JP2764100B2 - 有機ホスホニウム塩の製造方法 - Google Patents

有機ホスホニウム塩の製造方法

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、対イオンに有機スルホン酸イオンを有する
有機ホスホニウム塩の新規な製造方法に関するものであ
る。本発明の方法により製造される有機ホスホニウム塩
は、染色改良剤,帯電防止剤,相間移動触媒等として有
用である。
[従来の技術] 従来、対イオンに有機スルホン酸イオンを有する有機
ホスホニウム塩は、一般に、下記の反応式[IV]で示さ
れる反応により、有機スルホン酸のアルカリ金属塩ある
いはアルカリ土類金属塩と、ハロゲンの如き別の対イオ
ンを有する有機ホスホニウム塩とから複分解により製造
されている。(ドイツ特許出願公開第2044931号公報、
米国特許第4006123号明細書) (式中、Rはアルキル基又はフェニル基、R′はアルキ
ル基,アルコキシ基又はハロゲン原子、Mはアルカリ金
属又はアルカリ土類金属、Xはハロゲン原子を表わす) [発明が解決しようとする課題] 上記の反応式[IV]で示される反応において、反応を
水を主成分とする水系溶媒中で行なうと、目的とする生
成物は水層から遊離してくる。したがって、反応後、必
要に応じて有機溶媒を加え、分液後、水洗することによ
り目的物の対イオンに有機スルホン酸イオンを有する有
機ホスホニウム塩を単離することができる。
しかしながら、本発明者らが同様の目的物を得るべく
上記の反応を検討したところ、有機溶媒による分液後の
水洗では、完全に未反応の有機ホスホニウム塩や、副生
するハロゲン化アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属
を除くことができず、これ等の不純物が目的物に混入す
るのを防止することができないうえに、また目的物を損
失することによる収率低下が著しいことが認められた。
さらに、原料であるハロゲンの如き対イオンを有する
有機ホスホニウム塩は、下記の反応式[V]で示される
反応により、有機ホスフィンとハロゲン化アルキルから
製造されている。
R3P+R・X→R4P・X [V] (式中、R,Xは前記と同じものを示す) したがって、原料の有機ホスフィンからは、上記の反
応式[IV],[V]の二段階の反応工程により目的物の
対イオンに有機スルホン酸イオンを有する有機ホスホニ
ウム塩を得ている。
本発明らは、上記の従来の製造方法における欠点は二
段階の反応にあり、そのために不純物の混入による目的
物の純度の低下が生ずることに着目して鋭意研究した結
果、原料の有機ホスフィンから直接的に,工業的に有利
な方法で安価に収率良く,そして高品質の対イオンに有
機スルホン酸イオンを有する有機ホスホニウム塩を製造
する方法を見出し、本発明を完成した。
[課題を解決するための手段] 即ち、本発明は、次の[I]式で示される有機ホスフ
ィン: (式中、R1,R2,R3は同種又は異種の炭素原子数1〜18の
アルキル基,フェニル基又はベンジル基を表わす) と、次の[II]式で示される有機スルホン酸エステル: R4−SO3−R5 [II] (式中、R4は炭素原子数1〜36のアルキル基,若しくは
置換又は非置換のフェニル基又はベンジル基、R5は炭素
原子数1〜18のアルキル基を表わす) とを、窒素雰囲気下で加熱反応させることを特徴とする
次の[III]式で示される有機ホスホニウム塩の製造方
法である。
(式中、R1,R2,R3,R4,R5は前記と同じものを示す) 以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の有機ホスホニウム塩の製造方法は、原料の有
機ホスフィンと有機スルホン酸エステルを直接反応させ
る、一段階の反応により目的物を得ることに特徴を有す
る。
本発明において、原料の有機ホスフィンは下記の式
[I]で示されるものが用いられる。
式中、R1,R2,R3は炭素原子数1〜18のアルキル基,フ
ェニル基又はベンジル基を表わす。R1,R2,R3は同じで
も、又は異なっていてもよい。アルキル基は直鎖又は分
岐状のものでもよく、例えば、メチル基,エチル基,n−
プロピル基,iso−プロピル基,sec−プロピル基,n−ブチ
ル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,n−ヘキシル基,n
−オクチル基,2−エチルヘキシル基,n−ヘキサデシル
基,n−オクタデシル基等が挙げられる。このような有機
ホスフィンの具体例としては、例えばトリメチルホスフ
ィン,トリエチルホスフィン,トリプロピルホスフィ
ン,トリブチルホスフィン,トリヘキシルホスフィン,
トリオクチルホスフィン,トリヘキサデシルホスフィ
ン,トリオクタデシルホスフィン等の脂肪族ホスフィ
ン、トリフェニルホスフィン,トリベンジルホスフィン
等の芳香族ホスフィン等が挙げられるが、更にエーテル
基,エステル基,アミド基,水酸基等を有する置換基を
持つホスフィンでもよい。
次に、本発明における他の原料のスルホン酸エステル
は、下記の式[II]で示されるものが用いられる。
R4−SO3−R5 [II] 式中、R4は炭素原子数1〜36のアルキル基,置換又は
非置換のフェニル基,置換又は非置換のベンジル基を表
わし、R5は炭素原子数1〜18のアルキル基を表わす。R5
の炭素原子数1〜18のアルキル基には、上記のR1,R2,R3
と同じものが用いられる。R4のアルキル基には炭素原子
数1〜36のものが、又フェニル基およびベンジル基は置
換又は非置換のものが用いられるが、置換基としては、
例えばメチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、
エトキシ基、カルボキシル基、メチルカルボキシル基、
エチルカルボキシル基、プロピルカルボキシル基、アミ
ノ基、水酸基、塩素,臭素,フッ素等のハロゲンなどが
挙げられる。
本発明において、上記の式[II]で示されるスルホン
酸エステルを具体的に示すと、R4を有するスルホン酸部
の具体例としては、ベンゼンスルホン酸,パラクロロフ
ェニルスルホン酸,P−トルエンスルホン酸,5−スルホイ
ソフタル酸エステル等の芳香族スルホン酸,メタンスル
ホン酸,エタンスルホン酸,プロパンスルホン酸等の脂
肪族スルホン酸が挙げられるが、更にエーテル基,エス
テル基,アミド基,水酸基等を有する置換基を持つスル
ホン酸でもよい。また、R5を有するエステル部の具体例
としては、メチルエステル,エチルエステル,n−プロピ
ルエステル等が挙げられる。以上例示したようなスルホ
ン酸部とエステル部との広範な組み合わせからなるもの
を用いることができる。
本発明において、反応は溶媒は用いても、又は用いな
くても良好に進行するが、溶媒を用いない場合には反応
終了後に溶媒を留出する必要が無いうえに、製品中に溶
媒が混入することがない等の利点がある。溶媒を用いる
場合には、不活性な溶媒であればいずれでも良いが、経
済的にトルエン等が好ましい。
反応温度は通常300℃以下であり、好ましくは20〜180
℃、さらに好ましくは60〜150℃の範囲で反応を行な
う。また、反応は発熱反応のために、有機ホスフィン
[I]中へ有機スルホン酸エステル[II]を添加して反
応させ、その添加速度により温度制御する方法が最も望
ましい。
有機ホスフィン[I]に対する有機スルホン酸エステ
ル[II]の添加モル比は、どちらか一方が過剰でも反応
は良好に進行するが、過剰原料の除去を考えると等モル
が望ましい。
また、反応は、窒素雰囲気下で行なわれるが、窒素に
は酸素が混入しないものであれば特に制限はない。
[実施例] 以下、実施例を示し本発明をさらに具体的に説明す
る。
実施例1 テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゼンスルホネート
の合成 500mlの四ツ口フラスコに101.2g(0.5モル)のトリ−
n−ブチルホスフィンを窒素雰囲気下で仕込み、室温に
て撹拌しながら、滴下ロートでベンゼンスルホン酸−n
−ブチルエステル107.1g(0.5モル)を徐々に滴下し
た。発熱反応により、60℃程度まで温度は上昇した。滴
下終了後、徐々に昇温し、150℃にて1時間撹拌した。
反応終了後、二硫化炭素で定性確認したところ、未反
応のトリ−n−ブチルホスフィンは検出されなかった。
生成物は微黄色針状結晶で、融点は26〜28℃であった。
質量分析計でテトラ−n−ブチルホスホニウムベンゼン
スルホネートであることが同定された。収率は99%であ
った。
実施例2 テトラ−n−ブチルホスホニウムp−トルエンスルホネ
ートの合成 500mlの四ツ口フラスコに101.2g(0.5モル)のトリ−
n−ブチルホスフィンを窒素雰囲気下で仕込み、150℃
に加熱した。撹拌しながら、滴下ロートでp−トルエン
スルホン酸−n−ブチルエステル114.2g(0.5モル)を
徐々に滴下した。滴下終了後、同温度にて1時間撹拌し
た。
反応終了後、二硫化炭素で定性確認したところ、未反
応のトリ−n−ブチルホスフィンは検出されなかった。
生成物は微黄色の粘ちょうな液体であった。質量分析計
でテトラ−n−ブチルホスホニウムp−トルエンスルホ
ネートであることが同定された。収率は99%であった。
実施例3 トリ−n−ブチルエチルホスホニウムメタンスルホネー
トの合成 500mlの四ツ口フラスコに101.2g(0.5モル)のトリ−
n−ブチルホスフィンを窒素雰囲気下で仕込み、60℃に
加熱した。撹拌しながら、滴下ロートでメタンスルホン
酸エチルエステル62.8g(0.5モル)を徐々に滴下した。
反応熱により、80℃程度まで温度は上昇した。滴下終了
後、140℃で2時間撹拌した。
反応終了後、二硫化炭素で定性確認したところ、未反
応のトリ−n−ブチルホスフィンは検出されなかった。
生成物は白色の針状結晶であった。質量分析計でトリ−
n−ブチルエチルホスホニウムメタンスルホネートであ
ることが同定された。収率は99%であった。
実施例4 トリ−n−プロピルブチルホスホニウムベンゼンスルホ
ネートの合成 500mlの四ツ口フラスコに80.12g(0.5モル)のトリ−
n−プロピルホスフィンを窒素雰囲気下で仕込み、60℃
に加熱した。撹拌しながら、滴下ロートでベンゼンスル
ホン酸ブチルエステル147.16g(0.5モル)を徐々に滴下
した。反応熱により、92℃まで温度は上昇した。滴下終
了後、130℃で3時間撹拌した。室温まで冷却後、二硫
化炭素で定性確認したところ、未反応のトリ−n−プロ
ピルホスフィンは検出されなかった。生成物は黄色の粘
ちょうな液体で、質量分析計でトリ−n−プロピルブチ
ルホスホニウムベンゼンスルホネートであることが同定
された。収率は99%であった。
[発明の効果] 以上説明した様に、本発明の製造方法によれば、有機
ホスフィンと有機スルホン酸エステルをステルを直接反
応させることにより、一段階の反応のために目的物への
不純物の混入を避けることができ、安価に高収率、高純
度で、対イオンに有機スルホン酸イオンを有する有機ホ
スホニウム塩を製造することができる。
また、本発明の方法により製造された有機ホスホニウ
ム塩は、高純度のために、特に染色改良剤,帯電防止
剤,相間移動触媒等として極めて有用である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の[I]式で示される有機ホスフィン: (式中、R1,R2,R3は同種又は異種の炭素原子数1〜18の
    アルキル基,フェニル基又はベンジル基を表わす) と、次の[II]式で示される有機スルホン酸エステル: R4−SO3−R5 [II] (式中、R4は炭素原子数1〜36のアルキル基,若しくは
    置換又は非置換のフェニル基又はベンジル基、R5は炭素
    原子数1〜18のアルキル基を表わす) とを、窒素雰囲気下で加熱反応させることを特徴とする
    次の[III]式で示される有機ホスホニウム塩の製造方
    法。 (式中、R1,R2,R3,R4,R5は前記と同じものを示す)
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