JP2793086B2 - 水素化物ガス検出用テ−プ - Google Patents

水素化物ガス検出用テ−プ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水素化物ガスをセルロ
−ステ−プ上の呈色剤と反応させて生じる反応痕から光
学的に検出するのに最適なガス検出用テ−プに関する。
【0002】
【従来の技術】金属水素化物、例えばホスフイン(P
H3)、シラン(SiH4)、アルシン(AsH3)、ジボラン
(B2H6)などは無色、無臭の気体であるため、人の五感
による検出が極めて困難である。このためこれら毒性の
強いガスを取り扱う半導体工業などでは水素化物ガスに
感応するガス検出装置が設置されている。これら水素化
物ガスに対する電気化学的ガスセンサや半導体ガスセン
サの検出感度が極めて低いので、通常、反応により光学
的変化を生じる試薬との呈色反応させ、この時に生じた
反応痕の濃度を光学濃度測定装置により測定して検出す
ることが行われている。
【0003】このような呈色剤としては硝酸銀(AgN
O3)がよく知られている。硝酸銀を使用した水素化物検
出用テ−プは、通気性を備えたセルロ−ステ−プに硝酸
銀を担持させ、硝酸銀が水素化物ガスに晒されて還元さ
れた時に銀コロイドの反応痕を形成させるように構成さ
れている。この反応痕の光学的濃度を測定することによ
り水素化物の濃度を容易に知ることができる。しかしな
がら、硝酸銀は感光性が極めて高いため、硝酸銀を使用
した水素化物ガス検出テ−プは通常、遮光状態での保管
が必要となるが、それでも24時間程度で褐色に変色す
るという大きな問題を抱えている。このような問題を解
消するために、硝酸銀や吸湿剤を含浸させたセルロ−ス
テ−プに硝酸銀などの強酸を添加して、光による銀コロ
イドの生成を可及的に抑えて耐光性を向上させたものが
提案されている(特開昭58-99753号公報)。硝酸銀が添
加された水素化物検出用テ−プは、遮光容器に収容して
保管すれば変色を招くことなく半年位は保存が可能であ
る。
【0004】しかしながら、耐光性を向上させるために
添加されている硝酸は、強酸であるため、試薬担持体で
あるセルロ−スをニトロ化してしまうため、長期間の間
にテ−プの機械的強度が急激に低下する。このような問
題は、ガスサンプリング手段や光学的濃度検出手段を組
込んだ自動測定装置に使用した場合に大きな問題とな
る。つまり、自動測定のためには一定周期でガス検出用
テ−プの未使用部分を測定エリアに対向露出させる必要
上、通常検出テ−プは、保存リ−ルに収容され、使用時
に測定エリアを経由するようにして巻取りリ−ルに掛け
渡され他状態で測定装置にセットされており、1回のガ
スサンプリングが終了した段階で一定長だけ未使用部分
を測定エリアに繰出されていく。この繰出し時にかなり
大きな張力がテ−プに作用するため、機械的強度が低下
していると切断されて測定が中断するという問題があ
る。
【0005】このような問題を解消するために本出願人
は、先に試薬担持体の機械的強度を低下させることなく
耐光性を向上させるために、硝酸に替えてパラトルエン
スルホン酸を使用したものを提案した(特開平2-275352
号公報)。このテ−プは、長期間に渡って変色もまたセ
ルロ−スのニトロ化も生じないため、常に製造時と同一
の性能を維持して極めて使い勝手が高いという特徴があ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、呈色剤
として硝酸銀を使用している関係上、硝酸銀の感光性が
無視できず長期間保管されたものにあっては、若干の変
色が生じており、特に検出感度が低いガスの測定におい
ては測定誤差が無視できないという問題がある。本発明
はこのような問題に鑑みてなされたものであってその目
的とするところは、試薬担持体の機械的強度を落とすこ
となく、しかも感光性を殆ど有しない水素化ガス検出用
テ−プを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような問題を解消す
るために本発明においては、ガス吸着剤及び保湿剤を含
有する多孔性セルロ−ス紙片に、パラトルエンスルホン
酸銀を呈色剤として、またパラトルエンスルホン酸を耐
光性向上剤として含浸させた。
【0008】
【作用】テ−プ上に担持されているパラトルエンスルホ
ン酸銀は、硝酸銀に比較して極めて感光性が小さいのに
も関らず水素化物ガスと反応し、ガスの濃度に応じてた
量だけ還元されてコロイド銀を析出し反応痕を生じる。
反応痕の濃度が水素化物の濃度に比例するので、これの
光学的濃度を測定することにより水素化物ガスの濃度を
知ることができる。
【0009】
【実施例】そこで、以下に本発明の詳細を実施例に基づ
いて説明する。試薬を担持するセルロ−ステ−プは、植
物繊維を梳いて通気性を有するシ−ト体に整形し、これ
を漂白して可及的に白色としたものにケイ酸(H2Si
O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(A
l2O3)等のガス吸着剤を被覆した後、テ−プ状に裁断し
て構成されている。
【0010】セルロ−ステ−プに含浸されているガス吸
着剤は、気体や液体さらには溶解物質を担持するもの
で、水素化物ガスと呈色薬との反応に必要な水分を常時
保持するとともに、検出時には水素化物ガスを吸着して
テ−プ上のパラトルエンスルホン酸銀との反応を促進さ
せるのに役立っている。このように構成されたセルロ−
ステ−プに、1平方米当りパラトルエンスルホン酸銀を
0.3グラム以上、パラトルエンスルホン酸を0.3乃
至3.0グラム、グリセリンを25グラム程度含浸担持
させる。
【0011】セルロ−ステ−プにこれら試薬を担持させ
る手法としては、メタノ−ルなどの有機溶媒に、パラト
ルエンスルホン酸銀を濃度0.5〜2.0w/vパ−セ
ント、パラトルエンスルホン酸を0.5乃至4.5w/
vパ−セント、グリセリンを15vパ−セント溶解させ
てなる調製液に、上述したセルロ−ステ−プを浸漬し、
溶媒とともにセルロ−ス内に含浸させる。ついでテ−プ
を調製液から引上げ、有機溶媒を室温で蒸発させること
によりパラトルエンスルホン酸銀、パラトルエンスルホ
ン酸、及びグリセリンをテ−プに残留させることができ
る。このような操作を調製液に含まれている試薬の濃度
に応じて1回若しくは複数回繰り返すことにより、所定
濃度の試薬をテ−プ上に担持させることができる。
【0012】図2は、ガス検出テ−プを用いてガス濃度
を測定するための装置の一例を示すものであって、図中
符号1は、テ−プ2の搬送経路に対向させて配置された
ガス吸引部で、テ−プ2に対向する面には直径1センチ
メ−トル程度の通孔3が穿設されており、パイプ4を介
して図示しない吸引ポンプからの負圧が作用するように
構成されている。
【0013】5は、ガス吸引部1の通孔3に対向するテ
−プ2の他面側に配置された測定ヘッド部5で、吸引部
1の通孔と対向する位置に通孔が形成された遮光容器と
して構成されており、内部に発光素子7と受光素子8
を、テ−プ2上に形成された反応痕を検出できるような
関係でもって配置収容し、さらに一端に被検ガスの導入
口9を設けて構成されている。上述したガス検出用テ−
プをリ−ル10,11にテ−プをセットし、吸引部4に
図示しないポンプからの吸引圧を作用させると、導入口
9から測定ヘッド部5に被検ガスが吸込まれる。この被
検ガスは、通孔6から検出用テ−プ2を経由して通孔3
から外部に排出される。被検ガスが検出用テ−プ2を通
過する過程でテ−プ2上のパラトルエンスルホン酸銀が
水素化物、例えばホスフイン(PH3)と選択的に反応
し、ホスフインの濃度に比例した量のコロイド銀がテ−
プ表面に析出する。
【0014】このようにして所定のサンプリング時間、
例えば20秒程度が経過した時点で、吸引を停止して反
応痕の光学的濃度の測定工程に移る。発光素子7からの
光は、テ−プ表面に形成された反応痕の光学的濃度に応
じて吸収を受けるので、測定開始前の光学的濃度、つま
りテ−プのバックグランドとの光学的な濃度差を求める
ことによりテ−プを通過した水素化物ガスの濃度、もし
くは積算量を知ることができる。1サンプリング分の測
定が終了した時点で、巻取りリ−ル10を駆動してリ−
ル11に収容されているテ−プの未使用部分を測定領域
に移動させる。
【0015】図2は、上述の測定装置を用いて水素化物
ガスの代表例であるホスフィンを用いて、その濃度を変
えながら本発明の水素化物ガス検出用テ−プによる検出
出力を調べた検量線を示すものであって、検出器出力と
ガスの濃度が極めて高い直線性で対応していることが明
らかである。そして、ガスに対する感度は、硝酸銀を呈
色薬に用いている従来の水素化物ガス検出用テ−プに対
しても何等遜色がなかった。
【0016】また、上述のガス検出用テ−プを、20ワ
ットの蛍光燈の直下20cmの所に載置して自然光に近
い光(照度1500ルックス程度)を照射し、検出用テ−プ
の濃度変化を測定したとところ、図に示したような結果
を得た。すなわち、未露光時における水素化物検出用テ
−プの光学的濃度を基準値D0とし、所定時間における
同一テ−プの濃度Dtとの差分(Dt−D0)と、基準濃
度との比(Dt−D0)/D0を測定したものである。図
3からも明らかなように本願発明の水素化物ガス検出用
テ−プ(図中A)は、従来の硝酸銀を呈色薬に使用し、
耐光剤として硝酸を利用したテ−プ(図中B)や、さら
には機械的強度を向上させるために硝酸に代えてパラト
ルエンスルホン酸を使用したテ−プ(図中C)に比較し
て、露光時間に対する濃度変化率が特に初期段階(積算
露光時間10時間程度)では1/4乃至1/3と極めて
小さいことが判る。通常の保管状態では上述の試験にお
ける10時間程度の露光を受けることが殆どないことを
考え合わせると、本願発明の水素化物ガス検出用テ−プ
は、正常に保管されていれば実用上殆ど光学的な濃度変
化を引き起こすことがない。事実、そのまま室内に放置
した状態でも目立った変色は生じなかった。このように
本願発明による水素化物ガス検出テ−プの高い耐光性
は、特に濃度が低いサンプルガスや、呈色薬との反応性
が低いシランガスを高い精度で測定できることを意味し
ている。
【0017】次に本発明の水素化物ガス検出用テ−プの
強度を調べるためにインストロン社製紙葉試験装置を用
いて引っ張り強さを測定したところ平方ミリメ−トル当
たり、0.55kgであるのに対して、耐光性向上剤と
して硝酸を使用した従来の水素化物ガス検出用テ−プは
本発明の約70パ−セント程度の0.4Kg/平方ミリ
メ−トルとであった。このことから本発明のものは自動
測定装置に装着しても高い信頼性で自動測定が可能であ
ることが判明した。
【0018】[実施例]パラトルエンスルホン酸銀を
0.5w/vパ−セント以上(もとより、パラトルエン
スルホン酸銀はその溶解度が極めて小さいため、室温で
せいぜい4w/vパ−セント程度で飽和する)、パラト
ルエンスルホン酸0.5乃至4.5w/vパ−セント、
更にグリセリン15v/vパ−セントをそれぞれメタノ
−ルに溶解した調製液に、ガス吸着剤が被覆されている
セルロ−ステ−プを浸漬させ、引上げてからテ−プに含
まれているメタノ−ルを室温で蒸発させる。このような
手法により1平方メ−トル当たりパラトルエンスルホン
酸銀0.3乃至1.4グラム、パラトルエンスルホン酸
0.3乃至3グラム、グリセリン25グラムを保持した
テ−プを得ることができる。
【0019】また、パラトルエンスルホン酸銀の濃度が
検出感度に及す影響を調べたところ、図4に示したよう
に平方米当り0.3グラム以上であれば実用的な検出感
度を得ることができ。また、パラトルエンスルホン酸銀
は溶解度が極めて小さいから、1度の調製液の塗布によ
り担持させることができる最大量は、1.4グラム/平
方米程度で、これ以上濃度を高くしても呈色剤の消費量
が多くなるため経済的理由から得策ではない。
【0020】なお、上述の実施例においては水素化物ガ
ス内、ホスフィンに例を採って説明したが、水素化物ガ
スとして呈色薬に対して共通な化学的性質を示すアルシ
ン、ジボラン、シラン、ジシラン(Si26)、セレン
化水素(SeH2)、ゲルマン(GeH4)、硫化水素(H
2S)などの他のものの検出にも同様に感度を示すこと
を確認した。
【0021】
【発明の効果】以上説明したように本発明においては、
ガス吸着剤及び保湿剤を含有する多孔性テ−プ状担体
に、呈色剤としてパラトルエンスルホン酸銀を、また耐
光性向上剤としてパラスルホン酸を含浸させたので、パ
ラトルエンスルホン酸銀自信の耐光性の低さとパラトル
エンスルホン酸による耐光性の向上とあいまって、極め
て高い耐光性を示すばかりでなく、強酸によるテ−プの
引っ張り強度の低下を招くことのない水素化物ガス検出
用テ−プを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水素化物ガス検出用テ−プを用いるガ
ス検出器の原理を示す図である。
【図2】本発明の水素化物ガス検出用テ−プのホスフィ
ンに対する検量線を示す図である。
【図3】本発明の水素化物ガス検出用テ−プと従来の水
素化物検出用テ−プの露光時間と濃度変化率との関係を
示す線図である。
【図4】パラトルエンスルホン酸銀の濃度と水素化物ガ
ス検出感度との関係を示す線図である。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 31/00 G01N 31/22 121

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガス吸着剤及び保湿剤を含有させた通気
    性セルロ−ス紙片に、パラトルエンスルホン酸銀を呈色
    剤として、またパラトルエンスルホン酸を耐光性向上剤
    として含浸させてなる水素化物ガス検出用テ−プ。
  2. 【請求項2】 前記パラトルエンスルホン酸銀を通気性
    セルロ−ス紙片1平方メ−トル当たり少なくとも0.3
    グラム備えた請求項1の水素化物ガス検出用テ−プ。
  3. 【請求項3】 前記パラトルエンスルホン酸を通気性セ
    ルロ−ス紙片1平方メ−トル当たり0.3乃至3.0グ
    ラム備えた請求項1または請求項2の水素化物ガス検出
    用テ−プ。
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