JP2787291B2 - 欄間の製造方法及びこの方法による欄間 - Google Patents

欄間の製造方法及びこの方法による欄間

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JP2787291B2 JP8044591A JP4459196A JP2787291B2 JP 2787291 B2 JP2787291 B2 JP 2787291B2 JP 8044591 A JP8044591 A JP 8044591A JP 4459196 A JP4459196 A JP 4459196A JP 2787291 B2 JP2787291 B2 JP 2787291B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、材料を有効に使い
ながら、立体的かつ見栄えのする欄間が容易に製造でき
る欄間の製造方法と、この方法による欄間に関する。
【0002】
【従来の技術】欄間は一般に横がほぼ一間(約180c
m)長であり、部屋と部屋との境界となる鴨居の上に、
左右の2枚組で取り付けられている。
【0003】欄間の多くは板から各種の図案を彫り出し
たものであり、この板は通称欄間板といわれて、杉や檜
から切り出した欄間とほぼ等大のものが好適な材料とし
て用いられている。また、施される図案は、欄間板の表
裏に各種の図案を「透かし彫り」或は「透かさない彫
り」などにより施されており、多くは伝統的な風景画や
動植物画が描かれている。
【0004】また欄間は2枚組で取り付けられるもので
あり、片割れの一枚のみを取り付けることは事実上あり
えない。そのため、欄間板を原木から切り出す際には、
欄間2枚分の厚さの材料板をまず切り出し、この材料板
を更に2枚の欄間板に分割切断している。一枚づつ切り
出すと片割れのできる虞があるが、材料板を先に切り出
しておけばその様なことが起きないからである。
【0005】また欄間は表裏に厚いほど立体感、重厚感
があり、また精巧な図案が彫れるので高級品として扱わ
れているが、この様な欄間の厚さは彫り出す前の欄間板
の板厚で決まってくる。この板厚は、廉価品で1寸5分
(約45mm)程度であり、2寸、2寸5分、3寸(つ
まり約60mm、75mm、90mm)と厚くなるに従
って高級品になってくる。一部には、4寸(120m
m)以上の極厚の欄間もある。
【0006】また薄手の廉価品といえども、少しでも厚
く観せたいという要望があり、これに対しては、欄間の
表裏に彫りの深さの差を設け、裏を薄くした分だけ表を
厚くし、片面だけでも高級品に観せようとしている。
【0007】また欄間板は、特断の工夫をする事なく普
通の平板を用いて彫り出しているので、その板面の真正
面角度が、そのまま彫り出された図案の真正面角度とな
る。ところが、欄間は人の背丈よりも高い位置に取り付
けるものであり、つまり斜め下から仰ぎ観る目線で観る
ことになって、欄間(の図案)を真正面角度近くから観
ることはできない。これに対し、最近では、図案を彫る
ときに個々の造形物を少し下に向けて彫る工夫が成され
るようになった。例えば、植物の葉、鳥の翼の様なもの
を、図11の欄間断面に例示した様に、全体の仕上がり
に支障の無い程度の斜め下向きにして彫るのである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしこの様な工夫を
しても、斜め下向きの図案を彫ることには限度があり、
観る人の方向に欄間を向けようという意図に対しては不
十分であった。第一、欄間板の板面が垂直面でありなが
ら、個々の造形物をこの垂直面と異なった斜め方向に向
けて彫る作業には困難が伴っていた。
【0009】また欄間板を厚くすれば出来上りの欄間を
厚くすることができるが、これでは同じ原木から製造で
きる欄間の製品数が削減されてしまうしまう。
【0010】本発明は以上の状況に対応すべく成された
ものであり、その目的は、従来と同じ厚みの材料板から
であっても、従来よりも厚みや立体感のある欄間を、し
かも容易に製造できる製造方法を提供することとし、ま
た、このような厚みや立体感に優れ、下から観ることに
適した欄間を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明においては、欄間
自身は従来通りに縦向きに取り付けながら、欄間の表裏
を斜め下に向けることに着目し、その為、彫り出す前の
欄間板を従来の様な平板ではなく、表裏の板面が非平行
をなした斜面板を用いて製造する事とした。この様な斜
面板は板厚が不均一となるため板自体に立体感がある。
従って、この様な斜面板による欄間板から欄間を製造す
れば、容易に立体感のある欄間が製造できる。斜面の傾
斜を大きく採ればより立体感のある欄間が製造できる。
【0012】またこの際、斜面板の肉厚側を欄間頂辺側
に対応させることにより、彫り出す前の板面が欄間を取
り付けた際の斜め下向きに対応し、よって特に意識せず
とも板面の向きに対応した斜め下向きの図案を容易に彫
ることができる。またその為の材料板を、材料板断面の
斜め分割線にて切断して2枚組の略同形状な斜面板を切
り出す様にした。
【0013】またこの様な製造方法による欄間であっ
て、欄間の表面側及び裏面側の各外方に突き出た部材部
分の凸部が、彫り出す前の斜面板の板面にほぼ対応する
高さに形成して配されることにより、図案が下向きにな
るようにした。またこの手段を縁取りを設けた欄間に適
用することにより一層の面白味を出すようにした。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は請求項1、2、3の製造方
法を説明するものである。図1は本願製造方法により製
造した欄間1が、鴨居に取り付けた際にはどの様に観る
ことが出来るかを示したものである。つまり欄間板には
表裏の板面2a、2bが非平行をなした斜面板2を用
い、この斜面板2の肉厚側Aを欄間頂辺3側として彫り
出した2枚組10の欄間は、これを鴨居に取り付けると
斜面板2を並べて示した図1に表れる様な外観イメージ
となる。図2、図3は、材料板4から2枚組の斜面板2
を切り出すための斜め分割線5を示した断面図である。
また斜め分割線5の角度を変える事により、欄間1の趣
が調整できる。
【0015】なお、請求項1の製造方法によれば、図4
に示したように、斜面板2の肉厚側Aを欄間の左右いず
れかの辺側として欄間を彫り出すことも可能である。例
えば、2枚組10の欄間を左右に並べて取り付けた際に
は、並べた2枚組10の両端10a、10bに肉厚側
A、Aを配置することにより深みのある趣が出せる。
【0016】図5は請求項5記載の欄間である。縁取り
8は頂辺側8aが高く底辺8b側が低くなっていて、左
右辺8c、8c側は頂辺と底辺の間をつないで斜めにな
っている。この欄間の側面は図6に示す様に、略逆台形
になっている。また彫り出された図案の部材部分は、図
7に示す様にその欄間の表面側及び裏面側の各外方に突
き出た凸部7が、彫り出す前の板面2a、2bにほぼ対
応する高さになっている。この様な欄間1は、建物、植
物の枝葉、動物の体など個々の造形物を彫り出す場合で
も、単に斜面に沿って彫るだけで、図8に示す様に斜め
下向きの造形物9を彫ることが出来る。また、欄間1を
下から見上げるので比較的頂辺3寄りに観る者の目が集
まるが、この頂辺3寄りが厚く奥行きの深い欄間1とな
るので鑑賞物としての効果が上がる。反面、底辺寄りの
薄い部分は、鴨居の陰になるなどして余り目に止まる部
分ではないので支障が無い。
【0017】なお、縁取りを設けた欄間に限らず、図9
に示す様に、縁の無い欄間、或は、透かしの無い欄間で
あってもよく、この場合には、請求項4記載の欄間とな
る。また表裏を同じように彫る必要はなく、図10に示
す様な彫り方により、裏面1bは従来通りに彫ることに
より裏面1b全体がほぼ垂直面状と成るようにして、表
面1aだけを下向きに彫って厚みを出した欄間でもよ
い。この様に片面だけを下向きにすれば同じ材料板4か
ら得た欄間であっても、両面を下向きにした欄間に較
べ、下向きにした表側の肉厚感が倍増して一層面白味が
増す。特に、両面に厚みを出すことが困難な廉価品であ
っても、斜面板による厚みの違いを表面だけ表現したの
で、薄い材料板から製造しても従来にない重厚感が表面
に得られる。また一方、厚い材料板から製造する高級品
にこの様な片面のみ下向きのものを実現すると、頂辺が
非常に肉厚となり3寸の欄間板から彫っても4寸以上の
欄間板から彫った様に見え、高級感が際だつ。
【0018】
【発明の効果】以上、述べたように、請求項1記載は、
「表裏の板面が非平行をなした斜面板から欄間を彫り出
すこと」を特徴としている。そのため、欄間を全体的に
観た場合、欄間の彫りだし部分の高さを欄間の一方から
他方に掛けて違える事が可能となり、立体感のある欄間
の製造が可能となる。
【0019】請求項2記載は、請求項1にかかる発明に
おいて、「斜面板の肉厚側を欄間頂辺側として欄間を彫
り出すこと」を特徴としている。そのため、斜面板の板
面に沿って彫るだけで自然に下向きの欄間を彫ることが
出来る。
【0020】請求項3記載は、請求項2にかかる発明に
おいて、「斜面板は、この斜面板を切り出すための材料
板を、材料板断面の斜め分割線にて切断して2枚組の略
同形状な斜面板を切り出し、この2枚組の斜面板から2
枚組の欄間を彫り出すこと」を特徴としている。そのた
め、従来と同じ板厚の材料板から、欄間の最大高さ部分
において従来より高さのある欄間の製造が可能となる。
【0021】請求項4記載は、「表裏の板面が非平行を
なした斜面板の肉厚側を欄間頂辺側として彫り出された
欄間であって、前記斜面板を彫り残して各種造形や背景
模様などを形成する部材部分において、欄間の表面側及
び裏面側の各外方に突き出た部材部分の凸部が、彫り出
す前の板面にほぼ対応する高さに形成して配されたこ
と」を特徴としている。そのため、彫りだし部分の最大
高さを欄間の頂辺側から底辺側に掛けて違える事が可能
となり、欄間を全体的に観たとき、欄間の頂辺側から底
辺側に掛けて高さに高低の変化が得られ、立体感のある
欄間となる。また欄間の表裏面が斜め下向きとなるので
下から見上げるのに適し、個々の造形物も斜め下向きで
あるので面白味が増す。なお造形物がこの様に斜め下向
きであるため、ホコリなどによる汚れが少なく、この点
でも鑑賞物として美しさが保てる。
【0022】請求項5記載は、請求項4にかかる発明に
おいて、「欄間は、欄間の内枠状に突条の縁取りを設け
た縁取り欄間であり、この縁取りは、彫り出す前の板面
にほぼ対応する高さに形成されたこと」を特徴としてい
る。そのため、この縁取りにより立体感が強調される。
これは、縁取りが他の造形物と異なり連続的な形状をし
ているため頂辺側と底辺側の高低がはっきり判るからで
ある。また特に、頂辺側の縁取りは庇の様に大きく突き
出し、下から見上げたときには突き出た縁取りの下面が
強調されて観ることができ、この発明の大きな効果にな
っている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この図は、請求項1、2、3にかかる斜面板
を製造後の欄間の取付位置関係に置き換え配置し、彫り
だし前の斜面板の形状が製造後の欄間の形状にどの様に
影響するかを示す図である。
【図2】 この図は、材料板から斜面板を切り出す斜め
分割線を示し、切り出された斜面板がその後欄間の製造
時にどの様な用いられ方をするかを説明する図である。
【図3】 この図は、材料板から斜面板を切り出す斜め
分割線の角度を様々に変え、各種の斜面板が切り出せる
事を示す図である。
【図4】 この図は、請求項1にかかる斜面板の別の例
でり、これを製造後の欄間の取付位置関係に置き換え配
置し、彫りだし前の斜面板の形状が製造後の欄間の形状
にどの様に影響するかを示す図である。
【図5】 この図は、請求項5にかかる縁取りを設けた
欄間の斜視図である。
【図6】 この図は、図5に示した欄間の側面図であ
る。
【図7】 この図は、図5に示した欄間のX−X断面図
である。
【図8】 この図は、請求項4、5にかかる欄間の造形
物が下向きになること、及び斜面板に板面に沿って彫れ
ば自然とこの下向きの造形物を彫る事ができる事を説明
する図である。
【図9】 この図は、請求項4にかかる欄間の断面図で
ある。
【図10】この図は、請求項4にかかる別の欄間であっ
て、欄間の片面のみが斜め下を向き、他の片面は従来の
欄間同様に真横向きである欄間に関し、この欄間を彫り
出す際の材料板との関係、及び、斜面板との関係を説明
する図である。
【図11】 この図は、従来の欄間に於て造形物を下向
きに彫った様子を説明する図である。
【符号の説明】
1 欄間 2 欄間板としての斜面板 3 頂辺 4 材料板 5 斜め分割線 6 材料部分 7 凸部 8 縁取り 10 2枚組 A 肉厚側

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表裏の板面が非平行をなした斜面板から
    欄間を彫り出すことを特徴とした欄間の製造方法。
  2. 【請求項2】面板の肉厚側を欄間頂辺側として欄間
    を彫り出すことを特徴とした請求項1記載の欄間の製造
    方法。
  3. 【請求項3】面板は、この斜面板を切り出すための
    材料板を、材料板断面の斜め分割線にて切断して2枚組
    の略同形状な斜面板を切り出し、この2枚組の斜面板か
    ら2枚組の欄間を彫り出すことを特徴とした請求項2記
    載の欄間の製造方法。
  4. 【請求項4】 表裏の板面が非平行をなした斜面板の肉
    厚側を欄間頂辺側として彫り出された欄間であって、前
    記斜面板を彫り残して各種造形や背景模様などを形成す
    る部材部分において、欄間の表面側及び裏面側の各外方
    に突き出た部材部分の凸部が、彫り出す前の板面にほぼ
    対応する高さに形成して配されたことを特徴とした欄
    間。
  5. 【請求項5】間は、欄間の内枠状に突条の縁取りを
    設けた縁取り欄間であり、この縁取りは、彫り出す前の
    板面にほぼ対応する高さに形成されたことを特徴とした
    請求項4記載の欄間。
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