JP2794701B2 - 水ヤケが防止された反射防止膜 - Google Patents

水ヤケが防止された反射防止膜

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、水ヤケが防止された反射防止膜に関する。 (従来の技術) カメラ、メガネ等のレンズには、通常、表面及び/又
は裏面に反射防止膜が設けられている。 最も簡単な反射防止膜は、下記条件式を満足する屈折
率nXを有する光学的膜厚がλ0/4(λは基準設計波
長)の単層膜である。 na<nX<ng ガラスレンズの屈折率は、通常1.52〜1.80であり、反
射防止膜の材料としては、できるだけ低屈折率のものが
反射防止性能が高いので、一般にはフッ化マグネシウム
(MgF2)が使用されている。 一般に、可視波長域で使用される光学ガラスの表面に
施される反射防止膜は、可視波長全域において残存反射
率が小さいことが望ましい。しかし、単層あるいは2層
構造のものでは、残存反射率が大きいうえに反射抑制波
長域が狭いので、これを改善するために3層以上の構造
からなる反射防止膜が種々提案されている。 その一つは、米国特許第3,604,784号に示されている
もので、これは空気側から基板ガラス側へ順に、第1層
は光学的膜厚がλ0/4のMgF2(n=1.38)、第2層は光
学的膜厚がλ0/2のチタン酸化物とAl2O3との混合物(n
≒2.00)、第3層は光学的膜厚がλ0/2のAl2O3あるいは
MgO(M=1.64〜1.72)によって構成されている。 以上の通り、ガラスレンズの反射防止膜は、最外層が
MgF2で構成されている。 なお、反射防止膜は、一般には例えば真空蒸着、スパ
ッタリングなどの真空堆積技術により形成されるが、強
靭なMgF2の薄膜を下地に密着性良く形成するには、下地
を300℃位の高温に加熱しなければならないことから、
プラスチックレンズの場合には、最外層をSiO0にするこ
とが多い。しかし、最近、低温でフッ化マグネシウム薄
膜を形成する反応性蒸着法が開発されたので、将来は、
プラスチックレンズでも最外層をMgF2とした反射防止膜
が使用されるかもしれない。 他方、反射防止膜は、汚れが付着し易く、そのため、
例えば水ヤケするという問題点があった。水ヤケとは表
面に水滴を垂して乾燥すると、シミのようなマークが残
る現象を言う。 そこで、最近、最外層の上に光学的に障害とならない
超薄膜の水ヤケ防止膜を設けることが提案された(例え
ば、特開昭61−130902号公報参照)。提案された水ヤケ
防止膜は、最外層がSiO2の反射防止膜上に設けるもの
で、有機ケイ素化合物の超薄膜(膜厚100Å以下)から
なる。この超薄膜はコーティング液のコート→乾燥(加
熱硬化)という塗布法で形成される。 (発明が解決しようとする問題点) しかしながら、このような水ヤケ防止膜を最外層がMg
F2の反射防止膜上に直接形成したところ、水ヤケ防止膜
の密着性が悪く、容易に剥離してしまうという問題点の
あることが判明した。 (問題点を解決するための手段) そこで鋭意研究した結果、反射防止膜の上に酸化ケイ
素SiOX(2≧X>1)の超薄膜を形成した後に水ヤケ防
止膜を形成すると、水ヤケ防止膜の密着性が向上し、容
易に剥離しないことを見出し、本発明を成すに至った。 従って、本発明の特徴は、水ヤケ防止膜と反射防止膜
との間に酸化ケイ素の超薄膜からなる接着層を設けたこ
とにある。 (作用) 反射防止膜は、従来技術の項で説明したように単層又
は多層構造を有し、最外層にはMgF2が使用される。 本発明の特徴である酸化ケイ素SiOX(2≧X>1)の
超薄膜は、反射防止膜に続いて真空堆積技術により形成
されるが、形成方法はこれに限ることなく、塗布法でも
よい。 SiOX超薄膜は、光学的な障害とならないように膜厚10
0Å以下、好ましくは10〜50Åにすべきである。 SiOX超薄膜の上に形成される水ヤケ防止膜それ自体は
知られており、一般には有機ケイ素化合物の超薄膜(膜
厚100Å以下)からなる。 有機ケイ素化合物は、側鎖にアルキル基、フェニル基
又はパーフルオロアルキル基を有する二次元および/ま
たは三次元構造のポリオルガノシロキサンであるのが好
ましい。前記ポリオルガノシロキサンにおいて、アルキ
ル基、フェニル基、パーフルオロアルキル基をRで示す
と二次元構造は下記式(I)、三次元構造は下記式(I
I)で表わされる繰り返し単位からなる。Rは同一でも
異なっていてもよい。 Rがパーフルオロアルキル基であるパーフルオロアル
キル基含有ポリオルガノシロキサンにおいて、パーフル
オロアルキル基は炭素数1〜20のものが特に好ましい。 ここで、パーフルオロアルキル基含有ポリオルガノシ
ロキサンの超薄膜を形成するには、まずパーフルオロア
ルキル基含有シラン化合物のコーテンィグ液で処理す
る。処理されたシラン化合物を加熱すると、脱水、縮合
反応が進行して、ポリシロキサン構造の超薄膜が形成さ
れる。使用されるパーフルオロアルキル基含有シラン化
合物としては、パーフルオロアルキル基をRfで表わす
と、 Rf(CH2nSiX3 Rf(CH2nSi(OR′) (ここでXはハロゲン、R′は低級アルキル基、nは2
〜4の整数)などが好ましく、これらは一部市販品とし
て入手可能である。 パーフルオロアルキル基含有シラン化合物の代表的な
ものを例示すると、 CF3(CF22C2H4Si(OCH3 CF3(CF24C2H4Si(OCH3 CF3(CF26C2H4Si(OCH3 CF3(CF216C2H4Si(OCH3 CF3(CF36C2H4SiCl3 CF3(CF36C3H6Si(OCH3 (CH3O)3SiC2H4(CF26C2H4Si(OCH3 Cl3SiC2H4(CF26C2H4SiCl3 などが挙げられる。 そのほか、パーフルオロアルキル基の代りに単なる置
換又は非置換アルキル基又はフェニル基を有するシラン
化合物も単独使用又は併用できる。このようなシラン化
合物をいくつか例示すると、メチルトリメトキシシラ
ン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシ
ラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシ
シラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(トリメトキ
シシリルプロピル)エチレンジアミン、アミノメチルト
リメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシ
ラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの
3官能性シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチル
ジメトキシシラン、ジメチルジブトキシシランなどの2
官能性シラン、四メトキシケイ素、四エトキシケイ素、
四プロポキシケイ素、四ブトキシケイ素などの4官能性
シランがあげられる。あるいは、これらのアルコキシシ
ランに代えて相当するクロロシランや相当するシラノー
ルを使用することもできる。例えば、末端シラノール有
機ポリシロキサン例えば、末端にシラノールを有するポ
リジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサ
ン、ポリメチルビニルシロキサン等も使用することがで
きる。 上記シラン化合物及びシラノール化合物は、予め加水
分解その他の手段で多少縮合を進めたオリゴマーの形で
使用することもできる。 シラン化合物及びシラノール化合物は溶媒、例えば、
水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、ハロゲン化
炭化水素系溶媒などの少なくとも1種によって例えば0.
01〜10%の固形分濃度の溶液となるようにすることによ
りコーティング液を調製する。 調製されたコーティング液は、SiOX超薄膜の上にスプ
レー、ディッピング、スピンコート等によりコートした
後、(乾燥)、加熱硬化させることにより水ヤケ防止膜
の超薄膜(100Å以下)が形成される。 場合によっては、SiOX超薄膜の表面原子のSiがOH基を
有しているので、この場合にはクロロシラン化合物をそ
のままOH基と反応させることにより水ヤケ防止膜の超薄
膜を形成させてもよい。 クロロシラン化合物をSiOX超薄膜に反応させるには、
ディッピング、スピンコート、スプレー等により表面に
クロロシラン化合物を塗布(反応)させる方法、また
は、真空雰囲気中あるいは大気中でクロロシラン化合物
ガスをSiOX超薄膜と反応させる方法など用いることがで
きる。前者の場合、塗布中の雰囲気、たとえば湿度、温
度を最適にコントロールすることにより、より反応が促
進されるし、浸漬時間も反応が十分終了する時間が望ま
しい。また、塗布後コート膜の特性に影響を与えない程
度の熱を加えることにより反応を促進すればより効果的
である。 反応に用いるクロロシラン化合物は単体で用いてもよ
いし、溶媒で希釈して用いることも可能であるが、この
場合、水酸基を有しない溶媒を用いることが、液寿命の
点で好ましい。例えば、溶媒として、トルエン、塩化エ
チレン、1,3,3,−トリフロロトリクロロエタン、トリク
ロロエチレン、テトラヒドロフラン等を用いることがで
きる。水ヤケ防止膜の形成後、一般には反射防止膜を洗
浄する。洗浄方法としては、水道水、純水などで洗浄し
た後、トルエン、塩化メチレン、1,3,3,−トリフロロト
リクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラヒドロフ
ラン等の溶媒で洗浄することより効果的である。 尚注意しなければならないことは、SiOX超薄膜と水ヤ
ケ防止膜との合計膜厚も、光学的な障害を引き起こさな
いように、100Å以下にしなければならない。膜厚が100
Åより厚く形成されると干渉色あるいは反射色などが発
生し、透視性を損なうなどの弊害が現われるので不適当
である。 以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、
本発明はこれに限られるものではない。 (実施例) (1).市販の眼鏡用ガラスレンズ(nd=1.52)を超音
波洗浄した後、その表裏両面に真空蒸着法(基板温度20
0〜300℃)により3層反射防止膜を形成した。 反射防止膜は、レンズ側からAl2O3(nX1.630:膜厚0.2
)、ZrO2(nX=2.040:膜厚0.50λ)、MgF2(nX
=1.385:膜厚0.22λ)の3層からなる。尚、nXは波長
λにおける屈折率であり、λは設計基準波長520nm
であり、膜厚は光学的膜厚nXdであり、dは機械的膜厚
である。また、ZrO2に代えてTiO2、SiO又はCeO2を使用
してもよい。 (2).反射防止膜に続いて、その上に膜厚:0.03λ
のSiOX(X=1.5〜2)の接着層を真空蒸着により形成
した。 (3).別に下記構造式: CnF2n+1(CH22Si(OCH3 (n≒平均値9) のパーフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化
合物(nが6、8、10、12のものの混合物であり、nの
平均値は9である)を用意し、これを100倍量のt−ブ
タノールに溶かして0.01重量%濃度のコーティング液を
調製した。 前項(2)で得られたレンズを上記コーティング液に
1分間浸漬し、静かに引上げた後、50℃に3時間保持す
ることにより、膜厚:0.02λの水ヤケ防止膜を形成さ
せた。 (4).次に前項で得られたレンズを、純水で洗浄した
後、トリクロロエチレンで洗浄し、風乾させた。 こうして得られた本実施例の反射防止膜を第1図(断
面図)に示す。 (実施例2) (1).実施例1と同様にガラスレンズ上に3層反射防
止膜及び接着層を形成した。 (2).別にチッソ(株)製の末端シラノールポリジメ
チルシロキサン(商品名:PS340)をメタノールに10重量
%溶かしてコーティング液を調製した。 (3).前項(1)で得られたレンズに上記コーティン
グをスピンコートした後、100℃に1時間加熱、乾燥、
硬化させることにより膜厚0.02λの水ヤケ防止膜を形
成させた。 (比較例1) 実施例1で接着層を設けることなく直接に水ヤケ防止
膜を設けた反射防止膜を作製した。 (比較例2) 実施例1と同様にして反射防止膜だけを作製し、これ
を比較例2とした。 (試験例) 実施例及び比較例の反射防止膜について、肉眼で反射
防止性能の有無及び水ヤケ防止性能を調べた。水ヤケ防
止性能は水道水をレンズ表面に数滴たらし乾燥させた
後、布で残留物を払き取り、水跡が残ればC完全に払き
取れればA、一部残ればBと評価した。 以下の結果を第1表に示す。 (考察) 第1表の結果で、比較例1の反射防止膜が水ヤケ防止
性能について「C」と評価されたのは、洗浄工程で水ヤ
ケ防止膜が剥離して無くなったためである。 (発明の効果) 以上の通り、本発明に従い、反射防止膜と水ヤケ防止
膜との間にSiOX超薄膜からなる接着層を設けること、水
ヤケ防止膜の密着性が向上し、しかも光学的性能は低下
しない。
【図面の簡単な説明】 第1図は、本発明の実施例1にかかる反射防止膜の垂直
断面を概念的に示す断面図である。 〔主要部分の符号の説明〕 1……ガラスレンズ(基板) 2……反射防止膜 3……接着層 4……水ヤケ防止膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−139701(JP,A) 特開 昭62−178902(JP,A) 特開 昭62−247302(JP,A) 特開 昭61−130902(JP,A)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.光学基材上に、最外層がフッ化マグネシウムからな
    る反射防止膜、前記最外層上に実質的に反射防止効果を
    有さない10nm以下の膜厚の酸化ケイ素の超薄膜からなる
    接着層を介して、有機ケイ素化合物からなる水ヤケ防止
    膜を設けたことを特徴とする光学物品。
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