JP2745331B2 - シロアリ検知材 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） この発明は、シロアリ検知材に係り、その目的は（3
Z,6Z,8E）−ドデカトリエノール（次式１）を含有し、
長期間安定したシロアリ誘引効果を発揮するするシロア
リ道標ベフェロモン製剤を用いることにより、長時間安
定して確実にシロアリを検知することのできるシロアリ
検知材を提供することにある。

（発明の背景） 日本に産するシロアリとしては、イエシロアリ（Copt
otermes formosanus Shiraki）、ヤマトシロアリ（Reti
culitermes speratus （Kolbe））、サツマシロアリ（K
alotremes satsumensis）、カタンシロアリ（Kaloterme
s fuscus）オオシロアリ（Hodotermopsis japonicus）
が挙げられる。

その中で、シロアリ目ミゾガシラシロアリ科に属する
イエシロアリ（Coptotermes formosanus Shiraki）及び
ヤマトシロアリ（Reticulitermes speratus（kolbe））
は、広く日本各地に分布している。

イエシロアリ（Coptotermes formosanus Shiraki）
は、日本では関東地方以西に分布し、家屋、樹木或いは
重要文化財等の土中又は、土に接した木材を食害し建築
物を浸すシロアリとして最も恐れられている。

また、ヤマトシロアリ（Reticulitermes speratus
（Kolbe））は北海道を除く日本全土に分布し、鉄道の
まくら木、家屋の土台等を食害する。

上記したイエシロアリ（Coptotermes formosanus Shi
raki）及びヤマトシロアリ（Reticulitermes speratus
（Kolbe））による日本国内での総被害額は年間2000億
円とも言われている。

（従来の技術及び問題点） 上述したシロアリによる被害を最小限に抑えるために
は、大きな被害を受ける前にシロアリの生育の有無を調
査し、生息が確認された時点で速やかにシロアリ防除作
業にとりかかる必要がある。

そこで従来より、木片を縁の下等の土中に埋設して１
ヶ月程放置することによりシロアリを検知する方法が採
られている。

しかし、木片を土中に埋設して放置することによるシ
ロアリ検知方法では、検知するのに時間がかかる上に、
シロアリは家屋の被害部分より遥かに隔たった土中に営
巣するため確実に検知することはできなかった。

上記実情に鑑み、業界では、シロアリ道標ベフェロモ
ンの誘導効果を利用して、シロアリの検知に役立てよう
という気運が巻き起こってきた。

しかしシロアリ道標ベフェロモンの道標べ効果の有効
時間はきわめて短く、実際の検知に利用するには不充分
なものであった。

（発明が解決しようとする課題） そこで、業界では、長時間安定してシロアリを誘引
し、確実にシロアリを検知することのできるシロアリ検
知材の創出が望まれていた。

（課題を解決するための手段） この発明では基材にシロアリ道標ベフェロモン製剤が
塗布、造膜されてなるシロアリ検知材であって、該シロ
アリ道標ベフェロモン製剤は、（3Z,6Z,8E）−ドデカト
リエノール（次式１）と安定化材とが合成樹脂中に溶解
又は分散されてなることを特徴とするシロアリ検知材を
提供することにより上記課題を解決する。

（発明の構成） この発明に係るシロアリ検知材は、基材にシロアリ道
標ベフェロモン製剤を塗布、造膜することにより得られ
る。また、このシロアリ道標ベフェロモン製剤は、（3
Z,6Z,8E）−ドデカトリエノールと安定化剤とを合成樹
脂中に溶解又は分散することにより得られる。

この発明において用いられる（3Z,6Z,8E）−ドデカト
リエノールは、シロアリの道標ベフェロモンとして周知
で、次式１で示される常温で液体の物質である。

安定化剤としては2,6−ジ第３ブチル−ｐ−クレゾー
ル（BHT）、ハイドロキノシ、カテコール等の酸化防止
剤が全て好ましく用いられる。

この発明で安定化剤を配合する理由は、（3Z,6Z,8E）
−ドデカトリエノールが二重結合を含み酸化され易い物
質なので、これら酸化防止剤を配合することにより自動
酸化を防ぐことにある。

この発明で使用する合成樹脂の具体例としては、例え
ば、ポリスルホン、ポリカボネート、ポリスチレン、ポ
リメタクリル酸エステル、ポリアミド、ポリエステル、
ポリビニリデンクロライド、ポリビニリデンフルオライ
ド、セルロースエステル、再生セルロース、ポリウレタ
ン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニ
ルアセテート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビ
ニル−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン−ポリブタジ
エンブロック共重合体等を挙げることができる。これら
の合成樹脂を単独で又は２種以上の混合物として用いれ
ばよい。

これらの合成樹脂は後記の実施例、比較例から明らか
な如く（3Z,6Z,8E）−ドデカトリエノールの有効期間を
長く保つ作用を有する。

この発明においては上記の（3Z,6Z,8E）−ドデカトリ
エノール、安定化剤及び合成樹脂を均一に配合分散する
ために必要に応じ溶剤を適時適量使用してもよい。

この発明において、使用される安定化剤の量は（3Z,6
Z,8E）−ドデカトリエノールに対して１〜10重量％が好
ましく、合成樹脂の量は（3Z,6Z,8E）−ドデカトリエノ
ールに対して20〜1000倍（重量比）が好ましい。

このようにして得られたシロアリ道標ベフェロモン製
剤は、長期間安定したシロアリ誘引効果を有しており、
このシロアリ道標ベフェロモン製剤を適当な基材に塗布
し乾燥させて造膜することにより、この発明に係るシロ
アリ検知材が得られる。

このシロアリ検知材を土中に埋設することにより、家
屋より遥かに隔たった土中に営巣するシロアリもシロア
リ道標ベフェロモン製剤に用いられている（3Z,6Z,8E）
−ドデカトリエノールにより誘引されるため、そのシロ
アリから、簡便且つ迅速にシロアリの生息の有無を判断
することができる。従って、家屋等がシロアリによる被
害を受ける前に速やかにシロアリ防除作業にとりかかる
ことができ、被害を最小限に抑えることができる。

尚、塗布する基材は特に限定されず、濾紙、厚紙、磨
きガラス、プラスチックシート、石、砂、コンクリート
木版、木片、糸、綿、合成紙、金属片等が全て好適に使
用される。

以下にこの発明の実施例及び比較例を示す。

（実施例１） （3Z,6Z,8E）−ドデカトリエノール（2mg）、2,6−ジ
第三ブチル−ｐ−クレゾール（BHT）（８μｇ）、ポリ
スチレン（エスブライト 4−62A住友化学）（1g）、ジ
クロロメタン（5ml）を混合して製剤を調製した。

濾紙（No5）上に、直線状にこの製剤を10cmに渡り0.5
ml塗布した。これを40℃で20分間乾燥し、溶剤を揮散さ
せてシロアリ検知材を得た。この検知材を用いてヤマト
シロアリ（Reticulitermes speratus（Kolbe））及びイ
エシロアリ（Coptotermes formosanus Shiraki）に対し
ての道標べ効果を経時的に測定した。測定方法はシロア
リ６頭を上記製剤塗布面の一端に放して、塗布面に沿っ
た歩行状況を５分間観察し、片道歩行１点、1/2以上0.5
点として歩行状況を点数化した。また製剤を塗布した濾
紙は全て空気中、室温で放置したものを用いた。

（比較例１） （3Z,6Z,8E）−ドデカトリエノールを含まない以外は
実施例１と同様にして製剤を得てシロアリ検知材を調製
した。

（比較例２） 安定化剤として2,6−第３ブチル−ｐ−クレゾール（B
HT）を含まない以外は実施例１と同様にして製剤を得て
シロアリ検知材を調製した。

（比較例３） 合成樹脂としてポリスチレン（エスブライト 4−62A
住友化学）を含まない以外は実施例１と同様にして製剤
を得てシロアリ検知材を調製した。

比較例１〜３の検知材についても実施例１と同様の試
験をした。これらの結果をまとめて第１表に示す。

（実施例２〜４） 合成樹脂に関して実施例１のポリスチレン（エスブラ
イト４−62A住友化学）の代わりに第２表に示す合成樹
脂を使用した以外は実施例１と全く同様にして製剤を得
てシロアリ検知材を調製した。実施例２〜４で得たシロ
アリ検知材はイエシロアリ（Coptotermes formosanus S
hiraki）についてのみ試験を実施例１と同様に行った。
これらの結果を第３表に示す。

（発明の効果） 以上詳述した如く、この発明は基材にシロアリ道標ベ
フェロモン製剤が塗布、造膜されてなるシロアリ検知材
であって、該シロアリ道標ベフェロモン製剤は、（3Z,6
Z,8E）−ドデカトリエノールと安定化剤とが合成樹脂中
に溶解又は分散されてなることを特徴とするシロアリ検
知材に関するものであるから、以下のような効果を奏す
る。

即ち、シロアリ道標ベフェロモン製剤が基材に塗布、
造膜されてなるシロアリ検知材であるから、シロアリを
誘引することにより、その存在の有無を確実に検知でき
る。

また、このシロアリ道標ベフェロモン製剤には、シロ
アリ道標ベフェロモンである（3Z,6Z,8E）−ドデカトリ
エノールが用いられているため、残留毒性がなく安全性
が高い。更に、この（3Z,6Z,8E）−ドデカトリエノール
と安定化剤とが合成樹脂中に溶解又は分散されているた
め、長期間安定してシロアリを誘引して検知することが
できる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−104802（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−155105（ＪＰ，Ａ) Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ａｂｓｔｒａｃｔ ｓ，70（1969），3176. Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ａｂｓｔｒａｃｔ ｓ，107（1987），130445.

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】基材にシロアリ道標ベフェロモン製剤が塗
   布、造膜されてなるシロアリ検知材であって、該シロア
   リ道標ベフェロモン製剤は、（3Z,6Z,8E）−ドデカトリ
   エノール（次式１）と安定化剤とが合成樹脂中に溶解又
   は分散されてなることを特徴とするシロアリ検知材。
2. 【請求項２】前記安定化剤が2,6−ジ第３ブチル−ｐ−
   クレゾール、ハイドロキノン、カテコールから選択され
   た１種以上の物質であることを特徴とする請求項第
   （１）項記載のシロアリ検知材。
3. 【請求項３】前記合成樹脂がポリスルホン、ポリカーボ
   ネイト、ポリスチレン、ポリメタクリル酸エステル、ポ
   リアミド、ポリエステル、ポリビニリデンクロライド、
   ポリビニリデンフルオライド、セルロースエステル、再
   生セルロース、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、
   ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、エチレン−酢
   酸ビニル共重合体、又はポリスチレン−ポリブタジエン
   ブロック共重合体より選択される１種又は２種以上の混
   合物であることを特徴とする請求項第（１）項記載のシ
   ロアリ検知材。