JP2775877B2 - 垂直磁気記録媒体 - Google Patents

垂直磁気記録媒体

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は記録層の層厚方向の磁化によって情報記録が
なされる垂直磁気記録媒体に関し、特にCo−Pt−B−O
系磁性層を使用した垂直磁気記録媒体に関する。
〔発明の概要〕
本発明は、非磁性支持体上にCo−Pt−B−O系磁性層
を形成し、しかも該Co−Pt−B−O系磁性層を構成する
結晶の形状,大きさ,配向状態および配列状態を最適に
制御することにより、保磁力の大幅な向上を図るもので
ある。
〔従来の技術〕
近年の情報記録の分野においては、高記録密度化,高
記録容量化への要求に応えるべく、垂直磁気記録に関す
る研究が各所で進められている。垂直磁気記録は、記録
波長が磁性層の層厚と同等以下の短波長となっても異極
が近接することにより減磁が抑制されて静磁気学的な安
定化が達成されること、急峻な磁化転移領域が形成され
るために再生ヘッドの誘導起電力を大きくできること等
の長所を有しており、本質的に高密度記録に適した方式
と言える。
この垂直磁気記録を実現するための磁性層としては、
これまでにCo−Cr合金,Co−Mo合金,Co−V合金,Co−Ru
合金等からなるものが知られている。これらの中でも、
高周波スパッタリングにより成膜されたCo−Cr合金磁性
層は、最も垂直磁気特性に優れる材料として知られてい
る。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、Co−Cr合金磁性層には、そのままでは磁気ヘ
ッドとの摺接に際して耐久性が不足するので保護潤滑層
を要すること、しかもスペーシングロスを小さくするた
めに上記保護潤滑層の膜厚を極めて薄く形成する必要が
あるが、これが困難であること、飽和磁束密度が比較的
低いこと、成膜時の基板温度を高くしないと高保磁力が
得られないこと等の問題点がある。
そこで本発明は、主として保磁力の改善された垂直磁
気記録媒体の提供を目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは上述の目的を達成するために鋭意検討を
行った結果、Co,Pt,B,Oの4元系からなる磁性層が極め
て良好な垂直磁気特性を有することを見出した。さら
に、この磁性層の磁気特性は、磁性層を構成する結晶の
形状,大きさ,配向状態,配列状態等の微細構造に関連
していることが明らかとなり、これらを最適に制御する
ことにより常に安定した特性を有する垂直磁気記録媒体
が提供されることも見出した。
本発明にかかる垂直磁気記録媒体はかかる知見にもと
づいて提案されるものであり、非磁性支持体状上にCo−
Pt−B−O系磁性層が形成されてなり、上記Co−Pt−B
−O系磁性層が面心立方構造を有する直径50〜100Åの
針状晶から構成され、各針状晶が<111>方向を非磁性
支持体面に垂直に向けて配向されると共に、隣接する針
状晶間に8〜12Åの間隙を介して配列されていることを
特徴とするものである。
本発明の垂直磁気記録媒体を構成するCo−Pt−B−O
系磁性層は、典型的には次の組成式 (CoaPtbBc100-xOx 〔ただし、式中a,b,cは組成を原子%で表し、40≦a≦8
0,15≦b≦50,5≦c≦10,a+b+c=100なる条件を満
たす。また、xは組成を重量%で表し、0<x≦15なる
条件を満たす。〕 で表される垂直磁性材料からなるものである。上記組成
範囲は、垂直磁性特性を最適化する観点から設定された
ものであり、いずれかひとつの条件が満足されなくても
好適な垂直磁気特性は得られない。
本発明者らは、良好な垂直磁気特性を示すCo−Pt−B
−O系磁性層の微細構造を透過型電子顕微鏡観察および
制限視野電子線回折により調べた結果、磁性層が連続的
な多結晶構造を呈する場合には良好な垂直磁気特性が現
れず、面心立方構造を有する個々の針状晶が一定の隙間
を介してその長軸方向、すなわち<111>方向を膜面に
垂直に向けて配向している場合に良好な垂直磁気特性が
現れることを見出した。
ここで、上記<111>方向の配向の強さは、制限視野
電子線回折において(111)面回折弧の広がり角度θの
値により判定した。値が小さいほど、配向は強いと言え
る。
ところで上記の配向の強さは、Co−Pt−B−O系磁性
層の形成に先立って予め非磁性支持体上に下地膜を形成
しておくことによっても制御することができる。配向性
を高める観点からは、下地膜として格子定数がCo−Pt系
合金に近く、面心立方構造をとる材料が選ばれ、たとえ
ばPtは実用上好ましい例である。格子定数が近くてもCo
等のように六方晶構造をとりやすいものは不適当であ
る。
上記Co−Pt−B−O系磁性層は、一般にスパッタリン
グにより形成することができる。スパッタリングに用い
るターゲットとしては、始めから所望の組成に調製され
たCo−Pt−Bターゲットか、ある金属成分の扇型チップ
を他の成分からなるターゲットの上に載置した複合ター
ゲットが使用される。本発明では、たとえばCo−Bター
ゲットの上にPtチップを載置した複合ターゲットが使用
される。いまひとつの磁性層の構成成分である酸素は、
スパッタリング雰囲気中に所定の分圧をもって気体状で
供給され、この時の分圧に応じて決まる分量にて磁性層
中に取り込まれる。
〔作用〕
本発明では、非磁性支持体上に形成されたCo−Pt−B
−O系磁性層の内部において、Co−Pt−B−O系の針状
晶がその<111>方向を上記非磁性支持体の面に垂直に
向けて配向している。この<111>方向とは、面心立方
晶における磁化容易軸であると同時に、上記Co−Pt−B
−O系針状晶の長軸方向でもある。したがって、本発明
におけるCo−Pt−B−O系針状晶の配向は、結晶磁気異
方性,形状磁気異方性の両面から垂直磁気記録を行うに
あたり理想的な配向であると言える。
さらに、上記各針状晶は直径が50〜100Åであり、個
々の針状晶は隣接する針状晶と互いに8〜12Åの間隙を
介して配列されている。このような結晶の形状および配
列状態は、大幅な保磁力の増大をもたらす。つまり、従
来のたとえばCo−Cr磁性層では柱状晶が密に配列されて
いたのに対し、本発明では微細な針状晶が個々に隙間を
保ちながら配列されていることから、単磁区が微小化さ
れると共に減磁が抑制されるからである。
〔実施例〕
以下、本発明の好適な実施例について実験結果にもと
づいて説明する。
実施例 本実施例は、非磁性支持体となるポリアミド基板上に
Pt下地膜とCo−Pt−B−O系磁性層を順次形成した垂直
磁気記録媒体の例である。
垂直磁気記録媒体は以下のようにして作成した。
まず、高周波マグネトロン・スパッタリング装置のバ
ックグラウンド真空度を4.0×10-6Torr,アルゴンガス圧
を5×10-3Torr,アルゴン流量を60ml/分とし、投入パワ
ー300Wにてポリアミド基板のエッチングを5分間行っ
た。これは、表面の粗化とクリーニングを目的として行
われるものである。
次に、基板温度を150℃としてPtを0.13μmの厚さに
被着し、Pt下地膜を形成した。
続いて、Co71Pt22B7の組成を有する3元系ターゲット
を使用し、基板温度を150℃,酸素分圧を89×10-6Torr
としてスパッタリングを行い、厚さ0.6μmのCo−Pt−
B−O系磁性層を形成した。
ここで、上記の磁性層中の酸素含有量は次の方法によ
り求めた。すなわち、予備実験によりスパッタリング雰
囲気中の酸素分圧(×10-6Torr)もしくは酸素流量(SC
CM)と形成されたCo−Pt−B−O系磁性層中の酸素含有
量(重量%)との間には第5図に示すような良い相関関
係が成立することが確認されたので、あとはこの図にも
とづいて酸素供給条件から磁性層中の含有量を算出し
た。
さらに電子線ブローブ・マイクロアナリシス(EPMA)
および誘導結合プラズマ(ICP)発光分析による組成分
析を併用した結果、上記磁性層は、(Co71Pt22B797O3
なる組成を有することがわかった。
比較例1 比較のために、酸素を含まないCo−Pt−B系磁性層を
有する垂直磁気記録媒体を作成した。
この垂直磁気記録媒体は、磁性層の形成に際してスパ
ッタリング雰囲気中に酸素を供給しなかった以外は、上
述の実施例1と同様にして作成した。形成された磁性層
の組成はCo71Pt22B7で表されることがわかった。
比較例2 比較のために、ホウ素(B)を含まないCo−Pt−O系
磁性層を有する垂直磁気記録媒体を作成した。
この垂直磁気記録媒体は、磁性層の形成に際してCO68
Pt32の組成を有するターゲットを使用した他は、上述の
実施例1と同様にして作成した。形成された磁性層の組
成は(Co68Pt3297O3で表されることがわかった。
比較例3 比較のために、ホウ素(B)および酸素を含まないCo
−Pt系磁性層を有する垂直磁気記録媒体を作成した。
この垂直磁気記録媒体は、磁性層の形成に際してスパ
ッタリング雰囲気中に酸素を導入しなかった以外は、比
較例2と同様にして作成した。形成された磁性層の組成
はCo68Pt32であることがわかった。
以上の実施例および比較例において得られた各垂直磁
気記録媒体の垂直方向保磁力HC⊥,面内方向保磁力H
,面内異方性磁界Hおよび飽和磁束密度BSを試
料振動型磁力計により測定した。結果を第1表に示す。
この表をみると、実施例の垂直方向保磁力HC⊥は他
のいかなる比較例よりも際立って大きいことが明らかで
あり、ホウ素,酸素のいずれか一方が欠けても良好な垂
直磁気特性は達成されないことがわかる。特に、実施例
と比較例1との間には垂直方向磁力HC⊥に50倍以上も
の差があり、磁性層中の酸素の存在が極めて重要である
ことを示唆している。
垂直磁気特性を判断する尺度としては、面内異方性磁
界H役立つ。この値が大きいことは、それだけ面内
磁化に強い磁界を要することを意味し、垂直磁化の方が
有利であることを間接的に示す。面内異方性磁界H
をみる限りでは比較例3も実施例と同様、良好な垂直磁
気特性を示すように思われるが、実際の垂直方向保磁力
C⊥はわずかに190Oeと低い。
このように、面内異方性磁界Hが高いにもかかわ
らず垂直方向保磁力HC⊥が低くなる場合が生ずる原因
を解明するため、本発明者らは形成された各磁性層の微
細構造を検討した。
まず、磁性層の膜面方向からの観察を行うために、上
述の実施例および各比較例にて得られた垂直磁気記録媒
体のポリアミド基板を有機溶剤を用いて溶解除去し、ア
ルゴンイオンによるイオンミリングにより局部的に薄膜
化させた試料片を作成した。
また、磁性層の断面方向からの観察を行うために、超
ミクロトーム法により上述の実施例および各比較例にて
得られた垂直磁気記録媒体の薄膜切片を作成した。
これらの試料片および薄膜切片を透過型電子顕微鏡に
より観察した際の写真を第1図ないし第4図に示す。第
1図は実施例、第2図は比較例1、第3図は比較例2、
第4図は比較例3にそれぞれ対応しており、(A)の図
は試料片を用いた膜面方向からの観察結果、(B)の図
は薄膜切片を用いた断面方向からの観察結果をそれぞれ
表す。倍率はいずれも52,500倍である。
さらに、<111>方向の配向の強さを調べるために、
制限視野電子線回折を行い、(111)面回折弧の広がり
角度θを測定した。
これらの結果を第2表にまとめる。
実施例の磁性層では、直径50〜100Åの針状晶が<111
>方向をポリアミド基板に垂直に向けて配向しており、
個々の針状晶の間には約10Åの間隙が存在している。
(111)面回折弧の広がり角度θをみる限りでは、比較
例1も高い配向性を示しているが、結晶粒径が小さすぎ
る上に連続的な多結晶構造を有しているので、垂直方向
よりも面内方向の磁気特性の方が卓越している。比較例
2は磁性層の微細構造が比較例と同様である上に、<11
1>方向の垂直配向も弱く、垂直磁気記録における実用
性能には劣る。比較例3は高い配向性を有しているが、
直径の比較的大きな柱状晶が間隙を介することなく密に
配列しているので、単磁区の微小化に限度があり、保磁
力は低い。
以上のことから、上述の実施例のように磁性層の組成
や微細構造のすべてが最適化された場合にはじめて、実
用性能に優れる垂直磁気記録媒体が実現されることがわ
かる。
〔発明の効果〕
以上の説明からも明らかなように、本発明の垂直磁気
記録媒体は磁性層の組成,結晶の形状,大きさ,配向状
態,配列状態が最適に制御されているため、垂直方向保
磁力の大幅な増大が可能となる。したがって、高密度記
録に極めて好適な垂直磁気記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
第1図(A)および第1図(B)は本発明の好適な一実
施例におけるCo−Pt−B−O系磁性層の金属組織を示す
透過型電子顕微鏡写真であり、第1図(A)は膜面方
向、第1図(B)は断面方向から観察した状態をそれぞ
れ表す。第2図(A)および第2図(B)は一比較例に
おけるCo−Pt−B系磁性層の金属組織を示す透過型電子
顕微鏡写真であり、第2図(A)は膜面方向、第2図
(B)は断面方向から観察した状態をそれぞれ表す。第
3図(A)および第3図(B)は他の比較例におけるCo
−Pt−O系磁性層の金属組織を示す透過型電子顕微鏡写
真であり、第3図(A)は膜面方向、第3図(B)は断
面方向から観察した状態をそれぞれ表す。第4図(A)
および第4図(B)はさらに他の比較例におけるCo−Pt
系磁性層の金属組織を示す透過型電子顕微鏡写真であ
り、第4図(A)は膜面方向、第4図(B)は断面方向
から観察した状態をそれぞれ表す。第5図はスパッタリ
ング雰囲気中の酸素分圧または酸素流量と磁性層中の酸
素含有量との関係を示す特性図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G11B 5/66 H01F 10/16

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非磁性支持体上にCo−Pt−B−O系磁性層
    が形成されてなり、 上記Co−Pt−B−O系磁性層が面心立方構造を有する直
    径50〜100Åの針状晶から構成され、各針状晶が<111>
    方向を非磁性支持体面に垂直に向けて配向されると共
    に、隣接する針状晶間に8〜12Åの間隙を介して配列さ
    れていることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
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