JP2763596B2 - 光応答人工興奮膜 - Google Patents

光応答人工興奮膜

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JP2763596B2 JP1154826A JP15482689A JP2763596B2 JP 2763596 B2 JP2763596 B2 JP 2763596B2 JP 1154826 A JP1154826 A JP 1154826A JP 15482689 A JP15482689 A JP 15482689A JP 2763596 B2 JP2763596 B2 JP 2763596B2
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雅一 加藤
稔 斎藤
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、高濃度及び低濃度塩溶液間を仕切ってい
る細胞膜等の生体膜が膜電位を生じ興奮し情報発現、情
報伝達、情報処理を行なっていることを模倣した人工的
な興奮膜(人工興奮膜と称する。)に関するもので、特
に光により膜電位変化を制御出来る人工興奮膜(これを
光応答人工興奮膜と称することにする。)に関するもの
である。
(従来の技術) 従来のコンピューターは、主に、シリコン半導体素子
等の無機系材料によって構成されており、その処理機能
はフォン・ノイマン(Von Neumann)方式によって直列
型の論理演算を実行するものであった。この方式は正確
な論理演算を行うことができるが、例えば高等生物の脳
が得意とするパターン認識に必要な、多数の情報処理を
同時に並行して行うことが困難であるという欠点を有し
ていた。
一方、近年、生体の認識機能に関する研究が急速に進
んでおり、例えば上述の脳を構成する複数の神経細胞
(ニューロン)が、生体の学習や記憶に伴なって、互い
の結合関係を適宜に変化させ、所謂、可塑性を有するこ
とが明らかに成りつつ有る。しかしながら、脳に見い出
されるようなパターン認識や学習・記憶といった機能
が、どのような原理に基づいて実行され、さらには、ど
のような構成成分で営まれているのかについては不明点
が多く、多数の研究者によって解明が進められている。
生物は、外界から承ける種々の刺激を知覚器官で受け
入れ、ニューロンや複数のニューロン間を接合するシナ
プスを介して脳に伝達した後、多数のニューロンから成
る脳で情報認識を行なう。このような認識機能の一例に
つき説明すれば、まず、外界からの刺激(情報)は電気
的な信号に変換され、神経インパルスが発生する。この
神経インパルスがニューロンを構成する軸索の末端に到
達すると、神経伝達物質と称される、小胞中に内包され
た化学物質が放出される。このような神経伝達物質とし
てアセチルコリン、アドレナリン、セロトニン、グルタ
ミン酸等が知られている。細胞外に放出された神経伝達
物質は、例えばシナプスの生体膜に存在する受容体を介
して次の細胞内に受け取られる。そしてこの細胞ではナ
トリウムイオン、カリウムイオン等のイオンが細胞内へ
流入又は細胞外へ流出することにより細胞膜等のような
生体膜に膜電位が生じる。この結果、新たな神経インパ
ルスを誘起する。さらに、神経インパルスを受けたシナ
プスのシナプス前膜からは、上述と同様に神軽伝達物質
の放出が生じ、隣接するシナプス後膜まで拡散し、受容
体を介した取り込み、神経インパルスの誘起が行なわれ
る。このような神経インパルスを介した一連の情報伝達
は興奮と称され、複数のシナプスを経て脳に達する。ま
た、脳内に達したインパルスは、脳内の膨大な数の神経
細胞を興奮させ、この結果種々の情報処理が行なわれ
る。
そこで、前述した生体膜を構成する脂質を利用し生体
系を模倣した機能素子を実現しようとする試みが、例え
ば文献(「合成脂質膜における相転移と自励発振現象」
(都甲 潔他,膜(MEM−BRANE),12(1),P.12〜21,1
987年)に開示されている。この文献によれば、多孔質
膜に合成脂質(以下、脂質類似物質と称する。)を吸着
させた人工興奮膜の自励発振現象等が報告されている。
ここで、脂質類似物質とは、ジオレイン酸、トリオレイ
ン酸、スパン80、ジオレイルフォスフェート等のような
両親媒性物質、界面活性剤等である。
以下、上述の自励発振現象につき簡単に説明する。
数μm程度の孔径を有する多孔質膜に、脂質類似物質
であるジオレイルホスフェートを吸着させて人工興奮膜
を作製する。このような人工興奮膜の一方の面を高濃度
の塩溶液に接触させ、かつ他方の面を低濃度の塩溶液に
接触させた状態とする。係る状態に置かれた人工興奮膜
は、数分〜数十分の周期で、これら塩溶液の間に所定の
電位差を生じ、電気的インパルスが発生する。
上述の自励発振のメカニズムは、油滴状態から多層膜
状態への脂質の集合体構造の変化に伴なうものと考えら
れている。このメカニズムにつき上述の文献を引用して
いま少し詳細に説明する。
第4図(A)及び(B)は、その説明に供する図であ
り、微小な貫通孔11aを有する支持体11の微小孔11a中に
脂質又は脂質類似物質が含浸されて構成されている人工
興奮膜により低濃度の塩溶液13と高濃度の塩溶液15との
間を仕切った状態を示した図である。特に1つの微小孔
周辺に着目して示している。
脂質や脂質類似物質(以下、脂質等と略称することも
ある。)は、ある塩濃度を境として、低濃度の塩溶液中
では油滴状態が安定であり高濃度の塩溶液中では多層膜
状態が安定である。従って、第4図(A)に示すよう
に、微小孔11aの低濃度の塩溶液側の出口では脂質等は
油滴17になり微小孔をふさいでおり、微小孔11a中では
カチオン19が高濃度の塩溶液側から流入しているために
油滴が多層膜21へと変化している。このような状態で
は、微小孔11a中には塩溶液中のアニオンよりもカチオ
ンのほうが選択的に多く流入しているので、アニオンが
支持体11上に残され、膜電位が生じる。ところが、第4
図(B)に示すように、油滴17の多層膜21への変化が進
み微小孔11aをふさいでいた油滴17が小さくなり出口が
開かれ微小孔11aが貫通すると、微小孔11a中の高濃度な
カチオンが拡散により低濃度な塩溶液側に流出し、微小
孔11a内のカチオン濃度は低下する。支持体11上に残さ
れていたアニオンは、この時から、アニオン自身の拡散
や拡散してきたカチオンとの再結合により、ある緩和時
間で無くなる。その後は、微小孔内のカチオンの濃度が
低くなったことから脂質等は油滴状態であるので、再び
第4図(A)に示した状態にもどる。このようにして人
工興奮膜は自励的な発振を繰り返す。人工興奮膜の、第
4図(A)及び(B)を用いて説明した特性を第1表に
まとめて示した。
上述のような人工興奮膜を用いるとニューロンやシナ
プスを模倣したバイオ素子を構成することが可能にな
る。その一例としては、この出願に係る発明者等によっ
て、特開平1−270267号公報及び特開平2−216445号公
報に提案されている素子が有り、例えばバイオコンピュ
ーターや種々のセンサ等への応用が期待されている。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、第4図を用いて説明したような従来の
人工興奮膜は、例えば高濃度の塩溶液側からこの溶液を
加圧しかつこの溶液に電流を印加すること等により自励
的な発振をさせることは出来るが、発振の停止、発振の
進行、発振の変調等を光刺激により制御出来るものでは
なかった。即ち、膜電位の制御を光刺激により行なえる
ものではなかった。自励発振の制御を光刺激により行な
えれば、人工興奮膜によるバイオセンサ等が実現された
ときの当該センサの制御を無接触で行なえる等の利点が
得られ非常に有用である。
この発明は、このような点に鑑みなされたものであ
り、従ってこの発明の目的は、人工興奮膜の膜電位の変
化に起因する発振の停止・開始等を光により無接触で制
御出来る光応答人工興奮膜を提供することにある。
(課題を解決するための手段) この目的の達成を図るため、この発明の光応答人工興
奮膜によれば、微小孔を有する支持体に、脂質及び脂質
類似物質のいずれか一方又は双方と、下記一般式で示
されるスピロピランとの混合物を吸着させて成ることを
特徴とする。
但し、式中、R1−H、−CH3又は−CnHm(n,mは正の
整数)を示し、R3は−O−、−S−又は−Se−を示す。
さらに式中、R2及びR4各々は、−H、−OCH3、−OC
nHm(n,mは正の整数)、−N(CH3、−NH2、−OH、
−NHCOCH3、−OCOCH3,−CH3、−CnHm(n,mは正の整
数)、−NO2、−CN−、−SO3H、−COCH3、−COOH、−CO
NH2、−COOCH3、ハロゲン原子、フェニル基、ここで列
記のR2の中から選ばれた置換基を有するフェニル基、ベ
ンゼン環と縮合したベンゼン環又はここで列記のR2の中
から選ばれた置換基を有するベンゼン環と縮合したベン
ゼン環(例えば実施例中の式で示す物質参照。)を示
し、互いに同じでも異なっても良い。
(作用) この発明の光応答人工興奮膜によれば、微小孔を有す
る支持体に、脂質及び脂質類似物質のいずれか一方又は
双方と、一般式で示されるスピロピランとの混合物を
吸着させてあり、微小孔内にこの混合物が含浸された状
態にある。
ここで、一般式で示されるスピロピランは、これに
紫外光(UV)を照射するとメロシアニン型の構造になり
イオンに解離しぬれ性が増加し、その後可視光(VIS)
を照射するとスピロピラン型の構造に再び戻ることが知
られている。また、スピロピランの中のある種のものは
上記挙動とは逆の挙動を示すことが知られている。従っ
て、この性質を利用し、脂質及び又は脂質類似物質を多
層膜状態或いは油滴状態に選択的に変化させることが可
能になり、この結果人工興奮膜の自励発振の制御が行な
える。
このことにつき、上記一般式の一例である、1−メ
チル−3,3−ジメチルインドリノ−6′−ニトロスピロ
ベンゾピラン(SP98と称されているもの。)を例に挙げ
て説明する。
SP98は、紫外線及び可視光の照射により下式のように
分子構造が変化する。
従って、スピロピランと、脂質及び又は脂質類似物質
との混合物に対し紫外光を照射しスピロピランをメロシ
アン型にした場合、スピロピランはイオン性になるの
で、これにより脂質及び又は脂質類似物質の第4図を用
いて説明した多層膜構造を安定化するようになると思わ
れる。このため、微小孔をふさぐ油滴は減少し微小孔は
貫通し人工興奮膜の膜電位は急激に減少する。この結
果、発振が生じる。
一方、スピロピランと、脂質及び又は脂質類似物質と
の混合物に対し可視光を照射しスピロピランをスピロピ
ラン型にした場合、スピロピランは疎水性になるので、
これにより脂質及び又は脂質類似物質は油滴状態が安定
になる。このため、微小孔は油滴によりふさがれたまま
となり微小孔の貫通が阻止される。この結果人工興奮膜
の膜電位変化が阻止され発振の停止が可能になる。
(実施例) 以下、図面を参照して、この発明の光応答人工興奮膜
の実施例につき説明する。なお、以下の説明では、この
発明が理解し得る程度に特定の条件を例示して説明する
が、この発明は、これら条件にのみ限定されるものでは
ないことを理解されたい。また、以下の実施例で用いた
薬品類の出所を一部省略する場合もあるが、いずれの薬
品も容易に入手出来るものでありかつ化学的に十分に純
粋なものを用いた。
**実施例1** 人工興奮膜の作製手順の説明 始めに、微小孔を有する支持体を孔径8μmの貫通孔
を多数有するセルロースエステル製の多孔質膜(ミリポ
アフィルター、ミリポア社製)とし、脂質類似物質を下
記の構造式で表されるジオレイルホスフェート(Diol
eyl Phosphate。以下、DOPHと略称することもある。)
とし、上記一般式で示されるスピロピランを下式で
示される既に説明したSP98とした例の実施例1の光応答
人工興奮膜(以下、単に実施例1の人工興奮膜と云う場
合もある。)の作製手順につき説明する。
DOPHは、この実施例の場合以下のように合成し精製し
たものを用いた。
出発物質として、オレイルアルコール(関東化学
(株)製)とオキシ塩化リン(POCl3)(関東化学
(株)製)とを用い、これらを周知の合成手段によって
反応させた後、得られた合成物質を加水分解する。この
ようにして、前述の構造式に示すようなDOPHを得、こ
れをクロマト法により精製した。
SP98は、この実施例の場合、日本感光色素研究所
(株)製の高純度のものを用いた。
次に、SP98をDOPHの5重量%となるように秤量し、然
る後、これらDOPHとSP98を溶媒としてのベンゼンに溶か
す。
次に、この溶液中に上述のセルロース・エステル製の
多孔質膜を浸漬する。浸漬後この多孔質膜を取り出しベ
ンゼンを蒸発させ、DOPHとSP98との混合物を吸着させた
実施例1の人工興奮膜を得る。なお、この実施例1の場
合、混合物の吸着量が4(mg/cm2)となるようにした。
また、実施例1との比較を行なうため、DOPHのみを用
いて多孔質膜に吸収させたことを除いては上述と同一の
手順で、従来技術に係る人工興奮膜(以下、比較例の人
工興奮膜と称する。)を4(mg/cm2)の吸着量で作製し
た。
自励発振用装置の説明 次に、実施例1及び比較例の人工興奮膜の自励発振を
確認するための装置(以下、自励発振用装置と云う。)
の説明を行なう。第2図は、この実施例で用いた自励発
振用装置の概略的な構成を示す説明図である。なお、同
図中、断面を示すハッチング等は一部省略する。
この第2図に示すように、実施例1或は比較例の人工
興奮膜(図中では代表して31で示す。)は、一方の面が
第一の電解槽33aに収容された100mMのKCl水溶液35aと
接し、他方の面が第二の電解槽33bに収容された5mMのK
Cl水溶液35bと接した状態で支持される。
第一及び第二の電解槽33a,33bの周囲には図示せずも
恒温水を循環させる設備が設けてあり、槽内温度を任意
の値に制御出来る。この実施例の場合、KCl水溶液35a,
35bの温度が20℃±1℃となるようにしている。また、
第二の電解槽33bの一部には人工興奮膜31に対し紫外光
及び可視光を照射するための光透過窓37cを設けてあ
る。
2種類のKCl水溶液35a及び35bには、銀−塩化銀(Ag
−AgCl)で構成される標準電極37a或いは37bを夫々浸漬
させてある。そして、高濃度側である100mMKCl水溶液35
a中に浸漬された標準電極37aを、直流電源39の陽極側に
接続し、低濃度側である5mMKCl水溶液35b中の標準電極3
7bを、上述した直流電源39の陰極側に接続させ人工興奮
膜に対し定電流を印加している。
さらに、この自励発振装置は、人工興奮膜31に加わる
電位差の時間変化を測定して記録するため高インピーダ
ンス電位計とX−Yレコーダーとからなる測定器41を具
えている。そしてこの測定器41に接続する標準電極43a
或いは43bを、上述したKCl水溶液35aと35bとの夫々に
浸漬させてある。
さらにこの自励発振装置は、第一の電解槽33aに接続
されているマノメーター45を具え、このマノメーター45
を介してのみ、図中に矢印aを付して示す外的な圧力
を、人工膜31に対して加えることが可能な構成となって
いる。なお、この実施例では、上述したマノメーター45
によって加えた圧力を印加圧力として説明する。
上述した印加電流と印加圧力は、実施例1及び比較例
の人工興奮膜の発振を生じさせるために必要な条件であ
り、ある値に設定されるものである。
さらにこの自励発振用装置は、電解槽33a,33bを収納
する暗箱47と、光透過窓37cを通して人工興奮膜31に紫
外光及び可視光のいずれを選択的に照射するための光源
49を具える。光源49は、紫外光用光源としての理化学用
水銀ランプと、可視光用光源として波長450nm以下の光
を除去する色ガラスフィルタ及び波長700nm以上の光を
除去する多層フィルタを装備したハロゲンランプとを具
えている。
自励発振の測定結果説明 次に、上述した自励発振用装置を用いて、実施例1及
び比較例の人工興奮膜の自励発振の測定を以下に説明す
るように行なった。
<発振条件の測定> 先ず、実施例1及び比較例の人工興奮膜の自励発振条
件を測定した。この測定は、直流電源39を用い人工興奮
膜39に対し0.5(μA)の定電流を印加しながら印加圧
力aを徐々に増加させて行なった。ただし、実施例1の
人工興奮膜に対しては、上記条件に加え、これに含まれ
るSP98の90%以上がメロシアニン型に異性化するように
紫外光を照射した場合と、SP98の90%以上がスピロピラ
ン型に異性化するように可視光を照射した場合との2つ
の条件の下で測定した。なお、上記異性化を達成する光
照射条件は、各々予め決定してある。
この測定結果によれば、比較例の人工興奮膜は、発振
開始印加圧力として18cmH2Oを必要とし、そのときの発
振周波数が0.57sec-1であることが分った。一方、実施
例1の人工興奮膜は、紫外光を照射した場合は発振が現
われ、発振開始印加圧力として18cmH2Oを必要とし、そ
のときの発振周波数が0.59sec-1であることが分った
が、可視光を照射した場合は、膜電位の上昇は認められ
たものの電位はもとにもどらず発振が現われないことが
分った。
第3図は、上述の発振条件の測定結果を説明するた
め、横軸に印加圧力をとり、縦軸に発振周波数をとり、
印加圧力と発振周波数との関係を示した図である。第3
図中、Iで示す曲線が実施例1の人工興奮膜の紫外光照
射後の特性、IIで示す特性が比較例の人工興奮膜の特性
である。両者の特性は、実質的に同一と云える。
上述の実験結果から明らかなように、DOPHにSP98を含
有させても、SP98分子がメロシアニン型になっている時
は、SP98分子はDOPHの多層膜構造の安定性を低下させる
ことがないと云える。しかし、このSP98がスピロピラン
型になっている時は、DOPHの多層膜構造が不安定なもの
となるため、DOPHは多層膜構造を取らず油滴状態を取
る。この理由は、メロシアン型のSP98は親水性(イオン
性)であるためDOPHの多層膜状態を安定化し、スピロピ
ラン型のSP98は疎水性であるDOPHの油膜状態を安定化す
るためと考えられる。
<光応答性の確認> 次に、実施例1及び比較例の人工興奮膜の発振が光に
より制御されるものであるか否かにつき、以下に説明す
るような実験により調べた。
先ず第2図を用いて説明した自励発振用装置に実施例
1の人工興奮膜をセット後、この人工興奮膜に対し紫外
光を照射した。次いで、自励発振用装置の印加圧力を20
cmH2Oとし、印加電流を0.5μAとした。この結果、実施
例1の人工興奮膜は、高抵抗状態と低抵抗状態とを繰り
返し、膜電位変化が周期的に現われ、自励発振した。次
に、この発振状態の実施例1の人工興奮膜に対し、可視
光を照射したところ、発振は停止し膜電位は高い状態で
一定値となった。次に、可視光照射により発振が停止し
た実施例1の人工興奮膜に対し、可視光の照射停止後し
ばらくした後今度は紫外光を照射した。するとこの人工
興奮膜は再び自励発振した。実施例1の人工興奮膜の上
述の発振の光応答性の様子を、縦軸に膜電位をとり、横
軸に時間をとり、第1図(A)に示した。
続いて、比較例の人工興奮膜についても、実施例1の
人工興奮膜の場合と同様に、20cmH2Oの圧力及び0.5μA
の電流を印加することで自励発振させ、実施例1の人工
興奮膜の場合と同様に可視光及び紫外光を順に照射し
た。しかし、比較例の人工興奮膜の発振状態は、光照射
によってはなんら変わることがなかった。比較例の人工
興奮膜の上述の発振の光応答性の様子を、縦軸に膜電位
をとり、横軸に時間をとり、第1図(B)に示した。
このように、実施例1の人工興奮膜は、これに対し可
視光及び紫外光を選択的に照射することにより、自励発
振の停止・開始等の制御が出来ることが分った。
**実施例2** 次に、SP98の代わりに、下記式で示される1,3,3−
トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、 下記式で示される1,3,3−トリメチルインドリノ−
6′−ブロモベンゾスピロピラン、 下記式で示される1,3,3−トリメチルインドリノ−
8′−メトキシベンゾスピロピラン、 下記式で示される1,3,3−トリメチルインドリノ−β
−ナフトスピロピラン、 下記式で示される1,3,3−トリメチルインドリノ−
6′−ニトロベンゾスピロピラン の各スピロピランを用い、実施例1と全く同様な手順で
人工興奮膜の作製及び光応答性の確認をそれぞれ行なっ
た。なお、上記〜の各スピロピランはいずれも東京
化成工業製のものを用いた。
この結果、上記〜の各スピロピランを用いた各人
工興奮膜共、実施例1の場合と同様に、自励発振状態の
膜に対し可視光を照射すると発振が停止し次いで紫外光
を照射すると発振が再開するという光応答性を示すこと
が分った。
**実施例3** 次に、SP98の代わりに、下記式で示されるスピロピ
ランを用い、実施例1と全く同様な手順で各人工興奮膜
の作製及び光応答性の確認を行なった。なお、下記式
で示されるスピロピランも東京化成工業製のものを用い
た。
この結果、この式で示されるスピロピランを用いた
各人工興奮膜は、紫外光を照射すると自励発振しこの状
態の膜に対し可視光を照射すると発振が停止し次いで紫
外光を照射すると発振が再開するという、実施例1及び
実施例2の各人工興奮膜の光応答性とは逆の光応答性を
示すことが分った。
以上がこの発明の実施例の説明である。しかしこの発
明は上述の各実施例のみに限定されるものではなく以下
に説明するような種々の変更を加えることが可能であ
る。
例えば、各実施例中で述べたDOPHと、スピロピランと
の混合比、DOPHと、スピロピランとから成る混合物の支
持体への吸着量は、単なる例示にすぎない。これら値
は、自励発振及び光制御性を確保出来る範囲内で設計に
応じ種々に変更されるものであることは理解されたい。
なお上記吸着量の制御は、例えばDOPHとスピロピランの
ベンゼンに溶解させる量を変えることで容易に行なえ
る。
また、各実施例で用いた支持体も単なる例示にすぎ
ず、材質、微小孔の直径等は設計に応じ変更出来る。原
理的には、支持体は微小孔が1個であっても良いと云え
る。また、例えばシリコン基板に微小孔を設けたような
無機材料の支持体でも良い。
また、実施例ではDOPHを用いて説明しているが、DOPH
の代わりに、他の脂質類似物質を用いても、或いは脂質
そのものを用いても、さらには、脂質及び脂質類似物質
の混合物を用いても良い。
また、スピロピランは、SP98や上記〜式で示され
るスピロピランに限られるものではない。
例えば、下式で示される1,3,3−トリメチルインド
リノベンゾチオピラン用いた人工興奮膜も実施例と同様
な光応答性が得られると考えられる。ただ、このチオピ
ランは、可視光吸収域が上述の各実施例で用いたスピロ
ピランのそれより長波長側にある。
また、式中のS(イオウ)がSe(セレン)となって
いるスピロピランを用いた人工興奮膜も実施例と同様な
光応答性が得られると考えられる。
さらに、下記式で示されるベンゾチアゾリン系スピ
ロピランも、紫外光及び可視光を選択的に照射すること
により親水性状態と疎水性状態とに可逆的になるので、
これを用いた人工興奮膜は実施例のものと同様な光応答
性を示すと考えられる。但し式中のR10、R20各々は、
例えば水素、アルキル基又はメトキシ基等である。
また上述の各実施例では、効果の説明を容易とするた
め、特定の実験装置を例示して、種々の特性を測定した
場合につき説明した。しかしながら、この発明の人工興
奮膜の効果は、特定の装置によってのみ達成されるもの
ではないこと明らかである。
(発明の効果) 上述した説明からも明らかなように、この発明の光応
答人工興奮膜は、塩濃度差のある溶液を当該光応答人工
興奮膜により仕切ると膜電位を生じ自励発振するという
従来の人工興奮膜の物性に加え、当該人工興奮膜に対し
外部から紫外光を照射すると自励発振し、可視光を照射
すると自励発振が停止するとういう光応答性、或いは、
これとは逆の光応答性を示すという新たな物性を有す
る。
従って、この発明の光応答人工興奮膜を用い神経細胞
や五感センサ等を模倣した素子を構築した場合、当該素
子の制御を無接触で行なえる等の利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図(A)及び(B)は、実施例1及び比較例の人工
興奮膜の発振の光応答性の説明に供する図、 第2図は、自励発振を確認するために用いた装置の説明
に供する図、 第3図は、印加圧力と、発振周波数との関係を示す図、 第4図(A)及び(B)は、自励発振のメカニズムの説
明に供する図である。 11……支持体、11a……微小孔 13……低塩濃度の塩溶液、15……高塩濃度の塩溶液 17……油適状態の脂質等、19……カチオン 21……多層膜状態の脂質等 31……比較例或いは実施例の人工興奮膜 33a……第一の電解槽、33b……第二の電解槽 35a……100mMのKCl水溶液 35b……5mMのKCl水溶液 37a,37b,43a,43b……標準電極 37c……光透過窓、39……直流電源 41……測定器、45……マノメーター a……外的な圧力、47……暗箱 49……光源。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮本 裕生 東京都港区虎ノ門1丁目7番12号 沖電 気工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭55−152426(JP,A)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】微小孔を有する支持体に、脂質及び脂質類
    似物質のいずれか一方又は双方と、下記一般式で示さ
    れるスピロピランとの混合物を吸着させて成ること を特徴とする光応答人工興奮膜(但し、式中、R1は−
    H、−CH3又は−CnHm(n,mは正の整数)を示し、R3は−
    O−、−S−又は−Se−を示す。さらにR2及びR4各々
    は、−H、−OCH3、−OCnHm(n,mは正の整数)、−N
    (CH3、−NH2、−OH、−NHCOCH3、−OCOCH3、−C
    H3、−CnHm(n,mは正の整数)、−NO2,−CN−、−SO
    3H、−COCH3、−COOH、−CONH2、−COOCH3、ハロゲン原
    子、フェニル基、ここで列記のR2の中から選ばれた置換
    基を有するフェニル基、ベンゼン環と縮合したベンゼン
    環又はここで列記のR2の中から選ばれた置換基を有する
    ベンゼン環と縮合したベンゼン環を示し、互いに同じで
    も異なっても良い。)。
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