JP2792834B2 - 薄鋳帯からの強度500MPa 以下の炭素鋼薄鋼帯の製造方法 - Google Patents

薄鋳帯からの強度500MPa 以下の炭素鋼薄鋼帯の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は双ロール法などで製造さ
れる板厚1〜10mm程度の薄鋳帯から直接、熱延鋼板相
当の薄鋼帯を得る製造方法に関し、詳しくは強度500
MPa 以下の炭素鋼薄鋼帯の製造方法に関するものであ
る。以降、上記プロセスをSTC(Strip Cas
ting)プロセス、またこれにより得られる薄鋼帯を
STC鋼板と称する。また板厚100mm以上のスラブか
ら連続熱延をへて板厚数mmの熱延鋼帯を製造するプロセ
スを現行プロセス、またこの薄鋼帯を現行鋼板と称す
る。
【0002】
【従来の技術】近年開発されつつあるSTCプロセスは
現行鋼板と同等の板厚を有する薄鋼帯を直接鋳造により
得ることができ、従来の熱延行程を省略する低コストプ
ロセスとして注目を集めている。このSTCプロセスは
設備上も現行プロセスに比して機長を短くできることが
特徴であり、連続鋳造された薄鋳帯は一般に鋳造後水冷
帯にて冷却され巻取られる。但しこのSTCプロセスは
機構上、鋳造速度と巻取速度がほぼ同期するため、一般
に現行プロセスと同単重のコイルを得るまでにはかなり
の長時間を必要とする。このためマンドレルの熱変形な
どのコイラー設備の耐久性の点から巻取温度を600℃
以下にすることが工業上望ましい。
【0003】ところで炭素鋼がこの鋳造から巻取までの
温度低下により種々の相変態が生じることは周知であ
り、とりわけ水冷から巻取間では、オーステナイト状態
からフェライトやベイナイトが変態し、鋼板の強度が決
定する。そして、従来のプロセスでは、この温度域での
設備上の特定温度、すなわち仕上圧延終了温度や巻取温
度そして水冷帯における冷却速度などによって、強度を
始めとする機械的性質がどのように変化するかが長年に
渡り検討されてきた。
【0004】しかし、STCプロセスにおける上記変態
挙動は現在まで十分な検討が行なわれておらず、例えば
特開平2−236228号公報や特開平2−23622
4号公報に開示されているような高強度鋼板の製造方法
に関して数件の報告があるのみである。また、特公平3
−38941号公報や特公平4−60741号公報など
では、鋳造後冷却のみならず再加熱行程を付加して複雑
な変態挙動を経る鋼板の製造方法が開示されているが、
冷却のみによってどのような機械的特性が得られるかに
ついては十分な検討がなされているとは言いがたい。す
なわち、STCプロセスにおいて、水冷帯以降の熱履歴
による鋼板強度の変化は不明な点が多かった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、コンパクト
な機長とコイラー設備の耐久性を考慮して、連続鋳造後
水冷帯にて鋼帯を冷却し巻取温度を600℃以下とする
STCプロセスにおいて、強度が500MPa 以下の炭素
鋼薄鋼帯を製造することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは、炭素鋼を薄鋳帯として連続鋳造し水冷後巻取る薄
鋼帯の製造において、合金元素量を下記(1)式で示す
Ceq.で0.3以下の炭素鋼を鋳造厚み1〜10mmで
薄鋳帯とし、鋳造後水冷帯における水冷停止温度を70
0℃以上、水冷停止温度から巻き取り温度の間の空走帯
もしくは保熱帯での鋼板の冷却速度を10℃/s以下と
して600℃以下で巻取る強度500MPa 以下の炭素鋼
薄鋼帯の製造方法。また水冷開始温度を900℃以上と
し、さらに水冷時の鋼板の冷却速度を20℃/s以上と
すること、加えて水冷前に圧下率50%以下の熱間圧延
を一パス行う強度500MPa 以下の炭素鋼薄鋼帯の製造
方法にある。 Ceq.=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5 (1) ここで 各元素は重量%
【0007】
【作用】以下に図1に示す鋳造後の薄鋳帯の温度履歴を
参照して本発明を説明する。本発明では、連続鋳造され
た薄鋼帯を、必要に応じて水冷前に圧下率50%以下の
熱間圧延を一パス行った後、水冷帯にて水冷開始温度T
(in)から停止温度T(out)まで冷却速度CR1
にて冷却し、その後冷却速度CR2にてさらに冷却を続
けて600℃以下の巻取温度CTにて巻き取る。
【0008】本発明者等はこの水冷帯から巻取に至るま
での熱履歴について研究を重ねた結果、本STCプロセ
スでこの巻取温度近傍まで水冷帯にて冷却すると、鋼中
の化学成分に関わらず強度500MPa 以上の高強度鋼板
となることを実験的につきとめた。そしてこの原因が、
STC鋼板の組織が基本的には、鋳造ままの粗大なオー
ステナイト組織から変態して形成されるということ、す
なわち主としてオーステナイト粒界を、変態生成サイト
とする軟質なフェライト組織が生成しにくいことあるこ
とを明らかにした。
【0009】つまりSTCプロセスは、現行プロセスと
は異なり、水冷帯内ではオーステナイトが過冷されるの
みで、実質的な変態開始が水冷停止以降でおこるため
に、より低温で生成するベイナイト組織などが主体とな
り高強度化する。本発明者等は以上のようなSTCプロ
セス特有の変態挙動から、巻取温度CTが600℃以下
でも高強度化しないためには、図1のような二段の冷却
速度を有する熱履歴が必須であること、その際T(ou
t)を700℃以上とし、その後空走帯もしくは保熱帯
を設ければ、鋼板の強度を500MPa 以下にすることが
可能であることを見いだした。またこの際、CR2を1
0℃/s以下とすることが重要であるとの事実から本発
明に至ったものである。そこで以下にこの条件を把握す
るに至った実験を述べる。
【0010】実験では双ロール式の連続鋳造機を用い、
表1に示すC,Si,Mn量を変化させて下記(1)式
で示すCeq.として大きく3シリーズの異なる炭素鋼
を溶製後、板厚2.5mmにて連続鋳造し、鋳造後115
0℃にて20%の熱間圧延を一パス施した後、水冷帯に
てT(out)まで水冷し、その後空冷状態にてさらに
冷却を続け、CTが600℃となるように巻き取った。
【0011】
【表1】
【0012】 Ceq.=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5 (1) ここで 各元素は重量% なお、本実験では水冷帯での水冷開始温度T(in)は
約1000℃、冷却速度CR1は約50℃/s、冷却速
度CR2は約10℃/sであった。巻取後の鋼帯はその
後、1.5%の調質圧延を施し、黒皮ままでJIS5号
引張試験に供した。図2にT(out)の温度を600
〜850℃まで種々変化させた場合の強度の変化を示
す。どのCeq.レベルでもT(out)が低下するに
従って強度が上昇する傾向にあるが、700℃以上の範
囲であれば強度500MPa 以下の条件を満たすことが知
られる。なおT(out)をCTと同じ600℃近傍ま
でとした場合にはCeq.レベルに依らず強度600MP
a 以上となっている。
【0013】次にT(out)を700℃に固定し、鋳
造の板厚を1.2〜10mmに種々変化させてCR2の冷
却速度を3〜18℃/sに変化させた場合の強度の変化
を図3に示す。なおその他の条件は図2と同様である。
図3からCR2が10℃/s以下の場合、強度500MP
a 以下を達成することができる。一方、CR2が大きく
なると、どのCeq.レベルでも高強度化している。即
ち以上の結果から、T(out)を700℃以上としな
おかつCR2を10℃/sとすれば、表1に示したCe
q.が0.3以下の炭素鋼で強度を500MPa 以下とす
ることが可能となる。
【0014】次に、本発明における化学成分と上記以外
の製造条件の限定理由について述べる。本発明での炭素
鋼成分は下記(1)式で示すCeq.で0.3以下とす
る。これは0.3を越えると、如何なる熱履歴を取ろう
とも、巻取温度が600℃以下の条件では強度500MP
a 以下を達成することが不可能なためである。 Ceq.=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5 (1) ここで 各元素は重量% なお合金元素の個々の添加量について特に制限は設けな
いが、本発明では、C:0.01〜0.20%、Si:
1.0%以下、Mn:0.1〜2.0%、Ni及びC
r:1.0%以下、の範囲の炭素鋼を対象としている。
又、鋼中には不可避不純物としてP,S,Al,N等が
混入することがあるが、それぞれ、P,S:0.05%
以下、Al:0.10%以下、N:0.02%以下、の
範囲であれば特に問題となるものではない。更にスクラ
ップを原料とする場合にはこの他にCu,Snなどが混
入することがあるが、各々0.5%以下であれば特に本
発明を妨げるものではない。
【0015】次に製造条件について述べる。まず鋳造厚
みであるが、本発明では鋳造厚みを1〜10mmの範囲と
する。これは、10mm超では鋳造速度が著しく低下し、
生産性を確保することができないためである。また1mm
未満では鋳造そのものが困難となり、安定した鋳片が得
られ難く、その結果安定した機械特性が得られないため
である。
【0016】次に本発明の最も重要な点は、鋳造後巻取
までの熱履歴において図1に示す水冷帯と続く空走帯で
の温度や冷却速度の制御をすることにある。ここで水冷
停止温度T(out)や空走帯の冷却速度CR2の限定
理由は前述した通りであるが、板厚が薄く空走帯での冷
却速度CR2が10℃/s以上となるような場合には保
熱カバーを配した保熱帯などを設けても良い。又、水冷
帯と空走帯もしくは保熱帯の領域を熱的に分割する手段
は、実際には水切りスプレーなどで板上水を分断した
り、ラインに段差をつけるなどの設備的な手段によって
達成可能である。
【0017】なお本発明における水冷開始温度T(i
n)は900℃以上とする。これは900℃未満ではオ
ーステナイト組織が一部フェライト変態する恐れがあ
り、T(in)の変動が材質を変化させる可能性がある
ためである。さらに水冷帯での冷却速度CR1は20℃
/s以上とする。これは20℃/s未満では、前述同様
水冷帯内で一部フェライト変態する恐れがあり、CR1
の変動がやはり材質を変化させる可能性があるためであ
る。なおT(in)が低い場合やCR1が小さい場合
は、結果的に機長が長くなることから設備的にも望まし
いものではない。
【0018】一方、本発明では水冷前に圧下率50%以
下の熱間圧延を一パス行っても良い。この圧下は通常、
鋳片形状を整えたり、鋳造に起因した欠陥を消失させた
り、オーステナイト組織を再結晶により細粒化させるな
どの目的で行われる。しかし現行プロセスにおける総圧
下率(通常95%以上)に比して、50%以下の圧下率
で得られるオーステナイト粒径は、たとえ再結晶した場
合でも、現行鋼板のそれよりも十分大きいため、続く水
冷帯から巻取までの間の変態挙動は、圧延なしの場合の
鋳造ままからの変態挙動と大差なく、このため圧下の有
無は本発明に大きな影響を与えない。なおここで圧下率
を50%以下としたのはこれ以上の圧下を一パスで与え
た場合、鋳片の蛇行や横滑り、または中伸びや耳波とい
った問題が生じて、鋼帯の通板性が著しく不安低となる
ためである。
【0019】なおこれ以外の製造条件については特別な
制約を設けないが、凝固後圧延まで、及び空走帯もしく
は保熱帯では鋼板表面に酸化スケールが厚く生成しない
よう雰囲気制御をすることが好ましい。他方、酸洗や調
質圧延などの次行程は現行鋼板のそれに準じて行えばよ
い。以下、本発明について実施例によって、さらに詳述
する。
【0020】
【実施例】銅合金製の双ロール鋳造機を用いて、表2に
示す成分の鋼を、表3に示す鋳造厚み・熱間圧延条件・
熱履歴にて薄鋼帯とした。その後、鋼帯を酸洗し1.0
%の調質圧延を行った後、JIS5号引張試験片を作成
し、引張試験に供した。引張試験結果を表4に示す。
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【0024】これによると本発明条件であるNo. 1〜1
1はいずれも強度500MPa 以下であるのに対し、Ce
q.が0.3以上のNo. 12〜14、また熱履歴の内、
水冷停止温度T(out)が700℃以下のNo. 15,
16、さらに空走帯もしくは保熱帯の冷却速度CR2が
10℃/s以上のNo. 17,18、では強度が500MP
a 以上であり、本発明の要件を満たさなかった。
【0025】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、コン
パクトな機長を達成するため水冷帯が付帯し、さらにコ
イラーの耐久性から巻取温度を600℃以下としたST
Cプロセスにて、強度500MPa 以下の炭素鋼薄鋼帯を
得ることが可能となる。また本発明は基本的には現行の
熱延鋼帯と同等の薄鋼帯を製造する方法に関するもので
あるが、現行の冷延鋼板及びトタンやブリキといった種
々のメッキ鋼板の素材としても適用可能なものであり、
工業的な効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によって規定される鋳片の鋳造からの熱
履歴を示す説明図である。
【図2】水冷停止温度T(out)と強度の関係を示す
グラフである。
【図3】空走帯での冷却速度CR2と強度の関係を示す
グラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C21D 9/46 C21D 9/46 S 9/52 102 9/52 102 C22C 38/00 301 C22C 38/00 301W (56)参考文献 特開 昭63−216924(JP,A) 特開 昭61−195761(JP,A) 特開 昭51−87431(JP,A) 特開 平3−294419(JP,A) 国際公開94/25635(WO,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B22D 11/00 C21D 9/46 C21D 9/52 102

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素鋼を薄鋳帯として連続鋳造し水冷後
    巻取る薄鋼帯の製造において、合金元素量を下記(1)
    式で示すCeq.で0.3以下の炭素鋼を鋳造厚み1〜
    10mmで薄鋳帯とし、鋳造後水冷帯における水冷停止温
    度を700℃以上、水冷停止温度から巻き取り温度の間
    の空走帯もしくは保熱帯での鋼板の冷却温度を10℃/
    s以下として600℃以下で巻取ることを特徴とする薄
    鋳帯からの強度500MPa 以下の炭素鋼薄鋼帯の製造方
    法。 Ceq.=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5 (1) ここで 各元素は重量%
  2. 【請求項2】 水冷帯における水冷開始温度を900℃
    以上とすることを特徴とする請求項1記載の薄鋳帯から
    の強度500MPa 以下の炭素鋼薄鋼帯の製造方法。
  3. 【請求項3】 水冷時の鋼板の冷却速度を20℃/s以
    上とすることを特徴とする請求項1または2記載の薄鋳
    帯からの強度500MPa 以下の炭素鋼薄鋼帯の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 水冷前に圧下率50%以下の熱間圧延を
    一パス行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1
    項に記載の薄鋳帯からの強度500MPa 以下の炭素鋼薄
    鋼帯の製造方法。
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