JP2780085B2 - 造波方法 - Google Patents

造波方法

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JP2780085B2 JP29493395A JP29493395A JP2780085B2 JP 2780085 B2 JP2780085 B2 JP 2780085B2 JP 29493395 A JP29493395 A JP 29493395A JP 29493395 A JP29493395 A JP 29493395A JP 2780085 B2 JP2780085 B2 JP 2780085B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数の造波板の位
相差周期運動によって造波板配列の前方に斜め規則波又
はそれを合成した多方向不規則波を発生させる多方向造
波装置による造波方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば海洋構造物の水理試験のために構
造物の模型に対して試験水槽と造波装置を利用して任意
方向の規則波を作用させる場合、造波装置には、所望の
波面の規則波を目的の方向に送り出すことのできる機能
が要求される。このような目的で従来から多方向不規則
波の造波装置が用いられているが、その場合の多方向不
規則波は、一般的にはビーゼルのスネーク原理(F.Bies
el; Proceeding of 1stConference on Ships and Wave
s, p.288-304, 1954)に基づいた斜め規則波の合成によ
って造波される。
【0003】即ち、多方向不規則波用の造波装置は、一
列に配列された複数の造波板と、各造波板を個々に駆動
する駆動装置と、駆動装置による各造波板の周期運動を
制御する制御装置と、予め定められた造波指令信号を前
記制御装置に与える信号発生装置とを備えており、隣接
する造波板に位相差を与えて運転することにより、ホイ
ヘンスの原理に従って各造波板から生じる波の包絡線で
形成される波峰線によって前記造波板配列の斜め前方に
向かう規則波又はそれを合成した多方向不規則波を発生
させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、多方向造波
装置の個々の造波板の運動振幅を一定としてスネーク原
理に従って造波した斜め規則波は、造波機端部の特異性
と個々の造波板の幅の有限性により、波高および波向き
共に空間的に変動を示し、目標とする波高に対して±2
0%を超える波高の変動が含まれることも稀ではなく、
しかもこの変動は個々の造波板の幅を無限小とした場合
でも消すことはできないことが解析されている(T.Taka
yama; Report of PHRI, Vol.21, No.2, p.3-48, 198
2)。
【0005】この場合、斜め規則波の波高は稜線方向で
一様とならず、そのため多数の斜め規則波を重ね合わせ
ることにより得られる多方向不規則波の方向分布特性も
水槽内の位置によって変化することが指摘されている
(T.Takayama and T.Hiraishi;Report of PHRI, Vol.2
8, No.4, p.3-24, 1989 )。この変動は、規則波の水理
実験の精度低下の原因の一つとなっており、また、多方
向不規則波においては、方向スペクトルの場所的な変動
とも密接な関係をもつ。従って、斜め規則波の波高や波
向きの一様性を確保することは、多方向造波装置による
水理実験の実施に際して本質的な重要課題である。
【0006】本発明は、多方向造波装置による造波に際
して造波板前方の所望の設定水面領域で斜め規則波の波
高及び波向きの一様性を向上させるための造波板の振幅
分布を合理的に決定し、あるいは更に斜め規則波の合成
により造波される多方向不規則波の方向スペクトルを目
標値と一致させるための造波板の振幅分布を合理的に決
定することを可能とする造波方法を提供しようとするも
のである。
【0007】
【課題を解決するための手段】以下、斜め規則波の造波
について主に説明する。多方向不規則波の造波は以下の
方法の重ね合わせにより実現される。本発明による造波
方法は、一列に配列された複数の造波板と、各造波板を
個々に駆動する駆動装置と、駆動装置による各造波板の
周期運動を制御する制御装置と、個々の造波板の周期運
動についてそれぞれ固有に定められた造波指令信号を前
記制御装置に入力する信号発生装置とを備えた多方向造
波装置によって前記造波板配列の前方に斜め規則波を発
生させるに際し、造波板配列の前方水域に実験条件に応
じて設定した水面領域内の複数の観測点における水位振
幅の目標値と、個々の造波板の運動振幅に基づき算出さ
れた計算値との残差平方和を求め、この残差平方和を最
小にする造波板運動振幅値を最小自乗法に従ってそれぞ
れの造波板について求めることにより、前記設定水面領
域で一様な波高および波向き分布を得るための造波板運
動振幅の最適分布を決定し、この最適分布を与える造波
指令信号を前記制御装置に入力することを特徴とする。
【0008】多方向造波装置では、隣接する造波板に位
相差を与えて運転することにより、ホイヘンスの原理に
従って各造波板から生じる波の包絡線で形成される波峰
線によって前記造波板配列の斜め前方に向かう規則波を
発生させることができることは周知の通りである。この
場合、水槽の一辺に沿って均一なピッチで一列に配列さ
れた複数の造波板は駆動装置によって個々に往復周期運
動し、この駆動装置による各造波板の周期運動は制御装
置によって制御される。信号発生装置は、個々の造波板
の周期運動に対してそれぞれ固有に定められた造波指令
信号を前記制御装置に与え、これにより駆動装置がスネ
ーク原理に基づいて各造波板を予め定められた位相差で
周期的に往復運動させ、各造波板から生じる波の包絡線
で形成される波峰線によって前記造波板配列の前方に所
定方向へ向かう斜め規則波を発生させる。
【0009】本発明では、多方向造波装置によって造波
される斜め規則波の前記設定水面領域内の複数の観測点
における水位振幅をそれぞれ目標値に合わせるための各
造波板の運動振幅の分布を、以下のように最適化問題と
して解くことにより個々の造波板に対する造波指令信号
を与えるものであり、これは、造波板上に位置する複素
点波源の強度の絶対値を、同一の造波板上の波源強度は
直線的に変化するという制約条件下で適切に定めること
により、個々の点波源から発生する円筒波の振幅を調整
し、それらの重ね合わせである斜め規則波の波高の一様
性を向上させようとするものである。
【0010】尚、以下の説明においては、斜め規則波の
発生に水槽側壁からの反射波を利用しない場合について
述べるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】今、造波装置の造波板可動形式は図2に示
すように個々の造波板が両端で駆動軸により折り戸式に
往復運動する連続型とし、造波板運動の位相はスネーク
原理に従うものとする。駆動軸の本数が偶数(=2N)の
場合を考え、座標系を図2のようにとり、それぞれの駆
動軸の振幅をai (i=-N〜N-1)とし、観測点の数をMと
する。このとき、j番目の観測点(xj ,yj )におけ
る水面形ηj は、定常減衰項を無視すると、水口の報告
(水口;連続型多方向造波装置の造波理論と一様な波の
場;中央大学理工学部紀要,第36巻,pp.21-37,1993)
にある解から以下のように求められる。
【0012】
【数1】ηj =α(ES 2+EC 21/2 cos 〔tan-1(ES/
C)−σt〕
【0013】従って、駆動軸の代表振幅b0 で無次元化
したj番目の観測点における水位振幅Aj は次式の通り
となる。
【0014】
【数2】Aj = (α/b0) (ES 2+EC 2)1/2
【0015】ここでαは以下のように表される。
【0016】
【数3】α=2・sinh2kd/(sinh2kd+2kd)
【0017】また、ES およびEC は、それぞれ以下の
ように表される。
【0018】
【数4】
【0019】ここで、NijおよびJijは以下の通りであ
る。
【0020】
【数5】
【0021】数1〜数5において、tは時間、σは角周
波数、kは波数(=2π/L;Lは波長)、dは水深、
βはy軸から波向線方向にとった波向角、wは造波板1
枚の幅、N0 とJ0 は0次のノイマン関数およびベッセ
ル関数であり、i=-Nおよびi=N-1 の駆動軸に対して
は積分範囲を [0 , kw] , [-kw , 0] とする。
【0022】駆動軸の代表振幅b0 で無次元化した各計
算点(観測点)における水位振幅の目標値AC を次式で
表す。これは、ピストン型の二次元造波装置の造波特性
関数(効率)の1/2である。
【0023】
【数6】 AC =2(cosh2kd−1)/(sinh2kd+2kd)
【0024】従って目標値と計算値との残差平方和は次
式の通りである。
【0025】
【数7】
【0026】数7で示されるr2 を最小にするai を求
めることにより駆動軸の振幅の最適分布が決定される。
これは、ai に関する非線形の最小自乗問題を解くこと
になることは述べるまでもなく、例えばマルカートの手
法(中川ら;最小二乗法による実験データ解析−プログ
ラムSALS;東京大学出版会、pp.206, 1986)により
解くことができる。
【0027】このようにして本発明では観測点の配置を
水槽内の水面領域に自由に定めることができ、現実的な
範囲内で任意に設定した水面領域で一様な波高分布を獲
得できる造波が可能である。
【0028】
【発明の実施の形態】図1に本発明の一実施例に係る造
波装置の構成を模式的に示す。図において、複数の造波
板Pは図示しない水槽の辺に沿って均一なピッチで一列
に配列されているものとする。尚、造波板の配列は直線
状の一列に限られるものではなく、後述の演算に利用す
る座標位置が設定されていれば水槽の隣接辺に沿った折
線状あるいは曲線状、斜め直線状など、任意に配列可能
である。各造波板Pはそれぞれ対応する駆動装置D(例
えば流体圧ピストンシリンダ装置などの往復駆動装置)
によって隣接造波板とのヒンジ部で折り戸状に個々に往
復周期運動される。各駆動装置Dは固定架台Fに支持さ
れており、各駆動装置Dによる個々の造波板Pの周期運
動は、例えば流体圧制御ユニットなどからなる制御装置
Cによって統括的に制御される。
【0029】制御装置Cに対する造波指令信号は、本実
施例ではパーソナルコンピュータで構成された信号発生
装置Sから与えられる。信号発生装置Sは、スネーク原
理に従って互いに隣接する造波板の周期運動に位相差が
生じるように、目標とする規則波の進行方向に応じて予
め定められた周期と位相差、及び本発明の方法に従って
定められる造波板振幅をもつ造波指令信号を制御装置C
に与え、これにより各駆動装置Dがスネーク原理に基づ
いて各造波板Pを前記周期及び位相差で往復運動させ、
各造波板Pから生じる波の包絡線で形成される波峰線に
よって造波板配列の前方に向かう目標波向線方向に規則
波を発生させる。
【0030】信号発生装置Sは、個々の造波板Pの両端
の駆動軸を数7で示されるr2 が最小となる運動振幅a
i の分布に従って往復運動させるように前記造波指令信
号を制御し、これは、例えば信号処理プログラムをコン
ピュータSにインストールすることによって実施するこ
とができる。
【0031】図3に、コンピューターSによる処理フロ
ーの一例を示す。まず最初のステップ11では、水深d
[m] 、周期T[sec] 、波向きβ [°] 、造波板の幅w
[m] 、駆動軸の本数Nなどのパラメータを指定し、ステ
ップ12で波高を一様化させるべき水面領域を位置座標
値で指定し、ステップ13で指定された水面領域内の計
算点(観測点)の座標値(x1 ,y1 )〜(xM
M )で設定する。尚、ここでは設定水面領域を矩形領
域とし、各観測点を直交座標系のマトリクス格子点で設
定しているが、設定水面領域の形状は任意の多角形領域
または曲線で囲まれた非線形領域とすることもでき、観
測点も極座標で任意位置に設定可能である。
【0032】次いでステップ14では、各駆動軸の振幅
(a1 〜aN )を変数として数2に従った数値計算によ
り、先に設定された水面領域内の各計算点(x1
1 )〜(xM ,yM )上での水位振幅(A1 〜AM
を計算する。
【0033】次にステップ15では、各計算点(x1
1 )〜(xM ,yM )上での水位振幅の目標値AC
数6にしたがって計算する。尚、数6においてk=2π
/Lであり、Lは波長[m] である。
【0034】ステップ16では、ステップ14およびス
テップ15の計算結果を用いて数7により残差平方和r
2 を計算する。ここで、ステップ14による計算結果の
1〜AM は、変数としての駆動軸振幅a1 〜aN の関
数である。
【0035】ステップ17では、非線形最小自乗法によ
り、ステップ16で得られたr2 を最小とする駆動軸振
幅a1 〜aN の値を求める。これによって求められたa
1 〜aN の値が信号発生装置Sから制御装置Cへ与えら
れる造波指令信号の振幅値であり、ステップ18ではこ
の振幅分布で各駆動装置Dが各造波板Pを駆動して造波
を行う。
【0036】実際の造波装置では、信号発生装置Sによ
り種々の設定パラメータに応じて互いに異なる複数の水
面領域に対する波高一様化のための造波板駆動軸の最適
な振幅分布を予め求めておいてこれをメモリーに記憶し
ておき、水面領域の位置座標と水深および波高を指定す
ることにより、メモリーから該当する駆動軸の振幅分布
に応じた造波指令信号を読出して出力するようにする。
これにより、造波指令信号によって駆動される個々の造
波板は、目標方向に応じてスネーク原理に従って算出さ
れた位相差と、本発明の方法に従って算出された最適な
振幅分布とを用いて駆動軸を運転することによって、選
択的に設定した水面領域で得られる斜め規則波の波高と
波向きの分布が一様化されることになる。
【0037】
【実施例】上述した方法で造波装置の駆動軸の振幅分布
を求め、平面水槽設備を用いて発生波の特性を観測し
た。使用した造波装置は、図4に示したように50m×
40mの平面水槽の長辺に沿って幅0.9mの造波板
(駆動軸本数=28本)を27枚配列した全幅24.3
mのサーボモーター式連続型多方向造波装置であり、水
深0.6m、周期1.8秒、波向き0度および22.5
度の場合について実験を行った。
【0038】図5には、本発明の方法に従って求めた造
波板駆動軸の振幅分布を相対振幅で示す。本実施例で
は、駆動軸の振幅の初期値は矩形分布(一定振幅)とし
た。ここで、水位振幅の一様化の対象領域は、図4に示
したように波向き0度の場合ではx=−4〜4m,y=
4〜12mの範囲の矩形領域Aであり、波向き22.5
度の場合ではx=−9〜−1m,y=4〜12mの範囲
の矩形領域Bであり、それぞれの領域内におけるΔx=
Δy=1mのマトリクス格子点に各々合計81点の観測
点を設定した。
【0039】図5から、本発明の方法によれば造波板配
列両端部の駆動軸にピークを有する非一様な駆動軸振幅
分布が得られ、結果的に造波機端部の特異性と個々の造
波板の幅の有限性を補償していることが判る。
【0040】図6に波向き0度のケースの反復回数と残
差平方和の計算の収束状況を示す。1回目の修正で残差
平方和が1/100程度まで減少していることが判る。
予備的な計算によれば、このケースでは1回の修正で実
用上充分な一様性の改善が見られた。又、本発明の方法
は予め一様化の対象領域を指定して造波板駆動軸の振幅
分布を求めるものであるが、実際には波動運動の連続性
のために対象領域を含む広い領域で一様性が改善される
こと、および反復回数を増やした場合には手法の特性上
から対象領域の一様性は一層改善されるものの、上述し
た二次的な一様化領域の広がりが減少することが確認さ
れた。
【0041】次に、本実施例で得られた造波板駆動軸の
振幅分布によって発生する波浪場の特性を数値計算によ
って検討した。計算領域は図4に一点鎖線で示したよう
に領域A及びBを含む縦18m,横25mの範囲であ
り、計算領域内の0.5m間隔の格子点上での値を求め
た。図7および図8に、波向き0度と22.5度の各ケ
ースについての波浪場の様子を示す。各図において、上
段は従来方式(駆動軸振幅一定)の場合、下段は駆動軸
振幅を補正した本発明方式(図5の駆動軸振幅分布)の
場合であり、それぞれ左から順に、無次元波高分布、波
向きの目標値との差、流速楕円の偏平度に関する結果を
示す。ここで、無次元波高は発生波高を駆動軸の両振幅
で割った値として定義し、その目標値は本実施例の計算
条件下では0.97である。波向きは、流速楕円の長軸
方法で定義した。また偏平度は流速楕円の短軸の長さを
長軸の長さで除した値であり、波向きの分散を表す。
【0042】これらの図から、いずれの波向きの場合も
従来方式では波高分布に場所的に大きな変動が現れ、無
次元波高で0.9以下あるいは1.1以上となる箇所が
島状に出現しているのが判る。これに対して、本発明の
方式に従って造波板駆動軸の振幅に補正を加えた場合に
は、設定領域で波高分布が極めて一様になっていること
が判る。
【0043】波向きの目標値との差は±2.5度を、ま
た流速楕円の偏平度は0.05以下を許容範囲としてハ
ッチングで区別してある。波向きの差と流速楕円の偏平
度とは共に無次元波高の分布に対応した空間的変動パタ
ーンを示し、従来方式による場合では波向きの差が±
2.5度以上、偏平度が0.05以上となる領域がセル
状に現れている。このような波向きの変動と上述の波高
の変動が、一方向斜め不規則波に方向分散性が伴うこ
と、あるいは多方向不規則波の方向スペクトルに場所的
な変化が現れることの一つの原因となっているものと考
えられる。
【0044】本発明に従って造波板駆動軸の振幅分布に
補正を加えた場合には、上述のようなセル状の領域は消
失し、波向き及び波向きの分散性が共に著しく目標値に
近づいていることが判る。ここで注目すべきは、本発明
では波高の一様性にのみ着目して定式化したものである
が、波向きの一様性も同時に向上し、且つ波向きの分散
性が低下することである。
【0045】図9に、波向きを22.5度として対象領
域をx=−4〜4m,y=4〜12mの領域Aとした場
合の無次元波高分布を示す。水深と周期は前述の通り
0.6m,1.8秒であり、領域内の観測点も同様の8
1点である。図9から、斜め波の場合に造波板配列全長
の中心点からの波向線に沿う範囲以外を一様化の対象領
域とした場合も波高の一様化が達成されていることが判
る。
【0046】以上に述べた造波板駆動軸の振幅分布の決
定手法の実用性を検証する目的で実験を行った。実験設
備は上述の数値計算条件と同様に図4に示した水槽およ
び造波機とし、水深0.6m、周期1.8秒、波向き0
度および22.5度の場合について実験した。造波板駆
動軸のストロークは全振幅で7.4cmとし、図4に示
す測線(y=7.0m)上で波高分布と流速の測定を行
い、解析には水槽前方端の消波斜面及び側方の消波材か
らの反射波が戻る前の時間内に得られたデータを使用し
た。
【0047】図10に、従来方式の場合と駆動軸の振幅
を補正した本発明方式の場合の無次元波高の計算結果と
実測結果を示す。ここで、目標波高は予備実験で得た二
次元造波特性関数の実測値を考慮した値を用いている。
図10で(a)図は波向き0度で対象領域を領域Aとし
た場合、(b)図は波向き22.5度で対象領域を領域
Bとした場合の結果である。これらの図から、従来方式
の場合と本発明方式の場合ともに、いずれの波向きにお
いても計算値は実測値に良く一致し、本発明に従って駆
動軸の振幅を補正した場合には波高分布が一様となって
いることが確認できる。
【0048】この実験では、波向き22.5度で対象領
域Aの場合についても測定を実施したが、図10に示し
た場合と同様に計算値と実測値との良い一致を見た。
【0049】図11に波向き22.5度の場合の流速楕
円を示す。(a)図が従来方式の場合、(b)図が対象
領域を領域Bとして駆動軸の振幅を補正した本発明方式
の場合であり、破線が計算値、実線が実測値である。
尚、斜めの点線は設定した波向きの方向を示している。
図11から、造波板駆動軸の振幅に本発明に従って補正
を施すと波向きの分散性が少なくなることが判る。図1
1に見られる波向きの計算値と実測値とのずれの原因の
殆どは流速計の据付誤差によるものであり、実際には駆
動軸の振幅に補正を施した本発明方式の場合には波向き
がもっと設定値に近づいているものと考えられる。
【0050】尚、以上の説明では一様な水深で側壁反射
のない場合について述べたが、造波板の動きが与えられ
たときに水槽内の波浪場を計算することができる環境条
件下であれば、造波機の形式、水槽側壁の境界条件、水
槽底面形状によらず、本発明の手法は適用可能である。
【0051】ここで、本発明の方法を多方向不規則波の
造波に拡張するための手順について述べる。多方向不規
則波への拡張は、多数の斜め規則波を成分波として、そ
れらに対する造波板の運動を、方向スペクトルに応じて
重ね合わせることにより行なわれる。
【0052】図12は、このような多方向不規則波の方
向スペクトルの一例を示したものである(S. E. Sand;
Three-Dimentional Deterministic Structure of Ocean
Waves, Series Paper No. 24, Institute of Hydrodyn
amics and Hydraulic Engineering, Technical Univers
ity of Denmark, p.177, 1979)。図12において、f軸
は周波数[Hz](周期T[s] の逆数)、θ軸は波向きを表
わし、Sggを方向スペクトル、Δf×Δθの矩形領域の
中心点を(f1 ,θ1)とすると、周波数f1 で波向きθ1
の成分波のエネルギーはSgg(f1 ,θ1)ΔfΔθで表わ
されることになる。
【0053】従って、周波数の分割数をNF、波向きの
分割数をNDとすると、時刻tにおけるi番目の駆動軸
の変位ζ(t,i) は次式で表わされる。
【0054】
【数8】
【0055】ここに、Anmは成分波のエネルギーであ
り、方向スペクトルから次式で求められる。
【0056】
【数9】
【0057】上式の定積分の範囲f1・・・f21・・・θ2
は、成分波が代表する周波数及び波向きの範囲である。
また、Aooは全エネルギーであり、次式で求められる。
【0058】
【数10】
【0059】anmi が各成分波について求めたn番目の
周波数及びm番目の波向きに対するi番目の駆動軸の振
幅である。また、εnmは一様乱数で与える0〜π/2間
の数値、bは造波板の幅[m] 、kn は波数[m-1] (=2
π/L,Lは波長)である。以上の手順をフロー図で示
すと図13の通りである。
【0060】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明による造波
方法は逆演算の手法で定式化した造波板駆動軸の振幅分
布の決定法を実現したものであり、多方向造波装置によ
る斜め規則波の造波において水槽側壁からの反射波を利
用することなく造波板前方の目標とする設定水面領域で
斜め規則波の波高の一様性を向上させるための造波板の
振幅分布を合理的に決定することができ、波高の一様性
のみならず波向きの一様性も同時に向上し、且つ波向き
の分散性も少なくなるので、精度の高い水理試験の実施
が可能になるという効果がある。また、本発明による造
波方法によって発生される斜め規則波を多数重ね合わせ
て多方向不規則波を発生させる場合にも、多方向不規則
波の方向スペクトルとその目標値との一致度を向上でき
る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するための造波装置の構成
の一例を示す模式図である。
【図2】造波板の可動形式と座標系を説明するための造
波板配列の模式図である。
【図3】本発明による造波方法の主な処理フローの一例
を示す流れ図である。
【図4】実施例に用いた平面水槽の構成を示す模式平面
図である。
【図5】本発明の方法に従って求めた造波板駆動軸の振
幅分布を相対振幅で示す線図である。
【図6】波向き0度のケースの反復回数と残差平方和の
計算の収束状況を示す線図である。
【図7】本発明の実施例で波向き0度の場合の造波板駆
動軸の振幅分布によって発生する波浪場の様子を示し、
上段は従来方式、下段は本発明方式、それぞれ左から順
に、無次元波高分布、波向きの目標値との差、流速楕円
の偏平度の平面分布を示す説明図である。
【図8】本発明の実施例で波向き22.5度の場合の造
波板駆動軸の振幅分布によって発生する波浪場の様子を
示し、上段は従来方式、下段は本発明方式、それぞれ左
から順に、無次元波高分布、波向きの目標値との差、流
速楕円の偏平度の平面分布を示す説明図である。
【図9】同じく波向き22.5度で対象領域Aの場合の
無次元波高分布を示す説明図である。
【図10】従来方式および本発明方式の場合の無次元波
高の計算結果と実測結果を示し、(a)は波向き0度で
対象領域を領域Aとした場合、(b)は波向き22.5
度で対象領域を領域Bとした場合の線図である。
【図11】波向き22.5度の場合の流速楕円を示し、
(a)は従来方式の場合、(b)は対象領域を領域Bと
して駆動軸の振幅を補正した本発明方式の場合の線図で
ある。
【図12】多方向不規則波の方向スペクトルの一例を示
す線図である。
【図13】本発明の方法を多方向不規則波の造波に拡張
するための手順を示すフロー図である。
【符号の説明】
P:造波板、D:駆動装置、F:架台、C:制御装置、
S:信号発生装置。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一列に配列された複数の造波板と、各造
    波板を個々に駆動する駆動装置と、駆動装置による各造
    波板の周期運動を制御する制御装置と、個々の造波板の
    周期運動についてそれぞれ固有に定められた造波指令信
    号を前記制御装置に入力する信号発生装置とを備えた多
    方向造波装置によって前記造波板配列の前方に斜め規則
    波又はそれを合成した多方向不規則波を発生させるに際
    し、 前記造波板配列の前方水域に実験条件に応じて設定した
    水面領域内の複数の観測点における水位振幅の目標値
    と、個々の造波板の運動振幅に基づいて算出された計算
    値との残差平方和を求め、この残差平方和を最小にする
    造波板運動振幅値を最小自乗法に従ってそれぞれの造波
    板について求めることにより、前記設定水面領域で斜め
    規則波の一様な波高分布および波向きを得るための、あ
    るいは更に多数の斜め規則波を重ね合わせて発生させる
    多方向不規則波の方向スペクトルを目標値に一致させる
    ための造波板運動振幅の最適分布を決定し、この最適分
    布を与える造波指令信号を前記制御装置に入力すること
    を特徴とする造波方法。
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