JP2757877B2 - ゾノトライト系軽量珪酸カルシウム水和物成形体の製造法 - Google Patents

ゾノトライト系軽量珪酸カルシウム水和物成形体の製造法

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は耐熱性と諸物理的特性の優れた建築用材料と
して用いられるゾノトライト系軽量珪酸カルシウム水和
物成形体の製造法に関するものである。
(従来の技術) ゾノトライトを主要構成鉱物とする珪酸カルシウム成
形体は、ゾノトライトの最も大きな特長である耐熱性を
生かし、高温用の保温材、断熱材、耐火被覆材のような
主として建築用の用途に使用されている。
従来、この成形体を製造する方法としては主として次
の4通りが挙げられる。
1) 珪酸質原料、石灰質原料、水及び必要に応じて添
加される繊維質物質等の添加材からなるスラリーを型に
流し込み成形した後、オートクレーブ中でこれを水熱反
応させて成形体を得る方法。(特公昭61−25672号公報
に記載の比較例2参照) 2) 珪酸質原料、石灰質原料、水及び必要に応じて添
加される繊維質物質等の添加材からなるスラリーを温水
中で予備反応させることによりゲルを生成させ、次いで
そのゲルを圧縮成形した後オートクレーブ中で水熱反応
させ成形体を得る方法。
3) 珪酸質原料、石灰質原料、水及び必要に応じて添
加される繊維質物質等の添加材からなるスラリーをオー
トクレーブ中で攪拌しながらゾノトライトを水熱合成
し、その後加圧成形し乾燥させて成形体を得る方法。
(特公昭45−25771号公報参照) 4) 珪酸質原料、石灰質原料及び必要に応じて添加さ
れる繊維質物質等の添加材からなる混合粉末を、これに
水を加えることなく型枠内へ充填し、加圧することなし
に成形したものをオートクレーブ中で水熱反応させて成
形体を得る方法。(特公昭61−25672号公報参照) またこれら従来のゾノトライト成形体の製造法におい
ては原料中のAl分の含有量が可及的に低いことが必要で
あるとされており、そのためポルトランドセメントは使
用されていなかった。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら前記した製造法において、1)及び2)
に示した製造方法では嵩比重が高い成形体のみしか得ら
れず、また得られた成形体を高温に加熱した場合の収縮
率が従来の他の製造法により得られたゾノトライト系の
珪酸カルシウム成形体よりも大きくなり、この成形体の
大きな特長である耐熱性が低下するので好ましくない。
またこの成形体は強度が低いため何等かの補強を施さな
いと壁材や床材のような用途の建材には使用することが
できず、強度を上げるためには多量の繊維質物質を混入
させなければならないので価格の点や耐火性の点で問題
があり、また鉄筋等による補強を行なうときは成形体の
総重量がますます重くなってしまうので好ましくない。
また3)に示した製造法では、水熱反応によって生成
したゾノトライト結晶の集合体が嵩高なものであるた
め、嵩比重0.2程度の成形体しか得られず、繊維質物質
や鉄筋で補強をしたとしても壁材や床材として使用する
には強度が足りず不向きであった。さらにまた4)に示
した製造法では、ゾノトライトの生成率を高めるために
長時間の養生を行なう必要があり、エネルギーコストの
点からみて有利な製造法であるとはいえず、また原料を
それほど緻密に成形することができないため十分な強度
を得ることは困難であり、先に述べたように繊維質物質
や鉄筋を用いて補強をすれば総重量が重くなるばかりで
なく、建築構造物に使用する場合においては鉄筋の使用
量が増加することになるのでコスト的に不利でありまた
施工性にも難点がある。
本発明は前記したような従来技術における問題点を解
消し、建築用壁材や床材等に必要とされる強度を有し、
且つ耐熱性の優れたゾノトライト系軽量珪酸カルシウム
成形体を経済的に有利に得ることを目的とするものであ
る。
(課題を解決するための手段) 本発明は、上記した目的を達成するために鋭意研究の
結果完成されたものであって、珪酸質原料粉末とポルト
ランドセメントを含んだ石灰質原料粉末と石膏とをCa/S
iO2モル比が0.7〜1.1で、且つ全原料中に含有されるAl2
O3とSiO2とから求めたAl/Si+Alの原子比が7%以下と
なるような割合で配合し、石膏が全固体量の2〜30重量
%となるようにして混合した混合物に金属アルミニウム
粉末と水を加えてスラリー化した状態で型枠に鋳込み、
これを発泡状態で硬化させた後、得られた成形体をゾノ
トライト生成率が全体量の35重量%以上となるように高
温高圧で水蒸気養生を施すことを特徴とするゾノトライ
ト系軽量珪酸カルシウム水和物成形体の製造法である。
本発明によって得られるゾノトライト系珪酸カルシウ
ム成形体は、嵩比重が0.3〜0.8の範囲にあり軽量である
にも拘らず、圧縮強度が30kgf/cm2以上もあって強靱で
あり、その上耐火度において少なくとも750℃の表面加
熱温度に耐え得るので、建材等への利用に好適であるの
で上記した目的を十分に達成し得るばかりでなく、原料
として高純度の珪酸カルシウム原料のみを使用すること
なく、不純物としてAl等を含有する安価なポルトランド
セメントを原料の一部として使用することが可能であ
り、これによって単に経済的に有利となるだけでなく、
スラリーの粘度を高めて生ケーキの強度を高くすること
ができ、且つ発泡時間の調節を容易にすることができる
などの好ましい効果を有する。
(作用) 本発明のゾノトライト系珪酸カルシウム水和物成形体
の製造は上記の如くして行なわれるが、本発明におい
て、珪酸カルシウム原料スラリーを蒸気処理することに
よって得られるゾノトライト系珪酸カルシウムは該原料
スラリーより作られた成形体を構成する珪酸質原料と石
灰質原料とをオートクレーブ中で水熱反応させることに
よって生成するものであって、ゾノトライト結晶、トバ
モライト結晶及びCSHゲルと呼ばれる非晶質物質から構
成されている。従って成形体の物性値は、このゾノトラ
イト結晶、トバモライト結晶及びCSHゲルの存在割合に
よって異なってくる。特に耐火性が要求される場合には
成形体中に占めるゾノトライト結晶の存在比率が35重量
%以上で可及的に高いことが肝要である。
珪酸質原料と石灰質原料との混合物において、混合物
中に含まれるCaOとSiO2のモル比をCa/SiO2=0.7〜1.1の
範囲に定めたのは、モル比0.7以下では、高温度で長時
間蒸気養生を行なってもゾノトライト生成率が全体量の
35%以上に達しないし、一方モル比が1.1以上であって
も目標とする生産率でゾノトライト結晶を得ることがで
きないからである。
また珪酸質原料と石灰質原料との混合物中に存在する
Al2O3及びSiO2から求めたAl/Si+Alの原子比を7%以下
になるように定めたのはこの値を超えるようにポルトラ
ンドセメントを多用すると、蒸気養生条件をよくしても
ゾノトライトの生成率を35%以上にすることが出来ない
からである。
石膏を全固体量の30%重量迄の量を添加するのは石膏
を添加しない場合に比べて圧縮強度等の物性値が向上す
るからであるが、その添加量が30重量%より多くなると
生ケーキの成形性が低下する。また2重量%以下では十
分な添加効果が認められない。
成形体を軽量化するためには、通常一般的にトバモラ
イト系軽量コンクリートの製造などで行なわれているよ
うに原料混合物スラリーを型枠に鋳込むに際してスラリ
ー中にアルミニウム粉末の適当量を発泡剤として加え鋳
込み後にこれを発泡させることによって軽量化を達成す
ることができ、この際におけるアルミニウム粉末の添加
量を適宜調整することによって得られる成形体を嵩比重
を0.3〜0.8の軽量な範囲に収めることができる。
また本発明の成形体を建築物の壁材や床材など特別に
強度を必要とする箇所に適用する場合には成形体の製造
に際してその内部に補強鉄筋を配置するようにすればよ
い。
本発明における水蒸気養生に際しては190〜240℃程度
の温度範囲での養生が必要であり、この温度範囲内では
温度が低い程長時間の養生が必要であり、温度が高い程
養生時間が短くてすむが、190℃以下の温度での養生は
養生時間が長すぎて生産性の点で問題を生じ、240℃以
上の温度での養生ではオートクレーブ内の圧力が高くな
り過ぎて設備的費用の点で問題を生ずるほか、養生時間
も最早それ以上短縮する必要性もなくなるので意味がな
い。
ゾノトライトの生成率は珪酸カルシウム生成用原料混
合物全量の35%以上となるように養生温度と養生時間の
組み合わせを選択して水蒸気養生をすることが必要であ
って、それ以下の生成率であるときは、ゾノトライトの
生成量よりもトバモライトやCSH生成依存量が多くなり
過ぎて目的とする750℃以上の高温における表面加熱処
理に耐え得るような耐火度を有する成形体製品を得るこ
とができない。
ゾノトライトの生成率は次のようにして測定すること
ができる。
即ち、ゾノトライトは750〜850℃の間で熱分解し次式
に示すように結晶水を失ってワラスナイトとなる。
6(CaO・SiO2)・H2O→6(CaO・SiO2)+H2O (1) 共存するトバモライト、CSHの結晶水、付着水は750℃
以下の温度で全部分解する。
従ってゾノトライトの脱水による減量が、試料全体を
ゾノトライトであると仮定した場合に比べてどれだけの
割合を占めるかを測定することによって、ゾノトライト
の存在割合を知ることができるのである。
測定試料には得られた成形体から約30mgを採取し、測
定機器には理学電機(株)製熱機械分析装置を使用し
た。測定条件としては、室温から1000℃までを20℃/分
の昇温速度で加熱昇温を行なった。
試料の最初の重量: M mg 1000℃までの減量:A mg 750〜800℃までの減量: (ゾノトライトの熱分解による減量) B mg 全量がゾノトライトであると仮定したときの結晶水放出
による理論重量減の比率: (1)式から また、成形体の圧縮強度の測定はJISA−5416によって
行なうことができる。
以下本発明の実施例について述べる。
(実施例) 本実施例において珪酸質原料及び石灰質原料には第1
表に示す如き化学組成を有するものを使用した。
また、石膏は純度98%のものを使用した。
第1表に示した各原料及び石膏を第2表に示す割合で
配合し、これに更にアルミニウム粉末を原料乾量に対し
て0.07重量%を配合して全配合原料中のCaO/SiO2モル比
及びAl/Si+Al原子比が所定値となるようにし、これら
の混合物に適当量の水を加えてスラリー化したものを大
きさ15cm角×40cm高さの鋳型に流し込んで発泡させた状
態で硬化し、得られた成形物をオートクレーブ中で第2
表に示す養生条件で水蒸気養生を行ない、得られた成形
体製品から試料を採取して、ゾノトライトの生成率及び
圧縮強度を測定した。
また比較のため石膏を添加しないものについても同様
の工程を経て水蒸気処理を施して得られた試料について
ゾノトライト生成率と圧縮強度の測定を行なった。
これらの結果を第2表に示す。なお、これらの試料に
ついて嵩比重の測定を行なったがいずれも0.5±0.05の
範囲内で軽量であった。
第2表に示す結果から明らかなように、本発明の方法
即ち、原料混合物中のCaO/SiO2モル比を1.1〜0.7の範囲
とし、また原料中のAl/Si+Al原子比を7%以下となる
ように各原料を配合し、更に全固体量の2〜30重量%の
範囲で石膏を添加したものについて得られた成形体(実
施番号12〜15)はゾノトライトの生成率が高く、かつ圧
縮強度も著しく高いのに対し、石膏を添加しない場合の
もの(実施番号1〜9)はゾノトライトの生成率は兎も
角として、圧縮強度が低く、また石膏を添加したもので
あっても石膏添加量が本発明で定めた範囲を逸脱したも
の(実施番号10)及び石膏添加量は適正であるがAl/Si
+Al原子比が本発明で定めた範囲を逸脱したもの(実施
番号11)においてはゾノトライト生成率、圧縮強度の何
れも低く、建材等に使用するのに不適切であることが判
かる。
(発明の効果) 以上述べたように本発明のゾノトライト系軽量珪酸カ
ルシウム水和物成形体の製造法によるときは得られた成
形体におけるゾノトライトの生成率が高く、優れた耐火
性を有するばかりでなく、圧縮強度が高く、且つその嵩
比重も0.3〜0.8の範囲にあって極めて軽量であるので、
建築用材料、ことに床材料又は壁材料の如く強度を必要
とする箇所に用いられる建築用材料として好適である上
に原料としてポルトランドセメントを使用した結果、製
造過程における原料スラリーの粘度を高め得る結果、水
蒸気養生前の半硬化中間製品の強度が向上し水蒸気処理
に当たっての取扱いが容易となり、製品の収率が向上す
るなど経済性の利点もある。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】珪酸質原料粉末とポルトランドセメントを
    含んだ石灰質原料粉末と石膏とを主原料とし、これらの
    原料を原料中のCaO/SiO2のモル比が0.7〜1.1であって、
    且つ全原料中に含まれるAl2O3とSiO2とから求められたA
    l/Si+Alの原子比が7%以下となるように配合し、且つ
    石膏の添加量が全固体量の2〜30重量%となるようにし
    て混合した混合物に、金属アルミニウム粉末及び水を加
    えてスラリー状にして型枠に鋳込み、これを発泡効果さ
    せた後、得られた発泡成形体をゾノトライトの生成率が
    全体量の35重量%以上となるように190〜240℃の温度範
    囲で水蒸気養生処理を施すことを特徴とするゾノトライ
    ト系軽量珪酸カルシウム水和物成形体の製造方法。
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