JP3194973B2 - 光応答興奮性人工膜とその製造方法 - Google Patents

光応答興奮性人工膜とその製造方法

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JP3194973B2
JP3194973B2 JP02247091A JP2247091A JP3194973B2 JP 3194973 B2 JP3194973 B2 JP 3194973B2 JP 02247091 A JP02247091 A JP 02247091A JP 2247091 A JP2247091 A JP 2247091A JP 3194973 B2 JP3194973 B2 JP 3194973B2
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武 小谷野
裕生 宮本
勝晶 海部
雅一 加藤
潔 都甲
馨 山藤
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、生物の光情報処理機
能を模倣した興奮性人工膜とその製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来のコンピューターは、主として、シ
リコン半導体等の無機系材料によって構成されており、
フォン・ノイマン(Von Neumann)方式によ
って直列型の論理演算を実行するもの(以下、ノイマン
型コンピューターと称する。)であった。しかし、この
方式は、論理演算を正確に行うことは出来たが、多数の
情報処理を同時に並行して行うことが困難でありパター
ン認識等は不得意であるという欠点を有していた。
【0003】これに対し高等生物は、周知の通り、パタ
ーン認識等を容易に行なう。従って、脳に見られるよう
なパターン認識や学習・記憶機能がどのような原理に基
づいて実行されているのか、またどのような素子によっ
て実行されているのかについて解明をしこれらを模倣す
れば、ノイマン型コンピュータでは満足し得なかった様
々な機能をもつコンピュータ例えばバイオコンピュータ
の実現が可能になると期待されている。
【0004】例えば、生体の機能のうちの視覚機能は以
下に述べるように発現する。
【0005】視覚を司る器官である目では、網膜上に色
彩を識別する錐状体細胞と、明暗を識別する桿状体細胞
とが配置されている。図6は、この桿状体細胞20(以
下、桿状体20と称する場合もある。)の構造を概略的
に示した図である。
【0006】図6において、11は円盤膜、12は結合
繊毛、13はミトコンドリア、14はゴルジ体、15は
ミオイド、16は核、17は外節、18は内節、19は
シナプス接合部、20は桿状体である。
【0007】網膜に配列された桿状体20に外部(図面
右側)から光が入射すると、円盤膜11に存在する光応
答性蛋白質であるロドプシンに変化を生じ、このロドプ
シンに補欠分子族として共有結合しているシス(ci
s)−レチナールがトランス(trans)−レチナー
ルに変化し、よって円盤膜11内に包含されているカル
シウムイオンが細胞質に放出される。
【0008】細胞質で増えたカルシウムイオンは外節1
7の細胞膜のナトリウムチャネルを閉じ細胞の膜電位の
過分極を引き起す。これはシナプス接合部19への信号
となり抑制性神経伝達物質の放出速度が減少しシナプス
後ニューロンの興奮が起こる。この信号は次々と神経細
胞間を伝播して脳で高度に情報処理される。
【0009】かかる生体の視覚機能を模倣した人工的な
機能素子を実現するためには、外部からの光により興奮
を生じる人工的な膜即ち光応答興奮性人工膜が必要にな
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この出願にか
かる出願人は、例えば特願平2−151103号におい
て、多孔質膜に合成脂質ジオレイルホスフェートのよう
な特殊な脂質を吸着させさらにバクテリオロドプシンを
吸着させ構成した光応答興奮性人工膜を提案していた。
【0011】この光応答性人工膜は、これを濃度の異な
る塩溶液で挟むと、神経に見られるような興奮現象に近
い自励発振を起す。これは、ジオレイルホスフェートが
油滴状態及び多孔質状態に可逆的に相転移することに起
因して起る。この自励発振現象の詳細は例えば文献「膜
(MEMBRANE)」,12(1)(1987),
p.12〜21に開示されている。ただし、特願平2−
151103号で提案している人工膜では、ジオレイル
ホスフェートに加えさらにバクテリオロドプシンを吸着
させてあるので、バクテリオロドプシンが光に応答しH
+を輸送し塩溶液に対し逆向きのK+の流れを生じさせ
る。このため、ジオレイルホスフェートの上記相転移の
生じ易さが光により変わるので、上述の自励発振の開始
・停止、発振周波数の可変を光により容易に制御出来る
という効果が得られた。
【0012】また、この出願にかかる出願人は、特願平
2−151103号公報において、光応答興奮性人工膜
を製造する際、多孔質膜をジオレイルホスフェートのベ
ンゼン溶液に浸漬してこの多孔質膜に脂質を吸着させ、
その後、この多孔質膜にラングミュアブロジェット法
(以下、LB法と略称することもある。)によりバクテ
リオロドプシンを吸着させていた。LB法は、バクテリ
オロドプシンの配向を制御するのに好適だからである。
また、脂質吸着済みの多孔質膜へのバクテリオロドプシ
ンの吸着は、膜融合法によっても行い得ることを示して
いた。
【0013】しかしながら、この出願に係る発明者のそ
の後の研究によれば、ジオレイルホスフェートのような
脂質を多孔質膜に単なる含浸法により吸着させ形成した
膜は、その平坦性が悪いため、これにLB法によりバク
テリオロドプシンを吸着させる場合良好な吸着(累積)
が困難であることが分った。また、脂質を多孔質膜に単
なる含浸法により吸着させた場合、多孔質膜への脂質の
吸着性が悪いため、この膜をバクテリオロドプシン単分
子膜の形成されたLB法用のサブフェイズ溶液中に浸漬
した際、脂質がサブフェイズ溶液中に流出し易いことが
分った。脂質がサブフェイズ溶液中に流出すると、累積
しようとするバクテリオロドプシン単分子膜の配列が乱
され良好な累積の弊害になるため好ましくない。
【0014】また、脂質吸着済みの多孔質膜に膜融合法
によりバクテリオロドプシンを吸着させる場合、脂質が
多孔質膜に単分子膜状態或いは多層膜状態で吸着してい
る場合はバクテリオロドプシンは容易に吸着する。しか
し、脂質が多孔質膜に単なる含浸よって吸着している状
態の膜にはバクテリオロドプシンは膜融合しにくいこと
が分った。
【0015】バクテリオロドプシンの吸着が良好に行わ
れないと光応答機能が充分に得られないので、改善が望
まれる。
【0016】この発明はこのような点に鑑みなされたも
のであり、従ってこの発明の目的は、バクテリオロドプ
シンの組込みが従来より容易な構造の光応答興奮性人工
膜とその製造方法とを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】この目的の達成を図るた
め、この出願の第1発明の光応答興奮性人工膜によれ
ば、微小孔を有する第1の支持体に当該第1の人工膜に
興奮性を付与する脂質を吸着させ構成した第1の人工膜
と、微小孔を有する第2の支持体にバクテリオロドプシ
ンを吸着させ構成した第2の人工膜とを重ね合わせて成
ることを特徴とする。
【0018】また、この出願の第2発明によれば、微小
孔を有する第1の支持体に当該第1の人工膜に興奮性を
付与する脂質を吸着させて第1の人工膜を形成し、微小
孔を有する第2の支持体にバクテリオロドプシンを吸着
させて第2の人工膜を形成し、これら第1の人工膜及び
第2の人工膜を重ね合せて光応答興奮性人工膜を製造す
ることを特徴とする。
【0019】なお、この第2発明の実施に当たり、前述
の第2の支持体へのバクテリオロドプシンの吸着を、ラ
ングミュア・ブロジェット法により行うのが好適であ
る。或いはまた、先ず第2の支持体に脂質を単分子膜状
態または多層膜状態で吸着させ、然る後、該膜にバクテ
リオロドプシンを含むリポソームを膜融合させることに
より行うのが好適である。
【0020】また、これら第1発明及び第2発明の実施
に当たり、興奮性を付与する前述の脂質として、微小孔
を塞いだり貫通状態として、膜に興奮性を付与する例え
ば上述したようなジオレイルホスフェートを用いるのが
好適である。なお、その他のメカニズムで興奮性を付与
する脂質例えばトリオレインやモノオレイン等を用いる
ことも出来る。
【0021】
【作用】第1発明の光応答興奮性人工膜は、微小孔を有
する第1の支持体にジオレイルホスフェート等の特殊な
脂質(当該人工膜に興奮性を付与する脂質)を吸着させ
構成した第1の人工膜と、微小孔を有する第2の支持体
にバクテリオロドプシンを吸着させ構成した第2の人工
膜とを重ね合わせることにより構成される。従って、第
2の人工膜は第1の人工膜と無関係に形成できる。すな
わち、バクテリオロドプシンを第2の支持体に吸着させ
る際には、第1の支持体側に吸着させた脂質のことを考
慮することなく、バクテリオロドプシンの吸着に好適な
条件で吸着を行い得る。
【0022】
【実施例】以下、図面を参照して、この出願の光応答興
奮性人工膜の実施例及びその製造方法の実施例について
説明する。なお、以下の実施例は、微小孔を有する第1
の支持体を孔径8μmの貫通孔を多数有するセルロース
エステル製の多孔質膜(ミリポアフィルター、ミリポア
社製)とし、脂質を下記の(1)式で表されるジオレイ
ルホスフェート(Dioleyl Phosphat
e。以下、DOPHと略称することもある。)とし、微
小孔を有する第2の支持体を孔径0.1μmの貫通孔を
多数有するセルロースエステル製の多孔質膜とし、バク
テリオロドプシン(以下、bRと略称する場合もあ
る。)をシグマ社製のものとした例である。しかしなが
ら、この発明は、これら条件にのみ限定されるものでは
ないことを理解されたい。また、以下の実施例で用いた
薬品類の出所を一部省略する場合もあるが、いずれの薬
品も容易に入手出来るものでありかつ化学的に充分に純
粋なものを用いた。また、説明に用いる各図は、この発
明を理解出来る程度に各構成成分の寸法、形状及び配置
を概略的に示してあるにすぎないことは理解されたい。
【0023】
【化1】
【0024】
【0025】<光応答興奮性人工膜の構成の説明>図1
は、実施例の光応答興奮性人工膜50の構成を概略的に
示した断面図である。図1において、61は第1の人工
膜、71は第2の人工膜である。
【0026】第1の人工膜61は、孔径8μmの貫通孔
63aを多数有する第1の支持体63とこの支持体63
に吸着しているDOPH65とを具えて成っている。第
2の人工膜71は孔径0.1μmの貫通孔73a(図中
点線で示す。)を多数有する第2の支持体73とこの支
持体73に吸着しているbR75とを具えて成ってい
る。この実施例では、第1の支持体63へのDOPH6
5の吸着は、第1の支持体63の貫通孔63a中にDO
PH65を含浸させることにより行っており、第2の支
持体73へのbR75の吸着は、第2の支持体73にb
R75の単分子膜をLB法により累積させることにより
行っている(詳細は製造方法の項参照。)。そして、こ
の場合、第1の人工膜61と第2の人工膜71とは、第
2の人工膜71のbR75が吸着していない面が第1の
人工膜61と接するように、重ね合せてある。なお、第
1の人工膜61と第2の人工膜71との重ね合せ方は、
この例に限られず設計に応じ変更することが出来る。
【0027】<光応答興奮性人工膜の製造方法の説明>
次に、図1を用いて説明した光応答興奮性人工膜を製造
する例により第2発明の説明を行う。
【0028】先ず、DOPHは、この実施例の場合以下
のように合成し精製したものを用いた。
【0029】出発物質として、オレイルアルコール(関
東化学(株)製)とオキシ塩化リン(POCl3)(関
東化学(株)製)とを用い、これらを周知の合成手段に
よって反応させる。次いで、得られた合成物質を加水分
解する。このようにして得たDOPHをクロマト法によ
り精製する。
【0030】また、第1の人工膜61は、この実施例の
場合以下のように作製した。
【0031】まず、上述のように合成、精製したDOP
Hをベンゼンに溶解し、次に、この溶液中に第1の支持
体63(孔径8μmの孔を多数有するミリポアフィル
タ)を浸漬する。その後、この溶液中からこの第1の支
持体63を取り出し放置しベンゼンを蒸発させる。DO
PH65は第1の支持体63の貫通孔63a中に残るの
で、第1の人工膜61が得られる。なお、この実施例の
場合、DOPHの吸着量は3〜6mg/cm2としてい
る。これは、吸着量が少すぎると第1の支持体63の貫
通孔63aを塞ぐことが出来ず、多すぎると相転移によ
っても貫通孔63aが貫通されないのでこれらを回避す
るためである。しかし、DOPHの吸着量は、第1の支
持体63の貫通孔63aの径や、貫通孔63aの密度、
用いる脂質の種類等により変更されることは理解された
い。
【0032】一方、第2の人工膜71は、この実施例の
場合以下のように作製した。
【0033】まず、25%DMF(ジメチルホルムアミ
ド)水溶液中にbRを分散させた後、このbR分散DM
F水溶液を純水が入った水槽に展開する。DMFが蒸発
すると、水面上にはbRの単分子膜が形成される。
【0034】次に、ガラス基板に第2の支持体73(孔
径0.1μmの貫通孔を有するミリポアフィルタ)を固
定し、その後このガラス基板を、bRの単分子膜が形成
されている上述の水槽中に、基板面と水面との成す角度
がほぼ垂直になるように浸漬しその後引上げる。即ち、
LB法の垂直浸漬法を実施する。この浸漬及び引き上げ
操作を繰返し行って、第2の支持体73のガラス基板と
は反対側の面のみにbRの単分子膜を20層累積する。
なお、bRの単分子膜を累積させる際の当該膜の表面圧
は25dyne/cmとしている。このようにして形成
したLB膜は、ガラス基板引き上げ時の累積比がほぼ1
で、浸漬時の累積比がほぼ0のZ型であった。
【0035】次に、bRの単分子膜の累積が終了した第
2の支持体すなわち第2の人工膜71をガラス基板から
はずす。
【0036】その後、この第2の人工膜71と上述の第
1の人工膜61とを、第2の人工膜71のbRの単分子
膜が累積されていない面が第1の人工膜61側になるよ
うにして重ね合わせる。このようにして、実施例の光応
答興奮性人工膜を得た。
【0037】<比較例の光応答興奮性人工膜の説明>ま
た、実施例の光応答興奮性人工膜とは別に、以下に説明
するように比較例の光応答興奮性人工膜を作製した。
【0038】まず、実施例において第1の支持体とし用
いたミリポアフィルタと同様なミリポアフィルタに、実
施例の手順と同じ手順でDOPHを含浸させる。次に、
このDOPH含浸ミリポアフィルタに、実施例において
第2の人工膜を形成したと同様な方法で、bRの単分子
膜を20層累積させる。すなわち、実施例でいう第1の
人工膜に相当するものにLB法によりbBの単分子膜を
更に20層累積させる。このようにして得た構造体を比
較例の光応答興奮性人工膜とした。
【0039】<LB膜形成時の評価結果>実施例及び比
較例の光応答興奮性人工膜作製時の、bRの単分子膜を
LB法で20層累積させる際の1層毎(引き上げ時)の
累積比を、実施例及び比較例毎で測定した。図2は横軸
に累積層数をとり縦軸に累積比をとって、累積進度に対
する累積比の変化をプロットした図である。図2におい
て(a)が実施例の光応答興奮性人工膜作製時の累積比
変化、(b)が比較例のものの累積比変化である。
【0040】図2から明らかなように、比較例では累積
層数が増加するに従い累積比が低下することが分る。こ
れに対し実施例では20層分の累積がそれぞれ累積比1
で行われていることが分る。これより、bRの単分子膜
の累積に関しては、実施例の方が良好に行われることが
理解出来る。
【0041】また、比較例では、ミリポアフィルタに含
浸させてあったDOPHがbRの単分子膜累積時に水槽
中に流出しbR単分子膜を乱してしまうことが分った。
このため、比較例の場合、bRの単分子膜を1層累積す
る毎にbRの単分子膜を新たに形成し直す必要があっ
た。これは、工数増加を来すので好ましいことではな
い。
【0042】<実施例及び比較例の光応答興奮性人工膜
の光応答特性>次に、実施例及び比較例の光応答興奮性
人工膜の光による自励発振の生じ具合(これを光応答特
性と称することにする。)を以下に説明するように測定
した。
【0043】(A)測定装置の説明 光応答特性の測定には次のような装置(以下、自励発振
装置という。)を用いた。図3は、自励発振装置の構成
を概略的に示した説明図である。
【0044】図3に示すように、実施例或いは比較例の
光応答興奮性人工膜(図中では代表して31で示す。)
は、bRの単分子膜が吸着している面が第一の電解槽3
3aに収容された100mMのKCl溶液35aと接
し、他方の面が第二の電解槽33bに収容された5mM
のKCl水溶液35bと接した状態で自励発振用装置に
支持される。
【0045】第一及び第二の電解槽33a,33bの周
囲には図示せずも恒温水を循環させる設備が設けてあ
り、槽内温度を任意の値に制御出来る。この実施例の場
合、KCl水溶液35a,35bの温度が20℃±1℃
となるようにしている。また、第二の電解槽33bの一
部には光応答興奮性人工膜31に対し光を照射するため
の光透過窓37cを設けてある。
【0046】2種類のKCl水溶液35a及び35bに
は、銀−塩化銀(Ag−AgCl)で構成される標準電
極37a或いは37bを夫々浸漬させてある。そして、
高濃度側である100mMKCl溶液35a中に浸漬さ
れた標準電極37aを、直流電源39の陽極側に接続
し、低濃度側である5mMKCl水溶液35b中の標準
電極37bを、上述した直流電源39の陰極側に接続さ
せ、光応答興奮性人工膜31に対し電流を印加してい
る。
【0047】さらに、この自励発振用装置は、光応答興
奮性人工膜31に加わる電位差の時間変化を測定して記
録するため、高インピーダンス電位計とX−Yレコーダ
ーとからなる測定器41を具えている。そしてこの測定
器41に接続する標準電極43a或いは43bを、上述
したKCl水溶液35aと35bとの夫々に浸漬させて
ある。
【0048】さらにこの自励発振装置は、第一の電解槽
33aに接続されているマノメーター45を具え、この
マノメータ45を介してのみ、図3中に矢印aを付して
示す外的な圧力を、光応答興奮性人工膜31に対して加
えることが可能な構成となっている。なお、この実施例
では、上述したマノメーター45によって加えた圧力を
外的圧力と称して説明する。
【0049】上述した印加電流と外的圧力は、実施例及
び比較例の光応答興奮性人工膜の発振を生じさせるため
に必要な条件であり、ある値に設定されるものである。
【0050】さらにこの自励発振用装置は、電解槽33
a,33bを収納する暗箱47と、光透過窓37cを通
して興奮性人工膜31に光を照射するための光源49を
具える。この実施例の光源49は、熱線をカットするフ
ィルタを装備した100Wのハロゲンランプで構成して
いる。光源49を上述のような構成とした理由は、この
構成によれば人工膜31に対しバクテリオロドプシンの
吸収波長ピーク(おおよそ560nm)を含む波長領域
の光を効果的に照射することが出来るからである。
【0051】(B)光応答特性の説明 次に、実施例及び比較例の光応答興奮性人工膜の光応答
特性について説明する。
【0052】先ず、実施例及び比較例の光応答興奮性人
工膜各々について、外的圧力aを20cmH2Oと一定
にし印加電流を変化させた場合の当該膜の自励発振周波
数の変化具合を、光源49から光照射した場合としなか
った場合で各々測定した。
【0053】この結果を、横軸に電流値(μA)をと
り、縦軸に発振周波数をとって図4に示した。なお、図
4において丸印でプロットしてある特性が実施例のもの
であり、三角印でプロットしてある特性が比較例のもの
である。
【0054】図4から明らかなように、実施例及び比較
例の光応答興奮性人工膜において、当該膜に光が照射さ
れていない場合は、電流−発振周波数特性に差異は見ら
れないが、光照射した場合は同じ電流値において実施例
のものの方が発振周波数が高くなることが分る。このこ
とから、実施例の光応答興奮性人工膜の方が、バクテリ
オロドプシンの機能を有効に発現させ得ることが理解出
来る。
【0055】次に、実施例及び比較例の光応答興奮性人
工膜各々に対し、外的圧力aを20cmH2O、印加電
流を0.2μAと一定にした状態で、光源49の光を2
0秒間照射後次の20秒間は光を照射しないという光照
射を繰り返し実施する。そして、この際の当該膜の自励
発振の変化具合をそれぞれ測定した。
【0056】図5に、実施例の光応答興奮性人工膜の、
光照射・停止に対する自励発振の様子を示した。なお、
図5の縦軸は5mMKCl水溶液の電位を基準とした1
00mMKCl水溶液の電位であり、横軸は時間であ
る。また、横軸に沿って交互に示した「ON」及び「O
FF」の表示のうちの「ON」とは光源49を点灯した
時刻を示し、「OFF」とは光源49を消灯した時刻を
示す。
【0057】図5から明らかなように、光を照射してい
る間は実施例の光応答興奮性人工膜は1.3Hzの周波
数で発振し、光を照射しない間は全く発振しないことが
分る。一方、比較例の光応答興奮性人工膜は、特性図は
省略しているが、光照射時に0.95Hzの周波数で発
振した。
【0058】また、発明者の詳細な実験によれば、光照
射・停止に対応して自励発振が生じたり停止する現象
は、実施例の光応答興奮性人工膜の場合第2の支持体
(図1参照)にbRの単分子膜を10層以上累積すれば
生じることが分ったが、比較例の場合はbR膜の単分子
膜の累積数が15層以下では生じないことが分った。こ
のことからも、実施例の光応答興奮性人工膜の方が、バ
クテリオロドプシンの機能を有効に発現させ得ることが
理解出来る。
【0059】<膜融合法による第2の人工膜の作製例>
上述の実施例では、この発明の光応答興奮性人工膜に備
わる第2の人工膜(図1中71で示したもの。)は、ミ
リポアフィルタにLB法によりbRの単分子を累積させ
て作製していた。しかし、第2の人工膜は膜融合法によ
り作製することも出来る。
【0060】具体的には、まず、第2の支持体73(図
1参照)に例えばリン脂質ジオレオイルホスファチジル
コリンを例えばLB法により例えば5層累積させる。こ
の脂質は第2の支持体73上に多層膜状態で吸着する。
【0061】次に、バクテリオロドプシンを含むリポソ
ームが分散している液体中に、上述の脂質累積済み支持
体73を浸漬する。そして、この液体中に適当量のCa
Cl2(塩化カルシウム)を添加する。すると、第2の
支持体上の脂質とバクテリオロドプシンを含むリポソー
ムとが膜融合するので、第2の支持体23にバクテリオ
ロドプシンを吸着させることが出来、膜融合法により作
製された第2の人工膜が得られる。
【0062】次に、この第2の人工膜を、第1の人工膜
(図1参照)に実施例同様に重ね合せて、この発明の変
形例の光応答興奮性人工膜とした。
【0063】また、この変形例の光応答興奮性人工膜と
は別に、実施例において第1の支持体とし用いたミリポ
アフィルタと同様なミリポアフィルタに、実施例の手順
と同じ手順でDOPHを含浸させる。次に、このDOP
H含浸ミリポアフィルタに、上述したと同様にバクテリ
オロドプシンを含むリポソームを膜融合させて、変形例
に対する比較例の光応答興奮性人工膜を作製した。
【0064】次に、変形例及びその比較例の光応答興奮
性人工膜各々の光応答特性をそれぞれ測定したところ、
変形例のものの方がその比較例のものより大きな光応答
特性を示すことが分った。
【0065】上述においては、この発明の光応答興奮性
人工膜及びその製造方法の各々の実施例につき説明した
がこれら発明は上述の実施例のみに限定されるものでは
なく以下に説明するような種々の変更を加えることが出
来る。
【0066】例えば、実施例では微小孔を有する支持体
をミリポアフィルタとしていたが、支持体はこれに限ら
れるものではなく、目的に応じた種々のものに変更出来
る。また支持体は、原理的には、微小孔を1個有するも
のでも良い。また、例えばシリコン基板に微小孔を設け
たような無機材料の支持体でも良い。
【0067】また、実施例では興奮性を付与する脂質と
してDOPHを用いていたが、用い得る脂質はDOPH
に限られるものではなく同様な効果を得ることが出来る
脂質であれば天然、合成を問わず他のものでも良い。
【0068】また、上述の実施例では、説明を容易とす
るため、図3を用いて説明したような特定の実験装置を
例示して、種々の特性を測定した場合につき説明した。
しかしながら、この発明の光応答興奮性人工膜の効果
は、特定の装置によってのみ達成されるものではないこ
とは明らかである。
【0069】
【発明の効果】上述した説明からも明らかなように、第
1発明の光応答興奮性人工膜は、興奮性を付与する脂質
を吸着している第1の人工膜と、バクテリオロドプシン
を吸着している第2の人工膜と別々に作製しこれらを重
ねて構成出来る。このため、バクテリオロドプシンの支
持体への吸着は、これを良好に行える条件で行える。従
って、光応答興奮性人工膜にバクテリオロオプシンを好
適な条件で組み込むことが出来るので、バクテリオロド
プシンの機能を有効に発現し得る光応答興奮性人工膜を
得ることが出来る。
【0070】また、第1の人工膜は種々の構成(いかな
る構成)のものと出来るのでこの点でもこの発明は有用
である。
【0071】また、第2発明の製造方法によれば、第1
発明の光応答興奮性人工膜を簡易に製造することが出来
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例の光応答興奮性人工膜の説明図
である。
【図2】実施例及び比較例の光応答興奮性人工膜作製時
のLB膜形成時の評価説明に用いる図である。
【図3】自励発振を確認するために用いた装置の説明に
供する図である。
【図4】実施例及び比較例の説明に供する図である。
【図5】実施例の光応答興奮性人工膜の光による制御性
を示す図である。
【図6】従来技術の説明に供する図であり、桿状体細胞
を概略的に示した図である。
【符号の説明】
50:実施例の光応答興奮性人工膜 61:第1の人工膜、 63:微小孔を有する第1
の支持体 63a:貫通孔(微小孔) 65:興奮性を付与する脂質(例えばDOPH) 71:第2の人工膜、 73:微小孔を有する第2
の支持体 73a:貫通孔(微小孔) 75:バクテリオロドプシン(bR) 31:比較例或いは実施例の人工膜 33a:第一の電解槽、 33b:第二の電解槽 35a:100mMのKCl水溶液 35b:5mMのKCl水溶液 37a,37b,43a,43b:標準電極 37c:光透過窓、 39:直流電源 41:測定器、 45:マノメーター a:外的な圧力、 47:暗箱 49…光源
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI G06G 7/60 G01N 27/30 331A G11C 11/54 331C 27/46 U (72)発明者 小谷野 武 東京都港区虎ノ門1丁目7番12号 沖電 気工業株式会社内 (72)発明者 宮本 裕生 東京都港区虎ノ門1丁目7番12号 沖電 気工業株式会社内 (72)発明者 海部 勝晶 東京都港区虎ノ門1丁目7番12号 沖電 気工業株式会社内 (72)発明者 加藤 雅一 東京都港区虎ノ門1丁目7番12号 沖電 気工業株式会社内 (72)発明者 都甲 潔 福岡県福岡市東区美和台1−25−2 (72)発明者 山藤 馨 福岡県福岡市中央区草香江1−6−21 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 49/02 G01J 1/00 G01N 27/333 G01N 27/416 G06E 1/06 G06G 7/60 G11C 11/54 BIOSIS(DIALOG) JICSTファイル(JOIS)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 微小孔を有する第1の支持体に当該第1
    の人工膜に興奮性を付与する脂質を吸着させ構成した第
    1の人工膜と、微小孔を有する第2の支持体にバクテリ
    オロドプシンを吸着させ構成した第2の人工膜とを重ね
    合わせて成ることを特徴とする光応答興奮性人工膜。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の光応答興奮性人工膜に
    おいて、興奮性を付与する前記脂質をジオレイルホスフ
    ェートとしたことを特徴とする光応答興奮性人工膜。
  3. 【請求項3】 微小孔を有する第1の支持体に当該第1
    の人工膜に興奮性を付与する脂質を吸着させて第1の人
    工膜を形成し、微小孔を有する第2の支持体にバクテリ
    オロドプシンを吸着させて第2の人工膜を形成し、これ
    ら第1の人工膜及び第2の人工膜を重ね合せて光応答興
    奮性人工膜を製造することを特徴とする光応答興奮性人
    工膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の光応答興奮性人工膜の
    製造方法において、前記第2の支持体へのバクテリオロ
    ドプシンの吸着を、ラングミュア・ブロジェット法によ
    り行うことを特徴とする光応答興奮性人工膜の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 請求項3に記載の光応答興奮性人工膜の
    製造方法において、前記第2の支持体へのバクテリオロ
    ドプシンの吸着を、先ず第2の支持体に脂質を単分子膜
    状態または多層膜状態で吸着させ、然る後、該膜にバク
    テリオロドプシンを含むリポソームを膜融合させること
    により行うことを特徴とする光応答興奮性人工膜の製造
    方法。
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