JP2767521B2 - 新規抗腫瘍性蛋白質とその製造法および該蛋白質を有効成分として含有する抗腫瘍剤 - Google Patents
新規抗腫瘍性蛋白質とその製造法および該蛋白質を有効成分として含有する抗腫瘍剤Info
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Description
白質、その製造法並びに該蛋白質を有効成分として含有
するヒトや動物の上皮ガンに対する抗腫瘍剤に関する。
子実体,菌糸体,バガス等に抗ガン物質が存在すること
はよく知られている。しかし、その主たる作用機作は、
免疫力の増強、すなわちアジュバント効果とされ、その
物質の同定はされていない。また、種々の化学物質を用
いたガン化学療法でも、ガン細胞と共に正常細胞も死に
到らしめ、強い副作用を引き起こす等の問題点であっ
た。本発明者らの一部は、先にマツタケ子実体水抽出物
の抗腫瘍蛋白質に関する発明を完成している(特願平3
−258402号明細書)が、本発明はこれを更に発展
させ該蛋白質を特定し、その製法を確立したものであ
る。
れたもので、正常細胞に対して何ら影響を与えずに、ガ
ン細胞に対してのみ作用する活性を指標としてマツタケ
子実体から抗腫瘍性蛋白質を均一に精製する方法を開発
し、その蛋白質の特性を明らかにしたものである。すな
わち、ヒト子宮ガンに代表される遍平上皮ガンの原因ウ
ィルスであるヒトパピローマウィルス(HPV)と同じ
作用機作でマウスにガンを引き起こすSV40により形
質転換(ガン化)したマウス胎児繊維芽細胞に対しての
み細胞毒性を示し、形質転換していない正常細胞には細
胞毒性を示さない活性を指標として新規な抗腫瘍性蛋白
質を製造し、この蛋白質を主成分とする抗腫瘍剤の提供
を目的とするものである。
の理化学的性質を有するマツタケ(Tricholoma matsuta
ke)子実体由来の新規抗腫瘍性蛋白質 (a)分子量:SDS電気泳動よりサブユニットの分子
量10〜11万。ゲル濾過法より20〜21万。 (b)紫外部吸収スペクトル:図1に示す通り。 (c)色:淡黄茶乃至淡褐色。 (d)アミノ酸組成(モル比):第1表に示す。
した後、抽出物について(1)ゲル濾過カラムで分子量
分画処理により蛋白質を精製する工程、(2)陰イオン
交換樹脂と接触せしめて吸着処理し、続いて溶離剤によ
りカラムから蛋白質を溶離する工程および(3)疎水性
クロマトグラフ用樹脂と接触せしめて吸着処理し、続い
て溶離剤によりカラムから蛋白質を溶離する工程からな
る3種の精製工程を任意の順序に組み合わせて行うこと
を特徴とする上記抗腫瘍性蛋白質の製造法並びに上記蛋
白質を有効成分として含有するヒトや動物の上皮ガンに
対する抗腫瘍剤に関する。
な理化学的性質を有する新規物質であり、マツタケ子実
体から水抽出した後、抽出物を上記の(1)〜(3)か
らなる3種の精製工程を任意の順序に組み合わせて行う
ことにより製造することができる。この蛋白質は、後記
するように、抗腫瘍活性を有しており、特にヒトや動物
の上皮ガンに対する抗腫瘍剤としての利用が期待され
る。
る。 実施例1 (1)抗腫瘍性蛋白質の精製 冷凍マツタケ子実体を解凍後、ホモジナイザーで破砕
し、これに2倍量の水を加え数分間攪拌抽出後、遠心分
離(8,000rpm、30分)を行って粗抽出物を得
た。これに硫安を90%飽和になるように溶解し、遠心
分離により沈澱を得た。
より濃縮し、セファロースCL−4B(ファルマシア社
製)を担体として用いるゲル濾過を行った。活性画分を
集めて凍結乾燥した後、DEAE−トヨパール(東ソー
社製)を用いる陰イオン交換ゲルカラムに供し、吸着・
洗浄後、NaClの直線濃度勾配により該蛋白質を溶出
させた。
ローズ(ファルマシア社製)を用いる疎水クロマトカラ
ムに供し、吸着・洗浄後、硫安の直線濃度勾配により該
蛋白質を溶出させた。この蛋白質を、図2(A),
(B)に示すように、I〜VIの6画分に分けて活性を測
定すると、画分Vが最も活性が強かった。図中、〇−〇
は正常細胞(Balb/A31)を、●−●は腫瘍細胞(Balb/SV4
0) を示す。また、図3に各画分のSDS−ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動のパターンを示す。画分Vに分子
量約100〜110Kの抗腫瘍性蛋白質の存在が示され
ている。また、画分Vを透析後、TSKgelG300
0SWxLカラムを用いたHPLCゲル濾過により均一に
精製した(図4参照)。分子量200〜210Kの位置
に抗腫瘍性蛋白質の溶出を認めた。
白質を電気的に抽出・透析した後、活性を測定した。そ
の結果、該蛋白質は相対移動度約0.5の位置に泳動する
ことが確認された(図5(A),(B)参照)。図5
(A)中、レーンIはアポフェリチン、レーンIIはβ−
アミラーゼ、レーンIII はBSA、レーンSはサンプル
をそれぞれ示す。図5(B)はレーンSのサンプルゲル
を16等分し、各ゲルから蛋白質を電気的に抽出後、抗
腫瘍活性を測定した結果を示す。図から明らかなよう
に、No. 8にのみ活性が認められ、レーンSのこの位置
に相当するバンドと一致した。
(6.5%Native-PAGE)後、2次元目にSDS電気泳動
(8%SDS-PAGE) を行った2次元電気泳動の結果を図6
に示す。図中、レーンStは分子量算出のための標準蛋白
質である。1次元目の相対移動度0.5の位置には、2次
元目に分子量推定のための標準蛋白質より分子量10〜
11万と推定されるスポットが1本認められた。他の位
置にはスポットは認められなかったことより、均一に精
製されたことが確認された。また、上記HPLCのゲル
濾過の結果と考え合わせると、該蛋白質は分子量10〜
11万のサブユニット2つからなる分子量20〜21万
のホモダイマーであると推定された。
質のアミノ酸組成分析を行った結果は第1表に示した通
りである。
での抗腫瘍活性測定法であるMTT法により、コントロ
ールの細胞数に対する%で表した。その結果、精製蛋白
質のマウス繊維芽細胞に対するLD50(50%阻止濃
度)は、形質転換細胞で約7ng/ml、正常細胞で約
30ng/mlであった。また、その作用特性はマウス
のみならずヒト細胞に対しても有効で、そのLD50はヒ
ト子宮ガン由来細胞であるHeLaに対しては約14n
g/ml、その亜株HeLaS3に対しては約8ng/
mlおよびヒト胎児肺細胞をSV40で形質転換したW
I38VA13 subline 2RAに対しては約4ng/
mlであった。
けでなく、ヒト腫瘍細胞に対しても強い致死効果を示す
ことが確認された。
その製造法並びに該蛋白質を有効成分として含有する抗
腫瘍剤が提供される。この抗腫瘍性蛋白質は、正常細胞
に対しては何ら影響を与えず、ガン細胞に対してのみ抗
腫瘍活性を発現するという特性を有しており、特にヒト
や動物の上皮ガンに対する抗腫瘍剤として有用である。
LC疎水クロマトグラフィーのパターンで、各フラクシ
ョンをI〜VIの画分に分取し(図2(A))、各画分の
抗腫瘍活性の測定結果を示す(図2(B))。
LC疎水クロマトグラフィーの各画分(I〜VI)のSD
S−ポリアクリルアミドゲル電気泳動図である。
フェニル−スーパーローズクロマトグラフィーの画分V
のHPLCゲル濾過のパターンを示す。
パターンを示し、(B)はレーンSのサンプルゲルから
の蛋白質の抗腫瘍活性を示す。
8%SDS −PAGEを行った2次元電気泳動パターンを示
す。
Claims (3)
- 【請求項1】 下記の理化学的性質を有するマツタケ
(Tricholoma matsutake)子実体由来の新規抗腫瘍性蛋
白質。 (a)分子量:SDS電気泳動よりサブユニットの分子
量10〜11万。ゲル濾過法より20〜21万。 (b)紫外部吸収スペクトル:図1に示す通り。 (c)色:淡黄茶乃至淡褐色。 (d)アミノ酸組成(モル比):下記の通り。 アスパラギン酸 15.9 グルタミン酸 0.2 セリン 34.7 グリシン 0.5 ヒスチジン N.D. アルギニン 20.1 スレオニン 2.7 アラニン 6.3 プロリン N.D. チロシン 2.1 バリン 1.8 メチオニン 0.4 システイン 0.5 イソロイシン 1.0 ロイシン 1.0 フェニルアラニン 11.2 リジン 0.7 - 【請求項2】 マツタケ子実体から水抽出した後、抽出
物について(1)ゲル濾過カラムで分子量分画処理によ
り蛋白質を精製する工程、(2)陰イオン交換樹脂と接
触せしめて吸着処理し、続いて溶離剤によりカラムから
蛋白質を溶離する工程および(3)疎水性クロマトグラ
フィー用樹脂と接触せしめて吸着処理し、続いて溶離剤
によりカラムから蛋白質を溶離する工程からなる3種の
精製工程を任意の順序に組み合わせて行うことを特徴と
する請求項1記載の抗腫瘍性蛋白質の製造法。 - 【請求項3】 請求項1記載の蛋白質を有効成分として
含有するヒトや動物の上皮ガンに対する抗腫瘍剤。
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-
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