JP2770421B2 - 高弾性率ナイロン66繊維およびその製造方法 - Google Patents

高弾性率ナイロン66繊維およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は高弾性率ナイロン66繊維およびその製造方法
に関し、詳細には高弾性率・高強力であると共に、寸法
安定性にも優れたナイロン66繊維およびその様な繊維を
製造する為の方法に関するものである。
[従来の技術] ナイロン66繊維は、工業的には、相対的粘度が4未満
のナイロン66を融点以上の温度で溶融紡糸し、熱延伸お
よび熱処理を行なうことによって製造している。ナイロ
ン66繊維は他のポリアミド繊維に比べて、耐疲労性や強
度更にはゴムとの接着性等が優れていることからタイヤ
コード用繊維または各種樹脂補強材として使用されてき
た。しかしながらナイロン66繊維は、他のポリアミド繊
維に比べて若干優れているとはいえ、産業用に用いられ
る他の素材と比べると寸法安定性や初期弾性率が低いと
いう欠点を有し、タイヤコード用繊維としては不十分で
ある。例えば従来法で得られるナイロン66繊維の物性値
は、高強力タイプでも初期弾性率は40〜60g/d、強度は
6.0〜9.0g/d程度である(産業用繊維資材ハンドブッ
ク:日本繊維機械学会,昭和54年)。
産業資材用ナイロン66繊維としては、例えば特開昭58
−60012号,同58−174623号,同58−208413号,同59−2
6517号,同60−88115号,同60−28537号,同60−104546
号,同61−34215号,同61−194214号等に数多く知られ
ており、特に特開昭58−208413号,同59−26517号には
初期弾性率が100g/dを超えるナイロン66繊維の製造方法
が提案されている。しかしながらこれらの技術において
も、破断伸度や乾熱収縮率の点では依然として不十分で
あり、タイヤコード用繊維として要求される寸法安定性
についてまで改良されるには至っていない。
[発明が解決しようとする課題] 本発明はこうした技術的課題を解決する為になされた
ものであって、その目的は、高弾性率・高強度と共に、
寸法安定性にも優れたナイロン66繊維およびその様なナ
イロン66繊維を製造する寸法を提供することにある。
[課題を解決する為の手段] 本発明に係る高弾性率ナイロン66繊維とは、下記
(a)〜(c)の要件を満足する点に要旨を有するもの
である。
(a)初期弾性率≧70g/d (b)破断伸度≦10% (c)160℃乾熱収縮率≦3.0% また上記高弾性率ナイロン66は破断強度が8.0g/d以上
のものを含み、これは一層高強度である。
一方上記の様な高弾性ナイロン66繊維は、96%濃硫酸
溶液中に重合体濃度が10mg/mlとなる様に溶解したとき
の20℃での相対粘度が2.3〜2.9である低分子量ナイロン
66ポリマーを真空乾燥処理した後、該ポリマーの融点以
上の温度で溶融紡糸し、下記(I)式で表わされる剪断
速度rが4×104sec-1未満となる様にノズルオリフィス
から押出して冷却固化し、該紡糸々条の複屈折率が30×
10-3以上となる様に引取り、一旦巻取るかまたは巻取ら
ないでDSC溶解曲線における融点ピーク内温度での高張
力延伸を1段または数段行なうことによって得られる。
但し、Q:単孔吐出量(g/sec) D:ノズルオリフィス直径(cm) ρ:ナイロン66の比重(g/cm3) [作用] ナイロン66繊維の高性能化に対するこれまでの考え方
では、例えば特開昭59−26517号にも記述されている様
に、繊維(ポリマー)の重合度は高ければ高いほど好ま
しいとされていた。しかしながら本発明者らが、ナイ
ロン66ポリマーの分子量,高速紡糸時の配向結晶化,
延伸性の3つの観点から研究を行なったところ、これ
まで用いられているタイヤコードグレードの分子量では
配向結晶化時の結晶化が著しく進み、これらの未延伸系
では通常の延伸設備を用いて延伸を行なっても高結晶化
度の為に却って延伸性が阻害されて高物性化の達成が困
難であることを見出した。即ちこれまでの高重合度のポ
リマーを用いて高弾性率を達成するには、例えば特開昭
58−208413号や同59−26517号等に示される様な、生産
性の伴わない特殊な延伸を行なうことが必須であること
が分かった。
そこで本発明者らはこれまでの固定概念にとらわれる
ことなく、ナイロン66繊維の高性能化を達成すべく鋭意
研究を進めた。その結果、比較的低分子量のポリマーを
用い、このポリマーを溶融紡糸して適度に配向結晶化し
た未延伸糸を、融点近傍の雰囲気下で延伸を行なうこと
によって、高配向で且つ非晶性を残した高配向結晶化糸
が作成できること、および得られたナイロン66繊維は高
弾性率且つ高強度であり、寸法安定性にも優れているこ
とを見出し、本発明を完成した。即ち本発明では、ある
条件で測定したときの相対粘度が2.3〜2.9であるナイロ
ン66ポリマーを用い、配向結晶化時の結晶化度合いを抑
制した未延伸糸を紡糸し、繊維を構成する高分子鎖をで
きる限り高度にその繊維方向に延伸させること(即ち繊
維の全延伸倍率をできる限り大きくすること)によっ
て、(a)初期弾性率≧70g/d,(b)破断伸度≦10%,
(c)160℃乾熱収縮率≦3.0%の要件を満足し、更に好
ましくは破断強度においても8.0g/d以上の高弾性率ナイ
ロン66繊維が実現できたのである。
本発明で使用されるナイロン66繊維とは、実質的には
ポリヘキサメチレンアジパミド単位を主構成要素とする
もの(95%モル以上)であるが、その他に共重合成分や
ブレンドポリマーを含んでいてもよい。共重合し得る他
のポリアミド成分としては、例えばε−カプラミド,ヘ
キサメチレンアジパカミド,ヘキサメチレンテレフタラ
ミド,ヘキサメチレンイソフタラミド等があり、ブレン
ドし得るポリマーとしては上記共重合し得る成分をそれ
ぞれ重合してなるポリマーがある。
これ等のナイロン66ポリマーには必要に応じて艶消し
剤,顔料,光安定剤,熱安定剤,酸化防止剤,帯電防止
剤,染色性向上剤或は接着性向上剤等を配合することが
でき、配合の如何によって本発明の特性に重大な悪影響
を与えるもの以外ならば全て利用できる。
本発明のナイロン66繊維を産業用途に用いる場合は、
熱,光,酸素等に対して十分な耐久性を付与する目的で
酸化防止剤を加えることが好ましい。酸化防止剤として
は銅塩、例えば酢酸銅,塩化第一銅,塩化第二銅,臭化
第一銅,臭化第二銅,沃化第一銅,フタル酸銅,ステア
リン酸銅,および各種銅塩と有機化合物との錯塩、例え
ば8−オキシキノリン銅,好ましくは沃化第一銅,酢酸
銅,2−メルカプトベンゾイミダゾールの沃化第一銅錯塩
等や、アルカリまたはアルカリ土類金属のハロゲン化物
例えば沃化カリウム,臭化カリウム,塩化カリウム,沃
化ナトウム,臭化ナトリウム,塩化亜鉛,塩化カルシウ
ム等や、有機ハロゲン化物、例えばペンタヨードベンゼ
ン,ヘキサブロムベンゼン,テトラヨードテレフタル
酸,沃化メチレン,トリブチルエチルアンモニウムアイ
オダイド等や無機および有機リン化合物例えばピロリン
酸ナトリウム,亜リン酸ナトリウム,トリフェニルホス
フェイト,(9,10)−ジハイドロ−10−(3′,5′−ジ
−t−ブチル−4′−ヒドロキシベンジル)−9−オキ
サ−パーフォスファフェナンスレン−10−オキサイド
等、およびフェノール系抗酸化剤例えばテキラキス−
[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロ
キシフェニル)プロピオネート]−メタン,(1,3,5,)
−トリ−メチル−(2,4,6,)−トリス(3,5−ジ−t−
ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン,n−オクタ
デシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ
フェニル)−プロピオネート,4−ヒドロキシ−3,5−ジ
−t−ブチルベンジルリン酸ジエチルエステル等や、ア
ミン系抗酸化剤例えばN,N′−ジ−β−ナフチル−p−
フェニレンジアミン,2−メルカプトベンゾイミダゾー
ル,フェニル−β−ナフチルアミン,N,N′−ジフェニル
−p−フェニレンジアミン,ジフェニルアミンとアリル
ケトンとの縮合反応物、好ましくは沃化カリウム,2−メ
ルカプトベンゾイミダゾール等がある。
酸化防止剤は、ナイロン66ポリマーの重合工程中に投
入するか、あるいは一旦チップ化したのちにチップにま
ぶして含有させることができる。酸化防止剤の含有量
は、銅塩は銅として10〜300ppm、好ましくは50〜200pp
m、他の酸化防止剤は0.01〜1%、好ましくは0.03〜0.5
%の範囲である。酸化防止剤は、通常銅塩と他の酸化防
止剤の1種又は2種以上を組合せて使用することが好ま
しい。
本発明に係るナイロン66繊維の製造法および繊維の特
性について更に詳しく以下に述べる。
本発明で用いるナイロン66ポリマーは、相対粘度(測
定法については後述する)が2.3〜2.9であることが必要
である。これは相対粘度が2.3未満では、曳糸性が悪く
なり均一な未延伸糸が得られず、延伸糸の弾性率は低下
するからである。これに対し相対粘度が2.9を超えると
高速紡糸時の配向結晶化時の結晶化が顕著になり、比較
的低配向度域で結晶化が発現する。この結果、この高度
結晶化が配向度の向上を抑制し、目標とする配向度に到
達できなかったり、たとえ到達できたとしても、結晶化
度が大きいために延伸性が低下し、延伸糸の弾性率や強
度が低下し、破断伸度は大きくなる。相対粘度が2.3以
上、2.9以下のナイロン66ポリマーは真空乾燥処理した
後、ナイロン66の融点よりも高い温度で溶融押出しされ
る。この温度は融点よりも少なくとも20℃以上高いこと
が好ましい。溶融押出方法としては特に限定するもので
はないが、エクストルーダー型押出機、ピストン型押出
機、2軸混練型押出機等の装置を用いる方法が例示され
る。
押出機からノズルオリフィスを介して押出す条件とし
ては、剪断速度rを4×104sec-1未満とすることが必要
である。即ちrが4×104sec-1以上となると、メルトフ
ラクチャーが発生しやすくなり高物性化が困難になる。
尚剪断速度rは下記の(I)式を用いて計算される 但し、Q:単孔吐出量(g/sec) D:ノズルオリフィス直径(cm) ρ:ナイロン66の比重(g/cm3) 押出されたナイロン66糸条は、冷却固化させて適量の
油剤を付与した後、糸条の複屈折率Δnが30×10-3
上、好ましくは36×10-3〜45×10-3となる様に引き取ら
れる。複屈折率Δnが30×10-3未満では、高速紡糸特有
の微細構造が顕著に発現しない領域となり、これらの糸
を延伸した場合強度は向上するが、伸度,収縮率は大き
く、弾性率の低い従来公知の性質の延伸糸になる。
この様にして得られた未延伸糸ナイロン66繊維は、第
1図に示すDSC融解曲線の融点ピーク内温度Tm1〜Tm2
域内で高張力延伸される。尚図中Tm1は基線から融解線
が離れる温度、Tm2は融点ピーク温度、Tm3は未延伸糸の
融解が完結する温度である。
延伸温度がTm1未満であると、紡糸時に形成された微
細構造を再配列して分子鎖を引き揃えることが困難であ
り、強度を8g/d以上、初期弾性率を70g/d以上として乾
熱収縮率を3%以下に保持することが不可能になる。ま
たTm2を超える温度では、本発明に用いるポリマーが比
較的低分子量であるために糸が溶断しやすく、延伸が不
安定となる。
尚用いる延伸ヒーターとしては、軸射ヒーター,セラ
ミックヒーター,赤外線ヒーター,マイクロ波,レーザ
ー等が挙げられ加熱雰囲気としては特に限定されるもの
ではないが、空気,N2,He,Ar等の雰囲気が例示され、ま
たヒータ形状は接触式,非接触式,ホットプレート,ホ
ットローラー,ホットピン等のいずれでも良い。
次に本発明で特定する物性の測定方法等について述べ
る。
(1)複屈折率(Δn)の測定法 ニコン偏光顕微鏡POH型ライツ社ベレックコンペンセ
ータを用い、光源としてはスペクトル光源用起動装置
(東芝SLS−3−B型)を用いた(Na光源)。5〜6mm長
の繊維軸に対し45度の角度に切断した試料を、切断面を
上にして、スライドグラス上に載せる。該スライドグラ
スを回転載物台にのせ、試料が偏光子に対して45度にな
る様、回転載台を回転させて調節し、アナライザーを挿
入し暗視界とした後、コンペンセーターを30にして縞数
を数える(n個)。コンペンセーターを右ネジ方向にま
わして試料が最初に一番暗くなる点のコンペンセーター
の目盛a、コンペンセータを左ネジ方向にまわして試料
が最初に一番暗くなる点のコンペンセーターの目盛bを
測定した後(いずれも1/10目盛まで読む)。コンペンセ
ーターを30に戻してアナライザーをはずし、試料の直径
dを測定し、下記の式に基づき複屈折率(Δn)を算出
する(測定数20個の平均値)。
Δn=r/d r(レターデーション)=nλo+ε λo=589.3mμ ε:ライツ社のコンペンセーターの説明書のC/10000と
iより求める i=(a−b):コンペンセーターの読みの差 (2)比重 トルエンと四塩化炭素よりなる密度勾配管を作製し、
30℃±0.1℃に調温された密度勾配管中に十分に脱泡し
た試料を入れ、5時間放置後の密度勾配管中の試料位置
を、密度勾配管の目盛で読みとった値を、標準ガラスフ
ロートによる密度勾配管目盛〜比重キャリプレイシヨン
グラフから比重値に換算する。n=4で測定。比重値は
原則として小数点以下4桁まで読む。
(3)繊維の強伸度特性の測定法 繊維の引張強さ(強度)および破断伸度(伸度)は、
JIS−L−1013(1981)の7.5.1に準じ、標準状態の試験
室で、東洋ボールドウィン(株)製の定速伸長形万能引
張試験機TENSILON UTM−IIIを使用して単繊維の引張強
さを測定した。
但し、測定条件は、5kgf引張型ロードセルを用い、つ
かみ間隔20cm、引張速度20cm/分(1分間当たりつかみ
間隔の100%の伸張速度)、記録紙の送り速度50cm/分で
試料を引張り、試料が切断した時の荷重(gf)を測定
し、次の式によって引張強さ(gf/d)を算出して強度
(g/d)とした。
また、試料が切断した時の伸度(%)を測定し、破断
伸度(%)とした。
(4)繊維の初期引張弾性率の測定法 繊維の初期引張抵抗度(初期引張弾性率)は、JIS−
L−1013(1981)の7.5.1に準じた上記の繊維の強度の
測定法と同じ方法で試験をおこない、記録紙上に荷重−
伸長曲線を描きこの図よりJIS−L−1013(1981)の7.
5.1に記載の初期引張抵抗度算出式より、初期引張抵抗
度(gf/d)を算出し、初期引張弾性率(g/d)とした。
(5)相対粘度の測定法 96.3±0.1重量%試薬特級濃硫酸中に重合体濃度が10m
g/mlになるように試料を溶解させてサンプル溶液を調整
し、20℃±0.05℃の温度で水落下秒数6〜7秒のオスト
ワルド粘度計を用い、溶液相対粘度を測定する。測定に
際し、同一の粘度計を用い、サンプル溶液を調整した時
と同じ硫酸20mlの落下時間T0(秒)と、サンプル溶液20
mlの落下時間T1(秒)の比より、相対粘度RVを下記の式
を用いて算出する。
RV=T1/T0 (6)乾熱収縮率の測定法 JIS−L−1017(1978)の5.7に準じて測定を行った。
(7)融点の測定法 理学電機(株)製高性能示差走査熱量計DSC−10Aを用
いた。試料を粉末状に細かく切り、5mg精秤してアルミ
ニウム製サンプルパンにつめサンプルクリンパで試料を
パックし、測定に供する。
測定は、アルゴンガス気流中でおこない定温度範囲:
室温〜300℃,昇温速度:20℃/min,測定レンジ:5mcal/se
c,チャートスピード:20mm/minで測定し、チャート上の
融解ピーク温度を読みとり、試料の融点とした。
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが下
記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・
後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明
の技術的範囲に含まれるものである。
[実施例] 実施例1 相対粘度が2.6のナイロン66ポリマーを、ノズルホー
ル数15ホールの紡糸口金を用いて295℃で常法に従って
溶融紡糸し、4500m/minの速度で引き取った。
得られた未延伸糸を非接触ヒータを用いて設定温度23
0℃で、2.19倍の延伸倍率で延伸した。尚未延伸糸供給
速度は19m/minとした。
得られた延伸糸の繊維物性値は、引張強度:8.9g/d,破
断伸度:9.5%,初期弾性率:81.7g/d,乾熱収縮率:3.0%
であった。
実施例2 実施例1で得られた未延伸糸を、非接触ヒーターを用
い設定温度を245℃として2.11倍の延伸倍率で延伸し
た。尚未延伸糸供給速度は19m/minとした。
得られた延伸糸の繊維物性値は、引張強度:9.1g/d,破
断伸度:8.8%,初期弾性率:96.9g/d,乾熱収縮率:2.6%
であった。
実施例3 実施例1で得られた未延伸糸を、非接触ヒーターを用
いて2段延伸を行った。ヒータ設定温度はいずれも245
℃で、トータル延伸倍率2.16倍延伸を行った。尚未延伸
糸供給速度は、19m/minとした。
得られた延伸糸の繊維物性値は、引張強度:9.4g/d,破
断伸度:8.6%,初期弾性率:91.8g/d,乾熱収縮率:2.5%
であった。
実施例4 実施例1で得られた未延伸糸を、非接触ヒーターを用
いて3段延伸を行った。ヒータ設定温度はいずれも245
℃で、トータル延伸倍率2.14倍延伸を行った。尚未延伸
糸供給速度は、19m/minとした。
得られた延伸糸は繊維物性値は、引張強度:8.4g/d,破
断伸度:9.2%,初期弾性率:89.1g/d,乾熱収縮率:2.4%
であった。
実施例5 実施例1で得られたのと同じポリマーを295℃にて、
ノズルホール数15ホールの紡糸口金を用いて常法に従っ
て溶融紡糸し、5500m/minの速度で引取った。
得られた未延伸糸を、非接触ヒーターを用いて設定温
度245℃で、1.98倍の延伸倍率で延伸した。尚未延伸糸
供給速度は、19m/minとした。
得られた延伸糸の繊維物性値は、引張強度:8.4g/d,破
断伸度:8.8%,初期弾性率:91.9g/d,乾熱収縮率:2.4%
であった。
実施例6 実施例1で得られた未延伸糸を、非接触ヒーターを用
いて設定温度260℃で、2.19倍の延伸倍率で延伸した。
尚未延伸糸供給速度は、19m/minとした。
得られた延伸糸の繊維物性値は、引張強度:9.8g/d,破
断伸度:8.7%,初期弾性率:76.8g/d,乾熱収縮率:2.4%
であった。
実施例7 相対粘度2.8のナイロン66ポリマーを295℃にて、ノズ
ルホール数15ホールの紡糸口金を用いて常法に従って溶
融紡糸し、4500m/minの速度で引取った。
得られた未延伸糸を、非接触ヒーターを用いて設定温
度245℃で、2.10倍の延伸倍率で延伸した。尚未延伸糸
供給速度は、19m/minとした。
得られた延伸糸の繊維物性値は、引張強度:8.9g/d,破
断伸度:8.6%,初期弾性率:88.0g/d,乾熱収縮率:2.7%
であった。
比較例1 実施例1で用いたのと同一のポリマーを295℃にて、
ノズルホール数15ホールの紡糸口金を用いて常法に従っ
て溶融紡糸し、3500m/minの速度で引取った。
得られた未延伸糸を、非接触ヒーターを用いて設定温
度245℃で、1.98倍の延伸倍率で延伸した。尚未延伸糸
供給速度は、19m/minとした。
得られた延伸糸は繊維物性値は、引張速度:9.9g/d,破
断伸度:9.4%,初期弾性率:60.2g/d,乾熱収縮率:3.4%
であった。
比較例2 実施例1で得られた未延伸糸を、非接触ヒーターを用
いて設定温度185℃で、1.68倍の延伸倍率で延伸した。
尚未延伸糸供給速度は、19m/minとした。
得られた延伸糸の繊維物性値は、引張強度:7.0g/d,破
断伸度:12.8%,初期弾性率:58.4g/d,乾熱収縮率:5.2%
であった。
比較例3 実施例1で得られた未延伸糸を、非接触ヒーターを用
いて設定温度265℃で、延伸を試みたが、糸が溶断して
延伸出来なかった。
比較例4 相対粘度3.3のナイロン66チップを、295℃にてノズル
ホール数15ホールの紡糸口金を用いて常法に従って溶融
紡糸し、4500m/minの速度で引取った。
得られた未延伸糸を、非接触ヒーターを用いて設定温
度245℃で、2.00倍の延伸倍率で延伸した。
尚未延伸糸供給速度は、19m/minとした。
得られた延伸糸の繊維物性値は、引張強度:7.7g/d,破
断伸度:9.4%,初期弾性率:70.5g/d,乾熱収縮率:2.8%
であった。
比較例5 相対粘度2.2のナイロン66ポリマーを、295℃にてノズ
ルホール数15ホールの紡糸口金を用いて常法に従って溶
融紡糸し、4500m/minの速度で引取ったが、洩糸性が悪
く安定な捲取りが不可能であった。
上記実施例1〜7および比較例1〜5の詳細なデータ
を第1表に一括して示す。
[発明の効果] 本発明は以上の様に構成されており、本発明に係るナ
イロン66繊維は、優れた強伸度,寸法安定性,および弾
性率を有しており、タイヤコード用素材およびベルト用
素材として最適である。特にポリエステルに近い初期弾
性率を有しており、従来不適とされていたラジアルタイ
ヤのベルト部のコート素材としての使用も可能と考えら
れる。但し、本発明の繊維の用途は上記に限られるもの
ではなく、汎用分野においても同様に用いられるのは勿
論である。
【図面の簡単な説明】
第1図はナイロン66繊維のDSC融解曲線を示すグラフで
ある。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記(a)〜(c)の要件を満足すること
    を特徴とする高弾性率ナイロン66繊維。 (a)初期弾性率≧70g/d (b)破断伸度≦10% (c)160℃乾熱収縮率≦3.0%
  2. 【請求項2】破断強度が8.0g/d以上である請求項(1)
    に記載の高弾性率ナイロン66繊維。
  3. 【請求項3】96%濃硫酸溶液中に重合体濃度が10mg/ml
    となる様に溶解したときの20℃での相対粘度が2.3〜2.9
    である低分子量ナイロン66ポリマーを真空乾燥処理した
    後、該ポリマーの融点以上の温度で溶融紡糸し、下記
    (I)式で表わされる剪断速度rが4×104sec-1未満と
    なる様にノズルオリフィスから押出して冷却固化し、該
    紡糸々条の複屈折率が30×10-3以上となる様に引取り、
    一旦巻取るかまたは巻取らないでDSC溶解曲線における
    融点ピーク内温度での高張力延伸を1段または数段行な
    うことによって請求項(1)または(2)に記載の高弾
    性率ナイロン66繊維を得ることを特徴とする高弾性率ナ
    イロン66繊維の製造方法。 但し、Q:単孔吐出量(g/sec) D:ノズルオリフィス直径(cm) ρ:ナイロン66の比重(g/cm3
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