JP2781791B2 - 複数のガラス転移温度を有するゴム状ポリマーを含むゴムブレンドから成るトレッドを有するタイヤ - Google Patents

複数のガラス転移温度を有するゴム状ポリマーを含むゴムブレンドから成るトレッドを有するタイヤ

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は複数のガラス転移温
度を示すゴム状ポリマーから成るトレッドを有するタイ
ヤに関する。 【0002】 【従来の技術】タイヤは良好なウエットスキッド抵抗性
(wetskid resistance)、低い転り
抵抗性及び良好な摩耗特性を有することが極めて望まし
い。タイヤのウエットスキッド抵抗性とけん引特性を犠
牲にしないでタイヤの転り抵抗性を改良することは従来
非常に困難であった。これらの性質はタイヤを製造する
際に用いられるゴムの動的粘弾特性に大きく左右され
る。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】タイヤの転り抵抗性を
低下させるために、タイヤのトレッドを製造する際に従
来から高い弾性反撥力を有するゴムが用いられてきた。
他方、タイヤのウエットスキッド抵抗性を高めるため
に、大きなエネルギー損失を受けるゴムがタイヤトレッ
ドにおいて一般に用いられた。これら2つの粘弾性的に
矛盾した性質をバランスさせるために各種タイプの合成
及び天然ゴムの混合物がタイヤトレッドにおいて通常用
いられる。例えば、スチレン−ブタジエンゴムとポリブ
タジエンゴムの様々の混合物が自動車用タイヤのトレッ
ド用ゴム材料として一般に用いられる。しかし、この種
のブレンドは全ての目的に対して完全には満足できるも
のではない。 【0004】 【課題を解決するための手段】予想外にも、複数のガラ
ス転移温度を示すある種のゴム状ポリマーがタイヤトレ
ッドへの配合用に優れた性質を有することが見い出され
た。これらのゴムは−110℃〜−20℃の間の第一ガ
ラス転移温度と−50℃〜0℃の間の第二ガラス転移温
度を示すものである。これらのゴムは一般に−20℃〜
20℃の間の第三ガラス転移温度も検出することができ
る。斯るゴムは少なくとも1種の共役ジオレフインモノ
マーから誘導され、また一般に1種又は2種以上のビニ
ル芳香族モノマーを含有する。例えば、これらのゴムは
ポリブタジエン、ポリピペリレン、ポリイソプレン、ポ
リジメチルブタジエン、ブタジエン−スチレンゴム、ブ
タジエン−イソプレンコポリマー等であることができ
る。斯る本発明のゴムは一般に100,000〜40
0,000、好ましくは250,000〜350,00
0の範囲内の数平均分子量を有する。 【0005】本発明のゴムは必要な複数のガラス転移温
度をもたらす微細構造を与えるように“特注生産”され
る。これらのゴム状ポリマーの微細構造はポリマー鎖の
一方の端から他方の端に向って変化している。言い換え
ると、それらポリマー鎖は微細構造が異なるポリマーセ
グメントを含有している。例えば、ポリマー鎖の一端側
における繰返単位は1,2−構造が優勢な(predo
minant)微細構造を有し、他端側(反対側)にお
ける繰返単位は3,4−結合が優勢な微細構造を有す
る。これらゴム状ポリマーはまたそれらのポリマー鎖の
一端側において1,4−結合が優勢な微細構造を有する
繰返単位を持ち、他端側において3,4−結合が優勢な
微細構造を有する繰返単位を持つのが適当である。更
に、斯るゴム状コポリマーはそれらのポリマー鎖の一端
側に1,2−結合が優勢な微細構造を有する繰返単位を
持ち、他端側に1,4−結合が優勢な微細構造を有する
繰返単位を持つのが適当である。 【0006】本発明は、更に具体的に述べると、少なく
とも1種の共役ジオレフインモノマーから誘導される繰
返単位から成る、第一のガラス転移温度が−110℃〜
−0℃の間にあり、第二のガラス転移温度が−50℃〜
0℃の間にある、タイヤのトレッドを製造する際の使用
に対して優れた性質の組み合わせを有する、数平均分子
量が100,000〜400,000、好ましくは25
0,000〜350,000の範囲内にあるゴム状重合
体に関する。典型的には、このようなゴム状コポリマー
はまた−20℃〜20℃の間にあるガラス転移温度を更
に有する。 【0007】本発明はまた第一反応帯において少なくと
も1種の共役ジオレフインモノマーをガラス転移温度が
−110℃〜−20℃の第一ポリマーセグメントを生成
させるのに十分な温度と条件下で重合させ、続いて第二
反応帯においてその重合をガラス転移温度が−20℃〜
20℃の第二ポリマーセグメントを生成させるのに十分
な温度と条件下で続けることから成るタイヤのトレッド
を製造する際の使用に対して優れた性質の組み合わせを
有するゴム状ポリマーの製造法に関する。このような重
合は普通有機リチウム触媒により触媒され、また通常不
活性な有機溶媒の中で行われる。 【0008】発明の詳しい記述 本発明のゴム状ポリマーは少なくとも1種の共役ジオレ
フインモノマーから誘導される繰返単位より成る。これ
らのゴム状ポリマーは任意成分として1種又は2種以上
のビニル芳香族モノマーから誘導される繰返単位を含有
していることができる。従って、本発明のゴム状ポリマ
ーは少なくとも1種の共役ジオレフインモノマーを重合
させるか、又は1種又は2種以上の共役ジオレフインモ
ノマーと1種又は2種以上のビニル芳香族モノマーとを
共重合させることによって製造される。 【0009】本発明に従って重合することができる共役
ジオレフインは一般に構造式 【化1】 を有する。ただし、Rは水素原子、又は1〜8個の炭素
原子を有するアルキル基であり、そしてY1及びY2は同
一であってもよいし、あるいは異っていてもよく、そし
て水素原子及び1〜4個の炭素原子を有するアルキル基
より成る群から選ばれる。適当な共役ジオレフインの幾
つかの代表例を示すと、1,3−ブタジエン、イソプレ
ン、2−エチルブタジエン、ピペリレン(1,3−ペン
タジエン)、2−メチル−1,3−ペンタジエン、4−
ブチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−
1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3
−オクタジエン、2,3−ジブチル−1,3−ペンタジ
エン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル
−1,3−ブタジエン等がある。4〜8個の炭素原子を
有する共役ジオレフインモノマーが通常商業目的には好
ましい。同様の理由から、1,3−ブタジエンとイソプ
レンが最も一般的に用いられる共役ジオレフインモノマ
ーである。 【0010】1種又は2種以上の共役ジオレフインモノ
マーを他の低分子量炭化水素と混合して成る供給原料が
用い得る。斯る混合物は、低濃度ジエン流とも称される
が、様々の精油所製品流れ、例えばナフサクラッキング
操作の流れから得ることができ、あるいは意図的に配合
組成物となすことができる。重合原料として共役ジオレ
フインモノマーと混合することができる低分子量炭化水
素の幾つかの典型的な例を挙げると、プロパン、プロピ
レン、イソブタン、n−ブタン、1−ブテン、イソブチ
レン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、ビニ
ルアセチレン、シクロヘキサン、エチレン、プロピレン
等がある。 【0011】任意に使用することができるビニル芳香族
モノマーは使用される共役ジオレフインモノマーと共重
合することができるように選ぶ。一般的に言って、有機
リチウム開始剤により重合することが知られているビニ
ル芳香族モノマーがどれも用いることができる。この種
のビニル芳香族モノマーは典型的には8〜20個の炭素
原子を含有する。通常、ビニル芳香族モノマーは8〜1
4個の炭素原子を含有している。最も広く用いられるビ
ニル芳香族モノマーはスチレンである。本発明のゴム状
ポリマーにおいて用いることができるビニル芳香族モノ
マーの幾つかの例を示すと、1−ビニルナフタレン、2
−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピ
ルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシ
ルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−
(フェニルブチル)スチレン等がある。 【0012】本発明のゴム状ポリマーにおいて用いられ
る共役ジオレフインモノマーとビニル芳香族モノマーと
の相対量は広範囲にわたって変化することができる。こ
のようなゴム状ポリマーを製造するに際し、共役ジオレ
フインモノマー対ビニル芳香族モノマーの比は実質的に
ゴム状の、すなわちエラストマー性のコポリマー生成物
が生成するように十分な比率となすべきである。得られ
るコポリマーがゴムの、すなわちエラストマーの諸性質
を明らかに示す共役ジオレフインモノマー対ビニル芳香
族モノマーの量に関してはっきりした区切り点はない。
しかし、一般に少なくとも50モル%の共役ジオレフイ
ンがゴム状コポリマーを生成させるために典型的基準で
必要とされる。かくして、ゴム状コポリマーについて、
モノマー仕込み物における共役ジオレフインモノマー対
ビニル芳香族モノマーのモル比は約50:50〜99:
1の範囲にある。更に典型的には、共役ジオレフインモ
ノマー対ビニル芳香族モノマーのモル比は65:35〜
95:5の範囲にある。各種の共役ジオレフインモノマ
ーの混合物、またビニル芳香族モノマーの混合物が用い
ることができる。 【0013】本発明のゴム状ポリマーを合成する際に用
いられる重合開始剤は有機リチウム化合物である。これ
らの有機リチウム開始剤は多官能性のタイプか、または
一官能性のタイプのものである。多官能性有機リチウム
開始剤は特定の有機リチウム化合物であっても、あるい
は必ずしも特定の化合物ではなくて、調節可能な官能価
を持つ再生可能な組成物である多官能性タイプのものの
どちらであってもよい。 【0014】開始剤をどのように選択するかはポリマー
に所望とされる分枝度と弾性率、供給原料の性状等によ
って支配される。共役ジエン源として用いられる供給原
料に関して言えば、低濃度ジエン流が供給原料の少なく
とも一部分である場合は、例えば多官能性開始剤タイプ
が一般に好ましい、と言うのは未精製の低濃度ジエン流
の中に存在する若干の成分は炭素−リチウム結合と反応
して開始剤の活性を奪活してしまう傾向があり、従って
そのような影響を乗り越えるように開始剤には十分なリ
チウム官能価が存在することを必要とするからである。 【0015】多官能性開始剤の中には、必ずしも特定の
化合物である必要はないが、有機モノリチウム化合物を
炭化水素又は炭化水素と極性有機化合物との混合物のよ
うな稀釈剤中でマルチビニルホスフィンと、又はマルチ
ビニルシランと反応させることによって製造されるもの
がある。マルチビニルシラン又はマルチビニルホスフィ
ンと有機モノリチウム化合物との間の反応は、主成分の
反応後に共役ジエン又はモノビニル芳香族化合物のよう
な可溶化用モノマーを添加することによって、所望なら
ば、可溶化することができる沈殿をもたらす。別法とし
て、この反応は少量の可溶化用モノマーの存在下で行う
ことができる。有機モノリチウム化合物とマルチビニル
シラン又はマルチビニルホスフィンとの相対的な量は好
ましくは使用されるマルチビニルシラン又はマルチビニ
ルホスフィン中に存在するビニル基のモル当り有機モノ
リチウム化合物約0.33〜4モルの範囲とすべきであ
る。 【0016】典型的な有機一官能性リチウム化合物とし
ては、エチルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブ
チルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オ
クチルリチウム、n−エイコシルリチウム、フェニルリ
チウム、2−ナフチルリチウム、4−ブチルフェニルリ
チウム、4−トリルリチウム、4−フェニルブチルリチ
ウム、シクロヘキシルリチウム等がある。 【0017】典型的なマルチビニルシラン化合物にはテ
トラビニルシラン、メチルトリビニルシラン、ジエチル
ジビニルシラン、ジ−n−ドデシルジビニルシラン、シ
クロヘキシルトリビニルシラン、フェニルトリビニルシ
ラン、ベンジルトリビニルシラン、(3−エチルシクロ
ヘキシル)(3−n−ブチルフェニル)ジビニルシラン
等がある。 【0018】典型的なマルチビニルホスフィン化合物に
はトリビニルホスフィン、メチルジビニルホスフィン、
ドデシルジビニルホスフィン、フェニルジビニルホスフ
ィン、シクロオクチルジビニルホスフィン等がある。 【0019】上記のもののような有機モノリチウム化合
物をマルチビニル芳香族化合物及び共役ジエンか若しく
はモノビニル芳香族化合物のどちらか又は両者と一緒に
用いることによって他の多官能性重合開始剤を製造する
ことができる。これらの成分は炭化水素又は炭化水素と
稀釈剤としての極性有機化合物との混合物の中で一緒に
接触させることができる。別法として、多官能性の重合
開始剤は、有機モノリチウム化合物を共役ジエン又はモ
ノビニル芳香族化合物と反応させ、次いでマルチビニル
芳香族化合物を添加することによる二段階で製造するこ
とができる。使用される共役ジエン又はモノビニル芳香
族化合物添加剤の比率は有機リチウム化合物のモル当り
重合性化合物約2〜15モルの範囲内とすべきである。
マルチビニル芳香族化合物の使用量は有機モノリチウム
化合物のモル当り約0.05〜2モルの範囲内とすべき
である。 【0020】代表的なマルチビニル芳香族化合物として
1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼ
ン、1,4−ジビニルベンゼン、1,2,4−トリビニ
ルベンゼン、1,3−ジビニルナフタレン、1,8−ジ
ビニルナフタレン、1,3,5−トリビニルナフタレ
ン、2,4−ジビニルビフェニル、3,5,4’−トリ
ビニルビフェニル、1,3−ジビニル−4,5,8−ト
リブチルナフタレン等がある。分子当り18個以下の炭
素原子を含有するジビニル芳香族炭化水素が特に好まし
く、そしてオルト−、メタ−又はパラ−異性体のいずれ
でもよいがジビニルベンゼンが、また異性体の混合物で
あることができる市販のジビニルベンゼンが極めて満足
すべきものである。 【0021】他のタイプの多官能性開始剤、例えばse
c−又はtert−有機モノリチウム化合物を1,3−
ブタジエンと、1,3−ブタジエンのモル当りに対して
有機モノリチウム化合物約2〜4モルのような比率で、
本例では添加極性物質の不存在下で接触させることによ
って製造されるものを用いることができる。この反応に
おいてその接触は不活性な炭化水素稀釈剤中で行うのが
好ましいが、ただし稀釈剤なしでの接触方法をもし所望
ならば採用することもできる。 【0022】また、容易に加工できるポリマーを製造す
る本発明によるポリマーの製造において開始剤として特
定の有機リチウム化合物も所望によって用いることがで
きる。これらリチウム化合物はR(Li)xで表わすこ
とができる。だたし、Rは、例えばR基当りの炭素原子
数が1〜20個のようなヒドロカルビル基を表わし、そ
してxは1〜4の整数である。 【0023】代表的なこの種有機リチウム化合物はメチ
ルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウ
ム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチ
ウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、ナフチ
ルリチウム、4−ブチルフェニルリチウム、p−トリル
リチウム、4−フェニルブチルリチウム、シクロヘキシ
ルリチウム、4−ブチル−シクロヘキシルリチウム、4
−シクロヘキシルブチルリチウム、1,4−ジリチオブ
タン、1,10−ジリチオデカン、1,20−ジリチオ
エイコサン、1,4−ジリチオベンゼン、1,4−ジリ
チオナフタレン、9,10−ジリチオアントラセン、
1,2−ジリチオ−1,2−ジフェニルエタン、1,
3,5−トリリチオペンタン、1,5,15−トリリチ
オエイコサン、1,3,5−トリリチオシクロヘキサ
ン、1,3,5,8−テトラリチオデカン、1,5,1
0,20−テトラリチオエイコサン、1,2,4,6−
テトラリチオシクロヘキサン、4,4’−ジリチオビフ
ェニル等である。 【0024】本発明のゴム状ポリマーは極く特定の必要
温度範囲内にある複数のガラス転移温度を有するように
特注製造される。これらのゴム状ポリマーは−110℃
〜−20℃の間にある第一ガラス転移温度を持つ。これ
らポリマーはまた−50℃〜0℃の間にある第二ガラス
転移温度を持つ。ほとんどの場合、このようなゴム状ポ
リマーには−20℃〜20℃の間にある第三ガラス転移
温度を検出することが可能である。本発明のゴム状ポリ
マーは−100℃〜−65℃の範囲内に第一ガラス転移
温度を、また−35℃〜−10℃の範囲内に第二ガラス
転移温度を有するのが一般的に好ましい。斯るポリマー
は−90℃〜−70℃の範囲内に第一ガラス転移温度
を、また−20℃〜−10℃の範囲内に第二ガラス転移
温度を有するのが最も好ましい。 【0025】これらポリマーの複数のガラス転移温度は
そのポリマー内の微細構造が異なるポリマーセグメント
に基因する。例えば、ポリマーはそのポリマー鎖の一方
の端において1,2−結合が優勢に存在する微細構造を
有する繰返単位を持ち、そのポリマー鎖の他方の端にお
いて3,4−結合が優勢に存在する微細構造を有する繰
返単位を持つ。ブタジエンとイソプレンとのこのような
ゴム状コポリマーにおいて、1,2−結合を優勢に含む
ポリマーセグメントは−110℃〜−20℃の間にある
ガラス転移温度を有する。1,2−結合を優勢に含有す
るこのようなポリマーセグメントが存在すると、そのゴ
ム状ポリマーは−110℃〜−20℃という必要範囲内
に第一ガラス転移温度を持つようになる。ブタジエンと
イソプレンとのこのようなコポリマーはまた3,4−結
合が優勢に存在するポリマーセグメントも含有すること
ができる。ブタジエン−イソプレンコポリマー中の斯る
ポリマーセグメントの存在はそのポリマーに−20℃〜
20℃の間にあるガラス転移温度を更に有せしめる。こ
れは通常このようなゴム状コポリマー中で第三のガラス
転移温度として観察される。このようなコポリマーの場
合、各セグメント内のモノマーの順序(sequenc
e)は不規則であるが、違うセグメント内のモノマー比
は異なることができる。例えば、ブタジエンとイソプレ
ンのコポリマーにおいて、1,2−結合を優勢に含むポ
リマーセグメントはほとんどブタジエンから誘導される
鎖結合を含有する。そのポリマー鎖の他方の端におい
て、3,4−結合を優勢に含むポリマーセグメントはほ
とんどイソプレンから誘導される繰返単位を含有する。
これら2つの異なるポリマーセグメント間の領域には転
移帯域が存在し得る。斯る転移帯域はポリマーの対向両
端部の2種のポリマーセグメントに対して中間の微細構
造とモノマー含量を有する。実際において、この転移帯
域におけるポリマーのモノマー構成と微細構造は傾斜配
置(tapered)となっている。 【0026】斯るポリマーにおいて必要とされるこの複
数のガラス転移温度を得るために、これらは通常少なく
とも2つの異なる反応帯が存在する方法を用いて合成さ
れる。これらの反応帯は異なる温度に保持される。2つ
の異なる温度で実施される2工程重合法を用いることに
よって合成されているポリマーの微細構造をコントロー
ルすることが可能となる。例えば、低い方の温度ではよ
り高い1,2−結合含量が得られる。従って、高い方の
温度は大量の3,4−結合を形成させる。望まれる微細
構造はそれに対応するガラス転移温度を達成するために
必要とされる特定の温度は重合されているモノマーに依
存する。 【0027】約10〜50%のイソプレンと約50〜9
0%のブタジエンを含有するブタジエン/イソプレンの
ゴム状コポリマーの合成において、第一反応帯で用いら
れる温度は通常約49〜88℃(約120〜190゜
F)であり、一方第二反応帯で用いられる温度は約88
〜99℃(約190〜210゜F)である。第一反応帯
において低い方の温度はより高いビニル含量とそれに対
応してより高いガラス転移温度をもたらす。例えば、第
一反応帯で温度49℃(120゜F)、滞留時間2時間
を用いると、第一ガラス転移温度が−30℃、第二ガラ
ス転移温度が−18℃及び第三ガラス転移温度が−10
℃のコポリマーが生成する。第二反応帯に維持される温
度がより高いと、3,4−結合が優勢に存在し、ガラス
転移温度がより低いポリマーセグメントが生成する。 【0028】目的とする複数のガラス転移温度を有する
ブタジエンとスチレンとのゴム状コポリマーは2個の反
応器を用いる方法で製造することができる。これらのス
チレン−ブタジエンゴムは通常全モノマー基準で約1〜
約40モル%のスチレンを含有する。約8〜約12重量
%のスチレンを用いるこのような重合において、第一反
応器の温度は通常約49〜約88℃(約120〜約19
0゜F)の範囲内に保たれる。通常第一反応器における
滞留時間は約0.5〜約1時間である。この滞留時間で
約30〜80%の転化率が達成され、その際生成ポリマ
ーセグメントのビニル含量はブタジエンの繰返単位を基
準にして約80%である。第一反応器で形成されるポリ
マーセグメントは一般に約8%のスチレン由来繰返単位
を含有する。第二反応器に維持される温度は通常約82
〜99℃(約180〜210゜F)である。第二反応器
における滞留時間は通常約1〜約2時間である。このよ
うな滞留時間で通常実際上100%の転化率が達成され
る。第二反応器においてより高い側の重合温度で製造さ
れるポリマーセグメントは通常40%未満のビニル含量
を有する。 【0029】極性改質剤、例えば開鎖若しくは環状タイ
プのエーテル類、キレート形成用エーテル類、アミン
類、又はジアミン類がブタジエンとスチレンのゴム状コ
ポリマーを製造するためのこのような重合で用いること
ができる。使用できる若干の一般的な改質剤の代表的な
例を示すと、ジピペリジノエタン、ジピロリジノエタ
ン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレングリコ
ールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等がある。
一般に約0.03〜約0.12phm(モノマー100
部当りの部数)の極性改質剤が用いられる。使用される
極性改質剤対有機リチウム開始剤のモル比は普通1:1
〜4:1の範囲内にある。ほとんどの場合、約2:1の
極性改質剤対有機リチウム開始剤モル比が好ましい。極
性改質剤は第一反応帯に、若しくは第二反応帯に、又は
第一及び第二反応帯の両方に添加することができる。改
質剤を添加する形態はポリマーの微細構造とそのガラス
転移温度を制御するものである。斯る極性改質剤は製造
されているポリマー中の1,2−結合の存在量を増加さ
せる。従って、このより高いビニル含量を補償するため
に、ポリマーに導入されるスチレンの量を通常増加させ
る。必要とされるガラス転移温度を維持し、ビニル含量
の低下を補償するためにコポリマー中のスチレン量を多
くすることが必要である。例えば、コポリマーが約50
〜約55%のビニル含量を有する場合、約5%のスチレ
ンがコポリマー中に導入されていることが必要である。
他方、コポリマーが約20〜約25%のビニル含量を有
する場合は、約30%のスチレンがポリマー中に導入さ
れている必要がある。 【0030】タイヤトレッド用コンパウンドを製造する
際に他のゴムとのブレンドに本発明のゴム状ポリマーを
用いるのが通常有利である。このタイプのタイヤトレッ
ドは通常、トレッドの総ゴム量基準で約35〜90重量
%の、−110℃〜−20℃の範囲内の第一ガラス転移
温度と−50℃〜0℃の範囲内の第二ガラス転移温度を
有する本発明のゴム状ポリマーを含む。例えば、本発明
のブタジエンとイソプレンとのゴム状コポリマーは天然
ゴムと配合して顕著な転り抵抗性、けん引力及びトレッ
ド摩耗特性を示す乗用車者用タイヤのトレッドコンパウ
ンドを製造することができる。このようなブレンドは通
常約35〜65重量%の本発明のブタジエン−イソプレ
ンコポリマー及び約35〜65重量%の天然ゴムから成
る。極めて顕著なけん引特性を示すが、トレッドの摩耗
性に関しては若干妥協した高性能タイヤは約60〜80
重量%のブタジエン−イソプレンコポリマーを約20〜
約40重量%の標準的な溶液又はエマルジョン重合スチ
レン−ブタジエンゴムと配合することによって製造する
ことができる。摩耗がけん引力より重要性が大きい場合
は、エマルジョン重合スチレン−ブタジエンゴムの代り
に高シス−1,4−ポリブタジエン又は高トランス−
1,4−ポリブタジエンを用いればよい。高シス−1,
4−ポリブタジエン及び/又は高トランス−1,4−ポ
リブタジエンを含有する斯るゴムブレンドを用いて製造
したタイヤトレッドは極めて顕著なトレッド摩耗性と転
り抵抗性を適切なけん引特性と共に有する。 【0031】性質のバランスがよいトラック用タイヤは
20〜40重量%の本発明のイソプレン−ブタジエンコ
ポリマー、約25〜45重量%の天然ゴム及び約25〜
約45重量%の溶液重合スチレン−ブタジエンゴムをブ
レンドにおいて使用することによって製造できることが
確認された。勿論、本発明のゴム状ポリマーの利点を得
る更に他の無数のブレンドを調製することが可能であ
る。例えば、本発明のスチレン−ブタジエンゴムはイソ
プレン−ブタジエンコポリマーに代えてタイヤトレッド
において用いることができる。改良されたけん引力、ト
レッド摩耗性及び転り抵抗性を有するこのようなタイヤ
トレッドは約50〜約80重量部のスチレン−ブタジエ
ンゴム、約10〜約40重量部のポリブタジエン及び約
10〜約40重量部の天然ゴムから成ることができる。 【0032】本発明を以下の実施例により更に説明、例
証する。しかし、これらの実施例は単に本発明を例証す
るためのものであって、本発明の範囲あるいは本発明の
実施可能な方法を限定するものとは見なすべきでない。
特に明記されない限り、部及び百分率は全て重量で与え
られるものとする。 【0033】 【実施例】 実施例1 ブタジエンを50%、イソプレンを50%含有するコポ
リマーを2個の重合反応器から成る連続系で製造した。
この重合は第一反応器に0.03phm(モノマー10
0部の当りの部数)のn−ブチルリチウムを仕込み、触
媒作用を奏せしめて実施した。第一反応器には予めモノ
マー類、溶媒及び0.06phmのN,N,N’,N’
−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を仕込
んでおいた。第一反応器は温度85℃(185゜F)に
保持した。第一反応器中の滞留時間は約0.5時間で、
この間に約60%のモノマー転化率が達成された。第一
反応器の内容物を88〜91℃(190〜195゜F)
の範囲内の温度に保持された第二反応器に連続的に移送
した。第二反応器における滞留時間は1時間で、この間
に約100%の転化率が達成された。 【0034】生成ポリマーを赤外分光分析及び核磁気共
鳴分光分析で定量すると、コポリマーはイソプレンを5
0%、ブタジエンを50%含有していることが確認され
た。生成コポリマーは3つのガラス転移温度(Tg)を
有していることが示差走査熱量計分析で確認された。こ
れらのガラス転移温度は−47℃、−24℃及び−10
℃にあることが確認された。−47℃に現われるガラス
転移温度は50%より多いビニル構造を含有するポリマ
ーセグメントの吸収と結び付いたポリマーの第一ガラス
転移温度であった。−24℃に観察されたガラス転移温
度は高ビニル単位と3,4−ポリイソプレン単位の両者
を含有するポリマーセグメントと結び付いたポリマーの
第二ガラス転移温度であり、そして−10℃に現われた
ガラス転移温度は実際上純粋の3,4−ポリイソプレン
単位を含有するポリマーセグメントと結び付いたポリマ
ーの第三ガラス転移温度であった。 【0035】得られたコポリマーをその複数のガラス転
移の性状を調べるべく3種の異なる装置により試験し
た。デュポン熱分析器(DuPont Thermal
Analyzer)をDSC試験において用いた。実
験は色々な試料サイズを用いて色々な加熱速度で行っ
た。最良の結果は試料サイズ8mg及び加熱速度50℃
/分を用いることによって得られた。DSCは−30
℃、−12℃及び0℃に3つのガラス転移温度が存在す
ることを説明している。 【0036】同じコポリマーをまたオートレオバイプロ
ン(Auto Rheovibron)で分析した。オー
トレオバイプロンは110Hzにおいて−80〜20℃
の温度範囲にわたって運転した。原料ゴム試料を加熱速
度1℃/分における引張試験で用いた。このオートレオ
バイプロンによってもDSC分析で観察された3つのガ
ラス転移温度が検出された。 【0037】同様に、デュポンDTMAを同じコポリマ
ーについて−100℃〜20℃の温度スパンにわたって
加熱速度10℃/分で分析するために用いた。デュポン
DTMAはまた同ゴム試料を20℃/分の加熱速度を用
いて−50℃〜60℃の温度範囲にわたって分析するた
めに用いた。このDTMA試験結果で製造されたこの独
特のコポリマーは3つのガラス転移温度を有すること、
またその独特の微細構造及び巨視的構造が確認された。 【0038】実施例2.第一反応器の使用温度を66℃
(150゜F)とした点を除いて実施例1の手順をこの
実験で繰り返した。この実験で製造されたコポリマーは
−47℃の第一ガラス転移温度を有していた。このガラ
ス転移温度はビニル単位を70%より多く含有している
ポリマーセグメントの特徴である。コポリマーの第二ガ
ラス転移温度は−18℃であることが確認された。この
ブタジエン/イソプレンコポリマーの第三ガラス転移温
度は−5℃にあることが確認された。 【0039】実施例3.この実験では第一反応器で用い
る温度を77℃(170゜F)とした点を除き実施例1
に記載の手順を繰り返した。生成コポリマーは第一ガラ
ス転移温度として−55℃、第二ガラス転移温度として
−24℃、第三ガラス転移温度として−8℃を有してい
た。 【0040】実施例4.この実験ではモノマーの仕込み
物を1,3−ブタジエン80%及びイソプレン20%か
ら成るものとした点を除き、実施例1で用いた手順を繰
り返した。生成ブタジエン/イソプレンコポリマーは第
一ガラス転移温度が−47℃、第二ガラス転移温度が−
24℃及び第三ガラス転移温度が−10℃であった。 【0041】実施例5.この実験ではモノマー仕込み物
をブタジエン80%及びイソプレン20%から成るもの
とした点を除き、実施例2に記載の手順を繰り返した。
生成ポリマーは−44℃に第一ガラス転移温度を、−1
8℃に第二ガラス転移温度を、及び−7℃に第三ガラス
転移温度を有していた。 【0042】実施例6.ポリブタジエンの合成に連続2
反応器系を用いた。第一反応器に導入したモノマー仕込
み物はブタジエン100%から成っていた。使用有機溶
媒はヘキサンで、0.03phmのn−ブチルリチウム
を用いて重合を開始した。第一反応器における滞留時間
は1時間で、この間に40%の転化率が達成された。 【0043】第一反応器の内容物を温度91℃(195
゜F)に保持された第二反応器に連続移送した。第二反
応器には0.06phmのTMEDAを加えた。製造さ
れたポリブタジエンの第一ガラス転移温度は−90℃、
第二ガラス転移温度は−18℃、第三ガラス転移温度は
−24℃であった。第一反応器で製造された鎖セグメン
トは90%を越える1,4−ブタジエン単位(シス及び
トランス)から成る微細構造を有していた。第二反応器
で造られた鎖セグメントの大部分は1,2−単位から成
る微細構造を有していた。 【0044】実施例7.実施例1に記載の手順を用いて
ブタジエンとイソプレンのコポリマーを合成した。ブタ
ジエン対イソプレンの比は40/60であった。得られ
たコポリマーはDSC分析で独特の微細及び巨視的構造
組織を証明している複数のガラス転移ピークを示した。
この独特の組織は原料割合と触媒調節でポリマーに導入
されたものである。 【0045】実施例8.この実験では改質剤対リチウム
の比をイソプレンの導入率を変化させるように変えた点
を除いて実施例6に記載の手順を繰り返した。第一反応
器の温度は66℃(150゜F)に下げ、第二反応器の
温度は88℃(190゜F)に上げた。製造されたコポ
リマーは−30℃、−18℃及び−44℃に複数のガラ
ス転移温度を示した。第一反応器の温度を下げることに
よってコポリマーのポリブタジエン部におけるビニル含
量が高まり、一方第二反応器の温度を上げることによっ
てコポリマーのポリイソプレン部における3,4−含量
が低下した。生成ポリブタジエン−ポリイソプレンはそ
のポリマー鎖の初めの方でポリブタジエンに富み、ポリ
マー鎖の末端の方でポリイソプレンに富み、そしてポリ
マー鎖の初めと末端との間の中間相は1,4−ポリイソ
プレンと1,4−ポリブタジエンの双方を実質的量で含
有するものであった。ブタジエン/イソプレン比は60
/40から20/80に調節された。この実験は独特の
構造と約−60℃、−30℃及び−8℃に3つのガラス
転移温度を有する一連のコポリマーを製造できることを
示している。 【0046】実施例9.この実験では実施例6で重合し
た1,3−ブタジエンモノマーの代りにイソプレンモノ
マーを用いた点を除いて実施例6に記載の手順を繰り返
した。生成イソプレンは−65℃に第一ガラス転移温度
を、−10℃に第二ガラス転移温度を、及び−24℃に
第三ガラス転移温度を有することが確認された。 【0047】実施例10.この実験では1,3−ブタジ
エン30%及びイソプレン70%から成るモノマー仕込
み物を用いた点を除き実施例6に記載の手順を繰り返し
た。生成ポリマーは第一ガラス転移温度−80℃、第二
ガラス転移温度−24℃及び第三ガラス転移温度−10
℃を有していた。 【0048】実施例11.この実験ではモノマー仕込み
物をブタジエン80%及びイソプレン20%より成るも
のとした点を除き実施例10に記載の手順を繰り返し
た。生成したブタジエン/イソプレンコポリマーは第一
ガラス転移温度−80℃、第二ガラス転移温度−24
℃、第三ガラス転移温度−10℃を有していた。 【0049】実施例12.この実験ではモノマー仕込み
物をブタジエン90%及びイソプレン10%より成るも
のとした点を除き実施例10に記載の手順を繰り返し
た。生成スチレン−ブタジエンゴムは−90℃に第一ガ
ラス転移温度を、及び−21℃に第二ガラス転移温度を
有していた。 【0050】実施例13.この実験ではブタジエンモノ
マーとイソプレンモノマーを共に第一反応器に仕込んで
実施例1に記載の手順を繰り返した。反応器の仕込み物
は溶媒としてヘキサンを、また触媒としてn−ブチルリ
チウムを含有していた。第一反応器における重合は79
℃(175゜F)で進行させた。第一反応器で得られた
コポリマーは1,4−構造が優勢な構造を有し、−85
℃にガラス転移温度を持つ構造を有していた。第二反応
器に追加のヘキサン溶媒とキレート形成用改質剤(N,
N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)を第
一反応器から移送される溶媒とコポリマーと共に加え、
そして重合を88℃(190゜F)で続行させた。最終
生成物は50/50のブタジエン/イソプレン含量と−
85℃、−40℃及び−12℃に3つのガラス転移温度
を有するコポリマーであった。 【0051】実施例14.1,3−ブタジエンを70
%、イソプレンを30%含有しているモノマー仕込み物
を用いた点を除き実施例13に記載の手順を繰り返し
た。第一反応器の温度は79℃(175゜F)に保持
し、転化率は50%に制限した。第一反応器で製造され
たブタジエン/イソプレンのコポリマーは−85℃にT
gを有していた。これを66℃(150゜F)の重合温
度に保たれた第二反応器にポンプで移送した。改質剤を
全て第二反応器に加えると最終生成物の微細構造とモノ
マー順序の分布に変化が生じた。重合を100%転化率
まで完結させた後、最終生成物は−85℃、−30℃及
び−12℃に3つのガラス転移温度を有していた。 【0052】実施例15.ヘキサン中にブタジエン50
%及びスチレン50%を含有するモノマー仕込み物を1
8.9l(5ガロン)の反応器に加えた。n−ブチルリ
チウムを加えて重合を開始した。重合温度は66℃(1
50゜F)に保持した。モノマーをガスクロマトグラフ
分析で定量して転化率30%が達成された後、稀釈用ジ
アミン改質剤を重合系に加えた。改質剤添加前に得られ
たコポリマー試料は−90℃にガラス転移温度を持つこ
とが確認された。重合を100%転化率まで進行させた
後、得られたコポリマーは−90℃、−40℃及び−1
8℃に3つのガラス転移温度を示した。改質剤の重合へ
の添加はゆっくりした錯体化ステップであるので、この
ステップは−40℃にガラス転移温度を持つ中間相を与
える。改質剤のリビングリチウム末端との完全錯体化
後、−18℃の高Tgの相を与えた。この実施例は複数
のガラス転移温度を持つ独特のコポリマーを製造する本
発明の方法の多様性を証明している。 【0053】実施例16.この実験では改質剤の添加を
転化率50%が達成されるまで遅らせた点を除いて実施
例15に記載のものと同じ手順で行った。得られたコポ
リマーは−80℃、−47℃及び−12℃に同様のガラ
ス転移温度を示した。 【0054】実施例17.この実験では改質剤の添加を
70%転化率が達成されるまで遅らせたことを除き、実
施例15に記載のものと同じ手順で行った。得られたコ
ポリマーは−90℃と−20℃に2つのはっきりした異
なるガラス転移温度を持っていた。−50℃にポリマー
の中間相によってもたらされた弱いガラス転移温度が観
察された。 【0055】バッチ式方法において改質剤の添加を遅ら
せる方法、又は2つの反応器系の第二反応器に改質剤を
添加する方法を用いることによって共重合では独特のモ
ノマー順序の分布が達成され、また単独重合では独特の
微細構造の変化がもたらされるいる複数のガラス転移温
度を持つ独特のポリマー及びコポリマーが製造される。
実施例18及び19はこれらの点を説明するものであ
る。 【0056】実施例18.この実験では改質剤を全部第
二反応器に加えたことを除き実施例1に記載の手順を行
った。得られたコポリマーは−90℃と−12℃に2つ
のガラス転移温度を有していた。−30℃に弱いガラス
転移温度も観察された。 【0057】実施例19.この実験では改質剤を全部3
0%の転化率において加えたことを除き実施例15に記
載の手順を用いた。生成したスチレン−ブタジエンゴム
は−90℃及び−30℃にガラス転移温度を持ってい
た。また、−12℃に弱いガラス転移温度が観察され
た。 【0058】実施例20.常用のタイヤモールドで普通
の構造(溝付きトレッド、側壁、離間したビード及び布
帛強化支持カーカス)を持つ空気入りタイヤを組み立
て、造形し、硬化させた。トレッドは未硬化カーカスの
上に予備押出素子として組み立てた。製造されたタイヤ
はベルト付きラジアルプライ(belted radi
al ply)の乗用車用タイヤであった。 【0059】これらのタイヤを製造する際に用いたトレ
ッド組成物は実施例1に記載の方法で造ったブタジエン
/イソプレンコポリマー70部、高シス−1,4−ポリ
ブタジエン20部、天然ゴム10部、カーボンブラック
45部、プロセス油類10部、酸化防止剤類3部、ワッ
クス1部、硫黄3部、ステアリン酸1部、促進剤類1.
25部及び酸化亜鉛1.25部から成るものであった。 【0060】製造したタイヤをリムに取り付け、空気を
入れて膨張させ、そして転り抵抗性及びトレッド摩耗性
を試験、測定するために供した。転り抵抗性及びトレッ
ド摩耗性は対照のタイヤの転り抵抗性とトレッド摩耗性
の値を100に標準化してそれに対する比較値として求
めた。対照のタイヤは前記のブタジエン/イソプレンコ
ポリマーの代りに70部のスチレン−ブタジエンを用い
て組み立てたものであった。けん引力は対照タイヤのA
STME501値を100に標準化し、これに対する値
として求めた。転り抵抗性の測定は車のスピード80k
m/時間(50マイル/時間)に相当する速度において
タイヤに加わる定格荷重(ratedload)の60
%、80%及び100%の下で170cm(67インチ)
の力量計(dynamometer)上でタイヤを回転さ
せ、抗力(drag force)を測定して行った。け
ん引力は標準的な試験法を用いて測定した。この試験に
おいて、試験タイヤと対照のタイヤを秤量されたトレー
ラーの対向両側に取り付けた。トレーラーは、ブレーキ
をかけることができ、滑り力(skid force)
(ピークとスライド)を測定する濡れた表面上を引張ら
れた。トレッド摩耗性は標準のテキサストレッド摩耗試
験法(Texas treadweartest)を用
いて測定した。以上の試験の結果によると、試験タイヤ
は100%の荷重における転り抵抗性112、80%の
荷重における転り抵抗性114及び60%の荷重におけ
る転り抵抗性115を有することが確認された。試験タ
イヤはまた32km/時間(20マイル/時間)におけ
る濡れけん引力等級(wettraction rat
ing)106及び97km/時間(60マイル/時
間)における濡れけん引力等級133を有することが確
認された。試験タイヤのトレッド摩耗性は137と測定
された。 【0061】本実施例は本発明のブタジエン/イソプレ
ンコポリマーは顕著な特性を有するタイヤトレッドを製
造する際に用いることができることを明確に示してい
る。つまり、これらのコポリマーはタイヤのけん引力、
トレッド摩耗性及び転り抵抗性を改良するのに用いるこ
とができる。従来、タイヤの転り抵抗性をそのウエット
スキッド抵抗性を犠牲にしないで改良することは非常に
困難であった。しかし、本発明のブタジエン/イソプレ
ンコポリマーをタイヤトレッドにおいて用いることによ
ってけん引力、トレッド摩耗性及び転り抵抗性は全て改
良することができる。 【0062】実施例21.ブタジエン/イソプレンコポ
リマーの代りに実施例15に記載の方法で製造したスチ
レン/ブタジエンゴムを用いたことを除いて実施例20
に記載の手順を使用して空気入り試験タイヤを造り、試
験した。製造した試験タイヤは荷重100%の転り抵抗
性が119、荷重80%の転り抵抗性が120、荷重6
0%の転り抵抗性121であることが確認された。試験
タイヤはまた32km/時間(20マイル/時間)にお
ける濡れけん引力等級が106、97km/時間(60
マイル/時間)における濡れけん引力等級が136であ
ることが確認された。試験タイヤのトレッド摩耗性は1
41と測定された。 【0063】本実施例は本発明のスチレン/ブタジエン
ゴムは優れた性質の組み合わせを有するタイヤトレッド
を製造する際に用いることができることを明白に示して
いる。つまり、タイヤトレッドに斯るスチレン/ブタジ
エンゴムを用いることによって改良されたけん引力、ト
レッド摩耗性及びウエットスキッド抵抗性がもたらされ
るのである。 【0064】実施例22.ブタジエン45%、イソプレ
ン45%及びスチレン10%を含有するターポリマーを
2つの重合反応器から成る連続系で製造した。この重合
は第一反応器に0.03phmのn−ブチルリチウムを
仕込むことによって開始させた。第一反応器には予めモ
ノマー類、溶媒及び0.06phmのN,N,N’,
N’−テトラメチルエチレンジアミンを仕込んでおい
た。 【0065】第一反応器は85℃(185゜F)の温度
に保持した。第一反応器の滞留時間は約0.5時間で、
その間に約60%の転化率が達成された。第一反応器の
内容物を88〜91℃(190〜195゜F)の範囲内
の温度に保持された第二反応器に連続的に移送した。第
二反応器の滞留時間は1時間で、それにより約100%
の転化率が達成された。 【0066】合成されたターポリマーは−73℃に第一
ガラス転移温度を、−23℃に第二ガラス転移温度を有
していた。また、生成ターポリマーは0℃におけるta
nδが0.49、60℃におけるtan δが0.07
0であることが確認された。 【0067】実施例23.この実験ではブタジエンを4
0%、イソプレンを40%及びスチレンを20%含有す
るターポリマーを製造したことを除き実施例22に記載
の手順を繰り返した。このターポリマーは−78℃に第
一ガラス転移温度を、また−19℃に第二ガラス転移温
度を有することが確認された。生成ターポリマーはまた
0℃におけるtan δが0.64、60℃におけるt
an δが0.091であることが確認された。 【0068】実施例24.本実験ではイソプレンを35
%、ブタジエンを35%及びスチレンを30%含有する
ターポリマーを合成した点を除き実施例22に記載の手
順を繰り返した。製造されたターポリマーは0℃におけ
るtan δが0.098、60℃におけるtan δ
が0.134であることが確認された。 【0069】本明細書に与えた記載に徴して本発明には
様々の変化が可能なことが分るだろう。従って、以上記
載の特定の態様には様々の変更を加えることができ、そ
れらも前記特許請求の範囲に規定される本発明の範囲内
に入るものであることを理解すべきである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 7:00) (C08L 53/00 9:00 7:00) (73)特許権者 590002976 1144 East Market Str eet,Akron,Ohio 44316 −0001,U.S.A. (72)発明者 ジョエル・リン・コックス アメリカ合衆国オハイオ州44721,ノー ス・キャントン,ノース・イースト,リ ンクス・アベニュー 7582 (72)発明者 ジョージ・フランク・バロー アメリカ合衆国オハイオ州44720,ノー ス・キャントン,ノース・ウエスト,ウ ィンターウッド・アベニュー 8200 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08L 7/00 - 21/00 C08L 53/00 - 53/02 C08F 297/02 - 297/04

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.トレッド、側壁及び支持カーカスから成る空気入り
    タイヤであって、 該トレッドは、50〜80重量%のゴム状ポリマー、1
    0〜40重量%のポリブタジエン及び10〜40重量%
    の天然ゴムから成るゴムブレンドから成り、 該ゴム状ポリマーは少なくとも1種の共役ジオレフィン
    モノマーから誘導される繰返単位を含み、そして−11
    0℃〜−20℃の間の第一のガラス転移温度、−50℃
    〜0℃の間の第二のガラス転移温度、及び100,00
    0〜400,000の範囲内の数平均分子量を有する、 前記の空気入りタイヤ。 2.該ゴム状ポリマーがブタジエンとイソプレンとの共
    重合体であり、該共重合体の繰返単位の10〜50モル
    %がイソプレンから誘導され、該共重合体の繰返単位の
    50〜90モル%がブタジエンから誘導されたものであ
    る、請求項1に記載の空気入りタイヤ。 3. 該ゴム状ポリマーが−20〜20℃の間のガラス
    転移温度をさらに有する、請求項2に記載の空気入りタ
    イヤ。
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