位及
び4位における反応よりも起こりやすいと考えられてい
るが、実際には3位及び4位での副反応が生じてしま
い、π共役系が途中で途切れてしまう場合がある。
【0005】3位及び4位での副反応のためにπ共役系
が途中で途切れてしまうことを防止するために、多量体
のチオフェン誘導体を用いて重合する方法が考えられ
た。単体のチオフェンを原料として重合度nのポリチオ
フェンを生成する場合、n−1回の重合反応が必要であ
る。これに対し、3量体のチオフェン誘導体を用いれば
(n−3)/3回の重合で重合度nのポリチオフェンを
生成することができる。従って、3位及び4位での結合
部位は少なくなり、長いπ共役系を持ったポリチオフェ
ンの合成に有利であると考えられていた。
【0006】しかし、3量体のチオフェン誘導体を原料
に用いて電解重合したポリチオフェンのほとんどは粉末
状に沈殿あるいは溶媒中に溶解してしまい、高分子薄膜
を得ることは困難であった。この事実は他の研究者等に
よっても報告されている(J.Roncali, F. Garnier, M.
Lemaire and F. Garreeau, Synthetic Metals, 15,323
(1986))。薄膜が得られないのは、重合度が低いかある
いは高分子間の相互作用が弱いためと考えられる。これ
は、導電率や光吸収特性の低下の原因になる。
【0007】また、3量体のチオフェン誘導体を原料に
した高分子はドーピング特性に劣り、カチオンのドーピ
ングが起こらないとの報告もある(C. Visy, J. Lukkar
i and J. Kankare, Macromolecules, 27, 3322 (1994)
)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このように、3量体の
チオフェン誘導体を原料とした導電性高分子材料は、薄
膜化が困難であり、またドーピング特性が劣るため、実
用化されるに至っていない。
【0009】本発明の目的は、チオフェン化合物を用い
て成膜性及びドーピング特性の優れた導電性高分子材料
及びその製造技術を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明のチオフェン化合
物は、一般式
【0011】
【化8】
【0012】で表され、p、q、r及びsは、 0≦p+q≦3、かつ、0≦r+s≦3 を満足する0もしくは自然数である。
【0013】本発明のチオフェン重合体は、前記チオフ
ェン化合物が、その両端のチオフェンの5位(2位)の
位置で重合したものである。このチオフェン重合体に、
カチオンもしくはアニオンをドープしてもよい。
【0014】
【作用】2つの直鎖状のチオフェン誘導体が、それぞれ
両端以外のチオフェンの3位もしくは4位の位置で相互
に架橋したチオフェン化合物は、2次元もしくは3次元
的な広がりを持つ。このチオフェン化合物を、その両端
のチオフェンの5位の位置で重合することにより、チオ
フェンからなる高分子を得ることができる。この高分子
も2次元もしくは3次元的な広がりを持ち、容易に高分
子薄膜を形成することができる。
【0015】得られた高分子薄膜には、カチオン及びア
ニオンの双方をドーピングすることができる。カチオン
もしくはアニオンをドーピングすることにより、導電性
をもたせることができる。また、ドープ状態と脱ドープ
状態で薄膜の色が変化し、エレクトロクロミズム現象を
呈する。
【0016】
【実施例】図1を参照して、本発明の実施例による3',
3' −ビス(2,2':5',2"−ターチオフェン)の製造方法
を説明する。なお、以下3',3' −ビス(2,2':5',2"−タ
ーチオフェン)を単に「ビスターチオフェン」と記す。
【0017】以下に示す反応は、試薬が水分と反応する
ことを防止するために、アルゴンガス雰囲気で行った。
なお、窒素ガス等、アルゴン以外の不活性ガス雰囲気で
行ってもよい。溶媒として、塩化カルシウムで一晩予備
乾燥した後、水素化カルシウムを加えて蒸留したエーテ
ルを使用した。なお、テトラヒドロフラン(THF)等
を用いてもよい。
【0018】図1(A)の化学式で表される3'−ブロモ
−2,2':5',2"−ターチオフェン0.5g(1.53ミリ
モル)を1.5mlのエーテルに溶かす。なお、3'−ブ
ロモ−2,2':5',2"−ターチオフェン等のハロゲン化合物
の合成には、アドリアノらの方法(A. Carpita and R.
Rossi, Gazzetta Chimica Italiana, 115, 575 (1985)
)を用いることができる。
【0019】次に、濃度1.6モル/リットルのn−ブ
チルリチウムのヘキサン溶液1.0mlとエーテル1.
2mlとを混合した混合液を−78℃に冷却し、3'−ブ
ロモ−2,2':5',2"−ターチオフェン溶液を滴下して、1
0分間攪拌する。3'−ブロモ−2,2':5',2"−ターチオフ
ェンのBr原子がLi原子に置換され、図1(B)に示
すリチウム化合物が合成される。
【0020】この反応液を室温に戻し、0.46g
(1.8ミリモル)のマグネシウムブロマイドエーテラ
ートを3.6mlのエーテルに溶かした溶液に素早く添
加する。室温で30分間攪拌すると、図1(C)に示す
ようなグリニヤール試薬と呼ばれるブロモマグネシウム
化合物が得られる。反応液はオレンジ色の液体である。
【0021】ブロモマグネシウム化合物を含む反応液
を、0.4g(1.22ミリモル)の3'−ブロモ−2,
2':5',2"−ターチオフェンと0.01g(0.018ミ
リモル)のビス(1,3 −ジフェニルホスフィノプロパ
ン)ニッケル(II)クロリドを1.8mlのエーテル
に溶解した溶液に1時間かけて滴下する。その後、この
溶液をエーテルの沸点約34℃に保ち18時間還流させ
た後、2N塩酸を10ml加えて反応を停止させる。
【0022】この反応により、図1(D)に示すビスタ
ーチオフェンが合成される。〔ビス(1,3 −ジフェニル
ホスフィノ)プロパン〕ニッケル(II)クロリドはこ
の反応の触媒の働きをする。なお、触媒として〔1,1'−
ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン〕パラジウム
(II)クロリドを用いてもよい。
【0023】次に、分液ロートを用いて反応液からエー
テル層を取り出し、10%の炭酸水素ナトリウム溶液、
蒸留水及び飽和食塩水の順番で洗浄を行う。硫酸マグネ
シウムで乾燥し、ロータリーエバポレータによってエー
テルを除去すると、赤茶色の粘性を持った生成物が得ら
れる。この生成物を、担体としてシリカゲル、移動層
(溶媒)としてヘキサン−四塩化炭素(1:1)を用い
たカラムクロマトグラフィによって精製する。
【0024】このようにして黄色の針状結晶59.4m
g(収率約10%)が得られた。この針状結晶の融点は
204.0〜206.0℃であった。この針状結晶の構
成元素の重量比は、Cが57.89%、Hが2.80
%、Sが38.44%であった。図1(D)で表される
ビスターチオフェンの構成元素の重量比は、計算からC
が58.27%、Hが2.85%、Sが38.88%と
求まる。上記合成法で得られた針状結晶の構成元素の重
量比はビスターチオフェンのそれに非常に近いといえ
る。
【0025】次に、図2〜図5を参照して、上記反応に
よって生成された物質がビスターチオフェンであること
の根拠について説明する。図2(A)、(B)は共に、
図1で説明した方法で得られた針状結晶の核磁気共鳴
(NMR)スペクトルを示す。横軸は基準周波数に対す
る共鳴周波数のずれを単位ppmで表す。図2(A)
は、7ppm近傍のピークを拡大したものである。
【0026】分析結果は、以下の通りである。すなわ
ち、 δ7.23(dd, J(4"-5")5.2Hz, J(3"-5")1.1Hz, 2H, H5"
たはH5) δ7.22(dd, J(3"-4")3.6Hz, 2H, H3" またはH3) δ7.11(dd, J(4-5)5.2Hz, J(3-5)1.1Hz, 2H, H5 または
H5" ) δ7.06(dd, J(3-4)3.6Hz, 2H, H3またはH3" ) δ7.05( s, 2H, H4') δ7.04(dd, 2H, H4"またはH4 ) δ6.89(dd, 2H, H4 またはH4" ) となる。ここで、δは化学シフト、次の数字は共鳴周波
数のずれの周波数(ppm)、ddはダブルダブレッ
ト、sはシングレット、Jはカップリング定数、次の数
字はダブレット間の周波数差、Hは水素原子、Hの肩の
数字は結合位置を示す。NMRスペクトルに対応する水
素の位置を示す構造式を図3に示す。Hn は図の左端の
チオフェンのn位の位置に結合した水素原子、Hn'は図
の中央のチオフェンのn位の位置に結合した水素原子、
n"は図の右端のチオフェンのn位の位置に結合した水
素原子を表す。
【0027】図4は、紫外から可視光領域の吸収スペク
トルを示す。横軸は波長を単位nmで表し、縦軸はモル
吸光係数を単位mM-1cm-1で表す。ここで、単位M
は、モル/リットルを表す。波長356nmでモル吸光
係数は極大値38mM-1cm-1をとる。この値は、ター
チオフェン(3量体)の2倍、チオフェンの6倍に相当
し、チオフェン基の数に比例していることが確認でき
る。
【0028】図5は、赤外吸収スペクトルを示す。横軸
は波数を単位cm-1で表し、縦軸は透過率を単位%で表
す。なお、測定はサンプルを混合したKBrペレットを
作製して行った。
【0029】波数3070cm-1近傍の吸収は、芳香族
のC−H伸縮振動によるものである。波数690cm-1
には、2−モノ置換チオフェンの吸収が見られる。波数
814〜824cm-1に見られる吸収は、2、3、5位
で置換したチオフェンのC−H面外変角振動によるもの
である。また、2、5−ジ置換チオフェンに特有の80
0cm-1近傍の吸収は認められない。従って、得られた
針状結晶は2−モノ置換チオフェン及び2、3、5−ト
リ置換チオフェンからなる分子構造であると判断され
る。
【0030】上記の構成元素の質量比による組成分析、
図2、3に示すNMRによる分析、図4に示す紫外−可
視吸収スペクトルによる分析、及び図5に示す赤外吸収
スペクトルによる分析から、図1を参照して説明した実
施例により生成された針状結晶は、図1(D)のビスタ
ーチオフェンであると特定できる。
【0031】次に、ビスターチオフェンを用いて高分子
薄膜を重合する方法について説明する。合成したビスタ
ーチオフェンを、電気化学的に陽極酸化することにより
重合する。陽極には白金板(10×10mm)もしくは
ITO膜をコートした透明ガラス板を用い、陰極には白
金板を用いる。また、基準電位を与える参照電極には銀
線を用いる。溶媒にはプロピレンカーボネイト(PC)
を使用する。PCは、モレキュラーシーブス(4A
1/16)を加えて一晩予備乾燥し、減圧蒸留して精製した
ものを用いる。なお、PCの代わりにアセトニトリルを
用いてもよい。また、陽極として、金、炭素等を用いて
もよい。
【0032】支持電解質として、テトラフルオロほう酸
テトラ−n−ブチルアンモニウム((n−Bu)4 NB
4 )を用いた。(n−Bu)4 NBF4 は、使用前に
100℃で1時間真空乾燥を行い、水分を除去する。
【0033】まず、PCにビスターチオフェンを濃度が
1mMになるように加え、65℃に加熱して完全に溶解
させる。溶液を室温に戻した後、支持電解質を濃度が1
00mMになるように加える。重合する前にアルゴンガ
ス、窒素ガス等の不活性ガスで10〜60分程度バブリ
ングして溶存酸素を除去する。溶存酸素を除去した後、
溶液をアルゴン雰囲気中に置き、陽極と陰極の間に電圧
を印加し、0〜1.2Vの間をスイープ速度100mV
/sで繰り返し掃引して重合を行う。
【0034】定電位法もしくは定電流法を用いても重合
可能であるが、これらの方法で長時間重合を行うと、重
合物の一部が溶媒に溶けだすため膜厚の厚い高分子薄膜
を得る場合には適さない。電位スイープ法を用いること
により、長時間重合を行った場合でも均一な膜を得るこ
とが可能になる。
【0035】なお、ビスターチオフェン濃度は0.1〜
1000mMでもよい。1〜100mMであることが望
ましい。また、支持電解質濃度は1〜1000mMでも
よい。10〜100mMであることが望ましい。支持電
解質として、テトラアルキルアンモニウムの過塩素酸
塩、フルオロほう酸塩あるいはフルオロリン酸塩等を用
いてもよい。
【0036】上記条件で10回掃引することにより、陽
極上にポリビスターチオフェン薄膜を重合させることが
できた。重合物が溶媒に溶解することはほとんどなく、
均一な重合膜を得ることができた。重合膜を電極から剥
離するためには、厚さを1μm以上にする必要があっ
た。このように、チオフェンの重合開始電圧1.8Vよ
りも低い電圧でビスターチオフェンの重合を行うことが
できる。
【0037】次に、上記方法で得られたポリビスターチ
オフェン薄膜の電気化学的、光学的性質について説明す
る。図6は、ポリビスターチオフェンのサイクリックボ
ルタモグラムを示す。測定には、溶媒としてアセトニト
リル、支持電解質として濃度0.1Mの(n−Bu)4
NBF4 を使用した。アセトニトリルは、使用前に水素
化カルシウムを加えアルゴンガス雰囲気下で常圧蒸留し
て精製した。作用電極として白金電極上に重合したポリ
ビスターチオフェンを用い、対極、参照電極としてそれ
ぞれ白金板及び銀線を用いた。電圧スキャン速度は、1
00mV/sとした。
【0038】図6の横軸は、銀線の参照電極に対する作
用電極の電位を単位Vで表し、縦軸は電流を単位mAで
表す。電圧を正の方向に増加すると正の電流が流れ、ポ
リビスターチオフェンが酸化される。電圧を負の方向に
増加すると負の電流が流れ、ポリビスターチオフェンが
還元される。このことから、ポリビスターチオフェンに
アニオン及びカチオンの両方をドープできると考えられ
る。なお、ポリビスターチオフェン薄膜は、ドープ状態
で濃青色であるが、脱ドープによって黄橙色へ変化し、
エレクトロクロミズムを確認することができた。
【0039】掃引速度を変えて実験したところ、アニオ
ンドーピング電位は+1.08V、カチオンドーピング
電位は−1.68Vであった。また、ポリビスターチオ
フェンの重量及びサイクリックボルタモグラム曲線の面
積からチオフェン単位当たりのドーパント量を求める
と、アニオンドーピングでは0.34、カチオンドーピ
ングでは0.23であった。
【0040】電圧の掃引を100回繰り返すと、カチオ
ンドーピング時の電流値は約70%になった。従来のポ
リチオフェンでは、電圧の掃引を100回繰り返すと電
流値が最初の40%以下に減少する。このことから、ポ
リビスターチオフェンは従来のポリチオフェンに比べて
カチオンドーピングの安定性が高いことがわかる。ま
た、ドーピングに伴って起こるエレクトロクロミズムも
極めて良好に観察することができた。
【0041】なお、ドーピングできるカチオンとして
は、 Li+ ,Na+ ,K+ ,Me4+ ,Et
4 + ,(n−Bu)4 + 等がある。また、ドーピン
グできるアニオンとしては、I- ,SO4 2-,N
3 - ,ClO4 - ,BF4 - ,PF6 - 等がある。
【0042】図7は、ITO薄膜上に重合したポリビス
ターチオフェン薄膜の可視〜近赤外吸収スペクトルを示
す。図7(A)はアニオンドーピングを行った場合、図
7(B)はカチオンドーピングを行った場合である。横
軸は波長を単位nmで表し、縦軸は吸光度を任意目盛り
で表す。
【0043】図7(A)において、2点鎖線p0、点線
p1、破線p2及び実線p3は、それぞれ未ドープ、及
び0.8V、1.0V、1.2Vを印加してアニオンを
ドープした場合の吸収スペクトルを示す。図7(B)に
おいて、2点鎖線q0、破線q1及び実線q2は、それ
ぞれ未ドープ、及び−1.8V、−2.0Vを印加して
カチオンをドープした場合の吸収スペクトルを示す。
【0044】図7(A)、図7(B)に示すように、中
性のポリビスターチオフェンの吸収スペクトルは、波長
470nm近傍にピークを有する。このピークは、波長
380nm近傍に肩状部分を伴っている。カチオンある
いはアニオンをドープすると、ドーピングの進行に伴い
波長470nm近傍の吸収が減少し、波長800nm及
び1500nm近傍にブロードで大きな吸収が現れる。
【0045】波長470nm近傍の吸収は、中性ポリマ
のπ−π* 遷移であり、波長800nmと1500nm
近傍の吸収は、ドーピングによって生じたπ共役系内の
バイポーラロンによるものである。バイポーラロンによ
る吸収は、価電子帯から新たに現れた2つのエネルギバ
ンドへの遷移である。波長380nm近傍の吸収はポリ
ビスターチオフェンに特有の吸収である。
【0046】図8は、ポリビスターチオフェンをKBr
と混合し、圧縮形成したペレットを用いて測定したポリ
ビスターチオフェンの赤外吸収スペクトルを示す。横軸
は波数を単位cm-1で表し、縦軸は透過率を単位%で表
す。なお、入射光強度を100%とし、透過光の強度か
らバックグランドであるKBrの吸収光強度分を差し引
き、求めた。
【0047】波数793cm-1及び697cm-1の吸収
は、それぞれπ共役鎖を形成する2,5−ジ置換チオフ
ェン及び2−モノ置換チオフェンのC−H変角振動によ
るものである。波数834cm-1の吸収は、2,3,5
−トリ置換チオフェンのC−H変角振動によるものであ
る。波数834cm-1の吸収は、1本の直鎖状構造を持
つポリチオフェンのような高分子には見られない特徴的
な吸収である。
【0048】2,4−ジ置換チオフェンのC−H変角振
動による波数730cm-1の吸収はほとんど見られな
い。このことから、2,5−ジ置換チオフェンと2,
3,5−トリ置換チオフェンによって形成されたπ共役
系を持つことがわかる。この構造は、2,3,5−トリ
置換チオフェンによって鎖が分岐した平面的な広がりを
持つ。
【0049】このようにして得られたポリビスターチオ
フェン薄膜は、表示素子、電極及び電池材料等に応用す
ることが可能である。上記実施例では、3量体のチオフ
ェン誘導体を用いてビスターチオフェンを合成し、さら
にポリビスターチオフェン薄膜を重合する場合について
説明したが、3量体以上のチオフェン誘導体を用いても
よい。ただし、7量体以上のチオフェン誘導体は溶媒に
溶けないため、6量体以下である必要がある。
【0050】図9は、3量体以上のチオフェン誘導体を
用いて高分子薄膜を作製する場合の中間生成物を示す。
図1(A)の化学式で表される3'−ブロモ−2,2':5',2"
−ターチオフェンの代わりに、図9(A)に示す一般式
で表されるハロゲン化合物を用いる。図中のXは、B
r、ClもしくはIである。このように、3〜6量体の
チオフェン誘導体の両端以外のチオフェンのいずれか1
つにハロゲン原子が結合している。
【0051】図9(A)に示すハロゲン化合物を用い
て、図1で説明したビスターチオフェンの合成方法と同
様の反応を行うと、図1(B)のリチウム化合物の代わ
りに、図9(B)の一般式で表されるリチウム化合物が
得られる。また、図1(C)のブロモマグネシウム化合
物の代わりに、図9(C)の一般式で表されるハロゲン
化マグネシウム化合物が得られる。なお、図1ではハロ
ゲン化マグネシウムとしてMgBrを用いた場合を示し
たが、MgCl、MgIを用いてもよい。
【0052】図9(A)に示すハロゲン化合物と図9
(C)に示すハロゲン化マグネシウム化合物を反応させ
ると、図9(D)の一般式で表される目的生成物を得る
ことができる。この目的生成物を重合することにより、
チオフェンからなる高分子薄膜を形成することができ
る。この高分子は、2,3,5−トリ置換チオフェンに
よって鎖が分岐した立体的な広がりを持つ。このため、
図1で説明した実施例と同様に良好な高分子薄膜を得る
ことができるであろう。
【0053】なお、2−モノ置換チオフェンの5位の位
置で重合を進めるためには、図9(D)において、2つ
の2,3,5−トリ置換チオフェンからそれぞれ同一方
向に延びるπ共役鎖の長さが等しいことが好ましい。す
なわち、p=r、q=sであることが好ましい。
【0054】以上実施例に沿って本発明を説明したが、
本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種
々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に
自明であろう。
【0055】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
チオフェンの重合体からなる高分子薄膜を得ることがで
きる。この高分子薄膜にイオンドーピングを行うことに
より、導電性薄膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による薄膜形成方法の中間生成
物の化学式を示す図である。
【図2】本発明の実施例により得られたビスターチオフ
ェンのNMRスペクトルを表すグラフである。
【図3】NMRスペクトルに対応する水素原子の位置を
説明するためのチオフェン化合物の化学式を示す図であ
る。
【図4】本発明の実施例により得られたビスターチオフ
ェンの紫外−可視吸収スペクトルを表すグラフである。
【図5】本発明の実施例により得られたビスターチオフ
ェンの赤外吸収スペクトルを表すグラフである。
【図6】本発明の実施例により得られたポリビスターチ
オフェンのサイクリックボルタモグラムである。
【図7】本発明の実施例により得られたポリビスターチ
オフェンの可視−近赤外吸収スペクトルを表すグラフで
ある。
【図8】本発明の実施例により得られたポリビスターチ
オフェンの赤外吸収スペクトルを表すグラフである。
【図9】本発明の他の実施例による薄膜形成方法の中間
生成物の化学式を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 審査官 田村 聖子 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07D 333/04 C08G 61/12 H01B 1/12 CA(STN) REGISTRY(STN) WPI(DIALOG) WPIDS(STN)

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式 【化1】 で表されるチオフェン化合物。
  2. 【請求項2】 一般式 【化2】 で表され、p、q、r及びsは、 0≦p+q≦3、かつ、0≦r+s≦3 を満足する0もしくは自然数であるチオフェン化合物。
  3. 【請求項3】 前記p、q、r及びsは、p=r、か
    つ、q=sを満足する請求項2記載のチオフェン化合
    物。
  4. 【請求項4】 一般式 【化3】 で表される繰り返し単位からなるチオフェン重合体。
  5. 【請求項5】 一般式 【化4】 で表され、p、q、r及びsは、 2≦p+q≦5、かつ、2≦r+s≦5 を満足する自然数である繰り返し単位からなるチオフェ
    ン重合体。
  6. 【請求項6】 前記p、q、r及びsは、p=r、か
    つ、q=sを満足する請求項5記載のチオフェン重合
    体。
  7. 【請求項7】 カチオンもしくはアニオンがドープされ
    た請求項4〜6のいずれかに記載のチオフェン重合体。
  8. 【請求項8】 直鎖型のチオフェン3量体の中央のチオ
    フェンの3位もしくは4位のH原子がハロゲン原子に置
    換されたハロゲン化合物を準備する工程と、 前記ハロゲン原子をLi原子に置換してリチウム化合物
    を得る工程と、 前記リチウム化合物のLi原子をMgX(XはBr、
    I、及びClよりなる群から選ばれた原子)に置換して
    ハロゲン化マグネシウム化合物を得る工程と、 前記ハロゲン化合物と前記ハロゲン化マグネシウム化合
    物とを反応させて、前記ハロゲン化合物のハロゲンが結
    合した位置と、前記ハロゲン化マグネシウム化合物のM
    gXが結合した位置とを結合して架橋する工程とを含む
    チオフェン化合物の製造方法。
  9. 【請求項9】 直鎖型のチオフェンn量体(nは3以上
    6以下の整数)の両端のチオフェン以外のいずれかのチ
    オフェンの3位もしくは4位のH原子がハロゲン原子に
    置換されたハロゲン化合物を準備する工程と、 前記ハロゲン原子をLi原子に置換してリチウム化合物
    を得る工程と、 前記リチウム化合物のLi原子をMgX(XはBr、
    I、及びClよりなる群から選ばれた原子)に置換して
    ハロゲン化マグネシウム化合物を得る工程と、 前記ハロゲン化合物と前記ハロゲン化マグネシウム化合
    物とを反応させて、前記ハロゲン化合物のハロゲンが結
    合した位置と、前記ハロゲン化マグネシウム化合物のM
    gXが結合した位置とを結合して架橋する工程とを含む
    チオフェン化合物の製造方法。
  10. 【請求項10】 一般式 【化5】 で表されるチオフェン化合物を準備する工程と、 前記チオフェン化合物を、その2−モノ置換チオフェン
    の5位の位置で重合する工程とを含むポリチオフェンの
    製造方法。
  11. 【請求項11】 一般式 【化6】 で表され、p、q、r及びsは、 0≦p+q≦3、かつ、0≦r+s≦3 を満足する0もしくは自然数であるチオフェン化合物を
    準備する工程と、 前記チオフェン化合物を、その2−モノ置換チオフェン
    の5位の位置で重合する工程とを含むポリチオフェンの
    製造方法。
  12. 【請求項12】 前記重合する工程は、 前記チオフェン化合物を溶媒に溶かす工程と、 前記溶媒中に導体を含んで構成された陽極及び陰極を浸
    漬する工程と、 前記陽極と陰極間に、周期的に変化する電圧を印加する
    工程とを含む請求項10または11記載のポリチオフェ
    ンの製造方法。
  13. 【請求項13】 前記電圧を印加する工程は、前記電圧
    が0〜1.2Vの間で周期的に変化する請求項12記載
    のポリチオフェンの製造方法。
  14. 【請求項14】 一般式 【化7】 で表され、p、q、r及びsは、 2≦p+q≦5、かつ、2≦r+s≦5 を満足する自然数である繰り返し単位からなるチオフェ
    ン重合体が導体の表面に形成された陽極を準備する工程
    と、 Li+ ,Na+ ,K+ ,Me4 + ,Et4 + ,(n
    −Bu)4 + のいずれかのカチオンもしくはI- ,S
    4 2-,NO3 - ,ClO4 - ,BF4 - ,PF6 -
    いずれかのアニオンの少なくとも一方を含む電解液を準
    備する工程と、 前記電解液中に前記陽極と導電体からなる陰極を浸漬す
    る工程と、 前記陽極と陰極間に電圧を印加し、前記チオフェン重合
    体に前記カチオンもしくはアニオンを前記チオフェン重
    合体にドープする工程とを含む導電性高分子材料の製造
    方法。
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