JP2789759B2 - Ｔｉ合金製エンジンバルブ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、ステム部がすぐれた高温疲労強度を有
し、かつヘッド部が、吸気用にあってはすぐれた強度と
耐摩耗性を有し、また排気用ではすぐれた耐熱性を有す
るTi合金製エンジンバルブに関するものである。

〔従来の技術〕

近年、自動車をはじめ、各種の内燃機関のエンジン
に、軽量化を目的としてTi合金製エンジンバルブの適用
が検討され、一部は実用に供されている。

これらのTi合金製エンジンバルブは、吸気用として
は、重量％で（以下％は重量％を示す）、Ti−６％−４
％Ｖの代表組成をもつTi合金、また排気用としてはTi−
６％Al−２％Sn−４％Zr−２％Mo−0.1％Siの代表組成
をもったTi合金をそれぞれ用い、これらTi合金のインゴ
ットを熱間鋳造、熱間圧延などの熱間加工手段によって
棒材（線材）とし、ついで所定長さの前記棒材の一方端
部に熱間据え込み鋳造にてヘッド部を形成することによ
って製造されている。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかし、上記の従来Ti合金製エンジンバルブは、これ
を構成するTi合金が熱間加工性に劣るものであるため
に、僅少な加工率での繰り返し加工を必要とし、コスト
高の原因となっており、一方このようにTi合金を適用し
た場合多くの工程を必要とするために、Ti合金の特定に
も熱間加工性の難易度が強く影響されるものであり、こ
の結果所望の特性を具備したTi合金の適用は難しく、し
たがってTi合金製エンジンバルブとして特性上十分満足
するものが得られていないのが現状である。

〔課題を解決するための手段〕

そこで、本発明者等は、上述のような観点から、従来
Ti合金製エンジンバルブのもつ問題点を解決すべく研究
を行なった結果、エンジンバルブを、高温で衝撃的な繰
り返し応力がかかるために高温疲労強度が要求されるス
テム部と、ヘッド部に分け、上記ステム部を、 Al:2〜４％、V:1.5〜3.5％、 を含有したTi合金で構成すると、このTi合金は熱間加工
性および冷間加工性が良好で、ステム部の原形である棒
材に容易に加工することができるので、安いコストでの
製造が可能であり、かつ優れた高温疲労強度を有し、一
方、ヘッド部を、吸気用のものは、強度および耐摩耗性
が要求されることから、これらの特性を具備した、 Al:2〜７％、V:3〜20％、 を含有するTi合金で、また排気用のものは、耐熱性が要
求されることから、これを具備した、 Al:5〜10％、 を含有するTi合金でそれぞれを構成し、これらのヘッド
部を構成するTi合金は冷間加工性は勿論のこと、熱間加
工性の悪いものであるので、これを金型鋳造により成形
すると、コスト安い製造が可能であり、このように成形
したステム部とヘッド部を摩擦圧接接合することにより
製造したTi合金製エンジンバルブは、所望の特性を具備
し、かつ安いコストでの製造が可能であるという研究結
果を得たのである。

この発明は、上記研究結果にもとづいてなされたもの
であって、 Al:2〜４％、V:1.5〜3.5％、 を含有するTi合金の冷間加工材で構成されたステム部
と、 Al:2〜７％、V:3〜20％、 を含有するTi合金の金型鋳造材で構成された吸気用ヘッ
ド部、あるいは、 Al:5〜10％、 を含有するTi合金の金型鋳造材で構成された排気用ヘッ
ド部を、摩擦圧接接合してなる吸気用あるいは排気用エ
ンジンバルブに特徴を有するものである。

つぎに、この発明のエンジンバルブにおいて、ステム
部およびヘッド部のAlおよびＶ含有量を上記の通りに限
定した理由を説明する。

（ａ） ステム部のAlおよびＶ含有量 AlおよびＶには、共存した状態で高温疲労強度を向上
させる作用があるが、AlおよびＶのいずれかでも、その
含有量がAl:2％未満、V:1.5％未満になると所望のすぐ
れた高温疲労強度を確保することができず、一方Alおよ
びＶのいずれかでもその含有量がそれぞれAl:4％、V:3.
5％を越えると、急激に冷間加工性が低下するようにな
ることから、その含有量をAl:2〜４％、V:1.5〜3.5％と
定めた。

（ｂ） 吸気用ヘッド部のAlおよびＶ含有量 AlおよびＶには、強度と耐摩耗性（硬さ）を向上させ
る作用があるが、その含有量が、いずれの場合もAl:2％
未満、およびV:3％未満では前記作用に所望の効果が得
られず、一方その含有量がAlにあっては７％、またＶに
あっては20％をそれぞれ越えると脆化し、強度が低下す
るようになることから、その含有量をAl:2〜７％、V:3
〜20％と定めた。

（ｃ） 排気用ヘッド部のAl含有量 Alには、耐熱性を向上させる作用があるが、その含有
量が５％未満では所望のすぐれた耐熱性を確保すること
ができず、一方その含有量が10％を越えると脆化相が多
量に析出するようになることから、その含有量を５〜10
％と定めた。

〔実 施 例〕

つぎに、この発明のエンジンバルブを実施例により具
体的に説明する。

通常の真空アーク溶解炉を用い、第１表に示される組
成をもったTi合金を溶製し、直径:600mm×長さ:2000mm
の寸法をもったインゴットに鋳造し、1050℃の開始温度
で２回の熱間鍛造にて直径:80mmとし、ついで１回の熱
間圧延（開始温度:900℃）と２回の冷間伸線（加工度:6
0％）で直径:5mmの線材とし、この線材に温度:450℃に
２時間保持の条件で焼鈍を施し、最終的に冷間で伸直加
工を施すことによりステム部を形成し、一方、加熱源と
してプラズマを用いるスカル溶解炉にて、同じく第１表
に示される組成をもった Ti合金を溶製し、回転する金型に遠心鋳造し、いずれも
傘部の外径が35mmの吸気用および排気用ヘッド部を形成
し、ついでこれらヘッド部を上記ステム部に通常の条件
で摩擦圧接接合することにより長さ:100mmの本発明エン
ジンバルブ１〜７をそれぞれ製造した。

また、比較の目的で、同じく真空アーク溶解炉を用い
て、 （１） Ti−６％Al−４％Ｖの組成をもったTi合金（以
下、Ti合金（１）という）、 （２） Ti−６％Al−２％Sn−４％Zr−２％Mo−0.1％S
iの組成をもったTi合金（以下、Ti合金（２）とい
う）、 を溶製し、直径:600mm×長さ:1000mmの寸法をもったイ
ンゴットに鋳造し、1050℃の開始温度にて２回の熱間鋳
造で直径:80mmとし、ついでTi合金（１）については950
℃、Ti合金（２）については1050℃の開始温度で熱間圧
延をそれぞれ３回繰り返し行なって、それぞれ直径:5mm
の線材とし、この線材から所定寸法の素材を切り出し、
一方端部にTi合金（１）では950℃、Ti合金（２）では1
050℃にて熱間据え込み鋳造を施すことによって、傘部
外径:35mm、長さ:100mmの寸法をもった上記Ti合金
（１）で構成された吸気用従来エンジンバルブおよび上
記Ti合金（２）で構成された排気用従来エンジンバルブ
をそれぞれ製造した。

つぎに、この結果得られた各種のエンジンバルブにつ
いて、ステム部には高温疲労強度が要求されることか
ら、ステム部の実用環境温度である400℃,450℃，およ
び500℃での疲労限を測定し、この疲労限は矩形波が最
小応力／最大応力＝0.1の条件での疲労試験で測定し、
また吸気用ヘッド部には強度と耐摩耗性が要求されるこ
とから、これらの特性を評価する目的で引張強さ、伸
び、およびビッカース硬さを測定し、さらに排気用ヘッ
ド部には耐熱性が要求されることから、温度:800℃、保
持時間:100時間の条件でのラプチャー強度を測定した。
これらの測定結果を第１表に示した。

〔発明の効果〕

第１表に示される結果から、吸気用本発明エンジンバ
ルブ１〜４は、吸気用従来エンジンバルブに比して、ス
テム部で高温疲労強度が高く、ヘッド部で高強度と高硬
度を有し、また排気用本発明エンジンバルブ５〜７は、
排気用従来エンジンバルブに比して、特にヘッド部の耐
熱性にすぐれていることが明らかである。

上述のように、この発明のTi合金製エンジンバルブ
は、ステム部がすぐれた高温疲労強度を有し、かつヘッ
ド部も、吸気用のものにあっては高強度とすぐれた耐摩
耗性を有し、また排気用ではすぐれた耐熱性を有するの
で、これらを実用に供した場合にはすぐれた性能を著し
く長期に亘って発揮するようになるなど工業上有用な特
性を有するのである。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】Al:2〜４重量％、V:1.5〜3.5重量％、 を含有するTi合金の冷間加工材で構成されたステム部
   と、 Al:2〜７重量％、V:3〜20重量％、 を含有するTi合金の金型鋳造材で構成されたヘッド部
   を、摩擦圧接接合してなる吸気用Ti合金製エンジンバル
   ブ。
2. 【請求項２】Al:2〜４重量％、V:1.5〜3.5重量％、 を含有するTi合金の冷間加工材で構成されたステム部
   と、 Al:5〜10重量％、 を含有するTi合金の金型鋳造材で構成されたヘッド部
   を、摩擦圧接接合してなる排気用Ti合金製エンジンバル
   ブ。