JP2779331B2 - エンジン用補機のベルト伝動装置 - Google Patents

エンジン用補機のベルト伝動装置

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JP2779331B2
JP2779331B2 JP7048082A JP4808295A JP2779331B2 JP 2779331 B2 JP2779331 B2 JP 2779331B2 JP 7048082 A JP7048082 A JP 7048082A JP 4808295 A JP4808295 A JP 4808295A JP 2779331 B2 JP2779331 B2 JP 2779331B2
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    • F02BINTERNAL-COMBUSTION PISTON ENGINES; COMBUSTION ENGINES IN GENERAL
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    • F02B67/04Engines characterised by the arrangement of auxiliary apparatus not being otherwise provided for, e.g. the apparatus having different functions; Driving auxiliary apparatus from engines, not otherwise provided for of mechanically-driven auxiliary apparatus
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16HGEARING
    • F16H7/00Gearings for conveying rotary motion by endless flexible members
    • F16H7/02Gearings for conveying rotary motion by endless flexible members with belts; with V-belts
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F02COMBUSTION ENGINES; HOT-GAS OR COMBUSTION-PRODUCT ENGINE PLANTS
    • F02BINTERNAL-COMBUSTION PISTON ENGINES; COMBUSTION ENGINES IN GENERAL
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  • Combustion & Propulsion (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、クランク軸からの回
転駆動力の伝動ベルトを介してのオルタネータ等の補機
に対する伝達を該クランク軸の角速度の微小変動に応じ
て一方向クラッチで接断するようにしたエンジン用補機
のベルト伝動装置に関し、特に一方向クラッチのロック
ミスを回避する対策に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車エンジンのクランク軸によりエン
ジン用補機としてのオルタネータを伝動ベルトを介して
回転駆動する場合には、上記クランク軸における角速度
の微小変動(以下、単に角速度変動という)に伴い、次
のような問題が生じる。
【0003】すなわち、上記オルタネータでは、補機軸
としてのオルタネータ軸に駆動連結されているロータが
大きな回転慣性(慣性モーメント)を有することから、
その回転慣性に抗してロータを回転駆動するのに要する
トルク(以下、慣性駆動トルクという)は大きい。一
方、負荷としての発電に要するトルク(以下、オルタネ
ータの場合には発電駆動トルク、補機一般の場合には負
荷駆動トルクという)は、ロータにステータの磁界を横
切らせるだけのトルクで済むことから小さい。このた
め、上記ロータをクランク軸で回転駆動すると、クラン
ク軸及びロータ間の伝動ベルトを介しての回転伝達経路
に瞬間的に動力循環が発生する。つまり、クランク軸の
角速度微小変動減少時(以下、単に角速度減少時とい
う)にはロータの回転が強制的に低下させられること
で、該ロータの回転慣性トルクがクランク軸に伝達され
る一方、角速度微小変動増加時(以下、単に角速度増加
時という)には回転の低下したロータをその回転低下分
だけクランク軸の回転駆動力で加速することである。
【0004】そして、この動力循環により、上記クラン
ク軸の角速度増加時の慣性駆動トルクが回転低下分だけ
多く必要となり、そのような大きいトルクを伝動ベルト
が負担しなければならないことから、ベルトのすべりに
よる異音の発生や、ベルトの早期破損を招くのである。
【0005】上記の問題に対し、本出願人は、先の出願
(特開昭61−228153号公報参照)において、ク
ランク軸及びロータ間の伝動ベルトを介しての回転伝達
経路に一方向クラッチを配設し、上記クランク軸の角速
度増加時には該クランク軸からの回転駆動力を上記ロー
タに伝達する一方、クランク軸の角速度減少時には上記
ロータからの回転慣性トルクの該クランク軸への伝達を
遮断するようにした技術を提案している。
【0006】上記提案例によれば、クランク軸の角速度
減少時にはロータからクランク軸への動力循環が行われ
ないので、その分だけロータの回転低下が回避されて角
速度増加時の慣性駆動トルクを小さくでき、伝動ベルト
の負担するトルクを大幅に軽減することができる。例え
ば、発電負荷が0であれば発電駆動トルクも0であり、
メカニカルロス等でロータが自然に回転低下する分の僅
かな慣性駆動トルクを補うだけで済むので、ロータを加
減速するためにベルトが負担するトータルの駆動トルク
は0に近くなる。この結果、滑りの防止やベルトの長寿
命化を図ることができるようになる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記ベルト
伝動装置の一方向クラッチとしては、どのようなもので
あっても用いることができるという訳ではない。つま
り、一方向クラッチは、クランク軸側に駆動連結された
駆動部材及びロータ側に駆動連結された従動部材を有し
ていて、その駆動部材に伝達される角速度変動の増減変
化に応じて駆動部材及び従動部材間のロック状態とフリ
ー状態とが切り換わるように作動するのであるが、その
切換わり作動は駆動部材の角速度が増加に転じた時点で
瞬時に行われるのではなく、所定の遅れを伴うのが一般
である。つまり、フリー状態からロック状態に切り換わ
る際には、上記駆動部材が従動部材に対し所定の作動遅
れ角だけ相対移動することで実質的なロック状態に切り
換わる。
【0008】したがって、図14に示すように、作動遅
れ角βの大き過ぎる一方向クラッチでは、所定の角速度
増加時にはロックがなされないというロックミスが生じ
ることとなり、クランク軸の回転駆動力の角速度増加時
毎の確実な伝達が損なわれるという問題がある。
【0009】かといって、逆に作動遅れ角を小さくし過
ぎると、今度は、一方向クラッチ内の滑りによるロック
ミス、すなわち、ロックし難くなってトルクを伝達でき
なくなるという事態が生じる。例えば、図3に例示する
ように、駆動部材としてのアウタレース7及び従動部材
としてのインナレース8間にクラッチローラ9が転動可
能に介装されてなるアウタローラ式一方向クラッチの場
合では、アウタレース7の内周面7aの傾斜角度αを大
きくすることで作動遅れ角βが小さくなるのであるが、
上記傾斜角度αを大きくし過ぎると、クラッチローラ9
がアウタレース7の内周面7aないしインナレース8の
外周面8aに対し滑り易くなって該ローラ9の確実な楔
作用が営まれ難くなる。この結果、やはりロックミスが
生じるようになるのである。
【0010】この発明は斯かる諸点に鑑みてなされたも
のであり、その目的は、一方向クラッチにおける駆動部
材及び従動部材間のロック・フリー状態の切換わり作動
の遅れ角の上限を適正に設定することで、クランク軸の
角速度変動に対し一方向クラッチを効率よく追従させて
ロックミスが生じないようにし、もって、伝動ベルトの
スリップ防止や長寿命化が具体的に得られるようにする
ことにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、請求項1の発明では、一方向クラッチの作動遅れ角
を、該一方向クラッチの駆動部材に伝達される角速度変
動の微小変位角よりも小さく設定することとし、上記微
小変位角よりも大きい変位角の回転域におけるクランク
軸の角速度増加時に上記一方向クラッチが確実にロック
状態となるようにした。
【0012】具体的には、この発明では、エンジンのク
ランク軸と、所定の回転慣性を持つロータを有してなる
補機に駆動連結された補機軸と、これらクランク軸及び
補機軸間に巻き掛けられ、角速度変動を伴うクランク軸
の回転駆動力を補機軸に伝達して補機のロータを回転駆
動させる伝動ベルトと、上記クランク軸から補機のロー
タに至る回転伝達経路に配設され、かつクランク軸側に
駆動連結された駆動部材及びロータ側に駆動連結された
従動部材を有していて、クランク軸の角速度増加時には
上記駆動部材及び従動部材がロック状態に切り換わって
該クランク軸からの回転駆動力を上記ロータに伝達する
ように作動する一方、クランク軸の角速度減少時には上
記駆動部材及び従動部材がフリー状態に切り換わって上
記ロータからの回転慣性トルクの該クランク軸への伝達
を遮断するように作動する一方向クラッチとを備えたエ
ンジン用補機のベルト伝動装置が前提である。
【0013】そして、上記クランク軸の角速度増加時に
おける一方向クラッチの駆動部材及び従動部材間のフリ
ー状態からロック状態に切り換わる作動遅れ角は、エン
ジンの高速度回転域(例えば5000rpm)における
定常運転状態で上記駆動部材に伝達される角速度変動の
微小変位角(例えば1.6°)よりも小さく設定されて
いるものとする。
【0014】請求項の発明では、上記請求項の発明
において、一方向クラッチが、クランク軸の伝動ベルト
を介しての回転駆動力を補機軸に伝達する位置に配置さ
れており、かつ上記クランク軸に対する補機軸の変速比
が2である場合に、上記一方向クラッチの作動遅れ角は
1.6°よりも小さく設定されているものとする。
【0015】請求項の発明では、上記請求項1の発明
において、補機は、発電負荷よりも大きい回転慣性を有
するロータが備えられてなっているとされているオルタ
ネータにより構成されているものとする。
【0016】
【作用】以上の構成により、請求項1の発明では、エン
ジンの定常運転状態において、クランク軸の角速度が増
加するときには、エンジンのクランク軸から補機のロー
タに至る回転伝達経路は、一方向クラッチがロック状態
となることにより接続されるので、上記ロータはクラン
ク軸の回転駆動力により回転駆動される。一方、クラン
ク軸の角速度が減少するときには、上記回転伝達経路は
一方向クラッチがフリー状態となることにより遮断され
るので、ロータの回転慣性トルクが伝動ベルトを介して
クランク軸に動力循環されることが回避される。そし
て、上記補機に加わる負荷や摺動抵抗等のメカニカルロ
スによりロータの回転が徐々に低下していく一方、クラ
ンク軸の角速度が再び増加するようになると、やがて上
記一方向クラッチがロック状態となり、該一方向クラッ
チを介してクランク軸の回転駆動力が補機のロータに伝
達されるようになる。
【0017】このとき、上記一方向クラッチの駆動部材
の角速度が増加に転じて作動遅れ角の分だけ増加した
後、該駆動部材の角速度まで上記ロータの回転が低下し
たとき、つまり、従動部材の角速度が低下したときに、
駆動部材及び従動部材はフリー状態からロック状態に切
り換わる。
【0018】ところで、角速度変動の変位角(変位幅)
には、一般に低速度側の回転域ほど大きくなる傾向があ
る。つまり、低速度側の回転域では角速度変動が激しい
ためにその変位角も大きくなる。したがって、上記微小
変位角よりも大きい変位角の回転域、すなわち上記微小
変位角の回転域よりも低速度側の回転域では、角速度変
動の周期は長くなるものの、それよりも変位角の方が大
きくなってクランク軸の角速度減少時におけるロータの
回転低下率が小さくなり、駆動部材の角速度は相対的に
早い時期に作動遅れ角の分だけ増加するようになるの
で、クランク軸の角速度増加時毎に略確実に一方向クラ
ッチのロック状態が得られる。
【0019】このとき、上記微小変位角が、エンジンの
高速度回転域における角速度変動の 変位角とされている
ので、アイドリング回転域から高速度回転域に亘るエン
ジンの全ての回転域において、一方向クラッチのロック
ミスが略確実に回避されるので、クランク軸の角速度変
動に伴ってベルトに加わる負荷が効率よく低減され、そ
の分だけベルトの滑り防止や長寿命化が具体的に図れる
ようになる。
【0020】請求項の発明では、上記一方向クラッチ
の作動遅れ角は、1.6°よりも小さく設定されてい
る。一般にクランク軸の角速度変動の変位角は、該クラ
ンク軸の回転数に応じて小さくなる。すなわち、アイド
リング回転時(例えば800rpm)の変位幅は±3°
(変位角は6°)程度であるが、高速度回転時(例えば
5000rpm)には±0.4°(変位角は0.8°)
になる。この高速度回転時に、クランク軸に対する従動
軸の変速比が2であれば、高速度回転時の一方向クラッ
チの駆動側に伝達される角速度変動の変位角は2倍の
1.6°となる。よって、上記請求項1の発明での作用
が具体的に営まれる。
【0021】請求項の発明では、上記クランク軸の回
転駆動力により、オルタネータのロータが回転駆動され
る。このオルタネータのロータは、従来の技術の項でも
説明したように、発電負荷よりも大きい回転慣性を有し
ていて慣性駆動トルクが大きい一方、負荷駆動トルクと
しての発電駆動トルクについてはロータに磁界を横切ら
せるだけの小さいトルクで済む。したがって、上記オル
タネータは、エンジン用補機のなかでも最も動力循環を
発生し易いものの1つである。よって、上記請求項1の
発明での作用が顕著に営まれる。
【0022】また、上記発電駆動トルクについては、ロ
ータ回転数に略反比例して大きくなる傾向があるので、
低速度側の回転域での慣性駆動トルクが略確実に低減さ
れることから、発電負荷があるときでも、トータルの駆
動トルクが広い回転域に亘って低いレベルに抑えられる
ようになる。
【0023】
【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づいて説
明する。図2は、この実施例に係るエンジン用補機とし
てのオルタネータ1のベルト伝動装置の全体構成を概略
的に示している。
【0024】上記ベルト伝動装置は、自動車が搭載する
4気筒ディーゼルエンジンDのフロント側に配設されて
いて、エンジンDのクランク軸2のフロント側端部に回
転一体に連結された駆動プーリ3と、上記オルタネータ
1の補機軸としてのオルタネータ軸1aに駆動連結され
た従動プーリ4との間に伝動ベルトとしてのVリブドベ
ルト5が巻き掛けられてなっている。上記オルタネータ
1のオルタネータ軸1aには、発電負荷よりも大きい回
転慣性を有する図外のロータが回転一体に設けられてい
る。また、駆動プーリ3及び従動プーリ4は、クランク
軸2に対するオルタネータ軸1aの変速比が例えば2と
なるように設定されている。そして、上記従動プーリ4
には、クランク軸2の角速度増加時に該クランク軸2か
らの回転駆動力を上記オルタネータ軸1aに伝達する一
方、クランク軸2の角速度減少時には上記オルタネータ
1のロータからの回転慣性トルクの該クランク軸2への
伝達を遮断する一方向クラッチ6が内蔵されている。
【0025】上記一方向クラッチ6はアウタローラ式の
もので、図3に示すように、従動プーリ4に回転一体に
連結されかつ内周側の周方向の複数箇所(同図には1箇
所のみ示している)に凹部9を有する駆動部材としての
アウタレース7と、このアウタレース7の内周側に配置
されてオルタネータ軸1aに回転一体に連結された従動
部材としてのインナレース8と、上記アウタレース7の
各凹部9内に配置された複数個(同図には1個のみ示し
ている)のクラッチローラ10,10,…とを備えてい
る。上記凹部9におけるアウタレース7の内周面7aは
上記インナレース8の外周面8aとの半径方向の間隔が
徐々に小さくなるようになされている。つまり、インナ
レース8及びローラ10間の接点を通る接線に対しアウ
タレース7及びローラ10間の接点を通る接線が所定の
角度αだけ傾斜していて、このことで、上記アウタレー
ス7がロック方向(同図の時計回り方向)に相対回転し
たときに、各ローラ10がアウタレース7の内周面7a
とインナレース8の外周面8aとの間に嵌まり込んでア
ウタレース7の相対回転をロック(ロック状態)する一
方、アウタレース7がフリー方向(同図の反時計回り方
向)に相対回転したときには、上記ロックを解除して該
相対回転がフリー(フリー状態)となるようになされて
いる。尚、図示は省略しているが、各ローラ10はクラ
ッチばねにより同図の反時計回り方向に向けて常に付勢
されている。
【0026】そして、図1に示すように、上記クランク
軸2の角速度増加時における一方向クラッチ6のアウタ
レース7及びインナレース8間のフリー状態からロック
状態に切り換わる作動遅れ角βは、エンジンDの高速度
回転域における定常運転状態で上記アウタレース7に伝
達される角速度変動の微小変位角sよりも小さい値(s
>β)に設定されている。
【0027】具体的には、エンジンDの高速度回転時
(例えば5000rpm)における定常運転状態での
ランク軸2の角速度変動の変位幅は一般に±0.4°で
あるので、クランク軸2に対するオルタネータ軸1aの
変速比が2のときには、オルタネータ軸1aの角速度変
動の変位幅は2倍の±0.8°(s=1.6°)とな
る。したがって、この実施例の場合では、上記一方向ク
ラッチ6の作動遅れ角βは、s=1.6°よりも小さい
β=0.45°に設定されている。このような小さい値
に設定した理由は、オルタネータ1の場合では発電負荷
が大きいときのロータの回転低下量がかなり大きくなる
ことを考慮したからである。尚、上記作動遅れ角βの大
きさは、一方向クラッチ6の凹部9におけるアウタレー
ス7の内周面7aの傾斜角αに略反比例しているので、
この傾斜角αを大きくすることにより、上記作動遅れ角
βを小さくすることができる。
【0028】次に、上記ベルト伝動装置の作動を説明す
る。ディーゼルエンジンDの定常運転状態において、
ランク軸2の角速度増加時には、クランク軸2とオルタ
ネータ1のロータとの間のVリブドベルト5を介しての
回転伝達経路は、一方向クラッチ6がロック状態となる
ことにより接続されるので、上記ロータはクランク軸2
の回転駆動力により回転駆動される。一方、クランク軸
2の角速度減少時には、上記回転伝達経路は一方向クラ
ッチ6がフリー状態となることにより遮断されるので、
ロータの回転慣性トルクがVリブドベルト5を介してク
ランク軸2に動力循環されることが回避される。そし
て、発電負荷やメカニカルロスによりロータの回転が徐
々に低下していく一方、クランク軸2の角速度が再び増
加するようになると、やがて上記一方向クラッチ6がロ
ック状態となり、該一方向クラッチ6を介してクランク
軸2の回転駆動力がオルタネータ1のロータに伝達され
るようになる。
【0029】このとき、上記一方向クラッチ6の作動遅
れ角βが、該一方向クラッチ6のアウタレース7に伝達
されるクランク軸2の高速度回転域における角速度変動
の変位角(1.6°)よりも小さい値(β=0.45
°)に設定されているので、上記高速度回転域では、上
記一方向クラッチ6のアウタレース7の角速度が増加に
転じて作動遅れ角βの分だけ増加した後、該アウタレー
ス7の角速度まで上記ロータの回転が低下したとき、つ
まり、インナレース8の角速度が低下したときに、これ
らアウタレース7及びインナレース8はフリー状態から
ロック状態に実質的に切り換わる。
【0030】したがって、この実施例によれば、ディー
ゼルエンジンDの高速度回転域における定常運転状態で
クランク軸2の角速度変動の変位幅(±0.4°)より
も大きい変位幅の回転域、つまり、角速度変動の変位幅
が一般に±3°程度とされるアイドリング回転から中速
度回転域に亘る常用回転域では、角速度変動の周期は高
速度回転域の場合よりも長くなるものの、それよりも変
位角の方が大きくなってクランク軸2の角速度減少時に
おけるロータの回転低下率が小さくなり、アウタレース
7の角速度は相対的に早い時期に作動遅れ角βの分だけ
増加するようになるので、クランク軸2の角速度増加時
毎に確実に一方向クラッチ6のロック状態が得られる。
よって、角速度変動の大きい低速度側の回転域から高速
度回転域までのエンジンdの全ての回転域での一方向ク
ラッチ6のロックミスを確実に回避できるので、クラ
ク軸2の角速度変動に伴うVリブドベルト5の負荷を効
率よく低減することができ、その分だけVリブドベルト
5の滑り防止や長寿命化を図ることができるようにな
る。
【0031】−実験例1− ここで、上記ベルト伝動装置におけるオルタネータ1の
駆動に必要なトルクについて行った実験の説明を行う。
【0032】先ず、オルタネータ1に取り付けられる従
動側のプーリが上記のような一方向クラッチを内蔵して
いない固定プーリの場合を、比較例として説明する。オ
ルタネータ1が、次の表1に示すような発電特性を有し
ていて発電負荷が85Aである場合の発電駆動トルク
(ALTトルク)とオルタネータ回転数(ALT回転
数)との関係は、図4の特性図に示すとおりである。
【0033】
【表1】
【0034】次に、クランク軸2の角速度変動の影響に
よる回転低下分だけオルタネータ1のロータを該ロータ
の回転慣性トルクに抗して回転させるのに要する慣性駆
動トルクを調べた。この実施例では、補機回転比rがr
=2、回転慣性トルクIPAがIPA=0.24kgf・m
・sec2である場合の実測データに基づいて上記慣性
駆動トルク(ALTトルク)の特性を得るようにした。
その結果を、図5に示す。
【0035】尚、上記慣性駆動トルクの値は、理論的に
は次の数式1及び2によっても得られるので、参考まで
に付記しておく。つまり、数式1によりクランク軸2の
角速度変動の振幅Amが求められ、 Am=(tn/100)×(m・Wn 2)/2 …1 単位:(rad/sec)2 但し、tn:クランク軸のn回転時の回転変動率(±%) m・・:エンジン気筒数 Wn:クランク軸のn回転時の角速度(rad/sec) 次いで、数式2により、慣性駆動トルクTRARA=(1/21/2)×Am×r×IPA …2 単位:kgf・m 但し、r・・:補機回転比(DR/DN) IPA:補機回転慣性トルク(kgf・m・sec2) が求められる。
【0036】したがって、比較例において発電負荷が8
5Aであるときの上記発電駆動トルク(図4)と慣性駆
動トルク(図5)とを合わせたトータル駆動トルク(A
LTトルク)は、図6に示すようになる。同様にして、
発電負荷が41.8A、20.6A、10.15A及び
5Aのときの各トータル駆動トルクを、同図に併せて示
しておく。この図6から、発電負荷の大きさに拘らず4
000回転以下の場合に大きなトータル駆動トルクの必
要なことが判る。
【0037】次に、本発明例について説明する。発電駆
動トルクについては、本発明例でも上記比較例の場合と
同じであり、例えば発電負荷が85Aのときには図4と
同じである。
【0038】そして、慣性駆動トルクについては、本発
明例の場合では、クランク軸2の角速度変動の影響によ
る回転低下が発生しないので、摺動抵抗等のメカニカル
ロスに伴う回転低下分だけで済む。したがって、トータ
ルとしての駆動トルクは、発電負荷が0Aのときには、
図7(a)に示す回転低下量Tの分だけで済む。また、
発電負荷が10A(同図(b))、20A(同図
(c))、30A(同図(d))と徐々に増えていく
と、その分だけロータの回転低下量Tが大きくなるので
トータル駆動トルクも大きくなる。つまり、角速度変動
吸収率(〔変位角−回転低下量〕/変位角×100)と
して考えると、発電負荷が例えば5Aのときには92.
9%であるのに対し、20.6Aのときには60.3%
に減少する。
【0039】発電負荷が85A〜5Aのときの本発明例
における各トータル駆動トルクの特性を、図8に示す。
図6の比較例と比べて判るように、発電負荷に拘らずト
ータル駆動トルクは全体として低減されている。特に、
発電負荷が小さくなるのに応じて大幅に低減されるよう
になるのが判る。
【0040】−実験例2− 一方向クラッチ内蔵プーリを従動プーリとしてオルタネ
ータに装着した本発明例のベルト伝動特性を調べるため
に、4気筒であるディーゼルエンジンのクランク軸及び
オルタネータ軸の各角速度変動と、Vリブドベルトの張
り側スパン及び緩み側スパンの各張力変動とを測定する
実験を行った。また、比較のために、上記一方向クラッ
チ内蔵プーリに代えて、オルタネータ軸に回転一体に連
結されてなる固定プーリを従動プーリとしてオルタネー
タに装着した比較例についても同様の測定を行った。
【0041】上記の実験を行うために、図9に示すよう
に、クランク軸2に取り付けた駆動プーリ3と、オルタ
ネータ軸1aに取り付けた従動プーリ4との間にVリブ
ドベルト5を巻き掛ける一方、各プーリ3,4に電磁ピ
ックアップ11,12を配設して該プーリ3,4の各角
速度をそれぞれ検出できるようにした。また、両プーリ
3,4間の各ベルトスパンに、各々、ロードセル13,
14を介して支持されたアイドルプーリ15,16をそ
れぞれ押圧させ、上記ロードセル13,14により各ス
パンの張力を検出できるようにした。ベルト初期張力は
588N(60kgf)とし、クランク軸2を所定の回
転速度(本発明例では720rpm、比較例では880
rpm)で回転させた。また、Vリブドベルト5には、
4条のリブが備えられたピッチ周長さが785mmのも
のを用いた。尚、比較例での回転速度を880rpmと
したのは、これよりも低いと、角速度変動が大きくなり
過ぎてVリブドベルト5が早期に破断するためである。
【0042】上記本発明例におけるクランク軸2、従動
プーリ4及びオルタネータ軸1aの各角速度変動を図1
0に、また比較例におけるクランク軸2及びオルタネー
タ軸1aの各角速度変動を図11にそれぞれ示す。4気
筒の場合ではクランク軸2の1回転毎に2度の爆発行程
が行われることから、本発明例ではクランク軸2の回転
速度が720rpmであるので上記クランク軸2の角速
度変動の周期は約41.7msecとなっている。一
方、比較例における同周期は約34.1msecとなっ
ている。尚、上記クランク軸2にはフライホイルは取り
付けられていないので、その角速度変動は実際よりも大
きく現われている。そして、本発明例におけるVリブド
ベルト5の張り側スパン及び緩み側スパンの各張力変動
を図12に、また比較例における同各張力変動を図13
にそれぞれ示す。
【0043】先ず、図10及び図11を互いに比較する
と、本発明例ではオルタネータ軸1aの回転低下量Tが
比較例の場合よりも小さくなっていることからトータル
駆動トルクが低減していることが判る。つまり、トータ
ル駆動トルクの低減された分だけVリブドベルト5の負
担が少なくなっていることになる。このことを、クラン
ク軸2の側からみると、その角速度変動の変位幅は、本
発明例(430〜860rpm)の方が比較例の場合
(680〜980rpm)よりも大きい。つまり、比較
例では、クランク軸2の角速度減少時にはロータの回転
慣性モーメントがVリブドベルト5を介してクランク軸
2に動力循環することでその減少量が抑えられている一
方、角速度増加時にはトータル駆動トルクが大きいこと
でその増加量が抑えられている。いわば、比較例では、
上記ロータがフライホイルとしての機能を果たしてクラ
ンク軸2の角速度変動を抑えていることになる。
【0044】これに対し、本発明例では、ロータの回転
慣性トルクのクランク軸2への伝達が該クランク軸2の
角速度減少時には遮断されるので、クランク軸2はロー
タの回転慣性トルクを受けずに大きく減少する一方、角
速度増加時にはトータル駆動トルクが少ない分だけその
増加量も多くなっている。いわば、本発明例では、ロー
タの回転慣性トルクがクランク軸2に伝達されない分だ
けフライホイルの軽量化が行われたことになる。
【0045】次に、図12及び図13を互いに比較する
と、比較例では、張り側スパンと緩み側スパンとが交互
に入れ代わっており、それもクランク軸2及びオルタネ
ータ軸1aの変動周期の2倍の周期で頻繁に入れ代わっ
ている。そして、張り側スパンの変動量は略110kg
fであり、緩み側でも60kgfに近い範囲で変動して
いる。これらのことから、Vリブドベルト5にかなり大
きい負担の加わっていることが判る。
【0046】一方、本発明例では、張り側スパンと緩み
側スパンとの入れ代りは生じていない。また、張力の変
動量についても、各スパン共に略40kgf程度に抑え
られている。よって、上記比較例の場合に比べて、Vリ
ブドベルト5の負担が大幅に軽減されていることが判
る。
【0047】尚、上記実施例では、Vリブドベルト5を
伝動ベルトとして用いているが、Vベルト等の他のベル
トを用いてもよい。
【0048】また、上記実施例では、ディーゼルエンジ
ンDにおけるベルト伝動装置について説明したが、ガソ
リンエンジンに適用してもよい。
【0049】また、上記実施例では、アウタローラ式の
一方向クラッチ5を用いているが、作動遅れ角βを所定
の変位角よりも小さく設定できるものであれば、その種
類は特に限定されない。
【0050】また、上記実施例では、作動遅れ角βをβ
=0.45°に設定しているが、エンジンの角速度変動
特性等に応じて適宜設定することができる。
【0051】また、上記実施例では、オルタネータ軸1
aと該オルタネータ軸1aに取り付けられた従動プーリ
4との間に一方向クラッチ6を介設しているが、その介
設位置は任意に設計することができる。
【0052】さらに、上記実施例では、オルタネータ1
をエンジン用補機として用いているが、カーエアコン用
圧縮機、パワーステアリング用ポンプ、ウォータポンプ
等、オルタネータ以外のエンジン用補機に適用してもよ
い。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明に
よれば、一方向クラッチにおける駆動部材及び従動部材
間のフリー状態からロック状態に切り換わる際の作動遅
れ角を、エンジンの高速度回転域における定常運転状態
で該エンジンのクランク軸から駆動部材に伝達される角
速度変動の微小変位角よりも小さく設定するようにした
ので、アイドル回転域から高速度回転域に亘るエンジン
の全ての回転域での一方向クラッチのロックミスを略確
実に回避でき、クランク軸の角速度変動に伴って伝動ベ
ルトに加わる負荷を効率よく低減して、その分だけ伝動
ベルトのスリップ防止及び長寿命化を具体的に図ること
ができる。
【0054】請求項の発明によれば、上記一方向クラ
ッチが、クランク軸から伝動ベルトを介しての回転駆動
力を従動軸に伝達する位置に配設されており、かつ上記
クランク軸に対する従動軸の変速比が2である場合に、
上記一方向クラッチの作動遅れ角を1.6°よりも小さ
く設定するようにしたので、上記請求項の発明による
効果を具体的に得ることができる。
【0055】請求項の発明によれば、上記エンジン用
補機を、発電負荷よりも大きい回転慣性を有するロータ
が備えられているとされているオルタネータで構成する
ようにしたので、上記請求項1の発明による効果を顕著
に奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例に係る一方向クラッチの作動
状態を示す波形図である。
【図2】この発明の実施例に係るベルト伝動装置の全体
構成を概略的に示す正面図である。
【図3】一方向クラッチの要部を拡大して概略的に示す
断面図である。
【図4】実験例1における発電負荷が85Aであるとき
のオルタネータ軸の発電駆動トルクをその回転数との関
係で示す特性図である。
【図5】実験例1の比較例におけるオルタネータ軸の慣
性駆動トルクをその回転数との関係で示す特性図であ
る。
【図6】比較例における発電負荷に応じたオルタネータ
軸の各トータル駆動トルクをその回転数との関係で示す
特性図である。
【図7】実験例1の本発明例における発電負荷に応じた
オルタネータ軸の回転低下量を示す波形図である。
【図8】本発明例における発電負荷に応じたオルタネー
タ軸の各トータル駆動トルクをその回転数との関係で示
す図7相当図である。
【図9】実験例2の本発明例及び比較例におけるベルト
伝動装置の特性を調べるための要領図である。
【図10】本発明例におけるクランク軸、従動プーリ及
びオルタネータ軸の各角速度変動を併せて示す波形図で
ある。
【図11】比較例におけるクランク軸及びオルタネータ
軸の各角速度変動を併せて示す図10相当図である。
【図12】本発明例におけるベルトの張り側スパン及び
緩み側スパンの各張力変動を併せて示す波形図である。
【図13】比較例におけるベルトの張り側スパン及び緩
み側スパンの各張力変動を併せて示す図12相当図であ
る。
【図14】一方向クラッチのロックミスを示す図1相当
図である。
【符号の説明】
1 オルタネータ(エンジン用補機) 1a オルタネータ軸(補機軸) 2 クランク軸 5 Vリブドベルト(伝動ベルト) 6 一方向クラッチ 7 アウタレース(駆動部材) 8 インナレース(従動部材) D ディーゼルエンジン(エンジン) β 作動遅れ角 s 微小変位角

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンのクランク軸と、 所定の回転慣性を持つロータを有してなる補機に駆動連
    結された補機軸と、 上記クランク軸及び補機軸間に巻き掛けられ、角速度の
    微小変動を伴うクランク軸の回転駆動力を補機軸に伝達
    して補機のロータを回転駆動させる伝動ベルトと、 上記クランク軸から補機のロータに至る回転伝達経路に
    配設され、クランク軸側に駆動連結された駆動部材及び
    ロータ側に駆動連結された従動部材を有していて、クラ
    ンク軸の角速度微小変動増加時には上記駆動部材及び従
    動部材がロック状態に切り換わって該クランク軸からの
    回転駆動力を上記ロータに伝達するように作動する一
    方、クランク軸の角速度微小変動減少時には上記駆動部
    材及び従動部材がフリー状態に切り換わって上記ロータ
    からの回転慣性トルクの該クランク軸への伝達を遮断す
    るように作動する一方向クラッチとを備えたエンジン用
    補機のベルト伝動装置であって、 上記クランク軸の角速度微小変動増加時における一方向
    クラッチの駆動部材及び従動部材間のフリー状態からロ
    ック状態に切り換わる作動遅れ角は、エンジンの高速回
    転域における定常運転状態で上記駆動部材に伝達される
    角速度変動の微小変位角よりも小さく設定されているこ
    とを特徴とするエンジン用補機のベルト伝動装置。
  2. 【請求項2】 請求項記載のエンジン用補機のベルト
    伝動装置において、 一方向クラッチは、クランク軸の伝動ベルトを介しての
    回転駆動力を補機軸に伝達する位置に配置され、 上記クランク軸に対する補機軸の変速比は2であり、 上記一方向クラッチの作動遅れ角は1.6°よりも小さ
    い値に設定されていることを特徴とするエンジン用補機
    のベルト伝動装置。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のエンジン用補機のベルト
    伝動装置において、 補機は、オルタネータにより構成されていることを特徴
    とするエンジン用補機のベルト伝動装置。
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