JP2751310B2 - プレス絞り成型装置 - Google Patents

プレス絞り成型装置

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JP2751310B2 JP1027603A JP2760389A JP2751310B2 JP 2751310 B2 JP2751310 B2 JP 2751310B2 JP 1027603 A JP1027603 A JP 1027603A JP 2760389 A JP2760389 A JP 2760389A JP 2751310 B2 JP2751310 B2 JP 2751310B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、例えば車両の車体用素材を絞り成形するた
めに用いられるプレス絞り成型装置に関する。
〔従来の技術〕
プレス絞り成形、特に深絞り成形において、成形性を
向上させるため、第2図(a)に示すように予め素材の
角部18を直線的に切り落としておく(耳切りと呼ばれ
る)ことが知られている。耳切りされた素材は、プレス
金型のダイス上に載置され、素材の外周縁部がダイスの
しわ押え面としわ押え部材のしわ押え面とにより押圧固
定された状態で、ポンチを押当てられ、絞り成形され
る。この絞り成形時、ポンチの下降に従って素材は絞り
プロファイルの内部へ向って流入し、この素材の流入量
を制御するため、しわ押え面には絞りプロファイルを囲
繞するビードが形成される。
従来、絞り成形工程において素材角部に割れ、あるい
は局所伸びが発生する可能性が高い場合、工程整備者が
経験に基づき試行錯誤により耳切り形状を変え、素材の
割れ等を防止している。またビードは、例えば第2図
(b)に一点鎖線Bで示すように、絞りプロファイルP
から外周側に一定距離Dだけ離れた部位に形成された
り、あるいは製品の形状に従い設計者の経験に基いて定
められている。そして、このようにしてビードを形成さ
れたプレス絞り金型により試し打ちを行なって、ビード
位置不良による素材のシワあるいはワレを検出し、これ
に基いてビード位置を変更、追加あるいは削除してい
る。
〔発明が解決しようとする課題〕
このように従来、素材の角部は試行錯誤で切断されて
いたため、作業能率が悪く、また直線状に切断するよう
になっていたため、必ずしも成形上最適な切断形状には
ならない、という問題があった。
またビード位置は何回か修正を繰り返した後最適なも
のに定められており、この修正はプレス絞り金型の設計
製作に多くの工数を要するという問題を生じていた。こ
の問題は、従来、絞り成形時における素材の流入方向を
正確に予測しないでビード位置を定めることにより生じ
ると考えられる。これを第3図を参照して説明すると、
素材の流入方向Wは絞りプロファイルPとしわ押え面の
形とによって、また流入抵抗発生方向RはビードBの位
置によって、それぞれ定まるが、ビードBの位置が不適
当であると、素材の流入方向Wと流入抵抗方向Rが一致
せず、このため素材のビードBより内側の部分Sに無理
な力が作用してシワあるいはワレを発生させる。
本発明は、試行錯誤に頼ることなく、短時間で最適な
素材の耳切りを行い、また最適なビード位置を確実に定
めることができるプレス成形装置を提供し、プレス絞り
成形工程に要する時間を大幅に短縮することを目的とす
る。
〔課題を解決するための手段〕
第1の発明に係るプレス成型装置は、素材の角部を予
め切断し、素材の外周部を押圧固定した状態で素材にポ
ンチを押当てて絞り成形するプレス絞り成型装置におい
て、上記素材の角部をすべり線場法により求められた最
小主応力線に沿って切断する手段を備えたことを特徴と
している。
また第2の発明に係るプレス成型装置は、しわ押え面
に絞りプロファイルを囲繞するビードが形成され、しわ
押え面により素材の外周部を押圧固定した状態で素材に
ポンチを押当てて絞り成形するプレス絞り成型装置にお
いて、上記ビードが、すべり線場法により求められた最
小主応力線に沿って形成されることを特徴としている。
〔作 用〕
第1の発明によれば、素材角部の最適な切断形状が容
易に定まり、絞り成形時における素材角部の割れ等が確
実に防止される。また第2の発明によれば、最適なビー
ド位置が定まり、絞り成形時における素材外周部の割れ
等の発生が防止される。
〔実施例〕
以下図示実施例により本発明を説明する。
第1図は本発明の一実施例に係るプレス絞り金型を示
す。ダイス11は、絞り成形される製品の形状に対応した
凹部12を有し、この凹部12の周囲に下側しわ押え面13を
有する。しわ押え部材14は、ダイス11の上方に昇降自在
に設けられ、その下面は、上側しわ押え面15であり、下
側しわ押え面13と協働して素材(図示せず)の外周部を
挾持する。ポンチ16はダイス11の上方に昇降自在に設け
られ、しわ押え部材14の中央に形成された開口17を通過
し、ダイス11の凹部材12内へ没入可能である。
プレス絞り成形において、まず素材の角部が切落とさ
れる。この角部を切断された素材がダイス11上に載置さ
れ、次いでしわ押え部材14が下降し、ダイス11と共に素
材を押圧固定する。そしてポンチ16が素材を押圧しつつ
凹部12内へ入込み、これにより素材は凹部12の形状に沿
って絞り成形される。次に、ポンチ16としわ押え部材14
が上昇し、成形品が凹部12より除去される。
下側しわ押え面13と上側しわ押え面15には、絞り成形
時における素材の凹部12内へのすべり込みを制御するた
め、ビードBが形成される。ビードBは、凹部12の上縁
部すなわち絞りプロファイルPを囲繞し、例えば、上側
しわ押え面15上のビードは隆起状を呈し、また下側しわ
押え面13上のビードは溝状を呈しており、これらはしわ
押え面13,15が近接した時相互に対向する。
素材角部の切断形状およびビードBは、本発明におい
て、後に詳述するようにすべり線場法により求められた
最小主応力線に沿って定められる。
第4図〜第6図は、ダイス11の断面形状すなわち凹部
12の断面形状を示す。第4図は、凹部12の側壁12aが底
面12bに対して垂直な面のみから成る例を示し、この形
状をここでは単層と呼ぶ。第5図は、凹部12の側壁12a
の途中に水平な段部12cが形成される例を示し、この形
状を複層と呼ぶ。第6図は、凹部12の側壁12aが湾曲し
て底面12bに滑らかに接続する形状を示し、この形状も
複層と呼ぶ。
本実施例において、素材角部の切断形状およびビード
の位置はコンピュータを用いて定められ、次に述べるよ
うに、ダイス11の凹部12の形状が単層か、あるいは複層
かによって異なるルーチンが実行される。しかし、これ
はあくまでも例示であって、1つのルーチンにすること
もできる。
第7図に示す耳切りおよびビード位置決定ルーチン
は、ダイス11の凹部12が単層の場合、および複層であっ
ても多段絞りを行なう場合、すなわち、段部12cと底面1
2bの数(第5図の場合、3)に対応した回数だけ絞り成
形を行なって各段毎に成形する場合、実行される。
ステップ100では、絞りプロファイルPの形状のデー
タが、所定のデータベースからコンピュータのメモリに
読込まれる。本実施例において絞りプロファイルPは、
第8図(a)に示すように略正方形を呈している。ステ
ップ101では、絞りプロファイルpの形状が認識され、
グラフィックディスプレイ(図示せず)上に表示され
る。また、例えば、グラフィックディスプレイ上に表示
された絞りプロファイルPの内周部分を、ポンチ16(第
1図)により押圧される部分として指定することによ
り、絞りプロファイルPの外周部分がすべり線場を描く
側として決定される。
次いでステップ102では、絞りプロファイルPが曲辺
部Eすなわち曲線から成る部分と、直辺部Fすなわち直
線から成る部分とに分割される。これは、例えば、グラ
フィックディスプレイ上において直線と曲線の接続部分
Gをライトペン等を用いて指定することにより行なって
もよい。あるいは絞りプロファイルP上に微小なピッチ
でとった各点における曲率半径を求め、曲率半径が十分
に大きな値以上の部分を直辺部、それ以外の部分を曲辺
部としてもよい。
ステップ103では、曲辺部および直辺部におけるすべ
り線の密度、すなわちすべり線の間隔が求められる。こ
れは、例えばキーボードから求めるべきすべり線の本数
を入力することにより行なわれる。
ステップ104,105では、塑性力学のすべり線場法を用
いて、絞りプロファイルPの外周部分にすべり線場が構
築される。ここでは、曲辺部Eおよび直辺部Fから発生
するすべり線により形成されるものを第1次すべり線場
と呼び、第1次すべり線場の外側におけるすべり線によ
り形成されるものを第2次すべり線場と呼ぶ。
ステップ104では第1次すべり線場が構築される。ま
ず、第8図(b)に示すように、曲辺部Eと直辺部Fの
接続部分Gにおいて、曲辺部Eに対して曲辺部Eの曲率
中心を中心とする2本の対数らせん曲線(γ=ae±θ
C1,C2を描き、また直辺部Fに対して45゜の角をなすと
ともに点Hにおいて交叉する2本の線分S1,S2を描く。
そして、第8図(c)に示すように、曲線C1,C2と曲辺
部Eにより囲まれる領域を対数らせん曲線により分割
し、また線分S1,S2と直辺部Fにより囲まれる領域を線
分S1,S2に平行な線分により分割する。しかして第1次
すべり線場が構築される。
ステップ105では、ヘンキーの第1定理を用いて第2
次すべり線場が構築される。すなわち第2次すべり線場
は、曲辺部Eにおける第1次すべり線場と直辺部Fにお
ける第1次すべり線場との間を補間することにより求め
られる。
ヘンキーの第1定理は、例えば第9図に示すように、
点A0,B0,C0,D0における各すべり線に対する接線の傾斜
の関係を示すものである。すなわち、例えば左右方向に
延びる第1基準線iを選び、すべり線f1の点B0における
接線と、すべり線f3の点C0における接線と、すべり線f3
の点D0における接点と、直線A0B0とが第1基準線iに対
してなす角をそれぞれφB1,φC1,φD1,φA1とすると、 φB1−φC1=φA1−φD1 (1) が成立する。また第1基準線iに対して垂直方向に延び
る第2基準線jを選び、すべり線f2の点B0における接線
と、すべり線f2の点C0における接線と、すべり線f4の点
D0における接線と、直線A0D0とが第2基準線jに対して
なす角をそれぞれφB2,φC2,φD2,φA2とすると、 φD2−φC2=φA2−φB2 (2) が成立する。すべり線f1,f2,f3,f4は既に求まっている
ものであるから、角φB1,φC1,φD1,φB2,φC2,φD2
既知である。したがって、(1)式より直線A0B0のなす
角φA1が求められ、また(2)式より直線A0D0のなす角
φA2求められる。しかして点A0の位置が定められる。
以下同様にして、隣合うすべり線上の点をヘンキーの
第1定理を用いて補間し、これにより、第8図(d)に
示すようなすべり線場が構築される。
ステップ106では、ビードが通るべき基準点Qおよび
耳切りにおける切断線が通るべき基準点Q′の位置が読
込まれる。この基準点Q,Q′は、第8図(e)に示すよ
うに、例えば直辺部Fあるいは曲辺部Eの中央部から所
定距離だけ離れた部位に定められ、グラフィックディス
プレイ上においてライトペン等を用いて位置決めされ
る。耳切りの位置は、ビード位置よりも外側にあるた
め、基準点Q′は基準点Qよりも絞りプロファイルPか
ら離れた所に位置する。次いでステップ107では、この
基準点Q,Q′を通る最小主応力線が創成される。この最
小主応力線はすべり線場に対して45゜で交叉し、かつ絞
りプロファイルPには交わらない線であり、この絞りプ
ロファイルPを囲繞する閉曲線である。このようにして
得られた最小主応力線のうち基準点Qを通るものが求め
るべきビードBの位置、すなわち最適ビート位置に相当
する。また最小主応力線のうち基準点Q′を通るものが
耳切りにおける切断線Wの位置である。
ビートB(および切断線W)すなわち最小主応力線に
対して直行する線(図示せず)は、最大主応力線であ
り、絞り成形時における素材の流入方向に一致する。し
たがって、本実施例によれば、しわ押え面上の素材の流
入方向はビードBによる流入抵抗発生方向に一致するこ
ととなり、これにより素材にシワあるいはワレが発生す
ることが防止される。
第10図(a),(b)に示す耳切りおよびビード位置
決定ルーチンは、ダイス11の凹部12が複層(第5,6図参
照)であって、ポンチ16(第1図)の1往復動作により
プレス成形を行なう場合に実行される。
まずステップ201では、層数n、最小主応力線の数
m、ポンチのストロークピッチpが読込まれる。層数n
は、例えば第5図において段部12cと底部12bの数、すな
わち3である。また、最小主応力線の数mおよびストロ
ークピッチpは、後で最適ビード位置を定めるのに必要
でありこれらの決定にあたっては、底部12bまでの深さ
が決まっているので、最小主応力線の数mを決めれば、
ストロークピッチpが決まる。またストロークピッチp
を決めれば最小主応力線の数mが決まる。例えば、底部
12bまでの深さが90mmの場合、ストロークピッチpを10m
mとすれば最小主応力線の数mは10となりポンチが凹部1
2の底面12bに達した時におけるものから、ポンチが底面
12bから9mm上方に位置する時におけるものまで、計10本
求められる。
ステップ202では、ポンチの下死点前距離h、すなわ
ちポンチ先端の底面12bからの距離が0に定められる。
そしてステップ203では、層の番目の数を表わすパラメ
ータIが1に定められる。
まず204〜213により、第1層のみを絞り成形する場合
であってポンチが下死点に到達する時の最小主応力線
(すなわち最適ブランク形状)が求められる。ステップ
204では、第1層(第5図の場合、最も上の段部12c)の
絞りプロファイルの形状のデータが、所定のデータベー
スからコンピュータのメモリに読込まれる。ステップ20
5では、この絞りプロファイルの形状がコンピュータに
より認識されてグラフィックディスプレイ上に表示さ
れ、また第7図のステップ102と同様に、絞りプロファ
イルの外周部分がすべり線場を描く側として決定され
る。ステップ206では、ステップ103と同様にして絞りプ
ロファイルが曲辺部と直辺部とに分割される。ステップ
207では、ステップ104と同様にして、第1次すべり線場
が構築され、ステップ208では、ステップ105と同様にし
て、ヘンキーの第1定理により第2次すべり線場が構築
される。また、第2次すべり線場を何処まで構築する
か、その領域を決める。
次にステップ211では、確定すべり込み量が有るか否
かが判別される。確定すべり込み量とは、絞りプロファ
イルの幾何学的形状のみによって定まる素材のすべり込
み量である。絞りプロファイルが第1層の深さの2倍以
上の長さを有する直辺部を有する場合、確定すべり込み
量は存在し、その値は第1層の深さによって定まり、ス
テップ212において直辺部中央部からの距離として読込
まれる。これに対し、絞りプロファイルが十分な長さの
直辺部を有しない場合、確定すべり込み量はなく、ステ
ップ213〜216が実行されてすべり込み量が求められる。
ステップ213では、プレス機周期T(sec)すなわちポ
ンチの往復動の周期とプレス最大速度V0(mm/sec)すな
わちポンチの最大速度が読込まれる。ステップ214で
は、第1層におけるポンチの通過時間t1(sec)と、第
1層の成形における代表速度V1d(mm/sec)とが求めら
れる。ここで第n層におけるポンチ通過時間tn(sec)
は、 と表わされ、ただし(Ln−Ln-1)(mm)は第n層の深さ
を表わす。また第n層の成形における代表速度Vnd(mm/
sec)、すなわち第n層の絞りプロファイルにおける素
材の流入速度は、 と表され、ただしLn−Ln-1≧hである。
しかして所定の数値を各変数に代入することにより、
第1層におけるポンチ通過時間t1(sec)と代表速度V1d
(mm/sec)とが求められる。
ステップ215では、ガイリンガーの式を用いて絞りプ
ロファイルの外周側に速度場が構築される。すなわち、
第11図に示すように、ステップ208において求められた
すべり線場の各接点pにおける素材の流入速度Vpが求め
られる。
ガイリンガーの式を第12図を参照して説明する。点
B0,C0を通るすべり線をα線、点B0,A0を通るすべり線を
β線と呼ぶことにすると、α線とβ線は交点B0において
直交する。点B0におけるα線の接線方向の速度成分をV
αB、α線の法線方向すなわちβ線の接線方向の速度成
分をVβBとし、また点C0におけるα線の接線方向の速
度成分をVαC、α線の法線方向の速度成分をVβC
する。また、ここで図中左右方向に延びる基準線iを考
え、速度成分VαBおよび速度成分VαCの方向と基準
線のなす角をそれぞれφαB,φαCとすると、速度成
分VαBと速度成分VαCの各方向のなす角dφは、 dφ=φαB−φαC (5) である。点B0におけるα線方向の伸びひずみ速度がゼロ
であるという条件から、α線に沿って dVαC+VβCdφ=0 (6) となる。全く同様にして、β線に沿って dVβA+VαAφ=0 (7) が求められる。これらの(6),(7)式がガイリンガ
ーの式である。
さて、点B0における速度成分VαBは、 VαB=VαC+dVαC (8) であり、(5),(6),(8)式から、 VαB=VαC−VβC(φαB−φαC) (9) が得られる。また、同様にして、点B0における速度成分
βBは、 VβB=VβA+dVβA (10) であり、(5),(7),(10)式から、 VβB=VβA+VαA(φβB−φβA) (11) が得られる。(9),(11)式に表わされた速度成分を
合成すれば、点B0における速度VBが求められる。すなわ
ち、α線およびβ線に沿う単位ベクトルをそれぞれ
αβとおくと、 VB=VαB×α+VβB×β (12) であり、(12)式に(9),(11)式を代入すればよ
い。そして、この計算を絞りプロファイルに近い節点か
ら外側に向かって順次繰返す。
しかして各節点pにおける素材の流入速度VPが求めら
れると、次にステップ216においてすべり込み量が求め
られる。各節点間における素材の通過時間t1となり、ここでliは、その節点と、1つの内側の節点と
の間の距離である。第n層におけるポンチの通過時間を
tnとすると、 を満足する自然数Kが求められる。したがってすべり込
み量lは、第19図に示すように、絞りプロファイルPに
対して直交する最大主応力線に沿って並ぶ節点間の距離
ljをK個だけ加算すればよく、 により表わされる。
このようにして、ステップ212により確定すべり込み
量が求められ、あるいはステップ216によりすべり込み
量が求められると、次にステップ217により最小主応力
線が創成される。この場合、最小主応力線は、第1層の
絞りプロファイルからすべり込み量の大きさだけ外側に
位置する閉曲線であり、また確定すべり込み量がある場
合、絞りプロファイルから確定すべり込み量の大きさだ
け外側に位置する点を通り、すべり線場に45゜の角度で
交叉する閉曲線である。しかしてこの最小主応力線は、
第1層のみを絞り成形する場合における最適ブランク形
状である。
次に、ステップ221以下が実行され、第1層とともに
第2層を絞り成形した場合の最小主応力線すなわち最適
ブランク形状が求められる。
ステップ221では、第(I+1)層の絞りプロファイ
ルの形状のデータが所定のデータベースからコンピュー
タのメモリに読込まれる。初めてこのステップ221が実
行される時、I=1であるので、第2層(第5図の場
合、上から2番目の段部12c)の絞りプロファイルの形
状のデータが読込まれる。
次いでこの第2層の絞りプロファイルの形状データを
用いて、ステップ222,223,224,225が実行されてすべり
線場が構築される。ステップ222,223,224,225は、それ
ぞれステップ205,206,207,208と同じ処理を行なうもの
であり、その説明を省略する。
ステップ231では、ステップ213と同様に、プレス機周
期T(sec)とプレス最大速度V0(mm/sec)が読込ま
れ、ステップ232では、ステップ214と同様に、第(I+
1)層におけるポンチの通過時間tnと、代表速度Vnd(m
m/sec)とが求められる。そしてステップ233では、ステ
ップ215と同様に、ガイリンガーの式を用いて速度場が
構築される。
ステップ234では、ステップ233において求められた速
度場に材料傾きを考慮した補正が加えられる。この材料
傾きは、第13図に示すように、ポンチ16が段部16a,16b
を有するために生じる。ステップ233までの実行により
求められた速度場は、水平面16c上のすべり線場に構築
されたものであり、ステップ234では、素材が段部16a,1
6bの部分で傾斜していることによる影響が補正される。
材料傾きの最大値θは、 であり、ただし、x0は段部16aの幅、y0は段部16a,16b間
の深さ方向の距離である。ポンチ16が下死点前hにある
時、材料傾きθは、 で表わされる。さて、第14図に示すように、傾斜してい
る素材の点pにおける速度の大きさ OP=OPcosθ(θは(16),(17)式より求められ
る)を満足する点p′における速度′に等しいと定
められる。速度場は水平面16c上に構築されているの
で、この傾斜としている素材を水平面16cに一致させる
と、点pは点p″に対応する。しかして点p′における
速度′が点p″における速度として読込まれ、
これにより第15図に示すように新たな速度場が構築され
る。
ステップ235では第I層と第(I+1)層のすべり込
み量の合成が行なわれ、第(I+1)層を絞り成形する
場合の最適ブランク形状が定められる。初めてステップ
235が実行される時、I=1であるから、ステップ204〜
217において求められた第1層のみを絞り成形する場合
の最適ブランク形状を用いて、第2層も併せて絞り成形
する場合の最適ブランク形状が求められる。
第16図に示すように、第1層〜第I層を絞り成形する
場合の最適ブランク形状をBI、第1層〜第(I+1)層
を絞り成形する場合の最適ブランク形状をBI+1とする。
まずステップ234において求められた第(I+1)層の
すべり線場における速度場から、第(I+1)層の絞り
プロファイルPI+1上の点aにおける速度i+1dと、点a
を通る最大主応力線M(第11頁第2行参照)に沿う速度
場を求める(第19図参照)。ここでは段絞り最適ブラン
ク形状を求める考え方を利用し、第(I+1)層の絞り
成形の後に第I層の絞り成形を行なう場合を考えると、
第(I+1)層の絞り成形後におけるしわ押え面の素材
形状が第I層の絞り成形時における最適ブランク形状に
なっていればよい。したがって第19図に示すように最適
ブランク形状BI+1上の点cと最適ブランク形状BIとの距
離lは、ステップ216(第16頁第18行〜第17頁第13行)
と同様の方法で、すなわち、絞りプロファイルの代わり
に最適ブランク形状BIを扱った場合として求められる。
そしてこのlなる距離を最適ブランク形状BIに沿って
順次求め、その外周側に加えれば、最適ブランク形状B
I+1が求められる。しかしてこの最適ブランク形状BI+1
は、第1層〜第I層を絞り成形する時の最適ブランク形
状に、第(I+1)層を絞り成形する時における絞りプ
ロファイルPI+1上のすべり込み量を合成して求められた
ものである。
ステップ236では、パラメータIが(n−1)以上か
否かが判別される。すなわち、例えば第5図において全
ての段部12cおよび底面12bを形成する場合のすべり込み
量の合成が行なわれたか否かが判別される。まだパラメ
ータIが(n−1)以上になっていない場合、ステップ
237においてパラメータIに1を加算した後、ステップ2
21〜235が実行され、次の層(段部)の絞り成形による
すべり込み量の合成が行なわれる。全ての層についてス
テップ235の実行が終了した時、その時求められた最適
ブランク形状が、全ての層を絞り成形するときにおける
1本の最適ブランク形状で、仮にこれを複層における1
本の最小主応力線と呼ぶ。
しかして全ての層を絞り成形する時の最小主応力線が
求められ、パラメータIが(n−1)以上になると、ス
テップ241において、ポンチ下死点前距離hが(m×
p)以上になったか否かが判別され、まだ(m×p)以
上になっていない場合、ステップ242において下死点前
距離hにピッチpが加算され、この新しい下死点前距離
についてステップ203〜241が実行される。例えば最小主
応力線の数mが10、ピッチpが10mmである場合、ポンチ
の下死点前距離hが0mmの場合から始まって、90mmま
で、計10本の最小主応力線(すなわち最適ブランク形
状)が求められる。
予定していた全ての最小主応力線が求められると、ス
テップ243において、第17図に示すようにビード位置お
よび耳切りの基準点Q,Q′の位置が読込まれる。この基
準点Q,Q′は、設計者により歩留のニーズに基づいて適
当に選定される。次いでステップ244では、基準点Q,Q′
を通る最小主応力線Bが創設される。これは、基準点Q,
Q′のそれぞれすぐ内側と外側を通る最適ブランク形状
と、基準点Q,Q′との間を比例配分し、2本の最適ブラ
ンク形状の間にその比例配分に基づいて曲線を描くこと
により求められる。このようにして求められた最小主応
力線がそれぞれ最適ビード位置最適耳切り位置である。
以上のように、ダイスの凹部12(第4〜6図)が単層
(第4図)の場合および複層(第5,6図)であっても多
段絞りを行なう場合、第7図のルーチンのように、すべ
り線場を構築した後、所定の点を通るように最小主応力
線を描き、これが最適ビード位置あるいは最適耳切り位
置となる。一方、ダイスの凹部12が複層(第5,6図)で
あって一段絞りを行なう場合、第10図のルーチンのよう
に、ポンチの各ストローク(下死点前距離)における最
適ブランク形状(最小主応力線と見なす)を求め、所定
の点を通る最小主応力線を描いてこれを最適ビード位置
あるいは最適耳切り位置とする。ダイスのプレス方向に
沿った断面形状が各層においてかなり大きい差を有する
場合、最適ビード位置および最適耳切り位置は第10図の
ルーチンにより求める必要があるが、その断面形状が各
層において大きい差を有しない場合、最適ビード位置お
よび最適耳切り位置は第7図のルーチンにより求められ
る。
第18図は、素材の流入方向の実験データと上記実施例
による最大主応力線とを比較したものである。実験はポ
ンチのストロークを20mmから70mmまで10mm毎に行なわれ
た。この図から理解されるように、実験により得られた
素材の流入線(図中、符号Uで示される)と最大主応力
線Mはよく一致している。最大主応力線Mは前述したよ
うに最小主応力線Zに直交する。したがって上記実施例
により求められた最小主応力線の1つを最適ビード位置
が素材にシワあるいはワレを発生させないために効果的
であることが理解される。
なお、第7図および第10図のフローチャートにおい
て、ステップ101〜105は、ステップ204〜208およびステ
ップ221〜225と同じものであり、これらは説明の簡単の
ために分けて書かれているだけであり、実際には1カ所
にまとめられる。
第20図(a)〜(d)は絞りプロファイルがほぼ正方
形の場合における素材形状の例を示し、第20図(a)は
上記実施例によりすべり線場法を用いて得た素材、第20
図(b)は円形の素材、第20図(c)は角部を直線的に
耳切りして得た素材、第20図(d)は角部を全く耳切り
しない素材を、それぞれ示す。第21図は第20図(a)〜
(d)の各素材を用いて行った絞り成形における最大成
形深さと、最大ポンチ荷重とを実験的に得た結果を示
す。
最大成形深さは、すべり線場法により得た素材(第20
図(a))による絞り成形によると、符号a1で示される
ように約75mmに達するが、円形の素材(第20図(b))
および角部を直線的に耳切りして得た素材(第20図
(c))では、符号b1およびc1で示されるように約70mm
であり、また角部を耳切りしない素材(第20図(d))
によると、符号d1で示されるように約50mmまでしか達し
ない。すなわち、上記実施例によれば最大成形深さは従
来よりも大きくなり、プレス絞り成形装置における深絞
り成形性能が向上することが理解される。一方最大ポン
チ荷重については、上記実施例による素材は他の例とほ
ぼ同じ大きさであった。
素材の角部を直線的に耳切りしていた従来技術におい
て、絞り成形時に素材の割れがどうしても防止できない
場合、素材の板厚を増加させたり、あるいは素材の材質
をより高級なものに変更することが行なわれてきた。し
かし本実施例によれば、最適な耳切り形状が得られるた
め、素材の割れがより確実に防止でき、板厚の増加ある
いは材質の変更の必要性が減少する。
〔発明の効果〕
以上のように本発明によれば、試行錯誤に頼ることな
く、短時間で最適な素材の耳切りを行い、また最適ビー
ド位置を確実に定めることができ、プレス絞り成形工程
に要する時間を大幅に短縮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例に係るプレス絞り金型を示す
斜視図、 第2図(a)は従来の耳切り形状を示す図、 第2図(b)は従来のビード位置を示す図、 第3図は従来のビード位置に基づくシワの発生位置を示
す図、 第4図は単層のダイスの一例を示す断面図、 第5図は複層のダイスの一例を示す断面図、 第6図は複層のダイスの他の例を示す断面図、 第7図はビード位置決定ルーチンの一例のフローチャー
ト、 第8図(a)は絞りプロファイルを示す図、 第8図(b)は絞りプロファイルの周囲に第1次すべり
線場を描き始めた状態を示す図、 第8図(c)は第1次すべり線場を示す図、 第8図(d)は第1次すべり線場の外側に第2次すべり
線場を描いた状態を示す図、 第8図(e)はすべり線場に最適ビード位置を描いた状
態を示す図、 第9図はヘンキーの第1定理における符号の説明図、 第10図(a),(b)はビード位置決定ルーチンの他の
例のフローチャート、 第11図はすべり線場の各節点における速度を示す図、 第12図はガイリンガーの式における符号の説明図、 第13図はポンチの断面図、 第14図は速度場に対する材料傾斜の影響の補正の説明
図、 第15図は材料傾斜の影響を補正した速度場を示す図、 第16図はすべり込み量の合成の説明図、 第17図はポンチの各ストロークにおける最小主応力線を
示す図、 第18図は素材の流入方向の実験データとすべり線場法に
よる最大主応力線とを比較した図、 第19図は各節点における素材の流入速度を示す図、 第20図は(c)〜(d)は素材形状の例を示す図、 第21図は第20図(a)〜(d)の素材を用いた絞り成形
における最大成形深さと最大ポンチ荷重を示すグラフで
ある。 13,15……しわ押え面、16……ポンチ、 B……ビード。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】素材の角部を予め切断し、該素材の外周部
    を押圧固定した状態で該素材にポンチを押当てて絞り成
    形するプレス絞り成型装置において、上記素材の角部を
    すべり線場法により求められた最小主応力線に沿って切
    断する手段を備えたことを特徴とするプレス絞り成型装
    置。
  2. 【請求項2】しわ押え面に絞りプロファイルを囲繞する
    ビードが形成され、該しわ押え面により素材の外周部を
    押圧固定した状態で該素材にポンチを押当てて絞り成形
    するプレス絞り成型装置において、上記ビードは、すべ
    り線場法により求められた最小主応力線に沿って形成さ
    れることを特徴とするプレス成型装置。
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