JP2787123B2 - 原子炉の切断撤去方法 - Google Patents

原子炉の切断撤去方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、使用済原子炉を解体除
去するための原子炉の切断撤去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】原子炉は、一般的に運転開始から30〜
40年間運転すると恒久的な運転終了期間となる。原子
炉は燃料を取り出した後も放射化生成等の残存放射能を
有しており、このような原子炉の廃止措置には安全な管
理、処分を行うため各種の法規制がなされている。
【0003】廃止措置としては第1の手段として、原子
炉施設を閉鎖し、これを適切な管理下におくもの、第2
の手段として、原子炉に遮断等の工事を行って放射能を
有する物質を強固に外部から隔離するもの、第3の手段
として、原子炉施設内の放射能を有する構造物等を解体
除去するものの3種に大別される。
【0004】このうち、原子炉設置環境が限定されてい
るため、新設備も同施設内に建築することが望ましく、
上記第3の手段の解体方法を行うことが望ましく、その
ためには安全でかつ効率的に解体除去する方法の開発が
望まれている。
【0005】そのための手法として、例えば原子炉の躯
体基部を連続的にコアボーリングを用いて垂直、水平に
切断を行い基部と圧力容器とを切り離し、移動させ、大
型廃棄物保管庫により密封保管する方法が提案されてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】原子炉圧力容器の躯体
基部が除去された後の原子炉圧力容器自体については、
その直径は5〜8m、高さは12〜18m程度あり、ま
たオーステナイト系ステンレス鋼で作られている圧力容
器の壁厚は150〜200mm程度のため、このような
大型施設である圧力容器を水平、垂直に分割する方法が
確立されておらず、したがって圧力容器は大型密封保管
庫で保管している。
【0007】 一方、このような圧力容器を水中におい
て、遠隔操作によりプラズマ切断方法によって切断する
技術が開発中であるが、この方法では圧力容器、外周部
の切断は可能であるものの、炉内構造物の切断は極めて
困難である。
【0008】それに対し、今後稼動期限を迎える原子炉
は年々加速度的に増加する傾向にあり、原子炉を安全か
つ効果的に解体除去する方法の開発が強く望まれてい
る。
【0009】したがって、本発明は、原子炉特にその圧
力容器を安全かつ効率的に解体除去する方法を提供する
ことを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記従来のも
のの欠点を解消するため、原子炉の切断撤去方法とし
て、圧力容器内部及び圧力容器外部の周辺部材にグラウ
ト材料を圧入してこれらを一体固化し、圧力容器外周よ
り切断を行うようにしたものであり、またその切断に際
し、表面にダイヤモンド粒を有したワイヤーソーを用い
たものであり、更に切断に際しては、先行切断刃と切断
溝巾調整刃を用いて二重切断を行うようにしたものであ
り、それにより原子炉の圧力容器等を安全かつ効率的に
解体除去するようにしたものである。
【0011】
【作用】本発明は、上記のように構成したので、原子炉
の切断撤去に際して最初圧力容器内部及び圧力容器外部
の周辺部材にグラウト材料を圧入してこれらを一体固化
し、次いで圧力容器外周より切断を行う際放射能を帯び
た機器、機材が飛び散ることを防ぎ、ワイヤーソー等に
よる切断を円滑に行えるようにし、また表面にダイヤモ
ンド粒を有したワイヤーソーを用いて切断し機器、機材
をすべて一体的に切断し、更に先行切断刃と切断巾調整
刃を用いて二重切断を行い、先行切断刃の摩滅による切
断溝巾の減少分を切断巾調整刃により所定の切断巾を維
持する。
【0012】
【実施例】本発明の実施例を図面に沿って説明する。図
1に示すように、原子炉内部の圧力容器1はコンクリー
ト基体2にその顎部3で支持されており、その解体に際
しては顎部3に設けた開口部、あるいは顎部3とコンク
リート基体2との間からグラウト材4を圧入する。
【0013】 グラウト材としてはセメントやモルタル
ペーストを基材として充填を円滑に行うため流動性を向
上するための混和材を適宜混入したものを用い、非収縮
性のものを用いる。
【0014】圧力容器1の上部には開口6を形成し、こ
の開口6からも同様のグラウト材5を充填する。その結
果、グラウト材の凝固後は圧力容器内及び圧力容器外周
とコンクリート基体内は、配管等各種機器類を含めてグ
ラウト材によってすべて一体化し固化する。
【0015】グラウト材5の充填時には、細部まで確実
に充填されるようバイブレータを使用しても良い。
【0016】このようにグラウト材により一体化した炉
内構造物7を水平方向に切断する際には、図2、図3に
示すように、壁8に対し上下位置調整自在に固定した第
1ガイドプーリ10と第1駆動プーリ11間に無端の第
1ワイヤーソー12を掛け渡す。第1駆動プーリ11は
内部に駆動モータを備えた第1駆動装置13に固定さ
れ、第1駆動装置13はその高さを調整可能に固定して
いる。
【0017】第1駆動装置13には第1駆動プーリ11
が被切断部材方向に移動自在に固定され、その固定位置
を調整することにより第1ワイヤーソー12の張力をほ
ぼ一定に保つようにしている。また、第1のワイヤーソ
ー12の引き側14を炉内構造物7に掛け、送り側15
はガイドローラ16,16を介して直接第1ガイドプー
リ10に掛ける。
【0018】この第1ワイヤーソー12の切断進行方向
に対して後方位置に第2ワイヤーソー17を配置し、第
2ガイドプーリ18と第2駆動プーリ19に掛け渡して
いる。第2駆動プーリ19は、内部に駆動モータを備え
た第2駆動装置20に固定され、第2駆動装置20はそ
の高さを調整可能としている。第2駆動装置20には、
第2駆動プーリ19が被切断物方向に移動自在に固定さ
れており、第2ワイヤーソー17の張力をほぼ一定に保
ようにしている。また第2ワイヤーソー17の引き側2
1を炉内構造物7における第1ワイヤーソーにより形成
された切断溝中に入れ、送り側22は炉内構造物等に固
定したガイドローラ23,23を介して直接第2ガイド
プーリ17に掛けている。
【0019】上記構成により、第1ワイヤーソー12の
引き側14によって、炉内構造物7は金属部材及びコン
クリート部材並びに注入したグラウト材共々一体的に切
断されていく。
【0020】一方、ワイヤーソーは、圧力容器を形成す
るオーステナイト系ステンレス鋼を始めとするコンクリ
ート材料を一体的に切断するため、ダイヤモンド粒をコ
バルト、ブロンズ等の粉体とともに焼き固めてなるビー
ズを連結したダイヤ焼結刃を用いるか、あるいは鋼等の
合金にニッケル液中でダイヤモンドを電着してなるビー
ズを連結したダイヤ電着刃を用いるか、あるいはスチー
ル線にダイヤモンド粒を電着した線状ワイヤーソーを用
いるのが適切である。
【0021】このうちダイヤ電着刃や線状ワイヤーソー
を用いると、台金の表面にのみダイヤモンド層が存在す
るのみであるので、表面のダイヤモンド層が摩滅すると
直ちに別のワイヤーソーに交換しなければならず、この
ワイヤーソーの交換は頻繁に行わなければならない欠点
がある。
【0022】 それに対しダイヤ焼結刃を用いると、表
面が摩滅しても新しい切削刃が次々と現れるため、切削
性が良く、ワイヤーソー交換の頻度が低下する。しかし
ながらダイヤ焼結刃を用いると、切削時の摩耗によって
ワイヤーソーの径が小さくなり、切削途中でワイヤーソ
ーを交換する時、新しい初期の径のワイヤーソーを切断
部に挿入することは困難となる。そのため図2に示すよ
うに、第1ワイヤーソー12で切削していく直後に第2
ワイヤーソー17によっても切削を行う。
【0023】その結果、図4に示すように、先行刃とし
ての第1ワイヤーソー12で切断溝25を形成し、第2
ワイヤーソー17で切断巾調整部26を形成することに
より、切断巾調整部26によって新しい初期の径のワイ
ヤーソーを切断溝内に挿入可能とする。
【0024】したがって、先行刃としての第1ワイヤー
ソー12が摩滅した時には、第2ワイヤーソー17が前
の第1ワイヤーソーとして作用し、新たな切断溝を形成
していき、その後方に挿入される新しいワイヤーソーが
切断巾調整用の第2ワイヤーソーとして機能する。
【0025】このようにして原子炉構造物は水平に切断
され、この切断を炉内構造物の上方から所定間隔で行う
ことによって、炉内構造物は水平方向に細かく切断され
る。
【0026】なお、原子炉構造物の水平切断装置とし
て、例えば、図5に示すような左右のレール27,28
上を走行する走行台車29を用いても良い。この走行台
車29の第1フレーム30には駆動モータ32を固定
し、その駆動プーリ33に掛ける第1ワイヤーソー34
を台車29に支持したガイドプーリ35,36,37,
38,39,40に順次掛けることにより第1ワイヤー
ソー駆動部41を構成する。
【0027】このような第1ワイヤーソー駆動部41と
同様の構成の第27ワイヤーソー駆動部42を第1ワイ
ヤーソー駆動部41の直後に設け、第1ワイヤーソー3
4を先行刃として、また第2ワイヤーソー43を切断巾
調整刃として用いる。
【0028】ワイヤーソーの駆動装置と切断の各水平面
が異なる時には、図6に示すように、基礎表面45の走
行台車46上に駆動プーリ47を支持した駆動装置48
を設け、駆動プーリ47に掛けたワイヤーソー50をガ
イドプーリ51,52によって切断水平方向に導き、炉
内構造物7等に固定した垂直ガイドプーリ53及び水平
ガイドプーリ54によってワイヤーソー50を水平面内
で駆動可能に配置する。走行台車46は、切断状況に合
わせてワイヤーソーが所定の張力を維持するよう後方へ
移動する。上記垂直ガイドプーリ53及び水平ガイドプ
ーリ54からなるガイドプーリユニット55を任意の水
平面に固定することにより、任意の水平面の切断が可能
となる。
【0029】一方、炉内構造物を垂直方向に切断する際
には、図7に示すように、炉内構造物7を囲むように門
型フレーム60をレール61,62上に移動自在に設け
る。門型フレーム60の支柱部63,64に上下方向に
移動自在に設けたプーリユニット65,66の各プーリ
にワイヤーソーを掛け渡し、モータ67によってワイヤ
ーソー68を駆動しつつ切断状況に合わせてプーリユニ
ット65,66を降下させることにより垂直方向の切断
が行われる。
【0030】垂直方向の切断に際しては、図8に示すよ
うに、基盤70上のレール71に走行自在に設けた台車
72に、駆動プーリ73を支持し、内部にモータを備え
た駆動装置74を設け、駆動プーリ73に掛けたワイヤ
ーソー69をガイドプーリ75,75,76を介し、壁
体77の上下部に設けたガイドプーリ78,79に掛け
渡しても良い。
【0031】ワイヤーソー69を炉内構造物7の頂部に
掛け、ワイヤーソー69を駆動すると、炉内構造物7は
垂直方向に切断され、その切断に合わせて走行台車72
を後方に走行させることにより、ワイヤーソーが常に所
定の張力で切断することが可能となる。
【0032】更に、これらの切断に際しては、放射能の
人体への影響を考慮して遠隔操作することが好ましく、
その際には、図9に示すように、切断する炉内構造物7
の周囲にビデオカメラ80を設置し、その映像を遠隔室
81内に設けたビデオモニター82により監視し、オペ
レータは操作盤83を操作することにより駆動装置83
の駆動制御を行うことが好ましい。
【0033】なお、図9には、炉内構造物7を水平に切
断することに際し1本のワイヤーソーにより切断する例
を示してしる。
【0034】切断に際し切り溝の拡大によって炉内構造
物の重量落下を防止するため、切り溝に楔を打ち込んで
も良い。
【0035】上記のような水平方向及び垂直方向の切断
によって、図10に示すように、炉内構造物7は、数多
くのブロックに切断される。これらのブロックは、グラ
ウト材によって特に放射能を発する機器が密封された状
態となるため、各ブロックの放射能発生は少なく、適宜
の搬送手段で廃棄物処理地へ輸送し保管、処理等を行
う。
【0036】
【発明の効果】本発明は、上記のようにしてなるので、
炉内構造物は、圧力容器の内外各種部材が、すべてグラ
ウト材により一体固化し、各機器の切断時の移動がない
ので、安定した切断を行うことができる。また、各機器
の切断時に破片等が飛び散ることがないので、放射能汚
染を減少することができる。また切断によるブロック内
の機器類は、グラウト材により覆われる結果、各ブロッ
クから発する放射能は減少し、ブロックの輸送が安全と
なる。
【0037】また、切断に際し、表面にダイヤモンド粒
を有するワイヤーソーを用いることにより切断作業を円
滑に行うことができる。
【0038】更に、切断に際して、先行切断刃と切断溝
巾調整刃を用いることにより、先行刃の摩滅によって薄
くなっていく切断溝巾を、それに続く切断溝巾調整刃に
より所定の巾に維持できるので、切断溝に新しい切断刃
を挿入することが容易となり、切断作業が円滑となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の炉内構造物にグラウト材を充
填した状態の断面図である。
【図2】本発明の実施例の水平切断状態を示す平面図で
ある。
【図3】本発明の実施例の水平切断状態を示す正面図で
ある。
【図4】本発明の実施例の水平切断時の切断状態を示す
断面図である。
【図5】本発明の水平切断の他の実施例を示す斜視図で
ある。
【図6】本発明の水平切断の更に他の実施例を示す側面
図である。
【図7】本発明の垂直切断状態を示す正面図である。
【図8】本発明の垂直切断の他の実施例を示す正面図で
ある。
【図9】本発明による切断時の監視システムを示す平面
図である。
【図10】本発明により切断された炉内構造物の断面図
である。
【符号の説明】
1 圧力容器 2 コンクリート基体 3 顎部 4 グラウト材 5 グラウト材 6 開口 7 炉内構造物 10 第1ガイドプーリ 11 第1駆動プーリ 12 第1ワイヤーソー 13 第1駆動装置 16 ガイドローラ 17 第2ワイヤーソー 18 第2ガイドプーリ 19 第2駆動プーリ 20 第2駆動装置 23 ガイドローラ 25 切断溝 26 切断巾調整部
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−237399(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) E04G 23/08 G21F 9/30 535 B24B 27/06 B28D 1/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】圧力容器内部及び圧力容器外部の周辺部材
    にグラウト材料を圧入してこれらを一体化し、圧力容器
    外周より切断を行うことを特徴とする原子炉の切断撤去
    方法
  2. 【請求項2】表面にダイヤモンド粒を有したワイヤーソ
    ーにより切断を行うことを特徴とする請求項1記載の原
    子炉の切断撤去方法
  3. 【請求項3】先行切断刃と切断溝巾調整刃を用いて二重
    切断を行うようにしたことを特徴とする請求項2記載の
    原子炉の切断撤去方法
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DE69208184T DE69208184T2 (de) 1991-08-26 1992-08-13 Verfahren zum Kernreaktorabbau
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