JP2772279B2 - 鋼管杭埋設装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、先端部に螺旋状の
羽根と掘削刃を有する先端羽根付き鋼管杭、所謂スクリ
ューパイルを地盤中に埋設する為の装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】上記スクリューパイルを埋設する施工
は、大まかに言えば、杭を吊った状態でその基端部を回
転キャップへ装着し鉛直性を確認した後に振れ止め装置
で固定する建込み工程と、その杭へ右回りの回転力を加
え羽根による推進力で杭を埋設する埋設工程の二工程か
ら成りたっている。これまでの埋設装置は、前記回転キ
ャップによりスクリューパイルへ回転力を与えているた
めに、該回転キャップを、少なくともスクリューパイル
の長さ以上、地表より高い位置で支持し得る支柱を具備
する必要があった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】その結果、施工時にお
いて長尺の支柱を地面に立設すると安定性が損なわれ、
支柱の転倒事故が起こるなど安全性に問題がある他、装
置の背が高いために屋根替わりとなるシート或いはテン
ト等が容易に設けられず、悪天候下での作業が余儀無く
されるなど作業環境の向上を妨げる要因ともなってい
た。

【０００４】本発明は、上記実情に鑑みて成されたもの
であって、施工時における安定性が高く、比較的背の低
い構造とすることが可能な鋼管杭埋設装置の提供を目的
とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に成された本発明による鋼管杭埋設装置は、地面に対し
て垂直に起立し得る支柱と、鋼管杭を支柱と平行な状態
に把持して回転せしめ且つ支柱に対して昇降自在な回転
力伝達手段より成り、各々鉛直軸を以て左右隣合い且つ
回転自在に支持されその少なくとも一方に一定方向への
回転力が与えられた駆動ローラー対と、鋼管杭の側面を
駆動ローラー対を構成する駆動ローラーの周面に押し付
けることで該鋼管杭を回転自在に保持するホルダーと、
該ホルダーを支持し鋼管杭を駆動ローラー対へ引き寄せ
るアームを具備する回転力伝達手段又は、鋼管杭を包み
込み該鋼管杭に回転力を伝える無端ベルトと、該無端ベ
ルトを支持し且つ該無端ベルトの外面を鋼管杭へ押し当
てる引寄せローラーと、無端ベルトの張り具合を調節す
るアイドラーと、前記引寄せローラーを鉛直軸を以て回
転可能に支持し鋼管杭を保持すべく開閉可能に支持され
た一対のアームと、該アームに保持された鋼管杭を前記
引寄せローラーの反対側から無端ベルトを介して支持す
る受け部と、無端ベルトを巡回せしめる駆動手段を具備
する回転力伝達手段を用いたことを特徴とする。

【０００６】

【発明の実施の形態】以下、本発明による鋼管杭埋設装
置を図面に基づき説明する。本発明による鋼管杭埋設装
置は、地面１に対して垂直に起立し得る支柱２と、鋼管
杭３を支柱２と平行な状態に把持して回転せしめ且つ支
柱２に対して昇降自在な回転力伝達手段４より構成され
る。

【０００７】図１乃至図３は、本発明による鋼管杭埋設
装置の第１の実施の形態を示すものである。本鋼管杭埋
設装置の回転力伝達手段４は、支持体１７に、左右隣合
い且つ回転自在に支持されその少なくとも一方に一定方
向への回転力が与えられた駆動ローラー対６と、鋼管杭
３の側面を駆動ローラー対６を構成する駆動ローラー
７，７の周面に押し付けた状態で回転自在に保持するホ
ルダー８と、該ホルダー８を支持し鋼管杭３を駆動ロー
ラー対６へ引き寄せるアーム９を配設したものである。

【０００８】駆動ローラー対６は、支持体１７の先端部
に隣合った状態で回転自在に支持された一対の鉛直軸
５，５に、各々駆動ローラー７，７と動力受けディスク
１８，１８を固着し、該駆動ローラー７へ回転力を伝え
る動力伝達ベルト１９を、油圧モーター２０の回転軸に
固着された上下動力送りディスク２１，２１と、各駆動
ローラー７，７の鉛直軸５，５に固着された動力受けデ
ィスク１８，１８を対として、左右両駆動ローラー７，
７が同じ方向へ回転するように渡し掛けたものである。
一般的に、駆動ローラー７は、鋼管杭３の建込み時の姿
勢を安定させ且つ回転力を効率良く伝達するために、接
触面積をより多く取るべく丈の長い筒体として構成され
ることが望ましいが、この実施の形態にあっては、前記
駆動ローラー対６，６を上下２段に配設して、比較的近
い作用を得ることができる構造とした。

【０００９】又、上下各駆動ローラー対６における両駆
動ローラー７，７の鉛直軸５，５の上下に、上下駆動ロ
ーラー７，７に近接して各々動力受けディスク１８，１
８を固着し、油圧モーター２０の回転軸の上部及び下部
に、上下各動力受けディスク１８，１８に対応する動力
送りディスク２１，２１を各々固着し、上部と下部それ
ぞれについて動力送りディスク２１と動力受けディスク
１８，１８に動力伝達ベルト１９，１９を掛けることに
よって、鋼管杭への動力伝達効率を高めることもでき
る。

【００１０】駆動ローラー対６を構成する左右両駆動ロ
ーラー７，７の周面同士の間隔は、鋼管杭３が嵌まり込
むことがないように、鋼管杭３の径に比し十分小さく設
定し、又、左右各駆動ローラー７，７の鉛直軸５，５を
支持する軸承部２２，２２の、少なくとも該鋼管杭３を
受ける領域（以下、保持領域２３と記す。）に面する部
分にあっては、鋼管杭３に接触しないように駆動ローラ
ー７の周面からはみ出さない形状に設定されている。
又、駆動ローラー７の鋼管杭３と接する部分には、耐熱
性及び耐摩耗性が高く、鋼管杭３の表面との関係でスリ
ップの少ない高分子ライニングを形成し、雨天での作業
におけるスリップ防止として、例えば駆動ローラー７の
表面に排水パターンを形成することが望ましい。

【００１１】ホルダー８は、鉛直軸２４，２４を以て回
転自在な２つの円筒状支持ローラー２５，２５を鋼管杭
３の直径より短い間隔を隔てて並設してある。又、該ホ
ルダー８にあっては、上下２段のローラー対６，６のほ
ぼ中間に位置する高さにおいて前後へ水平に進退するア
ーム９を以て支持され、且つ、その進退に際して２つの
支持ローラー２５，２５の芯を結ぶ線と、前記駆動ロー
ラー対６を構成する左右各駆動ローラー７，７の芯を結
ぶ線との平行を維持し、前記２つの支持ローラー２５，
２５を結ぶ線の中心が、駆動ローラー対６を構成する左
右各駆動ローラー７，７を結ぶ線の垂直二等分線に沿っ
て移動する様に支持される。例えば、その駆動手段たる
油圧シリンダー２６を、支持体１７の中央部において水
平に支持すると共に、アーム９を、支持体１７の前後方
向へ水平に貫通する進退ガイド２７にて支持し、少なく
とも鋼管杭３を前記保持領域２３へ側方から導入し得る
侵入路２８を開閉し得るストロークを以て摺動自在とす
れば良い。

【００１２】而して、鋼管杭３は、長手方向における一
定の領域の上部及び下部が上下駆動ローラー対６，６で
支持され、同領域の少なくとも中央部がホルダー８の支
持ローラー２５，２５で反対側から支持されることによ
って前記建込み状態における安定性が確保される。そし
て、駆動手段たる油圧モーター２０を回すことによって
鋼管杭３は回転し、その先端部の羽根２９による推進力
で鋼管杭３が地中へ貫入することとなる。

【００１３】図４（イ）、（ロ）は、本発明による鋼管
杭埋設装置の第２の実施の形態を示すものである。本鋼
管杭埋設装置の回転力伝達手段４は、支持体３０の先部
の左右両端部に、一対のアーム１４，１４を該両者１
４，１４を以て鋼管杭３を建込み状態に保持すべく開閉
可能に支持し、支持体３０の前端部の中央部に、受け部
として鋼管杭３の直径より短い間隔を隔てた一対の受け
ローラー３１，３１を左右対称に立設した鉛直軸３２，
３２を以て回転自在に支持し、支持体３０におけるアー
ム１４，１４の軸承部３３，３３の前方に、鉛直軸３
４，３４に支持された回転可能なアイドラー１２，１２
を、左右対称に且つ該支持体３０上において左右方向へ
直線的或いは曲線的に移動可能に支持し、更に、その後
方であって両アーム１４，１４の軸承部３３，３３から
等距離の位置に，油圧モーター等駆動手段の回転軸から
駆動力を受けた駆動ディスク３５を鉛直軸３６を以て支
持し、前記両アーム１４，１４の先端部に鉛直軸１３，
１３をそれぞれ回転自在に支持すると共に、両鉛直軸１
３，１３に引寄せローラー１１，１１を各々装着し、各
アーム１４について、該引寄せローラー１１、アイドラ
ー１２、駆動ディスク３５を一括して囲む状態に無端ベ
ルト１０を掛け、該支持体３０における駆動ディスク３
５とアイドラーと１２の中間点に無端ベルト１０の外面
を押さえる外押えローラー３７，３７を鉛直軸３８，３
８をもってそれぞれ回転可能に支持したものである。

【００１４】無端ベルト１０は、鋼管杭３をその外面に
て包み込み且つ該鋼管杭３に回転力を伝える役割を果た
すものである。よって、前記第１の実施の形態における
駆動ローラー７と同様に鋼管杭３と接する部分であるか
ら、耐熱性及び耐摩耗性が高く、鋼管杭３の表面との関
係でスリップの少ない高分子ライニング等を形成すると
共に、駆動ディスク３５と接する部分には、スリップを
防止する歯部等を該無端ベルト１０の長手方向に沿って
突設しておくことが望ましく、雨天での作業におけるス
リップ防止として、該無端ベルト１０の表面へ更に排水
パターンを形成しても良い。

【００１５】又、アーム１４，１４の先端に支持された
引寄せローラー１１，１１は、無端ベルト１０を支持し
且つ該無端ベルト１０の外面を鋼管杭３へ押し当てる役
割を果たすものであるから、鋼管杭３を引寄せる際或い
は鋼管杭を保持する際に、該鋼管杭３にアーム１４，１
４が直接当たることのないよう両アーム１４，１４で囲
まれた部分に空間を形成し且つ前記引寄せローラー１
１，１１と受けローラー３１，３１など受け部のみが無
端ベルト１０を介して鋼管杭３に当接するように、各ア
ーム１４、１４が相手方に向かって対称的に屈曲又は彎
曲した形状とし、加えて、無端ベルト１０がアーム１４
の側方を覆う状態で変形するように、引寄せローラー１
１、アイドラー１２、駆動ディスク３５、外押えローラ
ー３６を配設することが望ましい。尚、アイドラー１２
は、無端ベルト１０の張り具合を調節する役割を果た
し、油圧モーター等の駆動手段は、駆動ディスク３５を
介して無端ベルト１０を巡回せしめる役割を果たすもの
である。

【００１６】上記構成により、図４（ロ）の如く両アー
ム１４，１４を広げた状態で、左右引寄せローラー１
１，１１間に掛かる無端ベルト１０を、各アイドラー１
２，１２を内側へ引き寄せて張りを緩めつつ両アーム１
４，１４の間へ押し入れ、鋼管杭３を前記受けローラー
３１，３１の周面へ当接するまで導入すると、無端ベル
ト１０は、平面的に見てＵ字状に変形し、その後、図４
（イ）の如く両アーム１４，１４を閉じると、無端ベル
ト１０は鋼管杭３の周面を覆いつつ前方に位置する両引
寄せローラー１１，１１の間が僅かに切欠した輪を形成
し、更に各アイドラー１２，１２の間隔を広げることに
よって無端ベルト１０の緊張度は高められ、該無端ベル
ト１０に覆われた鋼管杭３の外面は該無端ベルト１０の
外面に締め付けられ、同時に鋼管杭３は両アーム１４，
１４により無端ベルト１０を介して両受けローラー３
１，３１に押し付けられることとなる。

【００１７】この状態で、駆動手段を起動すれば、無端
ベルト１０が前記引寄せローラー１１、アイドラー１
２、駆動ディスク３５、外押えローラー３７で構成され
た無限軌道を巡回し、鋼管杭３の無端ベルト１０に覆わ
れた部分全域へ回転力が伝達されることとなる。即ち、
前記第１の実施の形態は、回転力を線に近い面積を以て
伝達するのに対し、この第２の実施の形態は、回転力を
面を以て伝達するものであり、回転力の伝達効率の点で
は極めて良好となるが、前記第１の実施の形態と同様、
同じ回転力伝達手段４を上下２段に配設すればより伝達
効率を高めることができる。

【００１８】前記各回転力伝達手段４の支柱２に対する
昇降手段としては、例えば、ピニオンギアとラックギア
の関係によるもの、ボルトとナットの如く捩子待遇によ
るもの、無端チェーンを用いたもの、ワイヤーを巻き取
る形態のもの等、様々な公知手段が存在するが、ワイヤ
ーで吊り上げる手段よりは、前二者の様な上昇と下降を
確実に制御し得るものが望ましい。駆動手段としては油
圧モーターなどがあり、支柱の形態にあっては、例え
ば、図１乃至図３の如く円柱状のガイドパイプ３９を一
対平行に配したもの、角柱状のもののいずれでも良い。
又、支柱を支持する基台にあっては、地表に定着し得る
脚部を持ったものでも良いし、前記図の如く無限軌道車
４０その他の車両であっても良く、殊に後者の場合は支
柱を起伏自在に搭載すれば移動に際して都合が良い。

【００１９】更に、建込み状態の安定性をより高める手
段として、基台の前方に、鋼管杭３の下部を前記第１の
実施の形態を構成するホルダー８の如くローラーを介し
て回転自在に支持する開閉自在な下支えホルダー４１及
び該下支えホルダー４１を保持する収納可能なアーム４
２を設けても良いし、鋼管杭３の建込みの際に、該鋼管
杭３を吊り上げる為の旋回自在のクレーン４３を設けて
も良い。該クレーン４３に付いては、該装置の安定性を
害さないように４９０ｋｇ吊程度の比較的小規模なもの
を用いることが望ましい。

【００２０】

【発明の効果】以上の如く本発明による鋼管杭埋設装置
を使用すれば、建込みが終わった鋼管杭の最上部を保持
する必要が無く、該鋼管杭を側方から把持して回転力を
伝えることができるので支柱を極短くすることができ
る。その結果、施工時において安定性を大きく損なうこ
とがなく、支柱の転倒事故が起こるなど安全性を高める
ことができる他、比較的天井が高い屋内での使用や、小
型軽量である利点を利用した中庭等へ吊り込んでの使用
が可能となり、殊に屋外での使用にあっては、立設した
支柱の上方に屋根替わりとなるシート或いはテント等を
容易に設けることができるので、悪天候下での作業も比
較的快適となる等、作業環境の向上に寄与するものであ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による鋼管杭埋設装置の一例を示す実施
態様図である。

【図２】第１の実施の形態における回転力伝達手段の平
面図である。

【図３】第１の実施の形態における回転力伝達手段の側
面図である。

【図４】（イ）（ロ）第２の実施の形態における回転力
伝達手段の平面図である。

【符号の説明】

１ 地面、２ 支柱、３ 鋼管杭、４ 回転力伝達手段 ５ 鉛直軸、６ 駆動ローラー対、７ 駆動ローラー ８ ホルダー、９ アーム １０ 無端ベルト、１１ 引寄せローラー、１２ アイ
ドラー １３ 鉛直軸、１４ アーム

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 地面（１）に対して垂直に起立し得る支
   柱（２）と、鋼管杭（３）を支柱（２）と平行な状態に
   把持して回転せしめ且つ支柱（２）に対して昇降自在な
   回転力伝達手段（４）より成り、該回転力伝達手段
   （４）は、各々鉛直軸（５）を以て左右隣合い且つ回転
   自在に支持されその少なくとも一方に一定方向への回転
   力が与えられた駆動ローラー対（６）と、鋼管杭（３）
   の側面を駆動ローラー対（６）を構成する駆動ローラー
   （７，７）の周面に押し付けることで該鋼管杭（３）を
   回転自在に保持するホルダー（８）と、該ホルダー
   （８）を支持し鋼管杭（３）を駆動ローラー対（６）へ
   引き寄せるアーム（９）を具備することを特徴とする鋼
   管杭埋設装置。
2. 【請求項２】 地面（１）に対して垂直に起立し得る支
   柱（２）と、鋼管杭（３）を支柱（２）と平行な状態に
   把持して回転せしめ且つ支柱（２）に対して昇降自在な
   回転力伝達手段（４）より成り、該回転力伝達手段
   （４）は、鋼管杭（３）を包み込み該鋼管杭（３）に回
   転力を伝える無端ベルト（１０）と、該無端ベルト（１
   ０）を支持し且つ該無端ベルト（１０）の外面を鋼管杭
   （３）へ押し当てる引寄せローラー（１１）と、無端ベ
   ルト（１０）の張り具合を調節するアイドラー（１２）
   と、前記引寄せローラー（１１）を鉛直軸（１３）を以
   て回転可能に支持し鋼管杭（３）を保持すべく開閉可能
   に支持された一対のアーム（１４，１４）と、該アーム
   （１４，１４）に保持された鋼管杭（３）を前記引寄せ
   ローラー（１１，１１）の反対側から無端ベルト（１
   ０）を介して支持する受け部と、無端ベルト（１０）を
   巡回せしめる駆動手段を具備することを特徴とする鋼管
   杭埋設装置。