JP2745821B2 - アンチスキッドブレーキシステムの作動確認装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、車両に搭載されてそ
の全制動時の車輪のロックを防止するアンチスキッドブ
レーキシステム（A.B.S)の作動を簡易に確認するための
装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】車両組立工場の検査ラインでの検査等、
車両のアンチスキッドブレーキシステムが正常に作動す
るか否かを簡易に確認する必要がある場合がある。かか
る場合の従来の作動確認方法としては例えば、図４に示
す高速型ブレーキテスタを使用するものがあり、この方
法では、電気モーター１で、図示しない被検査車両の車
輪を乗せたローラ２を駆動することにより、その車輪の
速度を車速約25km/h相当まで増速させて、被検査車両を
疑似走行状態とし、その状態で、被検査車両に搭乗した
検査員が全制動を掛け、車輪のロックを誘発させてアン
チスキッドブレーキシステムが作動するようにし、その
作動中に、図５に示す如く、電気モーター１の負荷から
求めた制動力Ｆの値が、所定上限値を越えるとともに所
定下限値以下となる振幅で所定時間Ｔ内に何回増減した
かを計数し、その回数ｎが所定判定値を越えていれば、
アンチスキッドブレーキシステムが正常に作動したと判
定する。

【０００３】また他の従来の方法としては例えば、被検
査車両を実際に走行させて摩擦係数の低い低μ路面内へ
所定車速で進入させ、その進入と同時に、被検査車両に
搭乗した検査員が全制動を掛けて、アンチスキッドブレ
ーキシステムが作動するようにし、その作動時に発生す
るブレーキペダルへのキックバックの程度、被検査車両
が直進状態を保つか否かおよびステアリング操作で進路
変更可能か否か等の車両挙動、そして被検査車両の停止
距離から、アンチスキッドブレーキシステムが正常か否
かを判定するものがある。

【０００４】さらに他の従来の方法としては例えば、図
６に示すように、スピードメーターの精度確認や走行時
の振動、騒音の確認等に用いるフリーローラーテスタ３
を用いるものがあり、この方法では、フリーローラーテ
スタ３上に乗せた被検査車両４の車輪の速度をその車両
４に搭乗した検査員がアクセルペダルの操作でその車両
４のエンジンにより車速約25km/h相当まで増速させて、
被検査車両４を疑似走行状態とし、その状態で、車両４
に搭乗した検査員が全制動を掛けて、アンチスキッドブ
レーキシステムが作動するようにし、その作動時に発生
するブレーキペダルへのキックバックの程度から感覚的
に、アンチスキッドブレーキシステムが正常か否かを判
定する。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最初に
記載した従来の方法では、大容量の電気モーターが必要
なため装置が高価であるという問題および、高速からの
急制動を行うためタイヤ表面に損傷が生ずる場合がある
という問題があった。そして、比較的安価な中速もしく
は低速型ブレーキテスタでは、アンチスキッドブレーキ
システムの作動下限車速相当まで車輪の速度を増速でき
ず、検査が実施できないという問題があった。また二番
目に記載した従来の方法では、広範囲な試験スペースが
必要となるという問題および、判定基準が検査員の感覚
であるため評価のばらつきが発生するという問題があっ
た。さらに三番目に記載した従来の方法でも、判定基準
が検査員の感覚であるため評価のばらつきが発生すると
いう問題があり、また検査情報がブレーキペダルへのキ
ックバックという一つだけのものであるため各車輪につ
いての作動を判定することができないという問題があっ
た。

【０００６】

【課題を解決するための手段】この発明は従来方法の上
記課題を有利に解決することを目的としてなされたもの
であり、この発明のアンチスキッドブレーキシステムの
作動確認装置は、車両がアンチスキッドブレーキシステ
ムの作動車速以下でも当該システムを強制的に作動させ
る疑似車速信号を発生させる疑似車速信号発生手段と、
中速もしくは低速型ブレーキテスタ上で被検査車両が前
記疑似車速信号をアンチスキッドブレーキシステムのコ
ントロールユニットに入力された状態で疑似走行状態か
ら全制動を掛けられた場合に、当該ブレーキテスタが出
力した制動力値を、あらかじめ入力された判定条件と比
較して、その制動力値が前記判定条件を満たしていれば
アンチスキッドブレーキシステムが正常に作動したと判
定する作動判定手段と、を具えてなることを特徴とする
ものである。

【０００７】

【作用】かかる装置にあっては、中速もしくは低速型ブ
レーキテスタ上で、被検査車両が、疑似車速信号発生手
段が発生させた疑似車速信号をアンチスキッドブレーキ
システムのコントロールユニットに入力された状態で、
疑似走行状態から全制動を掛けられる（ブレーキペダル
を強く踏み込まれる）と、通常当該テスタ上では車輪の
速度がシステム作動下限車速よりも低い車速５km/h相当
以下にしかならないので車輪がロックしてもアンチスキ
ッドブレーキシステムが作動しないため、当該ブレーキ
テスタが高い制動力値を出力するところ、ここでは疑似
車速信号を入力しているため、アンチスキッドブレーキ
システムが正常ならば、それが作動して車輪のスリップ
防止のためホイールシリンダ側のブレーキ液圧をほとん
ど上昇させず、当該ブレーキテスタが、車輪の転がり抵
抗値から若干上昇した程度の所定範囲内の制動力値を出
力することになる。しかしてここでは、作動判定手段
が、上記全制動時にブレーキテスタが出力した制動力値
を、あらかじめ入力された上記所定範囲内であることを
含む判定条件と比較して、その制動力値が前記判定条件
を満たしていればアンチスキッドブレーキシステムが正
常に作動したと判定する。

【０００８】従ってこの発明の装置によれば、従来方法
で用いる設備に比べて安価な設備で容易にアンチスキッ
ドブレーキシステムの作動確認ができ、また、機器によ
り検出および判定を行うため評価のばらつきの発生を防
止することができ、さらに、ブレーキテスタが出力する
各車輪毎の制動力値を用いることで各車輪についての作
動を判定し得て判定精度を向上させることができる。

【０００９】

【実施例】以下に、この発明の実施例を図面に基づき詳
細に説明する。図１は、この発明のアンチスキッドブレ
ーキシステムの作動確認装置の一実施例を示す構成図で
あり、図中４は中速もしくは低速型ブレーキテスタ、５
は被検査車両、６はその車両５に搭載されたアンチスキ
ッドブレーキシステムのコントロールユニット、７は車
両５がアンチスキッドブレーキシステムの作動下限車速
以下でも当該システムを強制的に作動させる疑似車速信
号を発生させる、疑似車速信号発生手段としての疑似車
速信号発生装置、８はその疑似車速信号発生装置７と上
記コントロールユニット６とを接続するコネクタ、９は
作動判定手段としての演算処理装置をそれぞれ示す。

【００１０】ここにおける中速もしくは低速型ブレーキ
テスタ４は、図４に示す高速型ブレーキテスタと基本的
には同一の構成を具えているが、電気モータが小型で済
むため高速型ブレーキテスタよりも安価であり、既設の
ものの流用も可能である。なお、ここではブレーキテス
タ４が、左右前輪用と左右後輪用とにそれぞれ設けら
れ、被検査車両５の四輪の各々の制動力値を出力する。
また、ここにおける疑似車速信号発生装置７は、通常の
パルス発生回路により、車両に搭載された車輪回転セン
サが車輪の回転に伴って出力するものと同様のパルス信
号を発生させ、そのパルス信号を、あらかじめ与えられ
た特性に基づいて、その信号が表す車速が図２中に曲線
Ｓで示すように時間経過に従い制動時に車輪がロックし
た同様の正弦波状に漸次低下するよう変化させる。

【００１１】そして、ここにおける演算処理装置９は、
CPU により分析および判定のための演算処理を行う演算
処理部10と、ハードディスク等の記憶媒体により判定条
件および判定結果を記憶する記憶部11と、検査員がキー
操作で入力可能なキーボード12とを具えるとともに、判
定結果をランプの点灯で表示する表示部13と、判定結果
を印字出力するプリント部14と、検査員が検査開始を指
示するための検査開始釦15とを具えている。

【００１２】かかる装置にあっては、図３にフローチャ
ートで示す如き手順でアンチスキッドブレーキシステム
の作動確認が行われる。すなわちここでは、先ず検査員
が、ステップ21で被検査車両５に搭乗してその車両５を
ブレーキテスタ４上へ乗り入れるとともにコネクタ８を
接続し、次のステップ22でブレーキテスタ４を起動して
被検査車両５の車輪の速度をシステム作動下限速度より
も低い車速約５km/h相当に合わせ、そして次のステップ
23において、速度が安定した図２中のＡの時点で検査開
始釦15を押して演算処理装置９に検査開始を指示し、こ
れによりステップ24で疑似車速信号発生装置７から曲線
Ｓで示す如く低下する車速を表す疑似車速信号をコネク
タ８を介しコントロールユニット６に入力してアンチス
キッドブレーキシステムの作動を促すとともに演算処理
装置９に検査を開始させ、続くステップ25で図２中のＢ
の時点からブレーキペダルを強く踏み込んで被検査車両
５に全制動を掛け続ける。

【００１３】この全制動により被検査車両５のブレーキ
マスタシリンダは最大ブレーキ液圧を発生し続けるが、
アンチスキッドブレーキシステムが正常であれば、その
システムが上記疑似車速信号によって車輪がロックし続
けていると判断して車輪のスリップ防止のためホイール
シリンダ側のブレーキ液圧をほとんど上昇させないの
で、ブレーキテスタ４は、図２中の線Ｆで示すように車
輪の転がり抵抗値から若干上昇した程度の所定範囲内の
制動力値を出力することになる。一方、アンチスキッド
ブレーキシステムが正常でなければ、ブレーキマスタシ
リンダからの最大ブレーキ液圧がホイールシリンダ側に
伝えられるので、ブレーキテスタ４は、高い制動力値を
出力することになる。

【００１４】その後は、演算処理装置９が、次のステッ
プ26で、かかるブレーキテスタ４の出力する各車輪の制
動力値を入力してそれらの制動力値の変化状態を分析
し、続くステップ27で、その分析結果を判定条件と対比
してアンチスキッドブレーキシステムの作動の合否を判
定する。具体的には、例えば、あらかじめ検査員がキー
操作でキーボード12から判定条件として、疑似車速信号
の示す疑似車速がシステム作動下限速度に低下するまで
は制動力値が所定の制動力値合格領域内にあること、お
よびその後に制動力値が上昇すること、を演算処理装置
９に入力して、それらを記憶部11に記憶させておき、演
算処理部10がそれらの判定条件を検査開始当初に読み出
して、各車輪の制動力値につき以下の如き演算処理を行
う。

【００１５】すなわち演算処理部10は図２に示すよう
に、上記制動力値分析として、疑似車速信号の示す疑似
車速がシステム作動下限速度Ｓ_L に低下するまでの時間
Ｔ₁ の間については、制動力Ｆの値が車輪の転がり抵抗
による制動力値ａとその転がり抵抗に若干のブレーキ液
圧上昇による制動分を加えた制動力値ｂとの間の制動力
値合格領域内にある（ａ＜Ｆ≦ｂ）か否かを分析し、疑
似車速がシステム作動下限速度Ｓ_L まで低下したＣの時
点以後の若干の時間Ｔ₂ の間については、システムが作
動を停止して制動力Ｆの値が上昇したか否かを分析す
る、という処理を行う。そして上記合否判定として、制
動力Ｆの値が時間Ｔ₁ の間はａ＜Ｆ≦ｂであり、かつ時
間Ｔ₂ の間は上昇すれば、アンチスキッドブレーキシス
テムが正常に作動したと判断されることから合格と判定
し、そうでなければ、アンチスキッドブレーキシステム
が作動しなかったかもしくはその作動が正常でなかった
と判断されることから不合格と判定する、という処理を
行う。

【００１６】その後のステップ28では、演算処理装置９
が上記合否判定の結果を表示部13のランプの点灯で各車
輪毎に表示するとともに、一つの車輪についてでも不合
格があった場合は総合判定結果を不合格としてそこに表
示し、さらにそれらの判定結果を記憶部13に記憶する。
そしてステップ29では、必要に応じて検査員がキー操作
でキーボード12から演算処理装置９に指示を入力するこ
とにより、プリント部14がその判定結果を印字出力す
る。

【００１７】従ってこの実施例の装置によれば、従来方
法で用いる設備に比べて安価な設備で容易に、被検査車
両５に搭載されたアンチスキッドブレーキシステムの作
動確認ができ、また、ブレーキテスタ４により制動力値
を求めるとともに演算処理装置９により所定の判定条件
に基づいて合否判定を行うため評価のばらつきが発生せ
ず、しかも各車輪について制動力値を求めるので、各車
輪についての作動を判定し得て、判定精度を向上させる
ことができる。

【００１８】以上、図示例に基づき説明したが、この発
明は上述の例に限定されるものでなく、例えば制動力値
を求める車輪の数を、アンチスキッドブレーキシステム
の構成に応じて適宜変更しても良く、また作動判定手段
の構成も、所要に応じて適宜変更することができる。

【００１９】

【発明の効果】かくしてこの発明の、アンチスキッドブ
レーキシステムの作動確認装置によれば、比較的安価で
既設のものの流用も可能な中速もしくは低速型ブレーキ
テスタを用いるので従来方法で用いる設備に比べて安価
な設備で容易にアンチスキッドブレーキシステムの作動
確認ができ、また、機器により検出および判定を行うた
め評価のばらつきの発生を防止することができ、さら
に、ブレーキテスタが出力する各車輪毎の制動力値を用
いることで各車輪についての作動を判定し得て判定精度
を向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明のアンチスキッドブレーキシステムの
作動確認装置の一実施例を示す構成図である。

【図２】上記実施例の装置における疑似車速および制動
力値の変化状態を示す特性図である。

【図３】上記実施例の装置の作動手順を示すフローチャ
ートである。

【図４】従来の作動確認方法で用いる高速型ブレーキテ
スタを示す平面図である。

【図５】上記従来の作動確認方法における正常作動判定
方法を示す説明図である。

【図６】他の従来の作動確認方法で用いるフリーローラ
ーテスタを被検査車両とともに示す略線図である。

【符号の説明】

３ フリーローラーテスタ ４ 中速もしくは低速型ブレーキテスタ ５ 被検査車両 ６ コントロールユニット ７ 疑似車速信号発生装置 ９ 演算処理装置

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 車両がアンチスキッドブレーキシステム
   の作動下限車速以下でも当該システムを強制的に作動さ
   せる疑似車速信号を発生させる疑似車速信号発生手段
   (7) と、中速もしくは低速型ブレーキテスタ上で被検査
   車両が前記疑似車速信号をアンチスキッドブレーキシス
   テムのコントロールユニットに入力された状態で疑似走
   行状態から全制動を掛けられた場合に、当該ブレーキテ
   スタが出力した制動力値を、あらかじめ入力された判定
   条件と比較して、その制動力値が前記判定条件を満たし
   ていればアンチスキッドブレーキシステムが正常に作動
   したと判定する作動判定手段(9) と、を具えてなる、ア
   ンチスキッドブレーキシステムの作動確認装置。