JP2777957B2 - 高力ボルト摩擦接合用鋼材の製造方法 - Google Patents
高力ボルト摩擦接合用鋼材の製造方法Info
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- JP2777957B2 JP2777957B2 JP1435893A JP1435893A JP2777957B2 JP 2777957 B2 JP2777957 B2 JP 2777957B2 JP 1435893 A JP1435893 A JP 1435893A JP 1435893 A JP1435893 A JP 1435893A JP 2777957 B2 JP2777957 B2 JP 2777957B2
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に、高力ボルト摩擦
接合用鋼材の製造方法に関するもので、鉄鋼業において
は厚板、熱延板などに適用可能である。この鋼材は表層
部の炭素当量が高く、表面近傍の硬さのみを高くするこ
とができ、穴あけなどの加工性に優れると同時に摩擦接
合部の摩擦面の表面粗さが同等であればすべり係数が大
きいという特徴を有し、鋼構造物の安全性を高めること
ができる。
接合用鋼材の製造方法に関するもので、鉄鋼業において
は厚板、熱延板などに適用可能である。この鋼材は表層
部の炭素当量が高く、表面近傍の硬さのみを高くするこ
とができ、穴あけなどの加工性に優れると同時に摩擦接
合部の摩擦面の表面粗さが同等であればすべり係数が大
きいという特徴を有し、鋼構造物の安全性を高めること
ができる。
【0002】
【従来の技術】高力ボルト摩擦接合において、日本建築
学会の設計施工指針では、接合耐力上重要となる摩擦面
は、黒皮除去された良好な赤錆面で、すべり係数が0.
45を上回る処理を施し、また、すべり係数はすべり耐
力試験により確認する必要があるとされている。通常、
良好な赤錆状態であればすべり係数は0.45を上回る
ことが知られており、すべり耐力試験は省略される場合
が多い。摩擦接合部の摩擦面のすべり係数は接合耐力上
高いほど好ましいことは明らかであり、特開昭51−5
2628号公報では、接合面に施工前に凹凸をつけ高い
摩擦抵抗を発生させている。摩擦面のすべり係数は鋼材
表面の粗さの増大に伴って高くなる傾向にあるが、表面
粗さを増してもある値以上にはならないという問題があ
った。また、最近は表層と内層がそれぞれ異なる金属か
らなる複合鋼材の連続鋳造方法が特開昭63−1089
47号公報などに開示されている。
学会の設計施工指針では、接合耐力上重要となる摩擦面
は、黒皮除去された良好な赤錆面で、すべり係数が0.
45を上回る処理を施し、また、すべり係数はすべり耐
力試験により確認する必要があるとされている。通常、
良好な赤錆状態であればすべり係数は0.45を上回る
ことが知られており、すべり耐力試験は省略される場合
が多い。摩擦接合部の摩擦面のすべり係数は接合耐力上
高いほど好ましいことは明らかであり、特開昭51−5
2628号公報では、接合面に施工前に凹凸をつけ高い
摩擦抵抗を発生させている。摩擦面のすべり係数は鋼材
表面の粗さの増大に伴って高くなる傾向にあるが、表面
粗さを増してもある値以上にはならないという問題があ
った。また、最近は表層と内層がそれぞれ異なる金属か
らなる複合鋼材の連続鋳造方法が特開昭63−1089
47号公報などに開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、表層近傍の
硬さのみを高くすることにより、高いすべり係数と優れ
た加工性を有する高力ボルト摩擦接合用鋼材の安価で大
量生産可能な製造方法を提供するものである。
硬さのみを高くすることにより、高いすべり係数と優れ
た加工性を有する高力ボルト摩擦接合用鋼材の安価で大
量生産可能な製造方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、連続鋳
造法により、鋳片厚の5〜20%までの表層部が、重量
%で「Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40
+Cr/5+Mo/4+V/14」と定義する炭素当量
で、その内層部よりも0.05〜0.50%高い成分を
有する複層鋳片とし、該鋳片を熱間圧延後、空冷または
強制冷却することを特徴とする高力ボルト摩擦接合用鋼
材の製造方法である。
造法により、鋳片厚の5〜20%までの表層部が、重量
%で「Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40
+Cr/5+Mo/4+V/14」と定義する炭素当量
で、その内層部よりも0.05〜0.50%高い成分を
有する複層鋳片とし、該鋳片を熱間圧延後、空冷または
強制冷却することを特徴とする高力ボルト摩擦接合用鋼
材の製造方法である。
【0005】
【作用】鋼材のすべり係数を高めるためには、ショット
ブラストなどにより表面粗さを増す方法が取られる。し
かし、上述したように表面粗さがある程度以上になると
すべり係数が飽和する。本発明者らの研究によれば、同
一の表面粗さですべり係数を高めるためには、鋼材の強
度を高めることが必要である。強度は硬さと高い相関関
係を有し、摩擦面すなわち鋼材の表面硬さを上げること
で高すべり係数が得られることを見出し、本発明に至っ
た。表面粗さを上げるためには鋼の焼入性を向上させる
ことが効果的で、そのためには炭素当量を高くすること
が必要である。しかし、単一成分からなる鋼材では、板
厚全体にわたって硬さが高くなるため、穴あけなどの加
工性が劣る。そこで、連続鋳造法により表層部のみを焼
入性の高い高炭素当量成分とする複層鋳片とし、該鋳片
を熱間圧延後、空冷あるいは強制冷却を施す複合鋼板を
発明した。
ブラストなどにより表面粗さを増す方法が取られる。し
かし、上述したように表面粗さがある程度以上になると
すべり係数が飽和する。本発明者らの研究によれば、同
一の表面粗さですべり係数を高めるためには、鋼材の強
度を高めることが必要である。強度は硬さと高い相関関
係を有し、摩擦面すなわち鋼材の表面硬さを上げること
で高すべり係数が得られることを見出し、本発明に至っ
た。表面粗さを上げるためには鋼の焼入性を向上させる
ことが効果的で、そのためには炭素当量を高くすること
が必要である。しかし、単一成分からなる鋼材では、板
厚全体にわたって硬さが高くなるため、穴あけなどの加
工性が劣る。そこで、連続鋳造法により表層部のみを焼
入性の高い高炭素当量成分とする複層鋳片とし、該鋳片
を熱間圧延後、空冷あるいは強制冷却を施す複合鋼板を
発明した。
【0006】以下、本発明について説明する。すべり係
数の観点からは表層部の硬さは高いほど良く、少なくと
も内層部の平均硬さより30Hv(強度換算で約100
N/mm2 )以上高いことが好ましい。一般に、熱間圧
延後の鋼材は、空冷・強制冷却を問わず表層の冷却速度
が内層より速いため、表層近傍の硬さは高くなる傾向に
ある。したがって、それ以上の顕著な効果を得るために
表層部の炭素当量を内部のそれより0.05%以上高い
成分に限定した。しかし、炭素当量があまり高くなると
特に強制冷却時に表層が硬化しすぎ、穴あけなどの加工
性が劣化するとともに、硬化代に対するすべり係数の上
昇代も小さくなるので、表層部の炭素当量を内部より
0.50%高い範囲に限定した。炭素当量の高い表層部
の鋳片厚に対する割合は、表面硬さを高くするという目
的上5%以上あれば十分である。逆に、鋳片厚に対する
割合が大きくなると硬化層が深くなり加工性を劣化させ
るため板厚の20%を上限とした。この割合は、熱間圧
延後においてもほとんど変化しない。
数の観点からは表層部の硬さは高いほど良く、少なくと
も内層部の平均硬さより30Hv(強度換算で約100
N/mm2 )以上高いことが好ましい。一般に、熱間圧
延後の鋼材は、空冷・強制冷却を問わず表層の冷却速度
が内層より速いため、表層近傍の硬さは高くなる傾向に
ある。したがって、それ以上の顕著な効果を得るために
表層部の炭素当量を内部のそれより0.05%以上高い
成分に限定した。しかし、炭素当量があまり高くなると
特に強制冷却時に表層が硬化しすぎ、穴あけなどの加工
性が劣化するとともに、硬化代に対するすべり係数の上
昇代も小さくなるので、表層部の炭素当量を内部より
0.50%高い範囲に限定した。炭素当量の高い表層部
の鋳片厚に対する割合は、表面硬さを高くするという目
的上5%以上あれば十分である。逆に、鋳片厚に対する
割合が大きくなると硬化層が深くなり加工性を劣化させ
るため板厚の20%を上限とした。この割合は、熱間圧
延後においてもほとんど変化しない。
【0007】
【実施例】鋳片内層部をいずれもJIS規格G3106
で定めるSM490A鋼とし、本発明の実施例を示す。
表1は、本発明を実施するに当たって使用に供した鋼の
表層部と内層部の炭素当量差、熱間圧延後の冷却方法、
板厚、表層部の割合、表層部と内層部の平均硬さの差、
および鋼の表面をショットブラストした後のすべり係数
を示したものである。比較例における鋼7は、鋼板全体
がSM490A単一成分であり、鋼材の表層と内層との
硬さの差やすべり係数の判定基準となる。比較例の鋼8
は、表層と内層との炭素当量差が大きく、表層部は著し
く硬化しているが、すべり係数は硬化程度の小さい鋼4
と同程度であると同時に、高炭素当量の表層部の割合も
高いため、ボルト接合用の穴あけ加工はきわめて困難で
あった。これに対し、本発明に基づいて製造した鋼材
(鋼1〜6)は、表層部の硬さが内層部の硬さに対して
高くでき、同じ表面粗さにも関わらず鋼7に対して高い
すべり係数が得られた。また、高炭素当量の表層部の割
合も20%以下に抑えられているため、加工性も良好で
ある。
で定めるSM490A鋼とし、本発明の実施例を示す。
表1は、本発明を実施するに当たって使用に供した鋼の
表層部と内層部の炭素当量差、熱間圧延後の冷却方法、
板厚、表層部の割合、表層部と内層部の平均硬さの差、
および鋼の表面をショットブラストした後のすべり係数
を示したものである。比較例における鋼7は、鋼板全体
がSM490A単一成分であり、鋼材の表層と内層との
硬さの差やすべり係数の判定基準となる。比較例の鋼8
は、表層と内層との炭素当量差が大きく、表層部は著し
く硬化しているが、すべり係数は硬化程度の小さい鋼4
と同程度であると同時に、高炭素当量の表層部の割合も
高いため、ボルト接合用の穴あけ加工はきわめて困難で
あった。これに対し、本発明に基づいて製造した鋼材
(鋼1〜6)は、表層部の硬さが内層部の硬さに対して
高くでき、同じ表面粗さにも関わらず鋼7に対して高い
すべり係数が得られた。また、高炭素当量の表層部の割
合も20%以下に抑えられているため、加工性も良好で
ある。
【0008】
【表1】
【0009】
【発明の効果】本発明により、加工性を損なうことなく
表層のみを硬化することができ、同一表面粗さで高すべ
り係数を得ることが可能になった。その結果、建築分野
などにおいて、高力ボルト摩擦接合部の信頼性を高める
構造部材として提供することができ、その工業的価値は
大である。
表層のみを硬化することができ、同一表面粗さで高すべ
り係数を得ることが可能になった。その結果、建築分野
などにおいて、高力ボルト摩擦接合部の信頼性を高める
構造部材として提供することができ、その工業的価値は
大である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宇野 暢芳 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株 式会社 技術開発本部内 (72)発明者 志村 保美 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株 式会社 技術開発本部内 (56)参考文献 特開 平3−147840(JP,A) 特開 昭63−89626(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B22D 11/00 C21D 8/00
Claims (1)
- 【請求項1】 連続鋳造法により、鋳片厚の5〜20%
までの表層部が、重量%で、「Ceq=C+Si/24
+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/1
4」と定義する炭素当量で、その内層部よりも0.05
〜0.50%高い成分を有する複層鋳片とし、該鋳片を
熱間圧延後、空冷または強制冷却することを特徴とする
高力ボルト摩擦接合用鋼材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1435893A JP2777957B2 (ja) | 1993-02-01 | 1993-02-01 | 高力ボルト摩擦接合用鋼材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1435893A JP2777957B2 (ja) | 1993-02-01 | 1993-02-01 | 高力ボルト摩擦接合用鋼材の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06226404A JPH06226404A (ja) | 1994-08-16 |
JP2777957B2 true JP2777957B2 (ja) | 1998-07-23 |
Family
ID=11858852
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP1435893A Expired - Lifetime JP2777957B2 (ja) | 1993-02-01 | 1993-02-01 | 高力ボルト摩擦接合用鋼材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2777957B2 (ja) |
-
1993
- 1993-02-01 JP JP1435893A patent/JP2777957B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH06226404A (ja) | 1994-08-16 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 19980407 |