JP2754826B2 - ロータリ圧縮機 - Google Patents

ロータリ圧縮機

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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は空気調和装置等に使用されるロータリ圧縮機
に関するものである。
従来の技術 近年、ロータリ圧縮機の高速化が進むにつれて、ロー
ラとブレードとの摺動によりローラ外周面の摩耗が増大
し、それにより性能が低下したり、ロックが発生しやす
くなるなどの傾向が従来に比べて強くなり、ローラ外周
面の摩耗の改善が強く望まれている。以下図面を参照し
ながら、従来のロータリ圧縮機の一例(特開昭62−4898
4号公報)について説明する。第3図、第4図はロータ
リ圧縮機の縦断面図と横断面図、第5図はローラの製造
方法を示す斜視図、第6図はローラの断面図、第7図は
耐摩耗性を示すグラフである。第3図において、1はケ
ース本体である。このケース本体1の内部には電動機部
2と圧縮機部3とが設けられている。電動機部2はロー
ラ4と一体に回転するシャフト5には偏心部6が設けら
れ、この偏心部6は上記圧縮機部3のシリンダ7内にお
いて偏心回転運動するようになっている。そして、上記
偏心部6には第4図に示すようにローラ8が嵌合され、
このローラ8にはブレード9が摺接している。ローラ8
はアルミニウム材料によって形成され、その表面、すな
わち外周部、上面部及び下面部にはセラミックコーティ
ング膜10が施されている。このセラミックコーティング
膜10は、具体的にはアモルファスシリコン膜で、炭素お
よび窒素のうち少なくとも一方の原子を含む膜であり、
耐摩耗性に優れている。ローラ8の製造方法について説
明する。ます第8図に示すようにアルミニウム材料をパ
イプ状に連続押し出し成形によってローラ素材11を形成
する。つぎに、このローラ素材11を所定長に切断するこ
とによりローラ本体12を形成し、このローラ本体12に第
9図に示すように表面にセラミックコーティングを施
す。このコーティングに際し、アモルファスSi3N4、SiC
は、CVD法等で、低温下でしかも比較的高速で着膜でき
るために量産性に富んでいる。しかも、上述のように、
ローラ8の表面にセラミックコーティングを施すことに
より耐摩耗性を向上できる。すなわち、第10図に示すよ
うに、Si3N4同士の場合にはオイル無しの場合に焼付荷
重が極端に低くなるが、鋳鉄とSi3N4とを組合せするこ
とにより、オイル有・無に関係なく焼付荷重が高くな
る。これはセラミック材と金属の融点が極端に違うため
凝着は起さない。しかも、フレオン雰囲気中であるので
鉄系側には塩化鉄が形成され、それが摩擦の低減に効果
があるからである。
発明が解決しようとする課題 しかしながら上記のような構成では、下記の理由によ
り信頼性を確保できない。
(1)ローラ外周面の角と軸受けを有する端板とが接触
し、セラミックコーティング層が破壊され剥がれる。
(2)始動や除霜運転ではブレードのジャンピングが起
きピストンの外周面に衝撃荷重が加わり、セラミックコ
ーティング層が破壊され、剥がれる。
(3)アルミニウム系材料とセラミック材料の熱膨張係
数の差が大きく、熱疲労によりセラミックコーティング
層が剥がれる。
更に、セラミックコーティング層を作るため、コスト
高になるという問題点もある。特に、PVD法を用いる場
合は歩留まりが悪く、その傾向が強い。本発明は上記問
題点に鑑み、高速運転におけるローラ外周面の摩耗を防
止できる信頼性の高いロータリ圧縮機を提供するもので
ある。
課題を解決するための手段 上記課題を解決するために本発明のロータリ圧縮機
は、軸のクランクに嵌合され、シリンダの内壁に沿って
偏心回転するピストンと、前記シリンダのベーン溝に収
納され、ピストンに常時当接し往復運動する仕切りベー
ンとを有し、前記ピストンをAl−Si粉末合金により形成
し、その外周面や内周面に再溶融処理を施してなるもの
である。
作用 本発明は上記構成によって、ピストン外周面のSi粒子
を微細化するとともに、発生する小空孔により油溜めを
形成することにより、ピストンの外周面の摩耗を防止す
るものである。
実施例 以下、本発明の一実施例のロータリ圧縮機について、
図面を参照しながら説明する。第1図は本発明の実施例
におけるロータリ圧縮機の横断面を示す図であり、第2
図はピストンの一部切欠斜視図であり、第3図はベーン
の斜視図である。第1図において、13はロータリ圧縮機
であり、密閉容器14の内部にシリンダ15が溶接固定され
ている。16はピストンであり、軸17のクランク18に嵌合
され、軸17の回転に従い、シリンダ15の内壁に沿い偏心
回転運動する。また、19は仕切りベーンでありシリンダ
15のベーン溝15aに収納され、ベーンバネ20及びシリン
ダ15の内外の差圧によってピストン16に常時押しつけら
れている。その仕切りベーン19によりシリンダ15内は吸
入室21と圧縮室22に分離されている。ピストン16は、第
2図に示すように、外周面16aにはレーザが千鳥状に照
射されて再溶融処理されている。23がスポットの再溶融
処理部である。また、内周面16bにも、軸17のクランク1
8と摺動する部分にのみ同様な処理が施されている。ま
た、ベーン19は、第3図に示すように、吸入室21側の側
壁19aと、圧縮室22側の側壁19bと、ピストン15と摺動す
る先端19cにレーザによる再溶融処理が施されている。
ここで、側壁19aにはベーン先端19cからストロークを超
える範囲が、側壁19bには後端からストロークを超える
範囲が、また、先端19cにはピストン16との摺動幅を超
える範囲が部分的に再溶融処理されている。ここで、再
溶融処理について説明する。一度成形されたピストン16
や仕切りベーン19の表面にレーザを照射し部分的に再溶
融する。その後、再溶融された部分は母材への放熱によ
り急冷され凝固する。その結果、Si粒子が微細化される
とともに、再溶融部に発生したガスにより気泡が出来
る。従って、仕上げ加工後の表面には、微細化されたSi
粒子と微少な空孔が散在している。以上の様に構成され
たロータリ圧縮機について、以下図面を用いて動作を説
明する。軸17の回転によりピストン16はシリンダ15の内
壁に沿って偏心回転し、それに伴い吸入室21においてガ
ス冷媒を吸入し、圧縮室22においてはガス冷媒の圧縮及
び吐出を行なう。ピストン16は軸17のクランク18に回転
自在に取り付けられているため自転しながら公転する
が、高速においては、ピストン16の外周面16aや内周面1
6bにおける摺動がきびしくなる。特に、ピストン16の外
周面16aにおいては、仕切りベーン19との摺動が境界潤
滑であるがため、摩耗が増大しがちである。また、ピス
トン16の内周面16bにおいては、高速においては油供給
量の不足や負荷の増大が起きクランク18との摺動も流体
潤滑から境界潤滑へ移行するため同様のことが言える。
しかし、ここで、ピストン16の表面には再溶融処理によ
り微細化されたSi粒子が千鳥状に分散して、常に仕切り
ベーン19の先端と接触しているため、下記の効果がえら
れる。
(1)Si粒子が微細化し母材が均一化されると、部分的
に硬度が高くなり、ピストン16の耐摩耗性が向上する。
(2)再溶融処理部23の微少な空孔には油が溜りやす
く、ピストン16の各摺動面に潤滑油が確保できる。
以上の2点によりピストン16の外周面16aの摩耗が防
止できるともに、ピストン16の内周面16bの摩耗も防止
でき信頼性の高い圧縮機を実現できる。また、Al−Siの
粉末合金をピストン材料に用いているため、モータにお
けるローラのバランスウェイトがより軽量になり、圧縮
機の最高回転速度を更に上げることができる。すなわ
ち、能力制御幅の大きい圧縮機を提供できる。一方、仕
切りベーン19の先端19cも、再溶融処理により耐摩耗性
の向上と潤滑油の確保を行なっているため、高速におけ
るピストン16の外周面16aの摩耗を防止でき、信頼性の
高い圧縮機を実現できる。また、仕切りベーン19の側壁
19a、19bの再溶融処理部では、微少な空孔の油溜の効果
により摩擦係数が小さくなる。その結果、仕切りベーン
19の運動によるエネルギーロスが減少し、高効率な圧縮
機を実現できる。更に、仕切りベーン19の材料としてAl
−Siの粉末合金を用いているため、軽量であり、ピスト
ンにたいする追随性がよく、より速い圧縮機の高速始動
ができる。その結果、温度の立ち上げ性能の高い空気調
和装置を提供できる。以上、レーザによる再溶融処理に
ついて述べたが、電子ビームやTIG等によっても可能で
あり同様の作用、効果が得られる。また、再溶融処理を
出来るだけ少なく効果的に行なうために部分的にスポッ
トでレーザを照射したが、摺動面全体を再溶融処理して
も同様の作用、効果が得られる。さらに、第4図と第5
図に同様の作用、効果が得られる他の再溶融処理例を示
す。
発明の効果 以上のように本発明は、軸のクランクに嵌合され、シ
リンダの内壁に沿って偏心回転するピストンと、前記シ
リンダのベーン溝に収納され、ピストンに常時当接し往
復運動する仕切りベーンとを有し、前記ピストンをAl−
Si粉末合金により形成し、その外周面や内周面に再溶融
処理を施してなるものであり、高速におけるピストンの
外周面の摩耗を防止できる信頼性の高いロータリ圧縮機
を実現出来るだけでなく、能力制御幅が大きく、効率の
高いロータリ圧縮機を提供出来る。更に、温度の立ち上
げ性能が高い空気調和装置も実現できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例におけるロータリ圧縮機の断
面図、第2図は同ピストンの一部切欠斜視図、第3図は
同仕切りベーンの斜視図、第4図(a)〜(e)はそれ
ぞれ本発明の他の実施例のピストンの斜視図、第5図
(a),(b)はそれぞれ本発明の他の実施例のベーン
の斜視図、第6図は従来からあるロータリ圧縮機の縦断
面図、第7図は従来のロータリ圧縮機の断面図、第8図
は従来のロータリ圧縮機のローラの製造方法を示す斜視
図、第9図は従来のロータリ圧縮機のローラ縦断面図、
第10図は従来のロータリ圧縮機のローラ材料の耐摩耗性
を示すグラフである。 13……ロータリ圧縮機、15……シリンダ、15a……ベー
ン溝、16……ピストン、16a……外周面、16b……内周
面、17……軸、18……クランク、19……仕切りベーン、
23……再溶融処理部。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】軸のクランクに嵌合され、シリンダの内壁
    に沿って偏心回転するピストンと、前記シリンダのベー
    ン溝に収納され、ピストンに常時当接し往復運動する仕
    切りベーンとを有し、前記ピストンをAl−Si粉末合金に
    より形成し、前記ピストンの外周面や内周面に再溶融処
    理を施してなるロータリ圧縮機。
  2. 【請求項2】軸のクランクに嵌合され、シリンダの内壁
    に沿って偏心回転するピストンと、前記シリンダのベー
    ン溝に収納され、ピストンに常時当接し往復運動する仕
    切りベーンとを有し、前記仕切りベーンをAl−Si粉末合
    金により形成し、前記仕切りベーンのシリンダやピスト
    ンとの摺動面に部分的に再溶融処理を施してなるロータ
    リ圧縮機。
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