JP2768986B2 - 近赤外線吸収性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

近赤外線吸収性樹脂組成物およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は可視光線を比較的よく透過し近赤外線吸収能
に優れた新規な近赤外線吸収性樹脂組成物とその製造方
法に関するものである。
〔従来の技術〕
従来近赤外線吸収材料としては米国特許第3,692,688
号明細書に六塩化タングステン(WCl6)と塩化スズ(Sn
Cl2・2H2O)をメタクリル酸メチルシラップに溶解して
重合することにより、近赤外線吸収能に優れた材料が得
られることが記載されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、我々が上記米国特許を追試した結果に
よれば、WCl6とSnCl2・2H2Oをメタクリル酸メチルシラ
ップに溶解した組成物は濃青色に発色し近赤外線をよく
吸収する性質をもっているが、これを鋳型に注入して重
合して得られた鋳型板すなわち近赤外線吸収材料は褪色
していると共に近赤外線を吸収する能力が大幅に減少し
ており、これを紫外線あるいは太陽光に曝露してはじめ
て再び濃青色を呈し近赤外線吸収能を発揮し、一方暗所
で長期間放置の間に褪色するいわゆるフォトクロミズム
を呈するという問題を有していた。このような従来のWC
l6とSnCl2・2H2Oを含有してなる近赤外線吸収材料にお
ける重合過程での分光特性の大幅な変化や極めて緩かに
進行するフォトクロミズムなどは、一定の品質を備えた
光学的フィルターや熱線吸収性グレージングなどの工業
製品を提供する上で好ましくない現象である。
また、メタクリル酸メチルシラップを反応溶媒とし
て、これにWCl6とSnCl2・H2Oを溶解する方法のため、フ
ィルターの基体となる樹脂はポリメタクリル酸メチルに
限られてしまい、製造の方法も限定され形状・加工性・
表面特性など工業製品として多様なニーズに応えること
ができないという問題点もあった。
したがって、本発明は、上述の問題点を解決すべく、
メタクリル酸メチルシラップを反応溶媒として限定して
用いる必要がなく、かつ近赤外線吸収能及びその安定性
の優れた近赤外線吸収性樹脂組成物およびその製造方法
を提供することを目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者等は、重合過程での不安定性を改良し、フォ
トクロミズムを抑制することを目的とする近赤外線吸収
性樹脂組成物とその製造方法について鋭意検討を重ねた
結果、六塩化タングステンとリン酸エステルおよび/ま
たは亜リン酸エステルを組み合せて用いることによって
なされることを見出し本発明を完成した。
すなわち本発明の要旨とするところは、 (1) 透明樹脂100重量部に対して、六塩化タングス
テン0.01〜10重量部と、六塩化タングステンの少なくと
も0.1倍モルのリン酸エステルおよび/または亜リン酸
エステルとの反応混合物を含有せしめてなる近赤外線吸
収性樹脂組成物、 および (2) (a)(メタ)アクリル酸モノエステル単量体
を主体として、その重合体を含有していてもよい不飽和
単量体および/または(メタ)アクリル酸多価エステル
単量体100重量部に対して、(b)六塩化タングステン
0.01〜10重量部と、該六塩化タングステンに対して少な
くとも0.1倍モルのリン酸エステルおよび/または亜リ
ン酸エステルとを反応させて得た混合物を添加混合せし
めた後、ラジカル重合開始剤の存在下で重合する近赤外
線吸収性樹脂組成物の製造方法、 以下本発明を詳細に説明する。
本発明における透明樹脂とは、実質的に透明であって
吸収・散乱が大きくない樹脂であればよく特に制限はな
いが、その具体的なものとしては、アクリル樹脂、スチ
レン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、
オレフィン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等を
あげることができ、実質的に透明であれば、上記1種類
の樹脂に限らず、2種以上の樹脂をブレンドしたものも
用いることができる。これらの透明樹脂のうちアクリル
樹脂である熱可塑性の又は架橋された(メタ)アクリル
酸エステル樹脂が近赤外線吸収性能を有する反応混合物
の分散性の点で好ましく、また耐候性の点と加味すれば
メタクリル酸メチル単独又はメタクリル酸メチル単位を
50%以上含有するメタクリル樹脂が望ましい。
本発明において(メタ)アクリル酸モノエステル単量
体を主体とし、その重合体を含有していてもよい不飽和
単量体とは、(メタ)アクリル酸モノエステル単量体単
独、該単量体混合物、または(メタ)アクリル酸モノエ
ステルを主成分とし、これと共重合し得る他の不飽和単
量体との混合物あるいは当該単量体もしくは単量体混合
物中にこれらの重合体を溶解含有するシラップである。
他の不飽和単量体との混合物中(メタ)アクリル酸モノ
エステルの割合は50重量%以上、好ましくは60重量%以
上、更に好ましくは80重量%以上である。(メタ)アク
リル酸モノエステル具体的な例としては、(メタ)アク
リル酸メチル(アクリル酸メチルあるいはメタクリル酸
メチルの意。以下同じ)、(メタ)アクリル酸エチル、
(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロ
ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、
(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル
酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジエチル
アミノエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メ
タ)アクリル酸テトラヒドロキシフルフリール、(メ
タ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキ
シエチル等を上げることができ、これらの1種類または
2種類以上が用いられるが、耐候性を考慮した場合メタ
クリル酸メチルが好ましい。共重合可能な他の不飽和単
量体の例は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルニ
トリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−スチ
レン、ビニルトルエン、無水マレイン酸等を挙げること
ができる。(メタ)アクリル酸エステルの部分重合物を
得る方法としては、通常行われているように塊状予備重
合により部分重合物を得る方法、あるいは重合物を単量
体に溶解する方法があげられ、注入を考慮して35重量%
以下の重合体含有率に調整することが好ましい。
本発明において用いられる(メタ)アクリル酸多価エ
ステルの例としてはポリオールポリ(メタ)アクリレー
ト、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メ
タ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート
等が挙げることができる。さらにポリオールポリ(メ
タ)アクリレートの具体的な例としては、エチレングリ
コールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコー
ルジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール
ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メ
タ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)
アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)ア
クリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アク
リレートであり、ポリエステル(メタ)アクリレートの
具体的な例は多価アルコールとしてエチレングリコー
ル、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ト
リメチロールプロパンポリエチレングリコール、ペンタ
エリスリトール等と、多塩基酸としてフタル酸、アジピ
ン酸、マレイン酸、イタコン酸、テレフタル酸等を反応
させて合成したポリエステルの(メタ)アクリレートで
あり、エポキシ(メタ)アクリレートの具体的な例とし
てビスフェノールA−エピクロルヒドリン型、フェノー
ルノボラック−エピクロルヒドリン型、脂環型エポキシ
樹脂等のエポキシ樹脂の(メタ)アクリレートであり、
ポリウレタン(メタ)アクリレートの具体的な例として
はトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソ
シアネートなどのイソシアネート類の(メタ)アクリレ
ートを挙げることができ、これらの1種または2種以上
の単量体が用いられる。
本発明に用いられる(a)(メタ)アクリル酸モノエ
ステル単量体を主体とし、その重合体を含有していても
よい不飽和単量体および/または(メタ)アクリル酸多
価エステル単量体(以下(メタ)アクリル酸エステル単
量体などと称す)とは、前記(メタ)アクリル酸モノエ
ステル単量体を主体としその重合体を含有していてもよ
い不飽和単量体、前記(メタ)アクリル酸多価エステル
単量体およびこれらの混合物の場合をそれぞれ意味し、
その組成については広範囲にとることができる。
本発明において用いられるリン酸エステルは次式
(1)で示されるフォスフェート (但し式中nは1,2あるいは3であり、Rは炭素数1〜1
8のアルキル基、アリル基、アリール基、アラルキル
基、(メタ)アクリロキシアルキル基あるいはそれの誘
導体を示す。)であり、具体的な例としては、モノエチ
ルフォスフェート、ジエチルフォスフェート、トリエチ
ルフォスフェート、モノブチルフォスフェート、ジブチ
ルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、モノブ
トキシエチルフォスフェート、モノ(2−エチルヘキシ
ル)フォスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)フォ
スフェート、トリス(2−エチルヘキシル)フォスフェ
ート、モノフェニルフォスフェート、ジフェニルフォス
フェート、トリフェニルフォスフェート、モノ(2−ク
ロロエチル)フォスフェート、ビス(2−クロロエチ
ル)フォスフェート、トリス(2−クロロエチル)フォ
スフェート、モノ(2−ヒドロキシエチルメタクリレー
ト)フォスフェート、ビス(2−ヒドロキシエチルメタ
クリレート)フォスフェート、トリス(2−ヒドロキシ
エチルメタクリレート)フォスフェート等であり、これ
らのうちでジエステル、トリエステル、またはこれらの
混合物を好ましい例としてあげることができる。
本発明において用いられる亜リン酸エステルは次式
(2)で示されるフォスファイト (但し式中nは1,2あるいは3であり、Rは炭素数1〜1
8のアルキル基、アリル基、アリール基、アラルキル
基、(メタ)アクリロキシアルキル基あるいはそれの誘
導体を示す。)であり、具体的な例としては、モノエチ
ルフォスファイト、ジエチルフォスファイト、トリエチ
ルフォスファイト、モノブチルフォスファイト、ジブチ
ルフォスファイト、トリブチルフォスファイト、モノ
(2−エチルヘキシル)フォスファイト、ビス(2−エ
チルヘキシル)フォスファイト、トリス(2−エチルヘ
キシル)フォスファイト、モノデシルフォスファイト、
ジデシルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、
モノステアリルフォスファイト、ジステアリルフォスフ
ァイト、トリステアリルフォスファイト、モノフェニル
フォスファイト、ジフェニルフォスファイト、トリフェ
ニルフォスファイト、モノ(ノニルフェニル)フォスフ
ァイト、ビス(ノニルフェニル)フォスファイト、トリ
ス(ノニルフェニル)フォスファイト、モノ(2,3−ジ
クロロプロピル)フォスファイト、ビス(2,3−ジクロ
ロプロピル)フォスファイト、トリス(2,3−ジクロロ
プロピル)フォスファイト等であり、これらのうちでジ
エステル、トリエステルを好ましい例としてあげること
ができる。
本発明において用いられる六塩化タングステン、リン
酸エステルおよび亜リン酸エステルは、目的とする樹脂
組成物の可視および近赤外線の透過率の設定および樹脂
組成物の板厚によってその量を変えることができるが、
六塩化タングステンの量は透明樹脂100重量部に対し
て、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部であ
る。六塩化タングステンが0.01重量部未満の場合には近
赤外線吸収能の向上が十分でなく、10重量部を超える場
合には近赤外線吸収能の向上が見られず重合原料中に不
溶解部分が残る虞れがある。
リン酸エステルおよび/または亜リン酸エステルの量
は、六塩化タングステン量に対して少なくとも0.1倍モ
ル、好ましくは1〜300倍モル、さらに好ましくは2〜1
00倍モルである。リン酸エステルおよび/または亜リン
酸エステルの量が六塩化タングステンの0.1倍モル未満
の場合には近赤外線吸収能の向上が充分でなく、樹脂組
成物の表面に発生するブリードや近赤外線吸収能の経時
的な安定性を考慮すると等モル以上が望ましい。一方、
リン酸エステルおよび/または亜リン酸エステルの量が
多すぎると、すなわち六塩化タングステンの500倍モル
を超える場合には、樹脂の機械的強度等の物性低下が大
きくなり好ましくない。
本発明の反応混合物(b)は、六塩化タングステンと
リン酸エステル、六塩化タングステンと亜リン酸エステ
ル、あるいは六塩化タングステンとリン酸エステルおよ
び亜リン酸エステルをそれぞれ出発原料として得られ、
これらの原料を充分に混合されるように撹拌しながら反
応することが、六塩化タングステン(WCl6)の溶解性・
反応性の点から好ましい。このときリン酸エステルおよ
び/または亜リン酸エステルが液体の場合には、この液
体中にWCl6を添加して反応を行ってもよく、あるいは溶
媒中にWCl6とリン酸エステルおよび/または亜リン酸エ
ステルを添加し反応を行ってもよい。また室温で固体の
リン酸エステルおよび/または亜リン酸エステルの場合
には、これらを融点以上に加熱し溶融状態でWCl6を添加
してもよく、あるいは溶媒に溶解させてから反応を行っ
てもよい。溶媒としては、反応混合物を溶解し、溶媒沸
点が反応温度より著しく低くないものであれば特に限定
はなく、また溶媒の量としては少なくとも出発原料を溶
解する程度の量があればよい。該反応混合物を得るため
の反応条件としては、室温あるいは室温より若干高い温
度から出発原料の1つであるリン酸エステルあるいは亜
リン酸エステルが激しく分解を起こさない程度の温度以
下で反応を行うことが望ましく、具体的には20〜200
℃、好ましくは30〜180℃、さらに好ましくは50〜150℃
の温度で、30時間以下、好ましくは0.5〜20時間、さら
に好ましくは1〜10時間反応を行なう。
このようにして本発明の反応混合物は、六塩化タング
ステン0.01〜10重量部と六塩化タングステンの少なくと
も0.1倍モル以上の前記リン酸エステルおよび/または
亜リン酸エステルとを反応せしめることによって得られ
るが、更に近赤外線吸収性能を向上し、経時的な安定性
を向上する目的で、上記反応系中に水を添加することが
できる。水の添加時期は、六塩化タングステンとリン酸
エステルおよび/または亜リン酸エステルとを反応する
前、反応中、あるいは反応した後に添加してもよい。ま
た水の添加量は、透明樹脂100重量部に対して0.01〜1
重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部である。
本発明の樹脂組成物は、前記透明樹脂100重量部に対
して、前記特定量の六塩化タングステンとリン酸エステ
ルおよび/または亜リン酸エステルとの反応混合物を含
有せしめるものであり、優れた近赤外線吸収能及びその
安定性を有する。
本発明の近赤外線吸収性樹脂組成物の製造方法として
は、例えば前記透明樹脂中に近赤外線吸収能を有する前
記反応混合物を混合含有する方法、前記透明樹脂の構成
単量体、好ましくは前記(メタ)アクリル酸エステルな
どの重合性原料に前記反応混合物を添加し重合する方
法、あるいは重合性原料に六塩化タングステンとリン酸
エステルおよび/または亜リン酸エステルとを添加混合
し重合する方法などが挙げられる。
透明樹脂中に前記反応混合物を混合含有する方法に
は、たとえば押出成形、射出成形、押圧成形、キャスト
製膜等があげられる。押出成形あるいは射出成形により
得る方法としては、六塩化タングステンとリン酸エステ
ルおよび/または亜リン酸エステルの反応混合物を熱可
塑性透明樹脂のペレットと均一にまぜ、これを溶融成形
機に搬送するか、またはこの混合ぺレットを溶融し反応
物が含有された樹脂のペレットを形成した後溶融成形機
に搬送して成形を行う。押圧成形ではプレス機において
成形することにより得られる。
本発明で使用される溶融成形機あるいはプレス機は通
常の成形品、シート、異形品の製造に用いる成形機が用
いられる。またキャスト製膜は溶剤に透明樹脂と近赤外
線吸収性の反応混合物を溶解してポリマー溶液を得て、
これを回転ドラム、ガラス板あるいは金属板等の上に流
延して溶剤を蒸発除去して得られる。
また、透明樹脂の構成単量体、好ましくは(メタ)ア
クリル酸エステルなどの重合性原料中に前記反応混合物
を添加し重合する方法の場合には、ラジカル重合開始剤
の存在下で行ない、たとえばこのラジカル重合開始剤を
重合性原料100重量部に対して0.0001〜2.0重量部、望ま
しくは0.01〜1.0重量部添加し加熱重合することが望ま
しい。このようなラジカル重合開始剤として用いられる
アゾ系重合開始剤の具体例として2,2′−アゾビスイソ
ブチロニトリル、1,1′−アゾビス−1−シクロヘキサ
ンカルボニトリル、2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバ
レロニトリル、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−
ジメチルバレロニトリル等をあげることができ、また過
酸化物系重合開始剤の具体例としてt−ブチルパーオキ
シイソブチレート、1,1′−ビス−t−ブチルパーオキ
シ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ラウロイルパ
ーオキサイド等をあげることができるが、過酸化物系重
合開始剤の種類または添加量により可視・近赤外域に褪
色がわずかながら起きるため重合に際してアゾ系重合開
始剤が好ましく用いられる。重合は塊状重合、好ましく
は鋳込重合で行なわれる。鋳肩重合する方法としては上
記組成物を常法に従い、周辺をガスケットでシールして
対向させた2枚のガラスの間に注入して加熱する方法が
挙げられる。重合温度は使用するラジカル重合開始剤の
種類によって異なるが、一般に40〜140℃であり通常前
段階の重合を40〜90℃、後段階の重合を100〜140℃で重
合することが望ましい。
また、本発明の近赤外線吸収性樹脂組成物を光重合開
始剤の存在下で重合する場合、この光重合開始剤を重合
性原料100重量部に対して0.05〜20重量部、好ましくは
0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.2〜5重量部添加す
ることが望ましい。
光重合開始剤とし用いられる具体的な例としてはアセ
トフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒ
ドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、ベンゾフェノ
ン、4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、1−
ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、t−ブチル
アントラキノン、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテ
ル等があげられ、この1種類または2種類以上が用いら
れる。重合は前記重合性原料と光重合開始剤を主成分と
する混合物を例えば基板上に塗布するかあるいはセル中
に封入した後、光により硬化して得られる。ここで使用
される基板は例えば硝子、プラスチック、金属等があ
る。またセルを使用する場合にはセルの少なくとも一方
の面は光重合を開始するのに必要な光を透過しなければ
ならず、透明な硝子、プラスッチク等が好適である。露
光用光源としては低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀
灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、紫外線蛍
光灯等を使用することができる。
また、透明樹脂の構成単位、好ましくは(メタ)アク
リル酸エステルなどの重合性原料に六塩化タングステン
とリン酸エステルおよび/または亜リン酸エステルとを
添加混合し重合する場合には、前記の如く重合性原料中
に反応混合物を添加する方法の場合と同様にラジカル重
合開始剤の存在下および光重合開始剤の存在下に重合を
行なうことができる。この場合、重合性原料への六塩化
タングステンとリン酸エステルおよび/または亜リン酸
エステルの添加混合は、室温又は室温より若干高い温度
で行うことがより簡便であることから、重合性原料への
六塩化タングステンの溶解性等を考慮して、六塩化タン
グステンの添加量は重合性原料100重量部に対して0.05
〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部が望ましく、リ
ン酸エステルの添加量は重合性原料100重量部に対して
0.05〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、また亜リ
ン酸エステルの添加量は上記重合性原料100重量部に対
して0.05〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部がそれ
ぞれ望ましい。
同じ含有量でも透過率は本発明で得られる樹脂材料が
例えば板であるとき、その板厚によって変化するので最
終的には設定した板厚における透過率が得られるように
含有量を限定することができる。
また、本発明において重合系中に水を添加することに
より、樹脂組成物の近赤外線吸収性能を更に向上させ、
近赤外線吸収能の経時安定性を更に向上させることがで
きる。添加する水の量は、前記重合性原料100重量部に
対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部が
望ましい。
本発明の実施にあたっては種々の添加剤、例えば着色
に用いられる染顔料、酸化防止剤、紫外線吸収等の安定
剤、難燃剤、可塑剤、重合調節剤、剥離剤などを添加す
ることができ、また、基板上に塗布するなどコーティン
グ組成物として用いる場合には、前記重合性原料に有機
溶剤を添加することができ、これらの添加剤の種類およ
び量は本発明の目的を達する範囲内で注意に選択するこ
とができる。
このようにして製造された近赤外線吸収性樹脂組成物
は、樹脂板、フィルム、塗膜等の形態をとることにより
近赤外線吸収能を簡便に付与した光学系フィルターや熱
線吸収性グレージングとして用いることができ、例えば
熱線吸収材料、肉眼保護フィルター、半導体受光素子用
赤外線吸収フィルター、赤外感光性の感光材料用セーフ
ライトフィルターに好適である。
〔実施例〕
以下、本発明を具体的実施例をもって説明するが、こ
れらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例
中において部は重量部を表わし、また得られた樹脂組成
物の透過スペクトルおよび透過率は、実施例18〜30を除
いてすべて分光光度計(株)日立製作所製:U−3410型)
で測定し、実施例18〜30は同種の分光光度計((株)日
立製作所製:323型)で測定した。
実施例1 100ml三つ口フラスコに六塩化タングステン(WCl6)1
2.0部とモノブチルフォスフェートとジブチルフォスフ
ェートの混合物(城北化学KK製:商品名JP−504)27.76
gを入れテフロン製の撹拌棒・羽根で撹拌した後、三つ
口フラスコをオイルバス中で徐々に加熱して、120℃で
2時間反応を行った。
得られた近赤外線吸収能を有する反応混合物の0.5部
をとりメタクリル酸メチル100部に添加し溶解させた。
これに紫外線吸収剤としてTinuvin327(C1BA−GEIGY社
製)0.6部、重合触媒として2,2′−アゾビス−2,4−ジ
メチルバレロニトリル0.15部を添加混合した後、これを
常法に従って、ガスケットを2枚の平行なガラス板には
さんでつくった鋳型間に注入し、60℃の水槽に3時間浸
漬し、ついで120℃の空気槽で2時間加熱を行って重合
を完了させ、冷却後ガラスより剥離させて板厚3.12mmの
樹脂板を得た。
得られた樹脂板の透過スペクトルを測定し、その結果
を第1図中のAで示すが、同図に示す板厚3mmの通常の
メタクリル樹脂板(協和ガス化学工業KK製:パラグラ
ス)の透過スペクトルBとの比較からわかるように、こ
の樹脂板は可視域の光は比較的よく透過するが通常のメ
タクリル樹脂板には見られない近赤外域の吸収能にすぐ
れていた。
実施例2 100ml三つ口フラスコに六塩化タングステン9.6部とJP
−504 20.0部を入れ実施例1と同様に反応させた。
得られた反応混合物の0.54部をとり予め0.4部の水を
溶解しておいたメタクリル酸メチル100部に添加し溶解
させ、剥離剤としてZELEC UN(デュポン社製)0.1部を
添加し実施例1と同様に紫外線吸収剤および重合触媒を
添加し重合を行い、板厚3.15mmの樹脂板を得た。得られ
た樹脂板の450〜1400mmにおける透過率を測定し、その
結果を第1表に示すが、実施例1で得られた樹脂板と同
様近赤外域の吸収能にすぐれていた。
本実施例で得られた樹脂板と、水を添加しないほかは
本実施例と同様にして重合して得た樹脂板とを80℃、湿
度50%の過酷な条件下に5日間おいて近赤外線吸収性能
の経時変化を測定したところ、1000nmにおける透過率が
水を添加しなかった樹脂板は0.7%から6.1%へ変化した
のに比べて、本実施例の樹脂板は0.1%から0.8%の変化
しか見られず、近赤外線吸収性能の安定性が向上してい
ることがわかる。
実施例3 六塩化タングステン5.0部とトリブチルフォスフェー
ト26.8部を実施例1と同様に反応させ、得られた反応混
合物の0.8部をメタクリル酸メチル100部に添加溶解さ
せ、実施例1と同様に紫外線吸収剤および重合触媒を添
加し重合を行い、板厚2.85mmの樹脂板を得た。得られた
板の透過率を測定し、その結果を第1表に示す。
実施例4 六塩化タングステン0.4部とトリブチルフォスファイ
ト2.0部を試験管中で加熱し、80℃1時間反応させ、得
られた反応混合物の0.4部をメタクリル酸メチル100部に
溶解させ、実施例1と同様に紫外線吸収剤および重合触
媒を添加し重合を行い、板厚2.89mmの樹脂板を得た。得
られた板の透過率を測定し、その結果を第1表に示す。
実施例5 六塩化タングステン5.0gとジブチルフォスフェート
((株)大八化学工業所製:DP−4)21.2gを実施例1と
同様に反応させ、得られた反応混合物の10.5部をとり、
予め0.3部の水を溶解させておいたメタクリル酸メチル1
00部に添加混合し、紫外線吸収剤としてTinuvin327 1.2
部および重合触媒として2,2′−アゾビス−2,4−ジメチ
ルバレロニトリル0.6部を添加混合し、常法に従って重
合を行い、膜厚0.12mmの樹脂膜を得た。得られた樹脂膜
の透過率を測定し、その結果を第1表に示す。
実施例6 六塩化タングステン16.0部と、JP−504 33.1部を実施
例1と同様に反応させ、得られた反応混合物の0.54部を
シクロヘキシルメタクリレート100部に添加混合し、実
施例1と同様に紫外線吸収剤及び重合触媒を添加し重合
を行い板厚3.40mmの樹脂板を得た。得られた樹脂板の透
過率を測定し、その結果を第1表に示す。
実施例7 スチレン60部、メタクリル酸メチル36部およびネオペ
ンチルグリコールジメタクリレート4部を混合し、これ
に実施例6で得られた反応混合物の0.09部を添加混合し
た。紫外線吸収剤としてTinuvin327 0.3部、重合触媒と
して2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.
2部を添加して溶解後実施例1と同様にして重合を行
い、板厚2.88mmの樹脂板を得た。得られた樹脂板の透過
率を測定し、その結果を第1表に示す。
実施例8 試験管にフタル酸ジ−2−エチルヘキシル2.0部を入
れ、これに六塩化タングステン0.4部とジブチルフォス
フェート0.79部を添加し撹拌を行いながら徐々に加熱を
行い、100℃1時間反応させた。得られた反応混合物の
1.66部をメタクリル酸メチル100部に添加混合し、実施
例1と同様に紫外線吸収剤および重合触媒を添加し重合
を行い板厚3.21mmの樹脂板を得た。得られた樹脂板の透
過率を測定し、その結果を表1に示す。
実施例9 試験管にフタル酸ジ−2−エチルヘキシル2.0部を入
れ、これに六塩化タングステン0.4部とジ−2−エチル
ヘキシルフォスフェート(城北化学KK製:LB−58)0.075
部を添加し撹拌を行いながら徐々に加熱を行い、100℃
1時間反応させた。得られた反応混合物の1.66部をメタ
クリル酸メチル100部に添加混合し、実施例1と同様に
紫外線吸収剤および重合触媒を添加し重合を行い板厚2.
91mmの樹脂板を得た。得られた樹脂板の透過率を測定
し、その結果を表1に示す。
実施例10 六塩化タングステン2.0部とジエチルフォスファイト2
5.0部を三つ口フラスコに入れ80℃で1時間加熱撹拌し
て反応を行った。
ポリメタクリル酸メチル(協和ガス化学工業KK製:パ
ラペットF−1000B)5部をメタクリル酸メチル95部に
溶解して調製したシラップに上記反応混合物を0.3部添
加し、実施例1と同様に紫外線吸収剤および重合開始剤
を添加し重合を行い板厚2.5mmの樹脂板を得た。得られ
た樹脂板の透過率を測定し、その結果を第1表に示す。
実施例11 六塩化タングステン5.0部とモノ−2−エチルヘキシ
ルフォスフェートとジ−2−エチルヘキシルフォスフェ
ートの混合物(城北化学KK製:JP−508)26.86部を実施
例1と同様にして反応を行い、得られた反応混合物の2.
0部をメタクリル酸メチル100部に添加し溶解させた。こ
れに光重合開始剤としてIrgacure−184(C1BA−GEIGY社
製)0.5部を加えガスケットを2枚の平行なガラス板に
はさんだ鋳型間に注入し、蛍光ケミカルランプ((株)
東芝社製:FL40BL)に30分間照射し重合を行い、板厚2.3
4mmの樹脂板を得た。得られた樹脂板の透過率を測定
し、その結果を第1表に示す。
実施例12 六塩化タングステン5.0部とジブチルフォスフェート
9.66部およびモノブチルフォスフェート((株)大八化
学工業所製:MP−4)8.67部を実施例1と同様にして反
応を行い、得られた反応混合物の10部をメタクリル酸メ
チル100部に添加し溶解させた。これに光重合開始剤と
してDarocure−1173(Merk社製)0.1部を添加混合し、
実施例10と同様にして光重合を行い膜厚0.09mmの樹脂膜
を得た。得られた樹脂膜の透過率を測定し、その結果を
第1表に示す。
実施例13 実施例6で得られた反応混合物の5部をとり、これに
0.3部の水を添加し、加温しながら溶解させ、ウレタン
アクリレートのアロニックスM−1210(東亜合成化学KK
製)100部を添加混合した。これに光重合開始剤としてD
arocure−1173 1.0部を添加し、ガラス板に0.09mmの厚
さになるように塗布して実施例10と同様にして光重合を
行った。得られた樹脂膜の透過率を測定し、その結果を
第1表に示す。
実施例14 実施例12と同様にして反応混合物を調製し、光重合開
始剤としてDarocure−1173 1.0部を添加した。これを2
枚の板厚2mmの通常のメタクリル樹脂板にはさんでウレ
タンアクリレートの膜厚が0.12mmになるように実施例10
と同様にして光重合を行った。得られた樹脂材料は接着
して一体化されていた。得られた積層板の透過率を測定
し、その結果を第1表に示す。
実施例15 三つ口フラスコに六塩化タングステン48.0部とJP−50
4 99.3部を入れ実施例1と同様に反応させた後冷却し
て、これに水を10.9部添加し60℃で1時間加熱撹拌を行
い溶解させた。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート70部、ペ
ンタエリスリトールアクリレート20部およびネオペンチ
ルグリコールジアクリレート10部からなる混合溶液に上
記で得られた反応混合物10部を添加混合し、これに光重
合開始剤Irgacure−184 5部を加え溶解した後、これを
シリコン処理されたポリエステルフィルム(創研化工KK
製:PET−7512)上に0.07mmの厚さになるように塗布して
実施例11と同様にして光重合を行った。得られた樹脂膜
の透過率を測定し、その結果を第1表に示す。
実施例16 実施例2で得られた反応混合物0.56部をポリメタクリ
ル酸メチル(パラペットF−1000B)100部と混合し、こ
れらをラボプラストミルに入れ250℃で15分間混練し
た。ついでプレス機で200℃、5分間圧力をかけて板厚2
mmの平板を得た。得られた板の透過率を測定し、その結
果を第1表に示す。
実施例17 ポリ塩化ビニル(理研ビニル工業KK製:NS−1840)100
部をテトラヒドロフラン700部に溶解し、これに実施例
6で得られた反応混合物6部を加え混合した後ガラス上
に流延して溶媒を留去し、150μmフィルムを得た。得
られたフィルムの透過率を測定し、その結果を第1表に
示す。
実施例18 ポリメタクリル酸メチル(協和ガス化学工業KK製:パ
ラペットHR−1000P)5部をメタクリル酸メチル95部に
加えてシラップを調製し、このシラップにトリフェニル
フォスファイト0.1部およびモノブトキシエチルフォス
フェートとジブトキシエチルフォスフェートの混合物
(城北化学工業KK製:JP−506)0.1部を加え撹拌しさら
に六塩化タングステン0.2部を添加し溶解した後2,2′−
アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.2部を添加混
合し青色組成物を得た。常法に従って、予め製品の板厚
が3mmになるようにガスケットを2枚の平行なガラス板
にはさんだ鋳型間に前記組成物を注入し、60℃の水浴槽
に6時間浸漬し、ついで120℃の空気浴槽で2時間加熱
を行って重合を完了させ、冷却後ガラスより剥離して厚
さ3mmでヘイズのない青色系の透明樹脂板を得た。
得られた樹脂板の透過スペクトルを第2図中のCで示
すが、同図に示す紫外線吸収剤を含まない通常のメタク
リル樹脂板の透過スペクトルDとの比較からわかるよう
に、この樹脂板は可視域の光は比較的よく透過するが通
常のメタクリル樹脂板に見られない近赤外域の吸収能に
すぐれていた。
また暗所に1ヶ月間放置しておいても得られた樹脂板
の褪色は見られなかった。
実施例19〜22 六塩化タングステンにリン酸エステルあるいは亜リン
酸エステルを添加混合し第2表記載のような組成に変更
したほかは実施例18と同様にして重合を行ない、ヘイズ
のない青色系の透明樹脂板を得た。得られたこれらの板
について透過スペクトルを測定し、第3表に400〜1400n
mにおける透過率を示すが、実施例18で得られた樹脂板
と同様近赤外線の吸収能にすぐれていた 実施例23,24 六塩化タングステンに亜リン酸エステルを添加し、こ
れに重合した樹脂板をガラス板から取りだす際の剥離性
を向上させるためにZELEC UNを添加混合する。このZELE
C UNはリン酸エステルを主成分としているため樹脂板の
剥離剤として機能するとともに、近赤外線吸収能の向上
にも効果がある。これらの組成を第2表記載のような組
成で重合を行ないヘイズのない板を得た。第3表にこの
板の透過率を示す。
実施例25〜30 六塩化タングステンにリン酸エステルおよび亜リン酸
エステルを添加混合し、第2表記載のような組成で重合
を行ないヘイズのない板を得た。第3表にこの板の透過
率を示す。
第3表からわかるように実施例19〜30で得られたヘイ
ズのない樹脂板は近赤外域の吸収能にすぐれており、し
かも可視域の透過率は比較的高い値を示した。
実施例31 シクロヘキシルメタクリレート100部にモノブチルフ
ォスフェートとジブチルフォスフェートの混合物JP−50
4 0.3部を加え撹拌しさらに六塩化タングステン0.15部
を添加し溶解した後紫外線吸収剤としてTinuvin327 0.6
部を添加し、重合触媒として2,2′−アゾビス−2,4−ジ
メチルバレロニトリル0.15部を添加混合した。常法に従
って、ガスケットを2枚の平行なガラス板にはさんだ鋳
型間に前記重合性組成物を注入し、60℃の水浴槽に3時
間浸漬し、ついで120℃の空気浴槽で2時間加熱を行っ
て重合を完了させ、冷却後ガラスより剥離させて板厚3.
5mmの樹脂板を画た。
得られた樹脂板の透過スペクトルを測定し、その結果
を第3図中のEで示すが、同図に示す通常のメタクリル
樹脂板の透過スペクトルBとの比較からわかるように、
この樹脂板は可視域の光は比較的よく透過するが通常の
メタクリル樹脂板には見られない近赤外域の吸収能にす
ぐれていた。また暗所に1ヶ月放置しておいても得られ
た樹脂板の褪色は見られなかった。
実施例32 ポリメタクリル酸メチル(パラペットHR−1000P)5
部をメタクリル酸メチル95部に加えてシラップを調製
し、このシラップに水を0.4部添加し溶解させた後トリ
フェニルフォスファイト、0.3部を添加し、さらに六塩
化タングステン0.2部を添加混合した重合性組成物に剥
離剤としてZELEC UNを0.4部および2,2′−アゾビス−2,
4−ジメチルバレロニトリル0.15部を添加し溶解させ
た。重合は実施例31と同様にして行ない板厚2.7mmの樹
脂板を得た。得られた樹脂板の透過スペクトルを測定し
た。その結果として第4表に400〜1400mmにおける透過
率を示すが、実施例31で得られた樹脂板と同様近赤外線
の吸収能にすぐれていた。また80℃、湿度50%の条件下
において経時変化を調べたところ、水を添加して得られ
た本実施例の樹脂板は水を添加しない樹脂板に比して更
に褪色しにくかった。
実施例33 ウレタンアクリレートとしてアロニックスM−1210 9
0部にメタクリル酸メチル10部を添加混合し、これにモ
ノブトキシエチルフォスフェートとジブトキシエチルフ
ォスフェートの混合物(JP−506)5.0部を加え混合し、
六塩化タングステン1.0部を添加し溶解した。これに光
重合開始剤としてDarocure−1173 1.0部を添加混合し、
この溶液をガラス板上に100μmの厚さになるように塗
布した後蛍光ケミカルランプに10分間照射させて重合を
行い、得られた樹脂膜の透過スペクトルを測定した。こ
の結果を第4表に示す。
比較例1 メタクリル酸メチル100部に青色染色としてSEIKAGEN
−O−BLUE BKH1416(大日精化工業KK製)0.01部を添加
溶解し、重合触媒として2,2′−アゾビスイソブチロニ
トリル0.008部添加した後、これを常法に従ってガスケ
ットを2枚のガラス板の間にセットして作られた鋳型中
に注入し、80℃の水槽に5時間浸漬し、ついで120℃空
気槽で2時間加熱を行って重合を完了させ、冷却後鋳型
からとり出して板厚3.05mmの樹脂板を得た。得られた樹
脂板の450〜1400nmにおける透過率を測定し、その結果
を第4表に示す。吸収の極大は637nmにあり透過率は10.
8%であったが、700nm以上の波長では吸収はほとんどな
かった。
比較例2 ポリメタクリル酸メチル25部をメタクリル酸メチル75
部に加えてシラップを調整し、このシラップに六塩化タ
ングステン(WCl6)0.2部と塩化スズ(SnCl2・2H2O)0.
15部を添加溶解すると濃い青色の溶液が得られた。これ
に重合触媒として2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレ
ロニトリル0.05部を添加混合した後、これを常法に従っ
てガスケットを2枚のガラス板の間にセットして作られ
た鋳型中に注入し、60℃の水槽に3時間浸漬し、ついで
120℃の空気槽で2時間加熱を行って重合を完了させ、
冷却後鋳型からとり出して板厚2.91mmの樹脂板を得た。
得られた樹脂板は重合前の濃い青色はほとんど褪色して
おり、非常に薄い青色で透明に近い色であった。また透
過スペクトルを測定したが、近赤外域の吸収能をわずか
であった。
〔発明の効果〕 本発明は以上述べたように、透明樹脂に、六塩化タン
グステンと、リン酸エステルおよび/または亜リン酸エ
ステルとを反応させて得た反応混合物を含有せしめてな
る近赤外線吸収性樹脂組成物であるから。得られた樹脂
組成物は重合過程での褪色など不安定性はなく、暗所に
長期間放置により褪色するというフォトクロミズムも見
られず、すぐれた近赤外線吸収性能を示すので、光学的
フィルター、熱線吸収性グレージング材等として工業的
に有用である。また、本発明は、透明樹脂に前記反応混
合物を混練混合せしめる近赤外線吸収性樹脂組成物の製
造方法、(メタ)アクリル酸モノエステル単量体を主体
としその重合体を含有していてもよい不飽和単量体およ
び/または(メタ)アクリル酸多価エステル単量体に前
記反応混合物を混合せしめ重合する近赤外線吸収性樹脂
組成物の製造方法、および(メタ)アクリル酸モノエス
テル単量体を主体とし、その重合体を含有してもよい不
飽和単量体および/または(メタ)アクリル酸多価エス
テル単量体100重量部に対し、六塩化タングステンと、
リン酸エステルおよび/または亜リン酸エステルを添加
混合せしめ重合する近赤外線吸収性樹脂組成物の製造方
法であるから、種々の方法を提供することができ、重合
過程での褪色を考慮せず、重合原料段階での色調調整に
より色調の変化した上記近赤外線吸収性樹脂組成物を簡
便に得られるので有用である。
【図面の簡単な説明】
第1図、第2図、第3図はそれぞれ透過スペクトルを表
わした図である。 A:実施例1で得られた樹脂板の透過スペクトル B,D:通常のメタクリル樹脂板の透過スペクトル C:実施例18で得られた樹脂板の透過スペクトル E:実施例31で得られた樹脂板の透過スペクトル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08K 5/521 C08K 5/521 5/524 5/524 G02B 5/22 G02B 5/22 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08L 101/00 - 101/14 C08K 3/00 - 3/40 G02B 5/22 G08K 5/00 - 5/59

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明樹脂100重量部に対して、六塩化タン
    グステン0.01〜10重量部と、六塩化タングステンの少な
    くとも0.1倍モルのリン酸エステルおよび/または亜リ
    ン酸エステルとの反応混合物を含有せしめてなる近赤外
    線吸収性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】請求項1記載の近赤外線吸収性樹脂組成物
    からなる光学用フィルター。
  3. 【請求項3】(a)(メタ)アクリル酸モノエステル単
    量体を主体として、その重合体を含有していてもよい不
    飽和単量体および/または(メタ)アクリル酸多価エス
    テル単量体100重量部に対して、(b)六塩化タングス
    テン0.01〜10重量部と、該六塩化タングステンに対して
    少なくとも0.1倍モルのリン酸エステルおよび/または
    亜リン酸エステルとを反応させて得た混合物を添加混合
    せしめた後、ラジカル重合開始剤の存在下で重合するこ
    とを特徴とする近赤外線吸収性樹脂組成物の製造方法。
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