JP2784114B2 - 複合ロール - Google Patents

複合ロール

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JP2784114B2
JP2784114B2 JP4117828A JP11782892A JP2784114B2 JP 2784114 B2 JP2784114 B2 JP 2784114B2 JP 4117828 A JP4117828 A JP 4117828A JP 11782892 A JP11782892 A JP 11782892A JP 2784114 B2 JP2784114 B2 JP 2784114B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は鉄鋼圧延用等の複合ロー
ルに関する。
【0002】
【従来の技術】複合ロールは、図1に示すように耐摩耗
鋳鉄材で形成された外層1 を外殼材とし、前記外層1 の
内周面に溶着された中間層3 と、該中間層3 の内周面に
溶着された内層2 とで芯材を形成したものが多用されて
いる。この複層ロールは、芯材と外殻材の材質が異なる
こと及び鋳造品であることから、完成品の外殻材に残留
応力が存在した。
【0003】従来、この外殻材の軸方向表面残留応力
は、−25Kg/mm2 以下とされていた。(以下、マイナス
符号は圧縮応力を示し、プラス符号は引張応力を示
す。)即ち、従来は、外殻材の残留応力を低い値に管理
することで、ロールの品質を管理していた。一方、前記
中間層3 は、外層1 と内層2 とを直接溶着した場合に生
じる、外層1 から内層2 への高合金元素の混入を防止
し、内層の強靭性劣化防止のために形成されるものであ
る。
【0004】従来、耐摩耗性に優れた外層材として、特
公昭58−30382 号公報、特公昭61−16415 号公報に開示
されているように、Crを10〜25%含有した高クロム鋳
鉄や耐焼付性をも改善した黒鉛晶出高クロム鋳鉄が使用
されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、外殻材の軸方
向表面残留応力を−25Kg/mm2 以下に管理した複合ロー
ルは、高荷重圧延に十分に耐えることができず、クラッ
クが発生していた。そこで、耐クラック性を増すため、
高い残留応力を与えた複合ロールが要望されていた。
【0006】しかし、外殻材の軸方向表面残留応力を大
きくすると、それに伴ない芯材の残留応力が大きくな
り、芯材が強度的に耐えないという問題があった。ま
た、外殻材の表面軸方向残留応力を大きくすると、圧延
時の応力や熱応力が加算されて、芯材破損や境界剥離等
が発生するという問題があった。一方、近年、圧延条件
が苛酷になり、より高い耐摩耗性が要求されるようにな
った。このため、前記公報に言及されているように、高
クロム鋳鉄や黒鉛晶出高クロム鋳鉄にNb,Vの一種又
は二種を合計で2%以下添加して、その微細炭化物を結
晶核として生成させ、これによって組織の微細化、緻密
化を図り、もって耐摩耗性の向上が図られている。しか
し、耐摩耗性の向上の要求に十分応えているとはいえな
いのが実情である。
【0007】他方、鉄鋼圧延における耐摩耗性を大幅に
改善するには、材質中にWを多量に添加すればよいと考
えられる。しかしながら、複合ロールの外層は、主とし
て遠心力鋳造によって鋳造されることから、Wが比重差
により分離し、周方向に偏析が生じて均一な材質が得難
いという問題がある。そこで、本発明は、芯材破損や境
界剥離が生じない範囲において、最大限に外殻材(外
層)の表面軸方向残留応力を大きくし、耐クラック性の
向上を図った鉄鋼圧延用等の複合ロールを提供すること
を第1の目的とし、更には、耐摩耗性に優れかつ均一材
質の外層を備えた鉄鋼圧延用等の複合ロールを提供する
ことを第2の目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明は、次の手段を講じた。即ち、本発明の特徴
とする処は、耐摩耗鋳鉄材で形成された外層を外殼材と
し、前記外層の内周面に溶着された中間層と、該中間層
の内周面に溶着された内層とで芯材を形成してなる複合
ロールにおいて、ロール外径D1mm、芯材径D2mm、芯材の
引張強度σt Kg/mm2 とした場合、前記D1、D2、σ
t が、
【0009】
【数2】
【0010】となるよう構成され、前記外層は、化学組
成が重量%で、 C :1.0 〜3.0 %、 Si:0.1 〜2.0 %、 Mn:0.1 〜2.0 %、 Cr:3.0 〜10.0%、 Mo:0.1 〜9.0 %、 W :1.5 〜10.0%、 V及びNb の1種又は2種の合計で3.0 〜10.0%、 および残部実質的にFeからなり、前記中間層は、化学
組成が重量%で、 C :1.0 〜2.5 %、 Si:0.2 〜3.0 %、 Mn:0.2 〜1.5 %、 Ni:4.0 %以下、 Cr:4.0 %以下、 Mo:4.0 %以下、 W ,V及びNbの群から選ばれる1種又は2種以上を
計で12%以下、および残部実質的にFeからなり、前記
内層は片状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄又は黒鉛鋼で形成さ
れている。
【0011】また、外層成分には、前記外層合金成分の
ほかに、外層にAl:0.01〜0.50%、Ti:0.01〜0.50
%、Zr:0.01〜0.50%の内の群から選ばれる1種又は
2種以上を;中間層成分には、前記外層合金成分のほか
に、W、V、Nb、Al、Ti及びZrの群から選ばれ
る1種又は2種以上を合計で12%以下を含まれてなる。
【0012】同様に、外層成分には、前記外層合金成分
のほかに、Bが0.01〜0.50%を;中間層成分には、前記
中間層成分のほかに、W、V、Nb及びBの群から選ば
れる1種又は2種以上を合計で12%以下を含まれてな
る。 更に、外層成分には、前記外層合金成分のほかに、
外層にAl:0.01〜0.50%、Ti:0.01〜0.50%、Z
r:0.01〜0.50%の内の群から選ばれる1種又は2種以
上を;中間層成分には、前記中間層成分のほかに、W、
V、Nb、Al、Ti、Zr及びBの群から選ばれる1
種又は2種以上を合計で12%以下を含まれてなる。
【0013】
【作用】耐クラック性向上を図るため、各種実験を行っ
た。その結果、下記条件を満足しなければならないこと
が判明した。 条件A; 外殻材(外層)の耐クラック性向上のため
に、外殻材の軸方向表面残留応力σz1は、−30Kg/mm2
以上であること。
【0014】即ち、|σz1|≧30 …… 条件B; 境界剥離防止のために、半径方向境界部残留
応力σr3は、+10Kg/mm2 以下であること。 即ち、σr3≦10 …… 条件C; 芯材(中間層3 、内層2 を含めて芯材と以下
称す) の破損防止のため、軸方向芯材中心部残留応力σ
z3は、芯材の引張強度σt の1/4 以下であること。
【0015】即ち、σz3≦σt /4 …… 条件D; ペックの式より、
【0016】
【数3】
【0017】を満足すること。ここで、D1は複合ロール
の外径(mm)D2は芯材の外径(mm) 条件E; 外殻材と芯材との面積比の関係が、
【0018】
【数4】
【0019】を満足すること。そこで、前記条件AとB
とを両方満足するためには、式、式及び式とによ
り、
【0020】
【数5】
【0021】が成立することが必要となる。また、条件
AとCとを両方満足するには、式、式、及び、式
とにより、
【0022】
【数6】
【0023】が成立することが必要となる。従って、前
記式及び式を満足すれば、結局前記条件A、B、C
のすべてが満たされることになり、耐クラック性の向上
が図られ、かつ、芯材の破損防止、及び、境界の剥離防
止が図られることになる。次に本発明の複合ロールに係
る外層1 は、Cr, Mo,W,Nb,V,FeおよびC
が相互に結合した高硬度の複合炭化物が基地中に存在す
るため、常温および高温における硬度が向上し、耐摩耗
性が飛躍的に向上する。このため、従来の高クロム鋳鉄
等と同程度の寿命を確保する場合、外層1 厚さは鋳込み
厚さで80mm程度以下すなわち従来の厚さの80%程度と薄
くてもよいため、高価な合金を多量に含む外層材の使用
量が少なくて済む。また、外層1 は高クロム鋳鉄等と同
様、焼入れ熱処理が施されて高硬度が付与される。この
際、本発明に係る外層材は高硬度であり、高クロム鋳鉄
等に比べて残留応力が高くなるが、外層1 を薄くするこ
とができるため、残留応力を低く抑えることができ、耐
事故性を改善することができる。また、鋳込み厚さを80
mm程度以下に薄くすることができるため、急冷凝固する
ことができ、マクロ偏析が生じにくく、また微細組織に
なり、耐摩耗性が更に向上する。一方、外層1 を厚く形
成する場合でも、質量の大きいWを10%以下に抑えたの
で、偏析が比較的生じ易い遠心力鋳造により外層を鋳造
形成しても、マクロ偏析は生じにくく、組織の均一性に
優れる。
【0024】本発明は特定組成の高炭素鋳鋼により、外
層1 と内層2 との間に中間層3 を形成したので、外層1
の高合金成分が内層2 に混入して、その強靭性を劣化す
るのを防止することができる。また、中間層3 と内層2
との境界部は低合金となるので、炭化物層の形成が抑制
され、境界強度の向上を図ることができる。また、外層
のオーステナイト熱処理の際、内層2 の温度上昇を防止
することができ、内層材質の強靭性劣化を防止しつつ、
外層1 のみを1100℃以上の高温に加熱することができ
る。また、本発明の中間層3 組成では、外層1 の焼入れ
時にマルテンサイト変態することがないので、外層1 に
焼入れ熱処理を施しても、過大な残留応力が生じること
がなく、耐事故性に優れる。
【0025】また、内層2 を片状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳
鉄又は黒鉛鋼すなわち、黒鉛の晶出した鉄鋼材で形成し
たので、ヤング率を 19000kg/mm2 程度以下とすること
ができ、過負荷時にロールの偏平化によって負荷を吸収
し、耐事故性を向上することができる。また、低温歪取
り焼鈍によって、外層熱処理時の残留応力を軽減するこ
とができる。また、熱伝導性ひいては放熱性に優れ、圧
延時のロールの熱変形を防止することができる。又、良
好な靭性を有するため、衝撃的な圧延トルクに対しても
耐えることができる。
【0026】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づき説明す
る。図1に示すものは複合ロールであって耐摩耗性鋳鉄
材で形成された外殻材(外層1)の内周面に中間層3 が溶
着され、該中間層3 の更に内面に内層2 が溶着されたも
ので、本発明では中間層3 と内層2 を合せて芯材と称
す。図2に示すものはスリーブ状複合ロールである。こ
の複合ロールは、まず外殻材(外層) を遠心鋳造により
形成し、次に、その中空部に芯材すなわち中間層、内層
を順次鋳込むことにより得られる。
【0027】前記複合ロールの外径D1mmと芯材(中間
層)の径D2mmは、次の関係を満足するように設定されて
いる。
【0028】
【数7】
【0029】ここで、σt は芯材の引張強度(Kg /mm2)
である。図3は、前記複合ロールの残留応力を示す図で
あり、σz1は、軸方向表面残留応力(Kg /mm2z3は、
軸方向芯材中心部残留応力(Kg /mm2)、σr3は、半径方
向境界部残留応力(Kg /mm2)である。ロールの外径D1
芯材の径D2を、前記式、式の範囲に規定することに
より、ロール3 の軸方向表面残留応力σz1が、−30Kg/
mm2 以上になり、外殻材の耐クラック性の向上が図られ
る。また、半径方向境界部残留応力σr3が、+10Kg/mm
2 以上になり、境界剥離が防止される。更に、軸方向芯
材中心部残留応力σz3がσt /4Kg /mm2 以下になり、
芯材の割損が防止される。
【0030】次に、本発明の複合ロールの材質につい
て、下記に詳述する。まず、本発明の複合ロールの外層
1 に使用される耐摩耗鋳鉄材の化学組成の限定理由につ
いて説明する。以下、成分の単位はすべて重量%であ
る。 C:1.0 〜3.0 % Cは主としてFeおよびCrと結合してM7 3 型の高
硬度複合炭化物を形成すると共に、Cr, Mo, V, N
b, Wと結合してMC型, M6 C型,M2 C型等の高硬
度複合炭化物をも形成する。この高硬度複合炭化物形成
のために、 1.0%以上のC%が必要である。一方、 3.0
%を越えてCが含有されると炭化物量が増すと共に脆く
なり、耐クラック性が劣化するため、 3.0%以下とす
る。 Si:0.1 〜2.0 % Siは本発明材が鋳造合金であるため、湯流れ性の確保
のために必要な元素であり、同時に又、使用原材料から
0.1%程度は不可避的に含有される。しかし、2.0%を
越えると靭性の低下を招くため好ましくない。 Mn:0.1 〜2.0 % Mnは硬化能を増し、また、Sと結合してMnSを生成
し、Sによる脆化を防ぐ元素であり、同時に使用原材料
から 0.1%程度は不可避的に含有される。しかし、 2.0
%を越えると靭性の低下を招くため好ましくない。 Cr:3.0 〜10.0% CrはFe, Mo, V, Nb, Wと共にCと結合して、
高硬度複合炭化物を形成して高温に於ける耐摩耗性の向
上に寄与する。また、一部は基地中に固溶して焼入れ性
および耐摩耗性を改善する。 3.0%未満ではこれらの効
果が少なく、耐摩耗性改善が期待できない。一方、10.0
%を越えて含有されると靭性の劣化を来すため好ましく
ない。 Mo:0.1 〜9.0 % MoはFe, Cr, V, Nb, Wと共にCと容易に結合
して、主としてM7 3 型 M6 C型,M2 C型複合炭
化物を形成し、常温および高温硬度を高めて耐摩耗性の
向上に寄与する。MoはWに比較して少量添加でその効
果を発揮する。このさい、 0.1%未満では所期の耐摩耗
性を得ることができず、一方、 9.0%を越えると靭性の
低下を来し好ましくない。 W:1.5 〜10.0% Wも同様にFe, Cr, Mo,V, Nbと共にCと容易
に結合して複合炭化物を形成し、常温および高温硬度を
高めて耐摩耗性の向上に寄与する。 1.5%未満では所期
の耐摩耗性を得ることができず、一方、10.0%を越える
と靭性の低下を来し、耐ヒートクラック性を悪化させ
る。また、遠心力鋳造の際、マクロ偏析を生成し易くさ
せる。このため10.0%以下とする。V及びNbの1種又は2種の合計で3.0 〜10.0% VはNbと同様にFe, Cr, Mo, Wと共にCと容易
に結合して、主としてMC型の複合炭化物を形成し、常
温および高温硬度を高めて耐摩耗性の向上に寄与する。
また、このMC型複合炭化物は厚さ方向に枝状に生成す
るため、基地の塑性変形を抑止し、機械的性質、さらに
は耐クラック性の向上にも寄与する。単独または二種を
複合して 3.0%以上添加しないとかかる効果は現れにく
い。しかし、添加量が10.0%を越えると靭性の低下を招
来すると共に、遠心力鋳造の際、マクロ偏析を生成し易
くなる。このため、10.0%以下とする。
【0031】本発明外層1 の耐摩耗鋳鉄材は以上の合金
成分のほか残部がFeおよび不純物で形成される。尚、
P, Sは原料より不可避的に混入するが、材質を脆くす
るので少ない程望ましく、P:0.2 %以下、S:0.1 %
以下に止めておくのがよい。本発明に係る外層1 の耐摩
耗鋳鉄材には、前記合金成分のほかに、下記組成範囲の
Al, Ti,Zrの内の一種又は二種以上、又は及びB
を含有するものを含む。 Al, Ti、Zrが各々0.01〜0.50%、 Al, Ti,Zrは溶湯中で酸化物を生成して、溶湯中
の酸素含有量を低下させ、製品の健全性を向上させると
共に、生成した酸化物が結晶核として作用するために凝
固組織の微細化に効果がある。0.01%未満ではこの効果
は十分ではなく、一方、0.50%を越えて含有されると介
在物となって残留し、好ましくない。尚、Al, Ti,
Zrは、本発明では主として鋳造組織の微細化による耐
摩耗性改善のために添加されるものであり、単に脱ガス
を目的として添加されるものではない。 B:0.01〜0.50% Bは溶湯中の酸素と結合して、脱酸効果を示す。その
他、生成した酸化物を核とする凝固組織の微細化効果、
および基地中に溶け込んだBによる焼入れ性の増大効果
を有する。圧延ロールのような大質量の鋳物の場合、冷
却温度を速くすることが困難な場合があるが、焼入れ性
の増大によって、焼入れ組織を得易くなる。0.01未満で
はこのような効果が十分ではなく、一方0.50%を越える
と材質が脆くなり好ましくない。
【0032】次に本発明複合ロールの内層材2 について
説明する。内層材としては、下記の理由により黒鉛が晶
出した材料、具体的には片状黒鉛鋳鉄(FCと略記) 、
球状黒鉛鋳鉄(DCIと略記) 、黒鉛鋼(SGSと略
記) を用いる。 黒鉛晶出材を用いる理由 圧延使用時には、過負荷状態の発生(例えば、2枚
板噛み) は避けられないが、外層材のヤング率は 21000
〜 23000kg/mm2 と高いため、外層材中に大きな応力が
発生する。中間層のヤング率は 20000〜 23000kgf /mm
2 であるが、層厚が25〜30mm程度と比較的薄いため、複
合化する内層材のヤング率が低ければ、過負荷時には、
ロールの偏平化によって内層材の方で負荷を吸収し得
る。このため、内層材のヤング率を低くする方が、使用
時の安全性を増す。20000 kg/mm2 未満のヤング率とす
るためには、内層材は、黒鉛の晶出したものでなければ
ならない。 外層材は特殊合金が含まれており、また、焼戻し2
次硬化現象によって硬化するため、一般に残留応力の除
去がされ難い材料である。このため、複合ロールに対
し、外層材の硬化熱処理すると、外層材の変態による膨
張により、外層には圧縮応力、内層には引張応力が生じ
る。内層材の引張応力が過大になると、内層2 の破損や
中間層3 ・内層2 の境界部での破断が生じ、ロールの破
壊に至る。破壊を防止するには、複合ロールに歪取り焼
鈍を施し、内層材の残留応力を解放すればよい。しか
し、600 ℃を越える高温歪取り焼鈍では外層の硬度低下
を招来する。従って、低温歪取り焼鈍により、内層材の
残留応力を解放する必要がある。このためには、内層材
は黒鉛が晶出したものがよい。尚、本発明の場合、低温
歪取り焼鈍は外層の焼戻し熱処理によりその目的を達成
することができる。 ロールは使用時に圧延材(1000℃前後) から熱を受
ける。ロールの熱変形を防止、所定形状を維持するには
放熱が良好でなければならない。従って、内層は熱の伝
導が良くなければならない。そのため内層材として黒鉛
晶出材が好適である。 ロールのネック部には、ベンディング力とモーター
トルクに耐える強度が必要である。衝撃的な荷重もある
ことから、強度とともに靭性も重要である。黒鉛を晶出
させることにより、靭性を向上させることができる。
【0033】次に、複合ロールの内層2 を形成する各種
内層材の特徴および好ましい組成(単位wt%) について
説明する。内層は叙上の通り、黒鉛を含むことが必要で
あるが、外層1 と内層2 との溶着時に外層の高合金成分
の混入が必然的に生じる。この点を考慮して組成を決定
する必要がある。 (1) FCの場合 FCは鋳造性が良好で、ヤング率が10000 〜15000 kg/
mm2 と低く、又黒鉛の形態が片状であるため、残留応力
の除去が容易で、熱伝導率も高い。また、加工性も良好
で、中空ロールの内層材として用いた場合、内面加工が
容易である。もっとも、強度は30kg/mm2 程度が限度で
あるため、圧延荷重の大きな条件下で使用する複合ロー
ルには適さない。尚、下記組成のFCの固相線は1130〜
1170℃である。
【0034】以下に好ましい組成例と限定理由を示す。
C:2.5 〜4.0 % Cは黒鉛を晶出させるために必要であり、 2.5%未満で
は黒鉛量が少ない。一方、4.0 %を越えると黒鉛量が過
多となり、強度が低下する。 Si:0.8 〜2.5 % Siは黒鉛晶出を助長する作用をなし、 0.8%未満では
黒鉛化が不充分である。一方、 2.5%を越えると基地が
脆くなる。 Mn:0.2 〜1.5 % Mnは基地の強化と共にSの害を防ぐ作用がある。 0.2
%未満ではその作用がほとんど期待できない。一方、
1.5%を越えると材質が脆くなる。 P, S:各々0.2 %以下 P, Sは不純元素であるため少ない程よく、 0.2%以下
に止めるのがよい。低濃度のものは高コストになるた
め、経済性を考慮すると、0.01%程度以上の含有は止む
を得ないであろう。 Ni:3.0 %以下 Niは黒鉛化と基地の強化のために有効であるが、 3.0
%を越えると未変態組織が残留し易くなり、強度が劣化
する。 Cr, Mo:各々2.0 %以下 Cr, Moは基地の強化作用があるが、多過ぎると黒鉛
化を阻害させる。基地強化のためには、 0.1%以上含有
させることが望ましい。一方、黒鉛化の阻害を防止する
には、外層からの混入量を含めて 2.0%以下に止める必
要がある。W, V及びNbの群から選ばれる1種又は2
種以上の合計で4.0 %以下これらの元素は外層から必然
的に混入する。W, V, Nbは内層材質改善作用はな
い。従って、これらの元素は不純物として解釈され、内
層材の機械的性質を劣化させない範囲として、4%まで
許容される。尚、外層に1種又は2種以上のAl, T
i, Zr,Bを含む場合、これらの元素も中間層を介し
て内層に必然的に混入するが微量であるため、材質上ほ
とんど問題にはならない。
【0035】FCは以上の成分の他、残部実質的にFe
で形成される。尚、中間層に溶着する前すなわち鋳込前
の溶湯組成範囲を下記に例示する。溶湯組成は溶着後に
上記内層組成となるように、中間層からの成分混入量が
考慮されて決定される。 C :2.5 〜4.0 %、 Si:0.8 〜2.5 %、 Mn:0.2 〜1.5 %、 P :0.2 %以下、 S :0.2 %以下、 Ni:3.0 %以下、 Cr:2.0 %以下、 Mo:2.0 %以下、 残部実質的にFe (2) DCIの場合 DCIは鋳造性が良好で、ヤング率が15000 〜19000 kg
/mm2 であり、黒鉛量も多い。更に、その黒鉛の形態
は、FCと異なり、球状であるため、強度および靭性も
優れている。また、加工性も良好である。このため内層
材として好適である。尚、特公昭59−52930 号公報、特
公昭59−52931 号公報に開示されているように、フェラ
イト・オーステナイト共存温度域(780 〜900 ℃) に加
熱保持後、200 〜800 ℃/Hrで急冷し、オーステナイ
トを微細パーライト化する熱処理により、基地組織がフ
ェライト・パーライトの2相混合組織となる。この組織
はクラックの進展、残留応力の除去効果に特に優れる。
前記2相混合組織化の熱処理は、複合ロールの外層の硬
化熱処理の前熱処理として行えばよい。尚、下記組成の
DCIの固相線は1130〜1170℃である。
【0036】以下に好ましい組成例と限定理由を示す。 C :2.5 〜4.0 %、 Si:1.3 〜3.5 %、 Mn:0.2 〜1.5 %、 P :0.2 %以下、 S :0.2 %以下、 Ni:3.0 %以下、 Cr:2.0 %以下、 Mo:2.0 %以下、 W, V及びNbの群から選ばれる1種又は2種以上の合
計で4%以下、 Mg:0.02〜0.1 %、 残部実質的にFe Si, Mg以外の成分限定理由はFCと同様のため、こ
の二成分について説明する。
【0037】Siは黒鉛化促進元素である。DCIは黒
鉛の球状化のため、Mgが含有される。Mgは強力な黒
鉛化阻害元素であるため、Mgの存在下で黒鉛化を図る
には、Si 1.3%以上必要である。一方、 3.5%を越え
ると、基地を脆くすると共に、多量のフェライトを析出
させ、強度も低下する。Mgは黒鉛を球状化させる作用
を有する。その作用を得るためには0.02%以上必要であ
る。一方、 0.1%を越えると、黒鉛化を阻害し、又鋳造
欠陥を発生させ易くする。
【0038】尚、外層1 に溶着する前のDCIの好適な
溶湯組成を下記に例示する。 C :2.5 〜4.0 %、 Si:1.3 〜3.5 %、 Mn:0.2 〜1.5 %、 P :0.2 %以下、 S :0.2 %以下、 Ni:3.0 %以下、 Cr:2.0 %以下、 Mo:2.0 %以下、 Mg:0.02〜0.1 %、 残部実質的にFe (3) SGSの場合 SGSはヤング率が17000 〜20000 kg/mm2 と高く、ま
た黒鉛量も少ないため、残留応力は比較的除去され難
い。また、鋳造性もあまり良好ではなく、大きな押湯等
を必要とする。しかし、強度は40kg/mm2 以上と優れて
おり、また靭性にも優れているので、大きなベンダー荷
重等が働く苛酷な使用条件で用いられるロールには最適
である。また、固相線(下記組成のSGSの場合) が11
70〜1250℃とFC, DCIに比べて高いので、外層のオ
ーステナイト化熱処理の際に劣化しにくい利点がある。
【0039】以下に好ましい組成例と限定理由を示す。 C :1.0 〜2.3 %、 Si:0.5 〜3.0 %、 Mn:0.2 〜1.5 %、 P :0.2 %以下、 S :0.2 %以下、 Ni:3.0 %以下、 Cr:2.0 %以下、 Mo:2.0 %以下、 W, V及びNbの群から選ばれる1種又は2種以上の合
計で4.0 %以下、 残部実質的にFe C, Si以外の成分限定理由はFCと同様のため、この
二成分について説明する。
【0040】Cは黒鉛を晶出させるために必要である。
1.0%未満では黒鉛の晶出は生じにくい。一方、 2.3%
を越えると黒鉛形状が崩れて、強度が低下する。Siは
黒鉛化のために必要である。 0.5%未満では黒鉛晶出は
困難となり、一方、 3.0%を越えると基地が脆くなる。
尚、外層に溶着する前のSGSの好適な溶湯組成を下記
に例示する。
【0041】 C :1.0 〜2.3 %、 Si:0.5 〜3.0 %、 Mn:0.2 〜1.5 %、 P :0.2 %以下、 S :0.2 %以下、 Ni:3.0 %以下、 Cr:2.0 %以下、 Mo:2.0 %以下、 残部実質的にFe 次に、中間層について説明する。中間層は、外層の合金
成分が内層に混入するのを軽減することを目的の一つと
して形成されるが、それ自体も30kg/mm2 程度以上の強
度が必要である。強度が不足すると、外層と中間層との
境界部が破断し、外層が剥離する。従って、中間層には
外層から多量の合金成分が混入しても高強度な材質とす
る必要がある。かかる理由から、中間層材としては下記
組成の高炭素鋳鋼(ADと略記) が好適である。以下、
本発明に係る中間層材の組成と限定理由を示す。 C:1.0 〜2.5 % Cは強度向上に寄与するが、 1.0%未満では凝固点が高
くなり、溶着が不充分になり易い。一方、 2.5%を越え
ると炭化物が過多となり、材質が脆くなる。 Si:0.2 〜3.0 % Siは脱ガスの促進作用、湯流れ性の向上作用がある。
0.2%未満ではかかる作用が期待できず、一方、 3.0%
を越えると材質が脆化する。尚、高Si領域ではNi含
有量との関係で黒鉛の晶出が見られる場合があるが、材
質上問題はない。 Mn:0.2 〜1.5 % Mnは内層材のダクタイル鋳鉄と同様の理由によって上
記範囲に限定される。 Ni:4.0 %以下 Niは材質を強化する作用がある。しかし、 4.0%を越
えると作用が飽和すると共に未変態組織が生じ易くな
り、強度が劣化する。 Cr, Mo:各々 4.0%以下 Cr, Moは材質を強化する作用がある。しかし、 4.0
%を越えると機械的性質がかえって劣化するようにな
る。W, V及びNbの群から選ばれる1種又は2種以上
合計で12%以下これらの元素は中間層の材質を向上す
る作用はほとんどないが、外層からの混入は避けられな
い。中間層材質の機械的性質を劣化させない範囲とし
て、12%まで許容される。
【0042】尚、外層に、1種又は2種以上の,Al,
Ti及びZr、又は及びBを含む場合には、中間層に下
記の成分を含有するものも含む。W,V,Nb,Al,
Ti及びZr、又は及びBの群から選ばれる1種又は2
種以上の合計で12%以下これらの元素も中間層に必然的
に入ってくる。この場合、これらの元素は中間層の材質
を向上する作用はほとんどないが、中間層材質の機械的
性質を劣化させない範囲として、これらの元素の群から
選ばれる1種又は2種以上の合計で12%以下とする。
【0043】中間層材の成分は、以上の他、残部実質的
にFeで形成される。尚、P, Sは不純物であり、材質
を脆くするため少ない程よく、本発明においては、内層
材と同様、両者とも 0.2%以下に止めるのがよい。尚、
外層1 に溶着する前の溶湯組成範囲を下記に例示する。
溶湯組成は溶着後に上記中間層3 組成となるように、外
層1 からの成分混入量が考慮されて決定される。 C :1.0 〜2.5 % 、 Si:0.2 〜3.0 %、 Mn:0.2 〜1.5 % 、 P :0.2 %以下、 S :0.2 %以下、 Ni:4.0 %以下、 Cr:4.0 %以下、 Mo:4.0 %以下、 残部実質的にFe 本発明では、外層1 と内層(軸芯部)2 との間に 1.0〜
2.5 %Cの中間層3 を設けたので、内層2 に有害な合金
元素が外層1 から内層2 へ、溶着の際に直接混入するの
を大幅に抑制することができるほか、下記の効果を奏す
る。
【0044】外層1 の焼入れ熱処理の際、オーステナイ
ト化熱処理のため、外層1 を1100℃以上に加熱するのが
よいが、外層1 を1100℃以上に加熱しても内層2 への伝
熱は中間層3 を介して行われるため、熱量の調整により
内層2 の温度を1100℃以下に容易に抑えることができ、
内層2 の溶損を防止することができる。中間層3 は外層
1 との溶着によって、Cr, Mo, W, Vの濃度が高く
なるが、それでもこれらの元素は外層1 よりも低く抑え
られるので、外層1 と内層2 を直接溶着させた時より
も、外層1 と中間層3 を溶着させた後、中間層3 と内層
2を溶着させる方が、内層2 の溶着部分の合金濃度は低
くできる。このため、中間層3 を設けた場合は内層2 と
の境界に炭化物層が形成されにくく、境界強度が改善で
きる。
【0045】また、本発明に係る中間層3 はロールの焼
入れ熱処理中にその大半がパーライト変態し、更に残部
はベイナイト変態する。マルテンサイト変態は起こらな
いか、起こしてもごくわずかの量である。このため、マ
ルテンサイト変態に伴う大きな膨張挙動がなく、ロール
への残留応力を大きくすることはない。尚マルテンサイ
ト変態を多量に起こすと、外層のマルテンサイト変態と
合わさって、外層1 ・中間層3 に大きな圧縮の残留応力
(軸方向) 、内層2 にはそれに見合う大きな引張の残留
応力(軸方向) が働らき、内層2 が引張・破壊する。
【0046】本発明の複合ロールは、通常、中実状ロー
ルの場合、外層1 および中間層3 が遠心力鋳造された
後、その内部に内層2 (軸芯部) が静置鋳造される。ま
た、スリーブロールの場合、外層1 、中間層3 に引き続
いて内層2 も遠心力鋳造される。図4は横型遠心力鋳造
装置を示しており、遠心力鋳造用金型4 は回転ローラ5,
5 によって回転自在に支持されており、溶湯は堰鉢6 か
ら注湯樋7 を介して金型4 内に鋳込まれる。8は湯止め
用砂型である。中実状の複合ロールを鋳造するには、ま
ず、外層材溶湯を回転する金型4 に鋳込み、それが凝固
した後に、外層1の内周面に中間層材溶湯を鋳込んで、
中間層3 を遠心力鋳造する。その後、外層1 と中間層3
とを内有した金型4 を起立させ、その両端に軸芯部形成
用の上型、下型を連設して静置鋳型を構成し、その内部
に内層材溶湯を鋳込めばよい。該横型遠心力鋳造装置に
おいては、金型内に鋳込まれた溶湯の各部は金型の回転
毎に上下動するため、Gの変動があり、またローラや金
型の偏心や傷により振動が発生し易く、鋳込まれた外層
材溶湯中の成分は移動し易い。このため、厚肉の外層を
鋳造する場合、成分の移動により偏析が生じ易くなるの
で、通常、凝固開始温度+70℃程度以下として比較的低
温で鋳込むのがよい。もっとも、本発明に係る外層材は
高耐摩耗材であるために、摩耗しにくく、外層は比較的
薄くてもよく、鋳込厚さで80mm(望ましくは40〜70mm)
程度までは金型により急冷されるため、前記温度より高
温で鋳込んでも偏析のおそれはほとんどない。尚、製品
外層厚さとしては中間層3 による溶解代20mm、加工代10
mmを考慮すると50mm(望ましくは10〜40mm) 程度とな
る。
【0047】図5は立型遠心力鋳造装置を示しており、
遠心力鋳造用金型11の上下端には上型12、下型13が組み
立てられており、該鋳型は回転する基盤14に同心状に機
械的に固定されている。このため、堰鉢15を介して鋳型
内に鋳込まれ、遠心力の作用で金型11内面に上昇し付着
した外層材溶湯16は、Gの変動や振動を受けにくい。従
って、立型遠心力鋳造すれば、厚肉の外層を鋳造する場
合でも偏析が生じにくいため、より高温で鋳込むことが
でき、作業性の向上や異物の混入による鋳造欠陥の防止
に効果的である。尚、遠心力鋳造用金型11のみ基盤14に
固定し、外層および中間層を鋳造後、上型、下型を組み
立て、軸芯部を静置鋳造してもよいことは勿論である。
【0048】本発明の外層耐摩耗鋳鉄材は、複合ロール
の外層として鋳造後、ロール全体を焼入れ温度(オース
テナイト化温度) から 400〜 650℃までの温度域を 150
℃/Hr以上の冷却速度で焼入れることにより、良好な
焼入れ組織を得ることができる。焼戻しは 500〜 600℃
の温度で1回ないし数回行なうとよい。本発明に係る外
層材は、オーステナイト化熱処理の際に基地中に固溶し
たMo,W,V,Nb等が焼戻し熱処理によって微細炭
化物として析出し、焼戻し2次硬化現象を生じるため、
高温硬度に優れる。
【0049】外層の加熱方法としては、ロール全体を加
熱炉に入れて加熱する方法、外層外周面の回りに誘導加
熱コイルや多数のガスバーナを配置しておき、これらに
よって外層のみを急速加熱する方法がある。前者は昇温
に時間がかかり、外層表面に厚い酸化膜ができ、外層の
歩留りが低下する。更に、鋳鉄材質の内層の溶損を回避
して加熱するには1100℃(望ましくは1000℃) 以下の加
熱に止めなければならず、このため炭化物を基地中に十
分固溶させることが難しく、以後の熱処理によっても十
分な硬度が得難いという問題がある。これに対して、外
層のみの加熱方法によれば、中間層の形成と相まって、
外層を1100℃以上に、内層を1100℃未満に確実に止める
ことができるので、内層の部分溶融や、結晶粒の粗大化
による強度低下を防止することができる。また、内層
(軸芯部) の中心に向かうほど低温となるため、オース
テナイト化温度に加熱後、外層の熱を内部へ逃がすこと
ができ、焼入れの際、外層深部の冷却速度を大きくする
ことができる。
【0050】本発明の複合ロールは熱間圧延、冷間圧延
を問わず、圧延設備の圧延用ロールおよびその付帯設備
のピンチロールあるいは圧延材の搬送用ローラー等の、
耐摩耗性を要求されるロール、ローラーに適用される。
尚、圧延材としては、鉄鋼および非鉄金属のみならず非
金属をも対象とする。次に本発明の具体的実施例を掲げ
る。 (1) 内径φ 810mmの遠心力鋳造用金型に表1の外層材溶
湯を遠心力鋳造し、外層が完全に凝固した後引き続い
て、同表の中間層材溶湯を遠心力鋳造し、外層と中間層
とを溶着させた。鋳込量は肉厚で外層60mm、中間層30mm
とした。尚、実施例は試料No.1〜6であり、 No.7の従
来例の外層材は耐摩耗性を改善した高クロム鋳鉄材であ
る。表中の組成の単位は重量%、残部は実質的にFeで
ある。 (2) 中間層が完全に凝固するのを待って、金型の回転を
止め、外層および中間層を内有した金型を垂直に立て
て、両端に上型および下型を連設して、その内部に同表
に併せて示した内層材(軸芯材) 溶湯を鋳込んだ。
【0051】
【表1】
【0052】 (3) 鋳造された複合ロールを粗加工した後、実施例のロ
ールに対しては、 600℃に均一に予熱後、図6に示すよ
うに、ロールを水平に対向配置されかつロール軸方向に
沿って 250mmピッチで平行に列設されたガスバーナ21間
に回転自在に支持し、ロールを回転させながら、外層の
表面を加熱した。外層表面温度が1165℃、内層の中心部
の温度が 870℃となったところで加熱を止めた。加熱に
要した時間は 250分であった。熱伝導の温度データよ
り、本例の場合、内層外周面付近の温度は 970℃と推定
された。一方、従来のロールに対しては、ロール全体を
1050℃で5時間保持してオーステナイト化した。なお、
前記粗加工した複合ロールの外径D1は784mm 、芯材径
(中間層の外径)D2は724mm であった。 (4) 実施例および従来例のロールに対して、加熱停止
後、速やかに噴霧水冷を行い、ロール表面温度を 500℃
に急冷した後、常温まで放冷した。その後、550℃で20
時間保持する焼戻し熱処理を2回繰り返した。熱処理後
の外層表面硬度は、下記表2の通りであった。同表よ
り、実施例の外層は、従来例のそれに比べて、硬度の向
上が著しく、耐摩耗性に優れていることが分かる。尚、
外層表面の酸化状態を観察したところ、酸化層の厚さ
は、実施例では 0.5mm程度であったのに対して、従来例
では3.0mm 程度と著しかった。
【0053】
【表2】
【0054】(5) 胴表面を仕上加工した後、超音波探傷
試験によって溶着状況を確認したところ、いずれのロー
ルについても溶着は良好であった。次に、ロール胴部を
切断し、外層断面を目視観察したところ、いずれのロー
ルも成分の偏析は認められなかった。又、中間層の層厚
の中央部および内層(軸芯部) 中心部における成分を分
析した結果を表3に示す。同表より、実施例および従来
例とも内層における外層高合金成分の混入量は非常に少
ないことが分かる。
【0055】
【表3】
【0056】(6) また、各試料の内層から引張試験片を
採取し、引張試験を行った結果を表4に示す。同表よ
り、内層がDCIの実施例のNo.1および4〜6は従来例
の No.7に比して、高強度であり、従来例は実施例に比
して約20%の劣化が認められる。
【0057】
【表4】
【0058】
【発明の効果】本発明は、ロール外径、芯材径ならびに
芯材の引張強度を、特定の関係式を満足するようにし、
更にはロール材質を特定組成のものとすることにより、
つまり物理的、化学的の二面から優れた複合ロールを提
供できた。即ち、前者の構成により耐クラック性の向
上、境界部剥離の防止、かつ、芯材の割損の防止が図ら
れた。また後者の構成により下記の効果を奏した。即ち
本発明の複合ロールはその外層をCr,Mo,W, の所
定量と更に、V及びNbの1種又は2種の特定量を含有
した特殊鋳鉄材で形成したので、これらの高硬度複合炭
化物の存在により、耐摩耗性を飛躍的に向上させること
ができ、また鋳造に際しマクロ偏析も生じにくい。ま
た、特定組成の高炭素鋳鋼により中間層を形成したの
で、外層から内層への高合金成分の混入を著しく軽減す
ることができ、境界強度の向上を図ることができ、マル
テンサイト変態しないため残留応力を増加させることが
なく、更に外層のオーステナイト化熱処理時の内層の溶
損や強度低下を防止することができる。また、内層を片
状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄又は黒鉛鋼で形成したので、
強度および靭性が良好で、ヤング率を外層のそれよりか
なり低くすることができ、過負荷時にはロールの偏平化
によって外層に過大な応力を生じるのを防止することが
でき、安全性や耐事故性に優れる。更に、放熱性にも優
れるため、熱変形も生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る複合ロールの断面図である。
【図2】本発明に係るスリーブ状複合ロールの断面図で
ある。
【図3】応力線図である。
【図4】横型遠心力鋳造装置の主要部断面図である。
【図5】立型遠心力鋳造装置の主要部断面図である。
【図6】複合ロール外層加熱状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 外層 2 内層 3 中間層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 木村 広之 兵庫県尼崎市西向島町64番地 株式会社 クボタ 尼崎工場内 (72)発明者 志方 敬 兵庫県尼崎市西向島町64番地 株式会社 クボタ 尼崎工場内 (56)参考文献 特開 平2−258949(JP,A) 特開 昭56−62950(JP,A) 特開 平2−205656(JP,A) 特開 昭64−5611(JP,A) 特開 昭61−23509(JP,A) 特開 平1−166809(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C22C 37/00 - 38/60 B21B 27/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 耐摩耗鋳鉄材で形成された外層を外殼材
    とし、前記外層の内周面に溶着された中間層と、該中間
    層の内周面に溶着された内層とで芯材を形成してなる複
    合ロールにおいて、 ロール外径D1mm、芯材径D2mm、芯材の引張強度σt Kg/
    mm2 とした場合、前記D1、D2、σt が、 【数1】 となるよう構成され、 前記外層は、化学組成が重量%で、 C :1.0 〜3.0 %、 Si:0.1 〜2.0 %、 Mn:0.1 〜2.0 %、 Cr:3.0 〜10.0%、 Mo:0.1 〜9.0 %、 W :1.5 〜10.0%、V及びNb の1種又は2種の合計で3.0 〜10.0%、 および残部実質的にFeからなり、 前記中間層は、化学組成が重量%で、 C :1.0 〜2.5 %、 Si:0.2 〜3.0 %、 Mn:0.2 〜1.5 %、 Ni:4.0 %以下、 Cr:4.0 %以下、 Mo:4.0 %以下、W ,V及びNbの群から選ばれる1種又は2種以上の合
    計で 12%以下、 および残部実質的にFeからなり、 前記内層は片状黒鉛鋳鉄、球状黒鉛鋳鉄又は黒鉛鋼で形
    成されていることを特徴とする複合ロール。
  2. 【請求項2】 外層にAl:0.01〜0.50%、Ti:0.01
    〜0.50%、 Zr:0.01〜0.50%の内の群から選ばれる1種又は2種
    以上を ; 中間層にW、V、Nb、Al、Ti及びZrの群から選
    ばれる1種又は2種以上の合計で12%以下を含まれてな
    ることを特徴とする請求項1に記載の複合ロール。
  3. 【請求項3】 外層にBが0.01〜0.50%を;中間層に
    W、V、Nb及びBの群から選ばれる1種又は2種以上
    の合計で12%以下を含まれてなることを特徴とする請求
    項1記載の複合ロール。
  4. 【請求項4】 外層にAl:0.01〜0.50%、Ti:0.01
    〜0.50%、 Zr:0.01〜0.50%、Bが0.01〜0.50%の内の群から選
    ばれる1種又は2種以上を ; 中間層にW、V、Nb、Al、Ti、Zr及びBの群か
    ら選ばれる1種又は2種以上の合計で12%以下を含まれ
    てなることを特徴とする請求項1に記載の複合ロール。
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