JP2790181B2 - レンズシートおよびその製造方法 - Google Patents

レンズシートおよびその製造方法

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JP2790181B2 JP63160218A JP16021888A JP2790181B2 JP 2790181 B2 JP2790181 B2 JP 2790181B2 JP 63160218 A JP63160218 A JP 63160218A JP 16021888 A JP16021888 A JP 16021888A JP 2790181 B2 JP2790181 B2 JP 2790181B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、透過形スクリーンに使用されるフレネルレ
ンズシート,プリズムレンズシート,レンチキュラーレ
ンズシート等のようなレンズシートおよびその製造方法
に関し、特に、レンズ部を1層または2層の電離放射線
硬化樹脂で成形したレンズシートおよびその製造方法に
関する。
〔従来の技術〕
従来、この種のレンズシートは、プレス法,キャスト
法等の方法により成形されていた。前者のプレス法は、
加熱,加圧,冷却サイクルで製造するため、生産性が悪
かった。また、後者のキャスト法は、金型にモノマーを
流し込んで重合するため、製作時間がかかるとともに、
金型が多数個必要なため、製造コストが上がるという問
題があった。
このような問題を解決するために、成形型とベース板
との間に紫外線硬化樹脂または電子線硬化樹脂等の電離
放射線硬化樹脂を流し込んで、紫外線または電子線等の
電離放射線を照射することにより、その樹脂を硬化させ
て重合する電離放射線硬化樹脂法(ホトポリマ法)が種
々提案されている。
例えば、特開昭62−33613号「ビデオプロジェクタ用
スクリーンの製造方法」においては、「レンズ金型内に
紫外線硬化性樹脂を常圧で注入して紫外線透過性板で覆
い、この紫外線透過性板と金型の間に充填された紫外線
硬化性樹脂に前記紫外線透過性板を透過して紫外線を照
射して硬化させ、硬化した紫外線硬化性樹脂を離型す
る」ことを要旨とする提案がなされている。
〔発明が解決しようとする課題〕
前記提案による方法では、以下のような解決しなけれ
ばならない課題があった。
第1に、金型内に注入された紫外線硬化性樹脂に紫外
線透過性基板を積層する手段として、「真空ピンセット
を用い、その紫外線透過性基板を紫外線硬化性樹脂の注
入された金型の一辺に接しておき、対する他の辺を徐々
に紫外線硬化性樹脂に覆せることにより、気泡を巻き込
まないように覆う」ことを提案しているが、真空ピンセ
ットを用いてそのような動作をさせるには、制御装置,
駆動装置が複雑となり、コストアップにつながるうえ、
完全に気泡を含まないように覆ぶせることは不可能であ
った。
第2に、注入時に樹脂中に泡が混入したときには、
「ピペット等を用いて除去する」ように提案している
が、その気泡の存在を検出して人手により除去するので
は、生産性が悪くかつ不確実である。
第3に、注入前に樹脂を予め脱泡して置かなければな
らず、そのための装置や時間を必要とし、生産性が悪く
コストアップにつながる。
このような気泡がレンズ部に残ると、部分欠陥が生
じ、レンズ品質が低下してしまう。
本発明の目的は、電離放射線硬化樹脂を用いて、真空
雰囲気中で成形しなくとも、レンズ部に気泡を含むこと
がないレンズシートおよびその製造方法を提供すること
である。
〔課題を解決するための手段〕
本件発明者は、種々検討した結果、電離放射線硬化樹
脂を成形型に塗布するときに、ベース板を挟んでローラ
で均しながら積層して脱泡することにより、前記目的を
達成し得ることを見出して本発明をするに至った。
第1図は、本発明による第1の構成のレンズシートを
示した図、第2図は、前記第1の構成のレンズシートの
製造方法を説明するための流れ図である。
すなわち、本発明による第1の構成のレンズシート
は、電離放射線透過性のベース板1と、前記ベース板の
一方の面に電離放射線硬化樹脂でレンズパターンを形成
したレンズ部2とから構成されている。
ベース板1は、レンズシートの一部をなすのでレンズ
部2を支持するための機械的な強度を持つとともに、透
明性等の光学的特性にすぐれていなければならない。ま
た、成形時の問題として、電離放射線硬化樹脂により成
形されるレンズ部2との接着性、電離放射線の透過性等
がよくなければならない。さらに、このような諸性能が
要求されるベース板1では、輸送や保存の際に、傷が付
く可能性があるので、スタッキッグ性能を向上させる必
要がある。
ベース板1は、可視光学的に透明であり、電離放射線
を透過し、レンズ部2を支持できる機械的強度をもつも
のであればよく、例えば、アクリル板,ポリエステル
板,ポリカーボネート板,塩化ビニル板等を使用するこ
とができる。
ベース板1には、その一方の面に電離放射線硬化樹脂
の接着性を向上させるためのプライマ層を形成すること
ができる。このプライマ層は、ベース板1および電離放
射線硬化樹脂との双方に接着性を有し、可視光学的に透
明であり、電離放射線を通過させるものであればよく、
例えば、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体系,ウレタン
系のものを使用することができる。
さらに、ベース板1のプライマ層側には、接合される
面がそのプライマ層に対して剥離性があり、他方の面が
ベース板1よりも硬度が低い材質の保護シートをラミネ
ートしておき、使用時にその保護シートを剥離して用い
ることができる。この保護シートは、プライマ層に対し
て離型性を有し、被ラミネート面がベース板1に比べ硬
度が低いものがよく、例えば、ナイロンシート,PETシー
ト等を使用できる。この保護シートを設けておくことに
より、ベース板1へのゴミの付着や傷つきの防止が図れ
るとともに、スタッキング性を向上させることができ、
ひいては、レンズシートの成形不良を抑えることができ
る。
レンズ部2としては、フレネルレンズ,プリズムレン
ズ,レンチキュラーレンズ等のレンズ形状にすることが
できる。
このレンズ部2を構成する電離放射線硬化樹脂として
は、基本的には、透明性がよく、高い光線透過率をも
ち、表面硬度,耐摩耗性,耐光性,耐埃性,耐熱性,形
状安定性等が要求される。また、成形型に流し込むため
には、良流動性,低発泡性,抑泡性,高い濡れ性等も備
えていなければならない。さらに、安全性,低毒性とい
う点も兼備する必要がある。特に、フレネルレンズシー
トを製造する場合には、レンズ形状に鋭角的な部分があ
るので、耐摩耗性を満たすために、硬さだけでなく、柔
軟性も必要である。
このレンズ部を構成する電離放射線硬化樹脂として
は、紫外線硬化樹脂または電子線硬化樹脂等を用いるこ
とができ、例えば、ウレタンアクリレート,エポキシア
クリレート,ポリエステルアクリレート,ポリエーテル
アクリレート,メラミンアクリレート等のアクリロイル
基またはメタクリロイル基をもつ重合性オリゴマー,モ
ノマーと、アクリル酸,アクリルアミド,アクリロニト
リル,スチレン等重合性ビニル基をもつ重合性オリゴマ
ー,モノマー等の単体あるいは配合したものに、必要に
応じて増感剤等の添加剤を加えたものを用いることがで
きる。
さらに具体的には、電離放射線硬化樹脂としては、20
〜70重量%のオリゴマーと、80〜30重量%のモノマー
と、0.1〜5.0重量%の光反応開始剤とからなる樹脂組成
物を使用することができる。
前記オリゴマーは、前記諸特性がすぐれており、反応
性に富むことが要求され、ウレタン系オリゴマーの場合
には、ゴーセラックUV7000B,ゴーセラックUV4200T,ゴー
セラックUV3000B,ゴーセラックUV2000B(日本合成
製)、ダイヤビームUK6034,ダイヤビームUK6039(三菱
レイヨン製)、アートレジンUN1100T(根本工業製)、
カヤラッドUX10506(日本化薬製)等を使用でき、ポリ
エステル系オリゴマーの場合には、カヤラッドDPCA30,
カヤラッドDPCA60,カヤラッドR−604(日本化薬製)、
アロニックスM7100,アロニックスM8030(東亜合成製)
等を使用でき、エポキシ系オリゴマーの場合には、リボ
キシSP1554,リボキシSP5003(昭和高分子製)、UV531,U
V521(諸星インキ製)等を使用することができる。
前記モノマーは、前記オリゴマーとの相溶性があり、
かつ、そのオリゴマーの有する特徴をそこなわず、反応
性にとみ、樹脂組成物の流動性等を高めることが要求さ
れ、具体的には、アロニックスM150,アロニックスM570
0,アロニックスM111(東亜合成製)、カヤラッドHX220,
カヤラッドHX620,カヤラッドTMPTA,カヤラッドTC110S,
カヤラッドHDDA,カヤラッドMANDA(日本化薬製)、フォ
トマー4061SN,フォトマー4127SN(サンノプコ製)、NK
エステルAMP−60G,NKエステルA−BPE−4,NKエステル1
G,2G,3G,4G(新中村化学工業製)等を使用することがで
きる。
前記光反応開始剤は、前記オリゴマー,前記モノマー
および前記オリゴマーと前記モノマーとの反応を開始さ
せたり、早めたりするためのものであり、具体的には、
ダロキュア1173,ダロキュア1116,ダロキュア953(メル
ク製)、バイキュア55(Stauffer製)、イルガキュア18
4,イルガキュア500,イルガキュア651(チバガイギー
製)等を使用することができる。
また、前記電離放射線硬化樹脂組成物に、微量の界面
活性剤および/または離型剤を添加することができる。
前記界面活性剤を添加する理由は、樹脂組成物の流動
性をさらに高めたり、低発泡性,抑泡性,高い濡れ性を
与え、生産性をより一層向上させるためであり、具体的
には、フローラードFC−430,フローラードFC−431(米
国3M製)、モダフロー(モンサント製)、ディスパロン
♯1970,ディスパロンL−1980,L−1982,L−1983,L−198
4,L−1985,♯1920,♯1925(楠本化成製)、F3,F40,F43
(ヘンケル製)等を使用することができる。
前記離型剤を添加する理由は、成形型からの脱型を容
易にし、脱型時の残留ストレスを少なくするためであ
り、このため、成形型との密着性を悪くする必要がある
からである。離型剤としては、ステアリン酸等の高級脂
肪酸およびそれらの金属塩,シリコンオイル等の離型剤
を使用することができ、具体的には、ガファックRE410,
ガファックRL210,ガファックRD510(東邦化学製)、プ
ライサーフ217E,プライサーフA−208S(第一工業製薬
製)、レシチン(味の素製)、モールドヴィッツF−5
7,モールドヴィッツINT−11A,モールドヴィッツINT−EQ
−6,モールドヴィッツINT−21G(Axel製)、ゼレックU
N,ゼレックNE,ゼレックNK(デュポン製)等を使用する
ことができる。混合の割合は、0.1重量%〜0.3重量%の
範囲で好適に実施できる。
さらに、前記電離放射線硬化樹脂組成物に微量の帯電
防止剤を添加することができる。
帯電防止剤を添加する理由は、成形されたレンズシー
トが帯電による静電気で、周囲のゴミを付着するのを防
止するためであり、従来は成形後に帯電防止剤を塗布し
ており、生産性が悪かったので、予め成形時に添加する
ようにしたものである。帯電防止剤としては、アニオン
性帯電防止剤やカチオン性帯電防止剤,両性帯電防止
剤,非イオン性帯電防止剤等を使用でき、具体的には、
エレガンR−115,エレガンS−100,ニューエレガンA,ニ
ューエレガンASK(日本油脂製)、アーモスタット511,
アーモスタット513(ライオンアクゾ製)、サイアスタ
ットLS,サイアスタットSN,サイアスタットSP,サイアス
タット609(日本サイアナミド製)、ケミスタット1005,
ケミスタット2009−A,スタケサイド(三洋化成製)等を
使用できる。混合の割合は、1重量%〜3重量%の範囲
で好適に実施することができる。なお、前述の界面活性
剤で、帯電防止作用を有しているものを使用することが
できる。
なお、この電離放射線硬化樹脂組成物には、拡散剤を
含ませることができる。拡散剤は、コーティング適性を
向上させたり、重合収縮を軽減させることができ、さら
に、拡散性を付与することができる。拡散剤としては、
ガラス,シリカ,アルミナ,不溶性プラスチック,タル
ク等を用いることができる。
次に、この電離放射線硬化樹脂組成物のより好ましい
組成として、オリゴマーとしてIPDI(イソホロンジイソ
シアネート)ベースのウレタン系アクリレート樹脂を用
い、モノマーとして、前記ウレタン系アクリレート樹脂
と相溶性がありそのウレタン系アクリレート樹脂を溶解
希釈しうる2つ以上の反応基をもつものを用いた場合に
ついて説明する。
前述したようなプラスチック製のレンズシートに要求
される諸性能を満足するためには、より基本的な性能と
して、無色透明であり、耐摩耗性を有する強靭な硬化物
の与えられる電離放射線硬化樹脂でなければならない。
これらの物性を有するものとして、ウレタン系アクリレ
ート樹脂が、その表面強度,靭性の点から、より好まし
く用いることができる。特に、フレネルレンズシート用
の樹脂としては、硬さだけでなく、柔軟性が重要な要素
として要求されるが、ウレタン系アクリレート樹脂は、
この特性を十分に満足する。ウレタン系アクリレート樹
脂には、TDIベースのものとIPDIベースのものがあり、
無色透明という点から、IPDIベースのものが適してい
る。
このIPDIベースのウレタン系アクリレート樹脂(オリ
ゴマー)は、常温でゼリー状,プリン状,あるいは高粘
度であり、流動性が悪く、製造時に成形型に容易に流し
込むことができず、単独で使用することは好ましくな
い。
このため、前記ウレタン系アクリレート樹脂の特性を
低下させることなく、流動性を高める必要がある。希釈
剤としては、溶剤,モノマー等が考えられるが、溶剤を
使用すると、流動性はよくなるが、前記ウレタン系アク
リレート樹脂のもつ特徴を滅殺してしまう。そこで、モ
ノマーを希釈剤として使用することが望ましい。
本発明においてモノマーは、反応基が1つのもの、2
つのもの、あるいは、それ以上のものを使用できるが、
反応基が1つしかないものを使用すると、希釈性がよ
く、流動性を向上させることができるが、硬化物の耐摩
耗性が低下し、好ましい物性のプラスチック性レンズシ
ートを得ることが難しい。他方、反応基が2つもしくは
それ以上のモノマーを使用すると、ウレタン系アクリレ
ート樹脂の特性を損なうことなく、樹脂組成物の流動性
を高め、製造時に容易に成形型に流し込むことが可能と
なる。
以上説明したように、IPDIベースのウレタン系アクリ
レート樹脂と、そのウレタン系アクリレート樹脂を溶解
希釈しうる2つ以上の反応基をもつモノマー、その他
に、反応開始剤,フッ素系の界面活性剤を添加した組成
物が、プラスチック製レンズシート成形用の樹脂組成物
として適している。
前記樹脂組成物の混合割合は、製造するプラスチック
製レンズシート,その製造プロセス等により異なるが、
ほぼ、IPDIベースのウレタン系アクリレート樹脂が20〜
70重量%に対して、前記モノマーが80〜30重量%の範囲
内が望ましい。この際、前記ウレタン系アクリレート樹
脂が高濃度の方が、靭性がよくなるが、流動性が低下す
る傾向にある。また、添加する光反応開始剤は、0.1〜
5.0重量%、フッ素系の界面活性剤は0.1〜5.0重量%の
範囲が好適な範囲である。
次に、第1のレンズシートの製造方法は、第2図に示
すように、樹脂塗布工程101と、均し積層工程102と、樹
脂硬化工程103と、離型工程104とから構成されている。
樹脂塗布工程101は、レンズパターン型が形成された
成形型端部に電離放射線硬化樹脂の樹脂溜まりを形成す
る工程である。この工程における電離放射線硬化樹脂
は、ラミネートするベース板と成形型間に入り込む気泡
を押し出すとともに、ベース板との接着性を持たせる働
きをしている。この電離放射線硬化樹脂の樹脂溜まりを
形成する方法としては、スクィーズィング法,フローコ
ート法,ロールコート法等の方法をとることができる。
均し積層工程102は、前記電離放射線硬化樹脂の樹脂
溜まりに電離放射線透過性のベース板を載せそのベース
板を介して加圧ロールで前記電離放射線硬化樹脂を均し
ながら前記ベース板を前記電離放射線硬化樹脂に積層す
る工程である。この工程は、透明なベース板を加圧ロー
ル側端部のほうだけ成形型に接するように積層して、ベ
ース板の上と成形型の下から加圧ロールで加圧してラミ
ネートしていくことにより、樹脂内および成形型のレン
ズパターン型の谷の間に入り込む気泡を押し出すととも
に、成形物の厚みを均一にする働きをする。
樹脂硬化工程103は、前記電離放射線硬化樹脂に電離
放射線を照射して硬化させる工程である。この工程で
は、電離放射線を照射することにより、電離放射線硬化
樹脂を硬化させるが、この際、ロール加圧部にできるだ
け光源を近づけることが好ましい。これは、成形型とベ
ース板間の浮き上がりや、それらの間に気泡が再混入す
るのを防止するためである。
離型工程104は、前記成形型から前記電離放射線硬化
樹脂を離型する工程である。
次に、本発明による第2のレンズシートおよびその製
造方法を説明する。
第3図は、本発明による第2の構成のレンズシートを
示した図、第4図は、前記第2の構成のレンズシートの
製造方法を説明するための流れ図である。
つまり、本発明による第2の構成のレンズシートは、
電離放射線透過性のベース板1と、前記ベース板の一方
の面に第1の電離放射線硬化樹脂21でレンズパターンの
先端付近を成形し第2の電離放射線硬化樹脂22でレンズ
パターンの基部側を成形したレンズ部とから構成してあ
る。
第2の構成のレンズシートは、第3B図に拡大して示し
たように、レンズ部が第1の電離放射線硬化樹脂21およ
び第2の電離放射線硬化樹脂22の2層で構成されている
ところ以外は、第1の構成のレンズシートと略同様であ
るので、異なるところのみ説明する。
電離放射線硬化樹脂としては、前述のものと同様のも
のを使用できるが、第1の電離放射線硬化樹脂の物性と
しては、成形型転写性,脱泡性,成形型に対する濡れ
性,表面硬化性が重視され、第2の電離放射線硬化樹脂
としては、ベース板との接着性,流動性が重視される。
また、粘度としては、第1の電離放射線硬化樹脂は、
200センチポイズ以下に調整された低粘度のものが好ま
しく、第2の電離放射線硬化樹脂は、500〜5000センチ
ポイズに調整された比較的粘度の高いものが使用され
る。この理由は、第1の電離放射線硬化樹脂は、成形型
の微細なレンズパターンとの間に気泡を含まないように
全面に塗布するので粘度は低くなければならず、第2の
電離放射線硬化樹脂は、均しながら塗布して樹脂内の気
泡を追い出すのである程度粘度が高くなければならない
からである。このように、第1の電離放射線硬化樹脂層
を形成することにより、成形型界面での脱泡性がより向
上する。
このように、樹脂を2層にすることにより、成形型、
ベース板あるいは成形されたレンズシート自体の各部に
対応するそれぞれの機能をより有効に果たすことができ
るとともに、それらの機能を2層に分けることで樹脂選
択の幅を広くすることができる。
以下、各電離放射線硬化樹脂の選択条件をさらに説明
する。レンズシートの場合には、少なくとも両者の屈折
率は略等しいことが要求される。これは、第1の電離放
射線硬化樹脂と第2の電離放射線硬化樹脂とが積層され
た界面は、必ずしもフラットになるとは限らないので、
2つの樹脂の屈折率が大きく異なると、均一な光が得ら
れなくなるためである。
この関係を満たせば、第1の電離放射線硬化樹脂と第
2の電離放射線硬化樹脂とは、同一の材質であってもよ
いし、異なる材質のものであってもよい。異なる樹脂の
場合には、略屈折率の等しい組み合わせのものを、物性
を考慮して用いればよい。第1の電離放射線硬化樹脂と
第2の電離放射線硬化樹脂の加工工程における樹脂温度
を変化させるとか、添加剤(消泡剤,レベリング剤
等),溶剤等を添加するとか、あるいは、第1の電離放
射線硬化樹脂と第2の電離放射線硬化樹脂のモノマー,
オリゴマー等の配合比を変化させるとかして成形型に対
する濡れ性,流動性,粘性等を適性に調整すればよい。
溶剤を用いて調整した場合には、樹脂の収縮や溶剤劣化
等を防止するために、塗布後硬化前にその溶剤を揮散さ
せておくことが望ましい。
さらに、前記第1の電離放射線硬化樹脂と第2の電離
放射線硬化樹脂の双方または一方に、前述のような拡散
剤を含ませることができる。
次に、本発明による第2の構成のレンズシートの製造
方法は、第4図に示すように、第1の樹脂塗布工程201
と、第2の樹脂塗布工程202と、均し積層工程203と、樹
脂硬化工程204と、離型工程205とから構成されている。
第1の樹脂塗布工程201は、レンズパターンが形成さ
れた成形型の全面に第1の電離放射線硬化樹脂を塗布す
る工程である。この工程は、成形型への濡れ性をよくす
るとともに、塗布量の安定化を図り、さらに、次工程で
の脱泡を容易にするための工程である。具体的には、ロ
ールコート法,シルクスクリーン法,カーテン法,グラ
ビア法等により実施することができる。
第2の樹脂塗布工程202は、前記成形型の端部に第2
の電離放射線硬化樹脂の樹脂溜まりを形成する工程であ
る。
均し積層工程203は、前記第2の電離放射線硬化樹脂
の樹脂溜まりに電離放射線透過性のベース板を載せその
ベース板を介して加圧ロールで前記第2の電離放射線硬
化樹脂を均しながら前記ベース板を前記第2の電離放射
線硬化樹脂に積層する工程である。
樹脂硬化工程204は、前記各電離放射線硬化樹脂に電
離放射線を照射して硬化させる工程である。
離型工程205は、前記成形型から前記各電離放射線硬
化樹脂を離型する工程である。
202〜205の各工程は、第1の構成のレンズシートの製
造方法の工程(101〜104)と略同様に実施することがで
きる。
なお、本発明では、レンズシートとして説明したが、
本発明によるシートの構造や製造方法は、表面に微細パ
ターンを有するものであれば、光カード,光ディスク,
ホログラム等にも適用することができる。
〔実施例〕
以下、実施例につき、本発明をさらに詳細に説明す
る。
第5図は、本発明による第1の構成のレンズシートお
よびその製造方法の実施例を示した工程図である。
第5図において、1はベース板,2はUV硬化樹脂,3は成
形型,4はロール,5はUV光源である。
まず、第5図(a)に示すように、たて横1mで、ピッ
チ0.1mmのフレネルレンズ形状の成形型3の左端(ロー
ル4側)に、UV硬化樹脂2をフローコート法により滴下
し、1.0g/cm2の樹脂溜まりを形成した。
このUV硬化樹脂2としては、オリゴマーとしてIPDIベ
ースのウレタン系アクリレート樹脂であるゴーセラック
UV−7000B(日本合成製)を40重量%、モノマーとして
2官能基のカヤラッドHX220(日本化薬製)を60重量%
の割合で混合し、さらに、光反応開始剤としてイルガキ
ュア184(チバガイギー製)を2重量%添加し、屈折率
1.49,粘度1500センチポイズに調整された樹脂組成物を
用いた。
さらに、第5図(b)に示すように、透明なベース板
1として、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体系のプライ
マを塗布した紫外線透過性のある厚さ3.0mmのアクリル
板を積載し、加圧ロール4,4を速度50cm/minで転動して
加圧した。このとき、図中Aで示す部分で、成形型3と
ベース板1の間に入る気泡を押し出している。
この際、ベース板1側からUV光源5を用いて、160W/c
mで紫外線(UV)を照射し、UV硬化樹脂2を硬化した。
最後に、第5図(c)に示すように、成形型3を解圧
離型して、フレネルレンズシートを得た。
このフレネルレンズシートは、レンズ部2が電離放射
線硬化樹脂で構成され、ベース板1が積層されたもので
あり、レンズ部には、気泡を混入していなかった。
第6図は、本発明による第2の構成のレンズシートお
よびその製造方法の実施例を示した工程図である。
なお、第6図において、21は第1のUV硬化樹脂,22は
第2のUV硬化樹脂であり、前述の実施例と同様な機能を
果たす部分には同一の符号を付してある。
まず、第6図(a)に示すように、たて横1mで、ピッ
チ0.1mmのフレネルレンズ形状の成形型3に、第1のUV
硬化樹脂21として、前記第1の実施例と同じ樹脂組成物
を、溶剤(酢酸エチル)で希釈して、屈折率1.49,粘度1
00センチポイズに調整し、シルクスクリーン法により厚
さ50μmに塗布した。なお、第2の樹脂を塗布する前
に、この溶剤を揮散させた。
ついで、第2のUV硬化樹脂22を成形型3の左端(ロー
ル4側)にフローコート法により滴下し、1.0g/cm2の樹
脂溜まりを形成した。
第2のUV硬化樹脂22としては、屈折率1.49,粘度1500
センチポイズに調整された前記第1の実施例と同じ樹脂
組成物を用いた。
さらに、第6図(b)に示すように、透明なベース板
1として、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体系のプライ
マを塗布した紫外線透過性のある厚さ3.0mmのアクリル
板を積載し、第6図(c)に示すように、加圧ロール4,
4を速度50cm/minで転動して加圧した。このとき、図中
Aで示すう部分で、成形型3とベース板1の間に入る気
泡を押し出している。
この際、ベース板1側からUV光源5を用いて、160W/c
mで紫外線(UV)を照射し、第1のUV硬化樹脂21と第2
のUV硬化樹脂22を硬化した。
最後に、第6図(d)に示すように、成形型3を解圧
離型して、フレネルレンズシートを得た。
このフレネルレンズシートは、レンズ部2の先端付近
が第1のUV硬化樹脂21により成形され、レンズ部2の基
部側が第2のUV硬化樹脂22により成形され、ベース板1
が積層されたものであり、レンズ部、特に表面には、気
泡を混入していなかった。
つぎに、第2の構成のレンズシートおよびその製造方
法の他の実施例を、第6図に対応させて説明する。
まず、たて横1mで、ピッチ0.4mmの成形型3に、第1
の樹脂21として、屈折率1.51,粘度200センチポイズで、
拡散材としてシリカを15%含有したウレタンアクリレー
ト系のUV硬化樹脂をシルクスクリーン法により塗布し
た。
次に、第2の樹脂22を成形型3の左端(ロール4側)
によりフローコート法により、1.0g/cm2の樹脂溜りを形
成した。第2の樹脂22としては、屈折率1.51,粘度1500
センチポイズのエポキシアクリレート系のUV硬化樹脂を
用いた。
さらに、透明基板1として、塩化ビニル/酢酸ビニル
共重合体系のプライマを塗布したUV透過性のある厚さ3.
0mmのアクリル板を積層し、加圧ロール4,4を速度50cm/m
inで転動して加圧した。このとき、図中Aで示す部分
で、成形型3と透明基板1の間に入る気泡を押し出して
いる。
この際、紫外線をアクリル面側よりUV光源5により、
160W/cmで照射し、第1の樹脂21と第2の樹脂22を硬化
した。
最後に、成形型3を解圧離型して、気泡が混入しない
フレネルレンズを得た。
〔発明の効果〕
以上詳しく説明したように、本発明によれば、成形型
に塗布した電離放射線硬化樹脂にベース板を挟んで、加
圧ロールで均すようにして気泡を除去するようにしたの
で、成形されたレンズシートのレンズ部に気泡が混入す
ることはなくなった。
また、電離放射線硬化樹脂を2層に分けて、成形型の
濡れ性のよいものを予め全面に塗布しておくようにした
ので、成形型の微細なパターンと樹脂間に気泡が入るの
を防止することができるようになり、型再現性がよくな
った。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明による第1の構成のレンズシートを示
した図、第2図は、前記第1の構成のレンズシートの製
造方法を説明するための流れ図である。 第3図は、本発明による第2の構成のレンズシートを示
した図、第4図は、前記第2の構成のレンズシートの製
造方法を説明するための流れ図である。 第5図は、本発明による第1の構成のレンズシートおよ
びその製造方法の実施例を示した工程図である。 第6図は、本発明による第2の構成のレンズシートおよ
びその製造方法の実施例を示した工程図である。 1……ベース板 2……UV硬化樹脂 21……第1のUV硬化樹脂 22……第2のUV硬化樹脂 3……成形型、4……加圧ロール 5……UV光源

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】レンズパターン型が形成された成形型端部
    に電離放射線硬化樹脂の樹脂溜まりを形成する樹脂塗布
    工程と、 前記電離放射線硬化樹脂の樹脂溜まりに電離放射線透過
    性のベース板を載せそのベース板を介して加圧ロールで
    前記電離放射線硬化樹脂を均しながら前記ベース板を前
    記電離放射線硬化樹脂に積層する均し積層工程と、 前記電離放射線硬化樹脂に電離放射線を照射して硬化さ
    せる樹脂硬化工程と、 前記成形型から前記電離放射線硬化樹脂を離型する離型
    工程と から構成したレンズシートの製造方法。
  2. 【請求項2】電離放射線透過性のベース板と、 前記ベース板の一方の面に第1の電離放射線硬化樹脂で
    レンズパターンの先端付近を成形し、前記第1の電離放
    射線硬化樹脂よりも粘度の高い第2の電離放射線硬化樹
    脂でレンズパターンの基部側を成形したレンズ部と から構成したレンズシート。
  3. 【請求項3】請求項2に記載のレンズシートにおいて、 前記第1の電離放射線硬化樹脂は、粘度が200cps以下で
    あり、 前記第2の電離放射線硬化樹脂は、粘度が500〜5000cps
    である ことを特徴とするレンズシート。
  4. 【請求項4】レンズパターン型が形成された成形型の全
    面に第1の電離放射線硬化樹脂を塗布する第1の樹脂塗
    布工程と、 前記成形型の端部に前記第1の電離放射線硬化樹脂より
    も粘度の高い第2の電離放射線硬化樹脂の樹脂溜まりを
    形成する第2の樹脂塗布工程と、 前記第2の電離放射線硬化樹脂の樹脂溜まりに電離放射
    線透過性のベース板を載せそのベース板を介して加圧ロ
    ールで前記第2の電離放射線硬化樹脂を均しながら前記
    ベース板を前記第2の電離放射線硬化樹脂に積層する均
    し積層工程と、前記各電離放射線硬化樹脂に電離放射線
    を照射して硬化させる樹脂硬化工程と、前記成形型から
    前記各電離放射線硬化樹脂を離型する離型工程と から構成したレンズシートの製造方法。
  5. 【請求項5】請求項4に記載のレンズシートの製造方法
    において、 前記第1の電離放射線硬化樹脂は、粘度が200cps以下で
    あり、 前記第2の電離放射線硬化樹脂は、粘度が500〜5000cps
    である ことを特徴とするレンズシートの製造方法。
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