JP3848927B2 - 環状加工品の端面成形加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は環状の開口端部がフランジ状である加工品の端面成形およびその端面切断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、モータケース等の円筒部品は、プレス加工(絞り加工)によって平板材を円筒状に成形した後、その成形されたワークの開口周縁部に生じるフランジ部を端面成形する端面成形方法として、特開平8−168830号公報がある。
【0003】
この端面成形法は、円筒品を内周側壁部で支持する稼動可能なインローパンチと、このインローパンチの外周面に沿って加工品フランジ部の端面を形成する端面成形パンチを有する下金型と加工品の外側から絞り圧縮加工するダイとノックアウトを有する上金型とからなる金型を使用する。
【0004】
まず、加工品は内周側壁部と内側底面を下型のインローパンチで保持する。つぎに加工品の外周面に沿って上型のダイが下降し、加工品底面に上型にあるノックアウト下面が加工品の外側底面あたり、加工品と伴にインローパンチを押し下げる。さらに上型が下降すると、加工品フランジ部は端面成形パンチに当接し、加工品内周面とフランジに形成されたアールを小さくする端面成形が行われる。
【0005】
また、別の端面加工方法として、シミートリミング方法がある。材料の板厚が薄く、径の大きいものに対しては、フランジ部を鉛直方向直角に切断するが、小径で板厚が厚いものに対しては、金型剛性が低くなり、寸法精度が悪化するとともに、金型構造が複雑になるため、金型が高価になってしまう。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−168830号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の端面成形方法は、特に、材料の厚板1mm以上のものにおいて、加工品内周面とフランジに形成されたアールを最小限にしなければならない場合には、端面成形パンチの形状が加工品側壁面に対して鉛直方向なので、他の絞り工程の成形荷重に比べ端面成形荷重を極めて高くしなければならない。さらに、端面成形荷重が高いため、他の金型に比べ金型寿命が短く、高価になる。
【0008】
絞り加工などの場合、トランスファー方式,順送方式など1つのプレスの中に複数の工程で加工を行うことが多く、1つの工程が他の工程に比べて極めて高い成形荷重であるとプレスに偏荷重を与えてしまい寸法精度を悪化させるため、成形荷重の高い工程をプレスの中心付近に置かなけばならない。
【0009】
そのため、絞り工程を含む、複数の加工工程がある場合は工程数や工程の配置が制限され、また、この端面成形の工程だけ別のプレスで行う場合、コストアップや設備投資が必要になる。
【0010】
また、シミートリミング法は材料の板厚が薄く、径の大きいものに対しては、フランジ部を鉛直方向直角に切断できるが、小径で板厚が厚いものに対しては、金型剛性が低くなり、寸法精度が悪化し、後加工が必要となる。径が大きく、材料の板厚が厚いものは、金型の剛性が必要で、構造も複雑であるため、大型化し、金型が高価になってしまう。
【0011】
本発明は以上の点を鑑みてなされたもので、その目的とするところは、特に、厚板1mm以上で小径のものに対して、加工品の加工品内周面からフランジにつながるアールを最小限に成形する際、成形加重を他の工程と同様にし、工程数や工程の配置に制限されることなく、他のプレス工程と連続して加工を行い、精度が良く、後加工の必要ない端面加工をすることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明では、端面成形工程を2回以上に分けて行うものであり、第1工程で加工品フランジ部内周側にくさびを成形し、第2工程において、成形パンチ直角面がくさびを局部的に成形し、内周側壁部とフランジ部に形成されたアール部にくさび部分の材料を流動させて成形することにある。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、端面成形工程を2回以上に分けて行うものであり、具体的には、第1工程は加工品が途中までインローパンチに内周側壁部をガイドされ、このインローパンチの外周面に沿って稼動する第1工程端面成形パンチにより加工品フランジ部を保持する。このときの端面成形パンチはある角度θ1をもたしている。好ましくは、角度θ1は加工品に対し鉛直方向外側に、底面に向かって45°以上90°未満とする。次に、加工品の外側をガイドするダイとノックアウトを有する上金型が下降し、上型にあるノックアウト下面が加工品の外側底面あたり、加工品とともに端面成形パンチを押し下げる。さらに上型が下降すると、端面成形パンチはストッパに当り、停止する。さらに上型が下降すると加工品の内周側壁部とフランジ部に形成されたアール部は端面成形パンチにより成形が行われ、加工品フランジ部内周側にくさび形状が形成され、第1工程が終了する。つぎに第2工程は、第2工程端面成形パンチが加工品鉛直方向に対し直角となっている他は、第1工程と同様の金型構造である。同様にして、加工品はインローパンチによるガイド,端面成形パンチによる保持の状態で、上型が下降し、上型にあるノックアウト下面が加工品の外側底面あたり、加工品とともに端面成形パンチを押し下げる。さらに上型が下降すると、第2工程端面成形パンチはストッパに当り、停止する。第1工程の成形面に対し、第2工程成形パンチが成形を行い、加工が完了する。このとき、第1工程での成形面であるフランジ部内周側のくさび形状が第2工程端面成形パンチの直角面により成形されることにより、内周側壁部とフランジ部に形成されたアール部に、くさび部分の材料が流動し、アールが小さくなる。よって、内周面のアールはR0.1〜R0.3まで可能となる。
【0014】
つぎに必要な場合、第3工程として、フランジ部の切断工程を行う、第2工程の成形面を利用し、切断を行い、工程完了となる。
【0015】
以上のように、始め、第1工程で加工品フランジ部内周側にくさびを成形し、第2工程において、成形パンチ直角面がくさびを局部的に成形し、内周側壁部とフランジ部に形成されたアール部に、くさび部分の材料を流動させるため、低い荷重で成形が可能であり、また、アールを最小にできる。
【0016】
そのため、おもに厚板1mm以上の加工品に対して、非常に効果がある。また、製品の寸法に対しては許容範囲が大きく、小径から大径まで可能である。
【0017】
そして、端面成形面の寸法は、金型精度で決まるため、非常に良い精度である。表面状態ついては成形面であるため、後加工の必要はない。
【0018】
以下に本発明の詳細を説明する。図1は、本発明を適用したプレス加工品の例を示す。
【0019】
図1の(I),(II),(III),(IV)を用いて説明する。
【0020】
図1の(I)に示すプレス加工品1は、図示されていない絞り工程完了品であり、本発明の適用前の状態である。内周側壁部1aとフランジ部1cに形成されたアール1bはフランジ部1cを残した前記絞り加工においては必ず付いてしまう。
【0021】
図1の(II)に示すプレス加工品である第1端面成形完了品1eは、第1端面成形を行ったものである。くさび8は本発明の第一端面成形により、θ1の角度を有している。
【0022】
図1の(III)に示すプレス加工品である端面成形完了品1pは本発明を適用した1例目である。前記アール1bは本発明の端面成形により、端面成形面1dとなっている。本発明の成形適用後、アール1bはR0.1〜R0.3まで小さく加工が可能である。
【0023】
図1の(IV)に示すプレス加工品である切断工程完了品1fは、本発明を適用した2例目である。
【0024】
プレス加工品である切断工程完了品1fは、前記プレス加工品である端面成形完了品1pの端面成形面1dを基準にして、フランジ部1cをトリミングした形状である。このように、端面成形された精度の良い面である端面成形面1dを残すため、端面の後加工をすることなく、製品として利用可能である。
【0025】
図2に本発明の第1工程の加工手順を示す。
【0026】
図2の(I),(II),(III),(IV),(V)を用いて説明する。
【0027】
図2の(I)に示すように、プレス加工品1は固定されたインローパンチ2に途中まで内周側壁部1aでガイドされ、このインローパンチ2の外周面2aに沿って稼動する第1工程端面成形パンチ3により加工品フランジ部1cが保持されている。
【0028】
このときの第1工程端面成形パンチ3はある角度θ1を保っている。角度θ1はプレス加工品底面1gに向かって、鉛直方向と外周側をはさむように、45°以上90°未満である。
【0029】
次に、図2の(II)に示すように、プレス加工品1の外側をガイドするダイ4とノックアウト5を有する上金型6が下降し、上型にあるノックアウト下面5aがプレス加工品の底面1gあたり、プレス加工品1とともに第1工程端面成形パンチ3を押し下げる。
【0030】
図2の(III)に示すように、さらに上金型6が下降すると、第1工程端面成形パンチ3はストッパ7に当り、停止する。さらに上金型6が下降すると加工品フランジ部1cは第1工程端面成形パンチ3により成形が行われ、加工品フランジ部1cの内周側にくさび8が成形され、第1工程が終了する。
【0031】
図2の(IV)に示すものは、記載されていない絞り加工が完了したプレス加工品1であり、次工程は第1工程端面成形である。
【0032】
図2の(V)に示すものは、第1工程端面成形が完了したものであり、第1工程端面成形面のくさび8は角度θ1となる。
【0033】
図3に第2工程の成形状態図を示す。図3の(I),(II),(III),(IV),(V)を用いて説明する。
【0034】
第2工程は、第2工程端面成形パンチ9が第1工程端面成形パンチ3と異なる角度θ2となり、本発明実施例では、製品形状と同じプレス加工品である第1端面成形完了品1eの鉛直方向に対し直角となっている。この他の金型構造は第1工程と同様の金型構造である。同様にして、プレス加工品である第1端面成形完了品1eはインローパンチ2によるガイド,第2工程端面成形パンチ9による保持の状態で、上金型6が下降し、上型にあるノックアウト下面5aがプレス加工品である第1端面成形完了品1eの外側底面1gにあたり、プレス加工品である第1端面成形完了品1eとともに第2工程端面成形パンチ9を押し下げる。さらに上型が下降すると、第2工程端面成形パンチ9はストッパ7に当り、停止する。くさび8に対し、第2工程端面成形パンチ9が成形を行い、端面成形面1dとなり、加工が完了する。このとき、第1工程での成形形状のくさび8が第2工程端面成形パンチ9のパンチ成形面9aにより成形される。このとき、成形部部分拡大図(II),(III),(IV),(V)に加工の連続状態を示すとおり、フランジ部1cへとつながる内周面のアール1b側に、くさび8部分の材料が流動し、アール1bが小さくなる。よって、アール1bはR0.1〜R0.3まで可能となる。
【0035】
本実施例では、第2工程が端面成形の最終工程になっているが、場合によっては、くさび8が適切な形状になるまで、工程を追加しても良い。
【0036】
図4は第1工程端面成形パンチ3と第2工程端面成形パンチ9を示す。図4の(I)の第1工程端面成形パンチ3はインローパンチ外周面2aをガイドとして、上下方向移動する。パンチ成形面3aは鉛直方向に対し90°ではなく、角度θ1を持っている。このパンチ成形面3aにより、プレス加工品である第1端面成形完了品1eのアール1bにくさび8を成形する。角度θ1は45°以上90°未満である。次工程の際、θ1は45°より小さくなるにつれ、くさび8部分が外周方向に変形するため、フランジ部1cへとつながるアール1b側に、くさび8部分の材料流動量が減少し、アール1bを小さくする効果が少なくなる。
【0037】
また、角度θ1が90°に近づくにつれて、成形量が増加し、第1工程の成形荷重が増加し、本発明の効果がなくなる。
【0038】
図4の(II)の第2工程端面成形パンチ9は、前記第1工程端面成形パンチ3の角度θ1とは異なる角度θ2の成形面9aである。前記成形面9aの角度θ2は端面成形面1dのプレス加工品角度にあわせる。このように、本発明は角度
θ2を任意設定が可能であり、プレス加工品角度変更に対して、第1工程端面成形パンチ3と第2工程端面成形パンチ9の角度の変更のみで対応可能である。本実施例では、端面成形面1dの角度が90°であるため、角度θ1は50°、角度θ2は90°で使用している。
【0039】
図5に切断工程を示す。切断工程について説明する。前記端面成形工程と同様に、プレス加工品である端面成形完了品1pは固定されたインローパンチ2に途中まで内周側壁部1aをガイドされ、このインローパンチ2の外周面2aに沿って稼動するダイス11により端面成形面1dを保持されている。
【0040】
切断パンチ10とノックアウト12を有する上金型13が下降し、上型にあるノックアウト下面12aがプレス加工品の底面1gにあたり、プレス加工品である端面成形完了品1pとともにダイス11を押し下げる。
【0041】
さらに上金型13が下降すると、ダイス11は下金型21にあたり、停止する。さらに上金型13が下降すると加工品フランジ部1cは切断パンチ10により切断が行われ、切断工程が終了する。この切断工程はフランジ部1cを使用しない製品の時のみ行う。
【0042】
このように、切断工程を追加し、アール1bがR0.1〜R0.3のフランジ無カップ状の製品を加工できる。
【0043】
図6の(I),(II),(III),(IV)を用いて、本発明の適用例を示す。図6の(I)は本発明を適用し、フランジ部1cを切断終了したのものである。
【0044】
図6の(II)は外側底面1gと外周側壁1kとつなぐアール1jに第1端面成形を行い、くさび1mを加工したものである。
【0045】
図6の(III)はくさび1mを第2端面成形し、端面1hとしたものである。第2端面成形パンチ角度θ2は90°である。
【0046】
図6の(IV)は内周側壁部1aにそって、プレス加工品底1nを切断加工したものである。このように、前記の端面成形工程と記載していない絞り加工を用いて平板から、厚板で端面精度が良いシームレス管を安価に製作が可能となる。
【0047】
図7に本発明の適用例を示す。プレス加工品である端面成形完了品1pはθ2が90°の第2端面成形を行い、端面成形面1dをOリング22の固定面に使用した例である。このように、アール1bが小さくできるため、後工程を必要としないで、Oリング固定面に使用できる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、加工品に端面成形工程を2回以上に分けて行い、精度の良い端面を得るとともに、特に厚板のものに対して、加工品の内周面からフランジにつながるアールを最小限にすることができる。この際、成形加重を他の工程と同様程度に低減し、工程数や工程の配置に制限されることなく、他のプレス工程と連続して加工を行うことができることにある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加工品の一実施例を示す断面図。
【図2】本発明の加工品製造工程の説明図と一実施例を示す断面図。
【図3】本発明の加工品の製造工程を説明する図と成形部の部分拡大図。
【図4】本発明の金型を説明する部分図。
【図5】本発明の加工品の製造工程を説明する図。
【図6】本発明の実施例の加工工程の説明図。
【図7】本発明の加工品の一実施例を示す断面図。
【符号の説明】
1…プレス加工品、1a…内周側壁部、1b,1j…アール、1c…フランジ部、1d…端面成形面、1e…第1端面成形完了品、1f…切断工程完了品、
1g…外側底面、1h…端面、1k…外周側壁、1m,8…くさび、1n…プレス加工品底、1p…端面成形完了品、2…インローパンチ、2a…インローパンチ外周面、3…第1工程端面成形パンチ、3a,9a…パンチ成形面、4…ダイ、5,12…ノックアウト、5a,12a…ノックアウト下面、6,13…上金型、7…ストッパ、9…第2工程端面成形パンチ、10…切断パンチ、11…ダイス、21…下金型、22…Oリング。
Claims (5)
- 環状に設けられた側壁部に対して開口端部が外周に広がるフランジを有する加工品の内径側壁部と前記フランジに形成されたアール部における前記フランジの内周側に、角度
θ1のくさび形状を有する金型により、くさび部分を加圧成形した後、成形された前記くさび部分に対して前記くさび角度θ1と異なる角度θ2の金型により加圧成形を行うことにより、前記アール部に、前記くさび部分の材料が流動するように前記アール部に加圧成形を少なくとも2工程以上を行うことを特徴とする環状加工品の端面成形方法。 - 請求項1において、
前記側壁部と前記フランジに形成されたアール部に、角度θ1のくさび形状を有する金型により加圧成形した後、他の工程において、前記側壁部の鉛直方向に対し、直角となる金型で加圧成形を行うことを特徴とする環状加工品の端面成形方法。 - 請求項1乃至2のいずれか1項において、
くさび形状の角度θ1が加工品に対し鉛直方向外側で底面に向かって45°以上90°未満であることを特徴とする環状加工品の端面成形方法。 - 請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記側壁部と前記フランジとのつなぎ部分の端面成形部からフランジを切断,除去を行う切断工程を有することを特徴とする端面成形方法。 - 請求項1乃至4のいずれか1項において、前記環状加工品の成形部の板厚が1mm以上であることを特徴とする端面成形方法。
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