JP2774076B2 - ギ酸の製造方法 - Google Patents

ギ酸の製造方法

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JP2774076B2 JP6271535A JP27153594A JP2774076B2 JP 2774076 B2 JP2774076 B2 JP 2774076B2 JP 6271535 A JP6271535 A JP 6271535A JP 27153594 A JP27153594 A JP 27153594A JP 2774076 B2 JP2774076 B2 JP 2774076B2
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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ギ酸の製造方法に関
するものである。さらに詳しくは、この発明は、超臨界
状態での反応によって、従来の液相反応では達成するこ
とのできない反応速度による二酸化炭素と水素との反応
で、有機化学工業の原料等として有用なギ酸を製造する
ことのできる新しい方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来より、ギ酸は有機化学工
業における基礎原料等として有用なものであり、各種化
成品、プラスチック、医薬品、農薬等の諸分野に広く使
用されている。このギ酸については、従来、苛性ソーダ
と一酸化炭素あるいは石灰と一酸化炭素を原料として製
造されている。
【0003】しかしながら、これらの方法は、毒性の高
い一酸化炭素(CO)を用いるため好ましくなく、新た
な製造法の開発が進められていた。そこで、一酸化炭素
(CO)を用いることなく、原料として二酸化炭素(C
2 )を用いる方法が近年注目されている。二酸化炭素
(CO2 )と水素(H2 )とからギ酸を製造する方法で
ある。たとえばこの二酸化炭素と水素とからギ酸を製造
する方法としては、(I)J. Organometal. Chem.,80
C27(1974)記載された四塩化チタンとマグネ
シウムおよびテトラヒドロフラン系で、ギ酸マグネシウ
ムとして固定化を行う方法、(II)Chemistry Letters
(1976)頁863に記載された二酸化炭素と水素と
をベンゼン溶媒中、パラジウム触媒あるいは、ルテニウ
ム、イリジウム、ロジウム触媒としてトリエチルアミン
のごとき有機アミンの存在下、ギ酸を製造する方法、(I
II) 特開昭56−140948に記載されたルテニウム
触媒を用いて二酸化炭素と水素とを水と金属塩の存在下
ギ酸を製造する方法、(IV)近年J. Chem.Soc. Commun.
623頁(1992年)および1465頁(1993
年)に記載されたロジウム錯体を用いたジメチルスルフ
ォキシドおよび水溶媒中二酸化炭素と水素から水とトリ
エチルアミンの存在下ギ酸を製造する方法等が知られて
いる。
【0004】しかしながら、これら従来公知の方法の場
合には、そのいずれのものも多量の溶媒を用いて反応さ
せることが必要であることから、生成物であるギ酸と触
媒および溶媒との分離に煩雑な操作が避けられず、さら
にいずれの方法においても反応速度が十分でなく必ずし
も実用的には適さないという欠点があった。このため、
より簡便な操作で、生産性に優れ、しかも反応速度の大
きな方法による新しいギ酸の製造法の実現が求められて
いた。
【0005】この発明は、以上の通りの事情に鑑みてな
されたものであって、従来方法の欠点を解消し、毒性の
低い原料を用い、反応速度が大きく、簡便な操作によっ
て生産性の高いギ酸製造を可能とする、新しいギ酸製造
法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、第VIII族遷移金属錯体と塩基性
物質の存在下に、超臨界状態にある二酸化炭素と水素と
を反応させることを特徴とするギ酸の製造方法を提供す
る。すなわち、この発明は、二酸化炭素と水素との反応
を高効率で行わせるための触媒の探索および反応系の検
討を行った結果、二酸化炭素を超臨界状態とし、水素と
超臨界状態の二酸化炭素(scCO2 と表記)とを反応
させることにより反応速度の著しい向上が達成され、ギ
酸の高効率な製造方法が実現されるとの知見が見出され
たことから、この知見に基づいて完成されたものであ
る。そして、実際にも、この発明は、既存の製造方法が
有機溶媒を大量に用いることが不可欠であり、得られた
ギ酸およびギ酸塩と溶媒との煩雑な分離操作を必要とし
たが、このような不都合を解消する。scCO2 を媒体
とするため超臨界流体の特性から温度あるいは圧力をわ
ずかに変化させるだけで容易に分離でき、結果として無
溶媒でギ酸製造することができるという大きな利点があ
る。
【0007】この発明の製造方法において使用すること
のできる第VIII族金属錯体は、たとえば、ロジウム、パ
ラジウム、イリジウム、ルテニウム、または白金等の金
属の錯体であって、超臨界状態の二酸化炭素(scCO
2 )中での反応を実現させるために不可欠のものであ
る。この金属錯体は、いわゆる触媒、もしくは反応促進
剤として考慮されるものである。均一系または不均一系
として使用されるが、より好ましくは均一系反応とする
ために、scCO2 に可溶であることが好ましい。より
具体的には、一般式MXY(Ln)で示される化合物を
用いることができる。このMXY(Ln)において、M
は、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、
または白金など金属を示し、X、Yとは、1価の化合物
が好ましい場合には一般式としてはMXLnで示される
ものとして、Xはハロゲン酸塩、カルボキシ酸塩、炭酸
塩、炭酸水素基、水素基等が例示される。また、XとY
がある場合には、これらの基の、同一または異ったもの
とすることができる。
【0008】中性配位子としては、scCO2 に可溶な
有機配位子でありCO、シクロペンタジエニル配位子、
有機窒素化合物配位子、およびホスフィン配位子PR1
23 (R1 ,R2 ,R3 は同じであっても異なって
もかまわないが、脂肪族基、脂環族基、または芳香族基
を示し、さらに二座配位のホスフィン配位子を示す。た
とえばトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、
トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ
シクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、
ジメチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフ
ィン、トリフルオロホスフィンなど第3ホスフィン、ト
リメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリ
プロピルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリ
フェニルホスファイトなど第3ホスファイト、ビスジフ
ェニルホスフィノエタン、ビスジフェニルホスフィノメ
タン、ビスジフェニルホスフィノプロパン、ビスジメチ
ルホスフィノエタン、ビスジメチルホスフィノメタン、
ビスジメチルホスフィノプロパン、ビスジイソプロピル
ホスフィノメタン、ビスジイソプロピルホスフィノエタ
ンなど二座配位の第3ホスフィン化合物があげられる)
が好ましい。なかでも、とりわけルテニウムの錯体が活
性が高い。具体的には、RuH2 (PMe34 、Ru
Cl2 (PMe3 4 、RuHCl(PMe3 4 、R
uH(CH3COO)(PMe3 3 、RuH(HCO
O)(PMe3 3 、RuH2 (PPh3 4 、RuH
Cl(PPh3 4 、RuH(CH3 COO)(PPh
3 3、RuH2 (PMe2 Ph)4 、RuH2 (PM
ePh2 4 、RuCl2 (PMe2 Ph)4 、RuC
2 (PMePh2 4 、[Ru(CO2 )C
2 2、[Ru(CO)2 2 2 、[Ru(C
3 )Cl2 2 、Ru(CO)12等があげられるが、
この発明に用いられる錯体触媒はこれらに何等限定され
るものではない。この発明における上記の第VIII族金属
錯体の使用量については、この発明の方法が無溶媒であ
ることを特徴としギ酸の製造の生産性に依存するため上
限および下限はなく、scCO2 への溶解性、反応容器
の大きさおよび経済性などに規定される。適切には触媒
もしくは反応促進剤としての濃度は重量基準で50〜5
000ppmで、好ましくは100〜1000ppmと
する。
【0009】また、塩基性化合物の使用もこの発明にお
いては必須である。塩基性化合物としては含窒素化合物
および周期律表第1族金属の塩が好ましい。具体的には
含窒素化合物として一般式NR1 2 3 で表されるア
ミン化合物、より好ましくはR1 ,R2 ,R3 が同一ま
たは異なるアルキル基、または水素からなるアミンとす
る。さらに好ましくは、たとえばR1 ,R2 ,R3 が水
素またはC1 〜C10のトリアルキルアミンとする。例と
して、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミ
ン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンが示され
る。これらの含窒素塩基の量は、特に限定されるもので
はないが、好ましくはscCO2 に完全に溶け込み均一
相を形成させるに十分な量であれば良い。適切には触媒
または反応促進剤としての第VIII族金属錯体に対し、1
00〜100,000当量であり、好ましくは1,00
0〜10,000当量が好ましい。第I族または第II族
金属塩としては、炭酸塩が好ましく、その例としては、
Li2 CO3 、LiCO3 、Na2 CO3 、NaHCO
3 、K2 CO3 、KHCO3 、CaCO3 、BaC
3 、SrCO3 が挙げられるが、なかでもK2
3 、Li2 CO3 、NaCO 3 が好ましい。これら金
属塩の量はscCO2 には可溶化しないため、任意の量
で良く、好ましくは触媒または反応促進剤としての第VI
II族金属錯体に対し、100〜100,000当量の範
囲が望ましい。
【0010】反応は、好ましくはscCO2 中均一相で
行わせるため次のような条件が採用される。すなわち、
二酸化炭素は一般に圧力72.9atm、温度31度が
超臨界点であり、これ以上の圧力、温度で超臨界状態と
なる。二酸化炭素と水素ガスの混合ガスの臨界点はTsan
g. C. Y.とStreett, W. B.著のChem. Eng. Sci. 36,
993−1000頁(1981年)に記載された結果に
より推定される。それによると二酸化炭素は75〜50
0atmの範囲で、好ましくは80atm〜200at
mが望ましい。また、水素ガスの圧力は20atm〜1
50atmの範囲で、好ましくは40〜100atmが
望ましい。反応温度は反応系が超臨界状態を維持する温
度以上が必要であり、好ましくは40〜120℃が望ま
しい。
【0011】反応系には水および/またはアルコール化
合物を添加することが有効でもあるこの場合は、触媒ま
たは反応促進剤としての第VIII族金属錯体に対し、10
〜10,000当量の範囲で、好ましくは100〜1,
000当量が望ましい。反応はバッチ式においても、連
続法においても実施することができる。また、反応は、
たとえば図1に示す反応装置や図2に示した連続式の反
応装置を用いて行なうことができる。
【0012】以下、実施例を示し、さらに詳しくこの発
明の方法について説明する。
【0013】
【実施例】実施例1〜7 図1に例示した反応装置を用いて反応を実施した。なお
反応後、反応器(オートクレーブ)を低温にし、反応器
の内容物を液化し、その後反応系を常温、常圧にもどし
た後に生成したギ酸はNMRを用いて定量した。
【0014】表1に示した通り、触媒としての第VIII族
金属錯体(2〜15μmol)とトリエチルアミン(N
Et3)(5〜10mmol)またはK2 CO3 (5mm
ol)および水(0.1mmol)を内容積50mlの
ステンレス製の反応器(オートクレーブ)に仕込み、ア
ルゴン置換をした後水素ガスを所定の圧力に設定し、そ
の後二酸化炭素の圧を所定の圧力まで上げ、その後温度
を反応温度の50℃まで上昇させて反応を開始した。反
応後は上記の方法にしたがい生成物のギ酸を定量した。
その結果を表1に示した。
【0015】後述の比較例に比べて、はるかに高い反応
速度による高効率でのギ酸生成が可能とされていること
がわかる。
【0016】
【表1】
【0017】比較例1〜5 表2の通りの態様において反応を実施した。反応速度は
実施例に比べて遅く、溶媒分離のプロセスも面倒なもの
であった。
【0018】
【表2】
【0019】実施例8〜14 実施例1〜7と同様にして反応させ、ギ酸を製造した。
反応には5.0mmolのトリエチルアミンを存在させ
た。水またはメタノールを共存させても反応を実施し
た。水素圧は、75〜88atmとし、全圧が200〜
215atmの範囲となるようにした。反応温度は50
℃、反応容器の容積は50mlのものを用いた。
【0020】その結果を示したものが表3である。この
表3より水もしくはアルコール化合物の添加効果が明瞭
である。
【0021】
【表3】
【0022】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によ
り、毒性の低い原料を用い、高い反応速度により高効率
でのギ酸製造が可能となる。また、溶媒を使用しないた
め、分離操作も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の反応装置の一例を示した構成図であ
る。
【図2】この発明の反応装置の他の一例を示した構成図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野依 良治 愛知県愛知郡日進町大字梅森字新田135 −417 (56)参考文献 欧州特許出願公開652202(EP,A) 有機合成化学協会誌,1994,52 (12),1032−1043 JOURNAL OF THE AM ERICAN CHEMICAL SO CIETY,1996,118(2),344− 355 CHEMISTRY LETTER S,1994,(8),1533−1536 NATURE,1994,368(6468), 231−233 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07C 53/02 C07C 51/00 CA(STN) CAOLD(STN) REGISTRY(STN)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 超臨界状態にある二酸化炭素と水素とを
    反応させることを特徴とするギ酸の製造方法。
  2. 【請求項2】 第VIII族遷移金属錯体の存在下に反応さ
    せる請求項1の製造方法。
  3. 【請求項3】 第VIII族遷移金属錯体がロジウム、パラ
    ジウム、ルテニウム、イリジウムまたは白金の金属錯体
    である請求項1の製造方法。
  4. 【請求項4】 塩基性物質の存在下に反応させる請求項
    1、2または3の製造方法。
  5. 【請求項5】 水および/またはアルコール化合物の存
    在下に反応させる請求項1、2、3または4の製造方
    法。
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EP2530066A4 (en) 2010-01-27 2013-08-14 Nakahara Masaru PROCESS FOR THE PREPARATION OF MUSIC ACID

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CHEMISTRY LETTERS,1994,(8),1533−1536
JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,1996,118(2),344−355
NATURE,1994,368(6468),231−233
有機合成化学協会誌,1994,52(12),1032−1043

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