JP2777211B2 - 球状の生体触媒固定化成形物の製造方法 - Google Patents

球状の生体触媒固定化成形物の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 A.産業上の利用分野 本発明は、球状の生体触媒固定化成形物の製造法に関
する。
B.従来の技術 近年、酵素、微生物などの生体触媒を固定化して、そ
の機能を効率よく利用する研究が行なわれ、一部実用化
されている。
生体触媒を固定化する方法の一つに、高分子素材を用
いて生体触媒をそのまま包み込む包括固定化法があり、
この方法によく用いられる高分子素材として、寒天、ア
ルギン酸塩、カラギーナン、ポリアクリルアミド、ポリ
ビニルアルコール、光硬化性樹脂等がある。このうち、
ポリビニルアルコール(以下PVAと略記することがあ
る)含水ゲルは、生体触媒を包括させることにより、優
れた固定化担体として利用できることが知られている。
一方、この包括固定化によって生体触媒を固定化して
生体反応を行なわせる反応槽には、固定層(充填層)、
流動層、撹拌槽等があるが、これらの反応層で用いられ
る固定化担体の形状としては、活性表面が広くとれる
点、流動性や充填効果が良い点、取り扱いの容易さか
ら、球体であることが望ましい。
特に、工業上の実用面において、高強度で球状の固定
化担体が容易にかつ、安価に製造可能なことが重要であ
る。
従来、生体触媒の固定化担体として広く用いられてい
るアルギン酸塩は、常温でアルギン酸ナトリウム水溶液
を、Ca++、Al+++のようなカチオンを含む水溶液に滴下
すると、容易に球体のゲルを形成する安価で使いやすい
ゲルである。しかしながら、アルギン酸塩のゲルはリン
酸塩でゲルが破壊したり、排水処理等の利用においては
ゲルそのものが浸食、溶解することもある。また、機械
的強度も必ずしも充分といえず、反応槽での長期間の使
用において損壊することが多い。
また、光硬化性樹脂やアクリルアミドから形成される
ゲルも、常温で球状化して使用できるが、これらはPVA
ゲルに比べ原料価格が非常に高価なため、生体触媒の包
括固定化担体として実用面では、付加価値の高い生体反
応への適用に限られる。
従来、PVAゲルを球体に成形する方法としては、PVA水
溶液を凍結−解凍する方法、PVA水溶液を有機溶剤や飽
和ホウ酸水溶液中に滴下しゲル化する方法、また、PVA
水溶液を硫酸塩水溶液中に滴下し凝固させる方法が知ら
れている。
C.発明が解決しようとする課題 球状のPVAゲルを製造するため、凍結−解凍を行なう
方法は、冷凍庫等の凍結設備が必要となり、凍結のため
に大量のエネルギーと時間を要する。多量の球状のPVA
ゲルを連続的に製造するには、設備的にも、エネルギー
的にも好ましい方法とは言えない。
さらに、メタノール等の有機溶剤、あるいはホウ酸等
の酸・塩基性溶媒中でPVA水溶液を球体成形する方法
も、溶媒による生体触媒への悪影響が予想され、生体触
媒固定化成形物の製造方法としては望ましくない方法で
あり、適用範囲に制限を受ける。
また、硫酸塩水溶液等のPVAの離液作用のある化合物
を含有する液体に直接PVA水溶液を滴下する方法では、
凝固速度が遅いために完全な球状ゲルが得られないとい
う欠点があった。
本発明は、以上の諸問題点を解決するものであり、装
置的にもエネルギー的にも不利な凍結操作を行なわず、
かつ、生体触媒に悪影響を与えるような溶媒を使用しな
いで、PVAゲルが本来有する、高含水で多孔質である特
徴を生かし、高強度で真球状の生体触媒固定化成形物
を、多量にかつ安価に製造する技術を提供するものであ
る。
D.課題を解決するための手段 本発明におけるPVAゲルは、生体触媒との親和性に富
み、各種の反応形式にも適用できる強度と耐久性を有
し、また、耐久性、耐薬品性に優れており、生体触媒の
包括固定化担体として望ましい特徴を備えている。この
PVAゲルを簡単な操作で、しかも生体触媒に有害な溶媒
を一切使用せず、球状に成形して製造する技術を提供す
る。
このため、本発明者らは、海藻から抽出された多糖類
で、Ca++、Al+++等のカチオンと接触すると容易にゲル
を形成し、それ自身生体触媒の包括固定化に広く利用さ
れている、アルギン酸塩のPVAへの効果を検討した。
この場合、 [I](A)生体触媒、 (B)ポリビニルアルコール、及び、 (C)‐少なくとも1種のカチオンとの接触によりゲ
ル化する能力のある水溶性高分子多糖類 を含有する混合水溶液の液滴をカチオン含有化合物を含
有する水溶液と接触させた後、これをポリビニルアルコ
ールの離液作用のある化合物を含む液体と接触させるこ
とにより、ポリビニルアルコールをゲル化させる方法、
また、 [II](A)生体触媒、 (B)ポリビニルアルコール、及び、 (C)‐カチオン含有化合物 を含有する混合水溶液の液滴を少なくとも1種のカチオ
ンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多
糖類を含有する水溶液と接触させた後、これをポリビニ
ルアルコールの離液作用のある化合物を含む液体と接触
させることにより、ポリビニルアルコールをゲル化させ
る方法のいずれも、本発明に属するものではあるが、前
者の方法[I]のほうが、取扱い性、作業性等の点にお
いて、後者の方法[II]よりも優れるので、以下、前者
の方法[I]に従って、本発明を詳細に説明する。
また、(C)‐少なくとも1種のカチオンとの接触
によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類として
は、アルギン酸ナトリウムを例にとって、(C)‐カ
チオン含有化合物としては、塩化カルシウム(以下、Ca
Cl2と記載する)を例にとって、また、ポリビニルアル
コールの離液作用のある化合物としては、硫酸ナトリウ
ム(以下、Na2SO4と記載する)を例にとって説明する。
生体触媒、PVA、アルギン酸ナトリウムを含有する混
合水溶液を、CaCl2水溶液と接触させることにより、容
易に真球に近い球体が形成され、直ちに表面が固化し、
球状成形物が相互に融着することなく、また、その後の
成形物の取扱いに対して、充分な強度を有する、PVA混
合水溶液の球状成形物が得られる。
得られたPVA混合水溶液の球状成形物をCaCl2水溶液と
分離して水洗後、Na2SO4水溶液に浸漬させる。Na2SO4
溶液に浸漬させることにより、PVAがゲル化し、真球状
のPVAゲルが得られる。
このように、成形・ゲル化という2段階の工程をとる
ことにより、真球状のPVAゲルが得られることを見出し
た。
以上のようにして得られたPVAゲルは、PVAゲル本来の
特徴を有するとともに真球状で高強度であり、その製造
方法は、従来の球状PVAゲル製造方法に比べ容易かつ安
価である。
以下、本発明の球状の生体触媒固定化成形物の製造方
法につき、より詳細に説明する。
ここで本発明において使用される(A)生体触媒とし
ては、特に制約はなく、いかなる微生物および酵素も本
発明により固定され得る。微生物の代表例を挙げるなら
ば、アスペルギルス(Aspergillus)属、リゾプス(Rhi
zopus)属等のかび類;シユードモナス(Pseudomonas)
属、アセトバクター(Acetobactor)属、ストレプトマ
イセス(Streptomyces)属、エシエリシア(Escherichi
a)属等の細菌;サツカロマイセス(Saccharomyces)
属、キヤンデイダ(Candida)属等の酵母を挙げること
ができる。また、酵素の代表例を挙げるならば、ラクテ
ートヒドロゲナーゼ(1.1.2.3)、ラクテートオキシダ
ーゼ(1.1.3.2)、グルコースオキシダーゼ(1.1.3.
4)、ホルメートデヒドロゲナーゼ(1.2.1.2)、アルデ
ヒドデヒドロゲナーゼ(1.2.1.3)、アルデヒドオキシ
ダーゼ(1.2.3.1)、キサンチンオキシダーゼ(1.2.3.
2)、ピルビン酸オキシダーゼ(1.2.3.3)、ピルビン酸
リダクターゼ(1.2.4.1)、コルチゾン−α−リダクタ
ーゼ(1.3.1.4)、アシルCoA−デヒドロゲナーゼ(13.9
9.3)、3−ケトステロイドΔ−デヒドロゲナーゼ
(1.3.99.4)、3−ケトステロイドΔ−デヒドロゲナ
ーゼ(1.3.99.5)、L−アラニンデヒドロゲナーゼ(1.
4.1.1)、L−グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(1.4.1.
3)、L−アミノ酸オキシダーゼ(1.4.3.2)、D−アミ
ノ酸オキシダーゼ(1.4.3.3)、ピリドキサルリン酸オ
キシダーゼ(1.4.3.5)、カタラーゼ(1.11.1.6)、カ
テコールメチルトランスフエラーゼ(2.1.1.6)、カル
ニチンアセチルトランスフエラーゼ(2.3.1.7)、アセ
チルCoAアセチルトランスフエラーゼ(2.3.1.9)、アス
ペルテートアミノトランスフエラーゼ(2.6.1.1)、ア
ラニンアミノトランスフエラーゼ(2.6.1.2)、ピリド
キサミンピルベートトランスフエラーゼ(2.6.1)、ヘ
キソキナーゼ(2.7.11)、グルコキナーゼ(2.7.1.
2)、フルクトキナーゼ(2.7.1.4)、ホスホグルコキナ
ーゼ(2.7.1.10)、ホスホフルクトキナーゼ(2.7.1.1
1)、ピルベートキナーゼ(2.7.1.40)、カルボキシエ
ステラーゼ(3.1.1.1)、アリールエステラーゼ(3.1.
1.2)、リパーゼ(3.1.1.3)、ホスホリパーゼA(3.1.
1.4)、アセチルエステラーゼ(3.1.1.6)、コレステロ
ールエステラーゼ(3.1.1.13)、グルコアミラーゼ(3.
2.1.3)、セルラーゼ(3.2.1.4)、イヌラーゼ(3.2.1.
7)、α−グリコシダーゼ(3.2.1.20)、β−グルコシ
ダーゼ(3.2.1.21)、α−ガラクトシダーゼ(3.2.1.2
2)、β−ガラクトシダーゼ(3.2.1.23)、インベルタ
ーゼ(3.2.1.26)、ペプシン(3.4.4.1)、トリプシン
(3.4.4.4)、キモトリプシンA(3.4.4.5)、カテプシ
ンA(3.4)、パパイン(3.4.4.40)、トロンビン(3.
4.4.13)、アミダーゼ(3.5.1.4)、ウレアーゼ(3.5.
1.5)、ペニシリンアシダーゼ(3.5.1.11)、アミノア
シラーゼ(3.5.1.14)、アデニンデアミナーゼ(3.5.4.
2)、A.T.Pアーゼ(3.6.1.3)、ピルベートデカルボキ
シラーゼ(4.1.1.1)、オキザレートデカルボキシラー
ゼ(4.1.1.2)、トリプトフアンデカルボキシラーゼ
(4.1.1.27)、アルドラーゼ(4.1.2.1.3)、マレトト
シユダーゼ(4.1.3.2)、トリプトフアンシンターゼ
(4.2.1.20)、アスペルターゼ(4.3.1.1)、リジンラ
セマーゼ(5.1.1.5)、グルコース−6−リン酸イソメ
ラーゼ(5.3.1.9)、ステロイドΔ−イソメラーゼ(5.
3.3.1)、マクシニルCoAシンセターゼ(6.2.1.5)、
[(註)カツコ内の数字は酵素番号を表わす]などが挙
げられる。
本発明に使用する(B)PVAは平均重合度が1000以
上、好ましくは、1700以上で、ケン化度は98.5モル%以
上、好ましくはケン化度99.85モル%以上の完全ケン化P
VAがPVAゲルの形成上、望ましい。また本発明のPVAとし
ては、本発明の目的を阻害しない範囲において、公知の
種々の変性PVAを用いることができる。
PVA水溶液の濃度はPVAゲル形成能の範囲から、3〜40
wt%まで可能であり、PVA濃度が高いほど、より強固な
ゲルが生成するが、必要なゲル強度が得られれば、PVA
濃度が低い方が原料コスト面から有利である。PVA以外
の添加成分の種類や濃度、PVA混合水溶液の液温および
液滴形成法によって、適切な濃度を選定する必要はある
が、常温でPVA混合水溶液を滴下する場合は、PVA濃度5
〜10wt%が球状化が容易であり、実用上充分なゲル強度
が得られる。
本発明における、(C)‐少なくとも1種のカチオ
ンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多
糖類としては、具体的には、水溶性アルギン酸塩、カラ
ギーナン、マンナン、キトサン等が挙げられるが、とり
わけアルギン酸ナトリウムが好ましい。
PVA水溶液に添加する(C)‐少なくとも1種のカ
チオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性高分
子多糖類、好適にはアルギン酸ナトリウムの濃度は、水
に対して0.2〜4wt%、好ましくは0.5〜2wt%が良い。0.
2wt%未満では、PVA混合水溶液の球状化形成能が乏し
く、また、4wt%より大の場合は、固い球状成形物が得
られるが、溶液粘度の上昇をもたらす上、原料コスト上
昇の原因となり好ましくない。
また本発明における、(C)‐カチオン含有化合物
としては、具体的には、カルシウムイオン、マグネシウ
ムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオンなど
のアルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、カリ
ウムイオン、セリウムイオン、ニツケルイオン等の金属
カチカン;アンモニウムイオンなどのカチオンのうちの
少なくとも1種を含有する化合物が挙げられるが、なか
でも2価以上のカチオン含有化合物が好ましく、とりわ
けCaCl2が望ましい。
また本発明における、ポリビニルアルコールの離液作
用のある化合物水溶液としては、硫酸ナトリウム、硫酸
アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸
アルミニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニ
ウム、クエン酸カリウム、クエン酸マグネシウム、クエ
ン酸アルミニウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸アンモニ
ウム、酒石酸カリウム、酒石酸マグネシウム、酒石酸ア
ルミニウム等の化合物のうちのうち少なくとも1種を含
有する液体が挙げられるが、コスト面からとりわけNa2S
O4水溶液が好ましい。
次に、前述の各成分を用いた球状成形物の調整方法に
ついて説明する。
(B)PVAと(C)‐少なくとも1種のカチオンと
の接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類
の水溶液に目的とする生体触媒を混入、撹拌してPVA混
合水溶液を調製する。
また、このPVA混合水溶液には、PVAのゲル化を阻害し
ない範囲で、微生物の培地、固定化担体の強度を上げる
ための補強剤、生成ゲルの比重を調整する充填材等を添
加してもよい。
以上のPVA混合水溶液を例えば、管状の口金から滴下
させるか、または噴霧口金から噴霧させることによって
液滴を形成させ、次いで該液滴をカチオン含有化合物、
好適にはCaCl2を含有する水溶液と接触させる。PVA混合
水溶液の液滴は、CaCl2水溶液に接触すると表面張力に
よって球状となり、更に球体の最表面が薄膜状に固化し
て、PVA混合水溶液の球状成形物となる。球状成形物の
直径は口金の直径、噴霧圧力、PVA混合水溶液の粘度を
調整することによって、直径1mm〜10mmに任意に変えら
れる。CaCl2水溶液は静置水でもよいが、スターラー等
で強制撹拌することによって、PVA混合水溶液の成形物
とCaCl2水溶液の反応速度を促進し、球状成形物どうし
の融着をほぼ完全に防止できる。実用上、多量のPVAゲ
ルを製造する場合、球状成形物の直径を揃えるには、PV
A混合水溶液を滴下させるための押し出しにポンプ等を
用いることができる。例えばフレキシブルなチユーブを
圧縮して送液するローラーポンプを用いると、口金から
の突出が一定量となり均一な球状成形物が得られやす
い。
CaCl2水溶液中で球状化したPVA水溶液成形物はCaCl2
水溶液と分離して水洗後、PVAの離液作用のある化合
物、好適にはNa2SO4水溶液に浸漬させる。Na2SO4水溶液
の濃度は100g/l以上でよいが、より強力なPVAゲルを得
るには、飽和溶液が望ましい。浸漬時間は、10分以上、
好ましくは30分以上がよい。Na2SO4水溶液に浸漬するこ
とにより、PVAがゲル化し、球状のPVAゲルが得られる。
このようにして得られたPVAゲルは、各種の形式の反
応槽において、長期間にわたって変形、損壊しない強度
を有し、水や各種薬液に対しても侵されることなく、連
続運転が可能となり、生体触媒固定化成形物としての実
用性が発現する。
E.作用 PVAのゲル化にNa2SO4水溶液を用いることにより、ゲ
ルの耐久性が著しく増大した。このことから、PVAゲル
の耐久性が問題となる場合、PVAのゲル化方式は、ホウ
酸等による架橋よりも、PVA分子どうしが微結晶を生成
することが必要であると考えられる。
F.実施例 以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本
発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1 (株)クラレ製のポリビニルアルコール(PVA)(平
均重合度1740、ケン化度99.85モル%)を40℃の温水で
約1時間洗浄後、PVA濃度8wt%によるようにPVAに水を
加えた全量を40gにしてpH6に調整した。これをオートク
レーブで120℃、30分処理し、PVAを溶解した後、室温ま
で放冷した。このPVA水溶液にアルギン酸ナトリウム0.4
gを加えて混合し、さらに酵母菌[サツカロマイセス・
セレビシエ]0.5g-wet cells/mlを含む滅菌水を4ml添加
して充分に撹拌した。
これらの混合液を先端に内径0.8mmの注射針を取り付
けた内径2mmφのビニル管1本を使用したローラーポン
プで1ml/分で送液し、スターラーで撹拌した濃度0.5mol
/lの塩化カルシウム(CaCl2)水溶液に水表面5cmの高さ
より滴下した。滴下した液滴はCaCl2水溶液中で直ちに
球状化して沈降した。これらの球状化したPVA混合成形
物を全量CaCl2水溶液と分離し、蒸留水で軽く洗浄した
後、スターラーで撹拌した飽和Na2SO4水溶液に60分浸漬
することによって、不透明な黄白色の柔軟性に富んだ球
状のゲルが得られた。このゲルは球状に成形化され、粘
着性もない。粒径は3〜3.5mmφであった。
以上のようにして作成した。酵母固定化PVAゲルを2
等分して、一方を500ml三角フラスコに調製したエチル
アルコール生成用反応液(グルコース、10wt%;MgSO4
・7H2O、60ppm;pH6)100gに加え、30℃で振とうした。
また、他の一方を500ml三角フラスコに調製した培養
・増殖用の液体培地(ペプトン、1%;酵母エキス、1
%;グルコース、1%;塩化ナトリウム、0.5%;pH6)1
00mlに加え、30℃で18時間振とうした後、上記と同じ組
成のエチルアルコール生成用反応液100gに移し替えて、
30℃で振とうした。各々の反応液の一部をサンプリング
してエチルアルコール濃度をガスクロマトグラフイーで
測定した。その結果を第1図に示す。
比較例1 酵母を固定化しない場合の例として、上記エチルアル
コール生成用反応液100gにPVAゲルで固定化したと同じ
酵母菌液2mlを添加して30℃で振とうした。反応液の一
部をサンプリングしてエチルアルコール濃度をガスクロ
マトグラフイで測定した。その結果を実施例1の場合と
合わせて第1図に示す。
実施例2 (株)クラレ製のポリビニルアルコール(PVA)(平
均重合度1740、ケン化度99.85モル%)を40℃の温水で
約1時間洗浄後、PVA濃度16wt%になるようにPVAに水を
加え全量を400gにしてpH6に調整した。これをオートク
レーブで120℃、30分処理し、PVAを溶解した後、室温ま
で放冷した。このPVA水溶液に4%アルギン酸ナトリウ
ム水溶液200gを加えて混合し、さらに(株)クラレ岡山
工場(岡山県岡山市海岸通り1丁目2番1号)の排水処
理槽より採取し、濃色操作を施して得られた活性汚泥菌
(濃度MLSS 80000mg/l)を200g加え、充分に撹拌した。
これらの混合液を先端に内径0.8mmの注射針を取り付
けた内径2mmφのビニル管1本を使用したローラーポン
プで1ml/分で送液し、スターラーで撹拌した濃度0.5mol
/lの塩化カルシウム(CaCl2)水溶液に水表面5cmの高さ
より滴下した。滴下した液滴はCaCl2水溶液中で直ちに
球状化して沈降した。これらの球状化したPVA混合成形
物を全量CaCl2水溶液と分離し、蒸留水で軽く洗浄した
後、スターラーで撹拌した飽和Na2SO4水溶液に60分浸漬
することによって、不透明な褐色の柔軟性に富んだ球状
のゲルが得られた。このゲルは球状に成形化され、粘着
性もない。粒径は3〜3.5mmφであった。
得られた菌固定PVAゲルを(株)クラレ岡山工場の活
性汚泥曝気槽に10日間浸漬させることにより、ゲル中の
菌体の培養を行ない、排水処理実験を行なった。ゲルの
色が淡褐色から濃褐色に変化したことから、活性汚泥菌
の増殖が認められた。また、培養前後でゲルの重量は変
化しなかったことから、ゲルの耐久性も優れていること
が判明した。この培養後のゲル500gと(株)クラレ岡山
工場の排水未処理をTOC(全有機炭素量)値100mg/lに調
整して得られた排水液2lとを試験曝気槽に入れ、30分曝
気した。得られた処理液のTOC値を測定すると0mg/lであ
り、充分な生物活性が出ていることが判明した。
比較例2 (株)クラレ製のポリビニルアルコール(PVA)(平
均重合度1740、ケン化度99.85モル%)を40℃の温水で
約1時間洗浄後、PVA濃度16wt%になるようにPVAに水を
加え全量を400gにしてpH6に調整した。これをオートク
レーブで120℃、30分処理し、PVAを溶解した後、室温ま
で放冷した。これに(株)クラレ岡山工場(岡山県岡山
市海岸通り1丁目2番1号)の排水処理槽より採取し、
濃縮操作を施して得られた活性汚泥菌(濃度MLSS 80000
mg/l)を200g加え、水を加えて全量を800gとし、充分に
撹拌した。これらの混合液を先端に内径0.8mmの注射針
を取り付けた内径2mmφのビニル管1本を使用したロー
ラーポンプで1ml/分で送液し、スターラーで撹拌した濃
度40g/lのホウ酸水溶液に水表面5cmの高さより滴下し、
24時間浸漬することにより、PVAのホウ酸による架橋反
応を行なわせ、球状のゲルを得た。
得られたゲルを実施例2と同様に培養し、排水処理実
験を行なった。培養後のゲル重量は培養前の約2分の1
に減少したことから、ゲルの耐久性が充分でないといえ
る。この培養後のゲル500gと(株)クラレ岡山工場の排
水未処理水をTOC値100mg/lに調整して得られた排水液2l
とを試験曝気槽に入れ、30分曝気した。得られた処理液
のTOC値を測定すると55mg/lであり、生物活性が不充分
であった。
G.発明の効果 生体触媒の固定化に優れた特徴を有するPVAゲルを、
真球状で高強度の生体触媒固定化成形物として、容易に
かつ安価に製造可能となり、固定化生体触媒による生体
反応の実用化が広範囲に促進される。
【図面の簡単な説明】
第1図において、折れ線Aは、酵母をPVAゲルで固定化
後、直接反応した場合(実施例1の培養・増殖前)のエ
タノール生成量(g)を示し、折れ線Bは、酵母をPVA
ゲルで固定化後、培養・増殖して反応した場合(実施例
1の培養・増殖後)のエタノール生成量(g)を示し、
また折れ線Cは、酵母を固定化しないで反応した場合
(比較例1)のエタノール生成量(g)を示す。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)生体触媒、 (B)ポリビニルアルコール、及び、 (C)‐少なくとも1種のカチオンとの接触によりゲ
    ル化する能力のある水溶性高分子多糖類または (C)‐カチオン含有化合物のいずれか1種、 を含有する混合水溶液を、該混合水溶液が(C)‐少
    なくとも1種のカチオンとの接触によりゲル化する能力
    のある水溶性高分子多糖類を含有する場合においては、
    該混合水溶液の液滴をカチオン含有化合物を含有する水
    溶液と接触させることにより、あるいは、該混合水溶液
    が(C)‐カチオン含有化合物を含有する場合におい
    ては、該混合水溶液の液滴を少なくとも1種のカチオン
    との接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖
    類を含有する水溶液と接触させることにより、該混合水
    溶液を球状に成形させた後、これをポリビニルアルコー
    ルの離液作用のある化合物を含有する液体と接触させる
    ことにより、ポリビニルアルコールをゲル化して得られ
    ることを特徴とする球状の生体触媒固定化成形物の製造
    方法。
  2. 【請求項2】(C)‐少なくとも1種のカチオンとの
    接触によりゲル化する能力のある水溶性高分子多糖類
    が、アルギン酸ナトリウムである請求項1記載の球状の
    生体触媒固定化成形物の製造方法。
  3. 【請求項3】(C)‐カチオン含有化合物が塩化カル
    シウムである請求項1記載の球状の生体触媒固定化成形
    物の製造方法。
  4. 【請求項4】ポリビニルアルコールの離液作用のある化
    合物が、硫酸塩である請求項1記載の球状の生体触媒固
    定化成形物の製造方法。
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