JP2782494B2 - 排水浸透構造物設置構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、雨水や雑排水を収容
し、開放する底面側から地中に浸透させて処理する排水
浸透構造物の設置構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、雨水や雑排水を集めて地下に浸透
させて処理する地下浸透枡やマンホール等の排水浸透構
造物は、砂利を敷き詰めた基礎砂利層の上に直接、セメ
ントコンクリート製の底部側に開放する枡部材を設置し
て構成されており、雨水や雑排水は砂利層を介して地中
に浸透するようになっている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のように基礎砂利層の上に直接枡部材を設置した構成
では、基礎砂利層の中に枡部材が沈下埋没してしまうと
いう問題がある。又、時間の経過に従って基礎砂利層に
異物が付着して次第に目詰まりを生じ、水分の地下浸透
ができなくなって多量の水分を保持した極めて液状化を
生じやすい状態となり、地震等によって基礎砂利層やそ
の下の地盤が液状化すると、枡部材が容易に流動したり
浮き上がりを生じたりするという問題があった。

【０００４】本発明は、上記問題に鑑みてなされたもの
であって、枡部材を安定的に設置可能であると共に、液
状化の要因となる基礎砂利層に異物が付着することによ
る目詰まりを防ぎ、基礎地盤の液状化による枡部材の流
動や浮き上がりを防止することのできる排水浸透構造物
設置構造を提供しようとするものである。

【０００５】

【課題を解決する為の手段】上記目的を達成する本発明
の排水浸透構造物設置構造は、雨水や雑排水を収容し、
開放する底面側から地中に浸透させて処理するものであ
って、底部側に開放する枡部材が、基礎砂利層の上に砂
を通過させず透水性を有するマット部材を介して設置さ
れていることを特徴とする。

【０００６】

【作用】枡部材に収容された水に含まれる異物はマット
部材によって濾し取られ、マット部材を透過した水分の
みが基礎砂利層を通って地中に浸透する。又、マットの
下面と砂利との間の水圧が上昇した場合には、水がマッ
ト部材を逆に透過して枡部材内に漏れ出、過剰間隙水圧
が解消される。

【０００７】

【発明の実施例】以下添付図面を参照して本発明の一実
施例について説明する。図１は、本発明に係る排水浸透
構造物設置構造の一実施例を適用した浸透形マンホール
の縦断面図である。

【０００８】図示マンホール１は、基礎砂利層２の上に
マット部材としてのマット１０が敷設され、このマット
１０を介して略立方体状のコンクリート枡２０が設置さ
れている。コンクリート枡２０の上には、リング状の直
壁ブロック２１及び斜壁ブロック２２が所定の段数積層
され、これによって内部に裾拡がりテーパーの通路空間
が鉛直に形成されている。これら積層ブロック２１，２
２の最上部には口輪２３が重ねられ、この口輪２３の上
面が地表面３と一致するように地中に埋設されると共
に、この口輪２３の内周に図示しない蓋が嵌合して内部
を閉塞するようになっている。

【０００９】コンクリート枡２０は、内部に円筒状の排
水収容空間２０ａが形成されており、この排水収容空間
２０ａに二本の排水管２４，２５が水平方向略直列に接
続されている。

【００１０】マット１０は、図１のＡ−Ａ断面図に相当
する図２に示すように、その平面形状がコンクリート枡
２０の平面形状より所定量大きな長方形に形成されてい
る。その長手方向を排水管２４，２５の配設方向に一致
させて配設され、長手方向端部は排水管２４，２５の下
側に位置している。本実施例におけるマット１０は、部
分断面図である図３に示すように、上下二層のアスファ
ルト層１１，１２の間に例えばガラスクロス等の補強シ
ート１３が介装されて所定の厚さに形成されている。上
下のアスファルト層１１，１２の境界位置（補強シート
１３介装位置）は、後述するフィルター充填筒１５の下
筒部１５ａの上縁より所定量下側となっている。

【００１１】マット１０には、その表裏面を貫通して筒
形の透孔１４が所定ピッチ（例えば５cm〜１０cm）で多
数形成されており、これら各透孔１４に、内部にフィル
ター材１６が充填された筒状のフィルター充填筒１５が
嵌め込まれている。

【００１２】フィルター充填筒１５は、直径が例えば２
cm〜３cmの筒状であって、下筒部１５ａと上筒部１５ｂ
とに上下二分割され、夫々フィルター材１６ａ，１６ｂ
が充填されて内周面に接着固定されている。上筒部１５
ｂの下縁外周には小径の嵌合部が形成されており、この
嵌合部が下筒部１５ａの上端内周に嵌合することで該上
筒部１５ｂは下筒部１５ａに連結されている。フィルタ
ー材１６は、不織布又はフェルト等水は透過するが砂は
透過しない素材で形成され、透水係数Ｋ＝１０-1〜１０
-3cm/sec程度のものが適する。

【００１３】上記構成のマット１０は、下記のごとくし
て製造することができる。即ち、フィルター充填筒１５
の下筒部１５ａを所定のピッチで必要数配置しておき、
この下筒部１５ａの間を埋めるようにして下筒部１５ａ
の上縁付近までアスファルトマチックを打設し、このア
スファルトマチックの上面にフィルター充填筒１５と対
応する部分が開口形成された補強シート１３を敷設す
る。次いで、下筒部１５ａの上縁に上筒部１５ｂを嵌合
させた後、各上筒部１５ｂの間を埋めるように上筒部１
５ｂの上縁付近までアスファルトマチックを打設して完
成する。このマット１０の製造は、工場において所定の
サイズに予め形成すれば良いが、マンホール設置現場で
行うこともできる。

【００１４】上記のごとき設置構造のマンホール１で
は、コンクリート枡２０はマット１０を介して基礎砂利
層２の上に設置されている為、マンホール１全体の重量
はマット１０によって分散され、基礎砂利層２によって
安定的に支持されると共に基礎砂利層２内に沈下埋没す
ることがない。又、排水管２４，２５を介して集合され
コンクリート枡２０の排水収容空間２０ａ内に収容され
た雨水や排水は、マット１０の透孔１４に設けられたフ
ィルター材１６を介して（透過して）基礎砂利層２に達
し、地中に浸透する。この時、雨水や排水中に含まれた
異物は、フィルター材１６によって濾され、基礎砂利層
２には水分のみが浸透する為、基礎砂利層２が異物によ
って目詰まりを生ずることはなく、経時後も液状化を生
じやすい多量の水分を保持した状態となることはない。
更に、基礎砂利層２が水分を含みマット１０の下面との
間の間隙水圧が上昇すると、フィルター材１６を介して
水がコンクリート枡２０内に流入することで間隙水圧が
解消されることとなり、基礎砂利層２及び地盤の液状化
が防がれる。従って、地震等による地盤の液状化によっ
てコンクリート枡２０部材が流動したり浮き上がりを生
じたりすることがないものである。

【００１５】尚、上記実施例では、マット１０をアスフ
ァルトにより構成したが、これに限るものではなく、不
透水性でその上に配置される構造物に押し潰されること
のない硬度を備えるものであれば、例えばゴムや合成樹
脂等の他の素材であっても良く、適宜変更可能なもので
ある。

【００１６】図４は、マット部材の他の実施例の部分断
面図である。本実施例は、ゴムによって形成されたマッ
ト４０に多数の透孔４４が穿設され、この透孔４４にフ
ィルター材４６が充填されたフィルター充填筒４５が嵌
め込まれて構成されている。フィルター材４６は前述の
実施例と同様に不織布又はフェルト等からなり、フィル
ター充填筒４５の内周面に接着固定されている。

【００１７】図５は、前述の図４に示す実施例の変形例
であって、ゴムによって形成されたマット５０に穿設さ
れた多数の透孔５４に、フィルター充填筒を介すること
なく直接フィルター材５６を充填してその内周面に接着
固定したものである。

【００１８】図６及び図７は、マット６０，７０に水平
方向の透水層６７，７７を設け、この透水層６７，７７
によって各透孔６４，７４が連通するように構成したも
のである。図６はマット６０を上下二層としてその間に
フィルター材６６と同様なフィルター素材よりなる透水
層６７を介設したものであり、図７はマット７０の下面
にフィルター材７６と同様なフィルター素材よりなる透
水層７７を貼り付けたものである。これら図６及び図７
に示す実施例では、水は垂直方向のみでなく透水層６
７，７７を通って水平方向に移動・拡散し易くなり、水
の地下浸透が促進されると共にマット６０，７０下面側
の水圧拡散効果を高めることができる。尚、水平方向の
透水層はマットの上側に設けても良く、更に、上、中、
下の各層に設けても良い。

【００１９】

【発明の効果】以上述べたように、本発明に係る排水浸
透構造物設置構造によれば、底部側に開放する枡部材
が、基礎砂利層の上に砂を通過させず透水性を有するマ
ット部材を介して設置されている為、枡部材が基礎砂利
層の中に沈下埋没することがない。又、枡部材に収容さ
れた雨水や排水はマット部材によって異物が濾されて基
礎砂利層には水分のみが浸透する為に基礎砂利層が異物
によって目詰まりを生ずることはないと共に、基礎砂利
層が水分を含みマットの下面との間の間隙水圧が上昇す
るとマットを介して水が枡部材内に流入することで間隙
水圧が解消され、基礎砂利層及び地盤の液状化が防がれ
る。従って、地震等に起因する地盤の液状化によって枡
部材が流動したり浮き上がりを生じたりすることがな
い。

【００２０】即ち、枡部材を安定的に設置可能であると
共に、基礎砂利層の液状化による枡部材の流動や浮き上
がりを防止することができるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る排水浸透構造物設置構造の一実施
例を適用した浸透形マンホールの縦断面図である。

【図２】図１のＡ- Ａ断面図に相当する図である。

【図３】マットの部分断面図である。

【図４】マットの他の実施例の部分断面図である。

【図５】マットの他の実施例の部分断面図である。

【図６】マットの他の実施例の部分断面図である。

【図７】マットの他の実施例の部分断面図である。

【符号の説明】

１…排水浸透構造物（マンホール） ２…基礎砂利層 １０…マット（マット部材） １４…透孔 １６…フィルター材 ２０…コンクリート枡（枡部材）

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 雨水や雑排水を収容し、開放する底面側
   から地中に浸透させて処理するものであって、 底部側に開放する枡部材が、該枡部材の直下の基礎砂利
   層の上に敷設された砂を通過させず透水性を有するマッ
   ト部材の上に設置されており、上記マット部材は、不透
   水性素材により形成されたマットに多数の透孔が形成さ
   れ、該各透孔に砂を通過させず透水性を有する透水係数
   Ｋ＝１０^−１〜１０^−３ｃｍ／ｓｅｃのフィルター材が
   充填されて構成されていることを特徴とする排水浸透構
   造物設置構造。