JP2744757B2 - 地盤や人工構造物などの安定化用注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化止水工法 - Google Patents

地盤や人工構造物などの安定化用注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化止水工法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、地盤や人工構造物など
の安定化用注入薬液組成物およびそれ用いた安定強化止
水工法に関する。さらに詳しくは、破砕帯を有する岩盤
や不安定軟弱地盤の固結安定化ないし封止、漏水、湧水
のある岩盤ないし地盤の止水や空隙充填、さらにコンク
リートなどの人工構造物のクラック、空隙、既設トンネ
ルなどの安定強化、封止および止水工法ならびにそれに
用いる安全性の高い安定化用注入薬液組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、不安定岩盤や地盤の安定強化、人
工構造物のクラックや空隙の充填法の1つとして無機な
いし有機系グラウトの注入が行なわれ、ある程度の効果
をあげている。
【0003】しかしながら、これらの方法を詳細にチェ
ックすると、必ずしも満足しうる結果がえられていな
い。たとえば、一般に多用されているセメントミルクは
懸濁液であるため、岩盤や人工構造物などのクラックや
砂礫などの地盤層への浸透性がわるく、しかも固結速度
や強度発現が遅いため、短時間に固結して強度が発現す
ることが要求されるトンネルや地下地盤掘削時の不安定
地盤を早期に安定強化させる目的が達成しえない。さら
に、湧水や漏水のみられるばあいには、なおさら注入セ
メントミルクが希釈、流失してしまう。また代表的な無
機系グラウトである水ガラス系2液システムグラウトに
ついても固結体強度が3〜10kg/cm2 程度と低く、さら
に固結体が水と接触すると経時変化が起こり、Na2
やSiO2などの主成分が溶脱し、アルカリ汚染や大幅
な強度低下にいたるという問題がある。
【0004】一方、尿素系などの有機系グラウトについ
ても固結強度不足や、硫酸、ホルマリンなどの硬化成分
や助剤成分の溶出が発生するという問題がある。また、
特公昭63-63687号公報、同63-63688号公報、同63-63688
号公報、特開昭63-7413 号公報、同63-7490 号公報、同
63-7491 号公報、同63-8477 号公報、同63-35913号公報
などには、ポリオールとポリイソシアネートを主成分と
する速硬性硬質発泡ウレタンシステム注入による岩盤の
固結工法が記載されているが、これらの工法によれば、
固結効果は期待しうるものの、その原料がきわめて高価
なうえ可燃性を呈するものであるので、経済性や安全性
の面で改善が要求されている。
【0005】さらに特開昭61-9482 号公報および同55-1
60079 号公報には、ポリイソシアネートと水ガラス(ケ
イ酸ソーダ水溶液)とを用い、水ガラス側にポリイソシ
アネートの三量化触媒として特定の芳香族三級アミンで
あるマンニッヒ塩基を配合してなる注入薬液組成物が記
載されている。しかしながら、この組成物には、マンニ
ッヒ塩基とポリイソシアネートや水ガラスとの相溶性が
わるいことから、これらを混合するとただちに分離して
しまうという欠点があり、かかる欠点を解消せんとする
ならば、これらの相溶性を高めるためにシリコーンポリ
オールなどの高価な薬剤が必要となり、コストが上昇す
るという問題がある。さらに、マンニッヒ塩基を用いる
と反応熱によるホルマリンの発生がみられ、現場作業者
の健康上望ましくなく、また地下水や河川へフェノール
誘導体が混入することは望ましくない。また、前記特定
のマンニッヒ塩基のなかでも非水溶性でかついちじるし
く皮膚をおかす性質を有するものが用いられた注入薬液
組成物が皮膚や衣服に付着したばあいには、水洗で完全
に除去することができずに残留しやすいので、かかる注
入薬液組成物は安全性の面で大きな問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技
術に着目してなされたもので、特定成分よりなる安全性
の高い注入薬液組成物を注入し、従来形成することが困
難であった発泡状の無機−有機複合固結体を形成するこ
とにより、固結強度が大きく、安全性、安定強化効果、
耐久性、注入作業性および経済性にすぐれた岩盤ないし
地盤および人工構造物の安定強化ないしは止水を可能な
らしめることを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、
(A)アルカリケイ酸塩水溶液、(B)有機ポリイソシ
アネート化合物および(C)分子量が120 以上のアルコ
ール性水酸基を1個または2個有する三級アミンからな
る地盤や人工構造物などの安定化用注入薬液組成物を第
1の発明とし、前記安定化用注入薬液組成物において、
(D)ポリオール成分を含有してなることを第2の発明
とし、岩盤ないし地盤に所定間隔で複数個の孔を穿設
し、前記孔内に中空の注入ボルトを挿入し、ボルトの開
口部より前記安定化用注入薬液組成物を岩盤ないし地盤
に注入し、固結ないし封止せしめることを特徴とする岩
盤ないし地盤の安定強化止水工法を第3の発明とし、さ
らに人工構造物に注入パイプを挿入し、該注入パイプを
介して前記安定化用注入薬液組成物を人工構造物および
/またはその背面に注入し、固結ないし封止せしめるこ
とを特徴とする人工構造物の安定強化止水工法を第4の
発明とするものである。
【0008】
【作用および実施例】本発明の地盤や人工構造物などの
安定化用注入薬液組成物(以下、注入薬液組成物とい
う)は、前記したように、(A)アルカリケイ酸塩水溶
液(以下、(A)成分という)、(B)有機ポリイソシ
アネート化合物(以下、(B)成分という)および
(C)分子量が120 以上のアルコール性水酸基を1個ま
たは2個有する三級アミン(以下、(C)成分という)
からなるものである。
【0009】本発明の注入薬液組成物の固結反応は、き
わめて複雑であるため明確ではないが、おそらく(A)
成分と(B)成分とを混合したときに、(A)成分中に
形成されるシラノール基と(B)成分中のイソシアネー
ト基とが反応して無水ケイ酸−ウレタン複合体が形成さ
れ、同時に(B)成分が水と反応して炭酸ガスを発生し
ながら尿素結合による多量体や無水ケイ酸−尿素架橋複
合体を形成し、副生した炭酸ガスの一部は(A)成分中
に溶解し、(A)成分中のアルカリケイ酸塩をゲル化し
て無水ケイ酸ゲルを形成することに基づくものと推定さ
れる。さらに、(D)ポリオール成分(以下、(D)成
分という)が存在するばあいには、(D)成分中の水酸
基と(B)成分とが反応してウレタン樹脂が形成される
ことにも基づくものと推定される。
【0010】また、(B)成分と水との反応によって発
生する炭酸ガスならびに(A)成分と(B)成分との反
応時または(A)成分および(D)成分と(B)成分と
の反応時に発生する反応熱によって蒸発する水蒸気によ
り、前記無水ケイ酸−ウレタン複合体は発泡状の固結体
を形成し、その体積を増大させる。このとき、発泡が生
じるが、かかる発泡時の発泡圧により、前記無水ケイ酸
−ウレタン複合体が土砂、岩石、レンガ、石炭、人工構
造物などの間隙に入り込みやすくなる。
【0011】以下、本発明の注入薬液組成物について述
べる。
【0012】本発明に用いられる(A)成分であるアル
カリケイ酸塩水溶液は、前記したように、主としてその
シラノール基と後述する(B)成分のイソシアネート基
との反応によって無水ケイ酸−ウレタン複合体を形成さ
せる成分である。
【0013】前記(A)成分としては、たとえばケイ酸
カリウムや式:Na2 O・xSiO2 で表わされるケイ
酸ソーダなどの水溶液を主成分とするものがあげられ、
かかるケイ酸ソーダは、たとえばNa2 OとSiO2
のモル比が2:1〜1:4のものである。
【0014】また、前記(A)成分の固形分濃度は、通
常10〜70重量%、なかんづく20〜40重量%となるように
調整することが好ましい。
【0015】本発明に用いられる(B)成分である有機
ポリイソシアネート化合物は、前記(A)成分と(C)
成分または(A)成分、(C)成分および必要に応じて
後述する(D)成分を均一に分散し、乳化させて反応を
均一にせしめる成分である。
【0016】前記(B)成分としては、たとえばジフェ
ニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニ
ルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、液状ジ
フェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシア
ネート、キシリレンジイソシアネート、トリメチレンキ
シリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネー
ト、ナフタレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタ
ンジイソシアネートなどのポリイソシアネートの単独ま
たは2種以上の混合物や、前記ポリイソシアネートに触
媒を加え、二量体または三量体としたものなどがあげら
れる。
【0017】また前記のほかにも、たとえばメタノー
ル、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノ
ール、ラウリルアルコールなどのモノオール;エチレン
グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリ
コール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコー
ル、ブチレングリコール、1,3−ブタンジオール、
1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールな
どのジオールやグリセリン、トリメチロールプロパン、
ペンタエリスリトールなどのポリオール:そのほかモノ
エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノー
ルアミン、ジグリセリン、ソルビトール、蔗糖などの単
独もしくは混合物にエチレンオキシド、プロピレンオキ
シド、ブチレンオキシド、スチレンオキシドなどのアル
キレンオキシドを単独または併用し、公知の方法で付加
重合してえられるモノオールまたはポリオールと、前記
ポリイソシアネートとを、たとえばNCO基とOH基と
の当量比(NCO基/OH基)が1.5 〜100 、好ましく
は2.0 〜50の範囲となるように公知の方法で反応させて
えられる末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマ
ーも、前記(B)成分として好適に用いることができ
る。
【0018】これらの(B)成分のなかでも固結強度、
安全衛生面および経済性の点から末端イソシアネート基
含有ウレタンプレポリマーなどが好ましく、いわゆる取
扱い環境温度下での揮発性がきわめて小さく、液状でし
かも固結強度、経済性の伴った構成のものが好ましい。
【0019】前記(B)成分の配合量は、(A)成分中
のたとえばNa2 OとSiO2 とのモル比などによって
異なるので一概には決定することができないが、通常
(A)成分と(B)成分との配合割合((A)成分/
(B)成分)が重量比で10/100〜 100/10、なかんづ
く20/100 〜100 /20となるように調整することが好ま
しい。かかる配合割合が前記下限値よりも小さいばあい
には、注入薬液組成物コストが高価なものとなり不経済
となるうえ、比例式注入ポンプでの配合比のコントロー
ルが極めて困難となる傾向があり、また前記上限値より
も大きいばあいには、注入薬液組成物の固化が不充分で
未硬化状となり、たとえ硬化しても硬度が低く、脆くて
実用に供しえなくなる傾向がある。
【0020】前記(B)成分は、(A)成分との反応性
や固結性にすぐれているが、粘度が比較的高いため岩盤
や地盤への浸透性が充分ではないため、従来では流動性
や浸透性を向上させるためにトルエンやキシレン、1,
1,1−トリクロロエタン、塩化メチレン、トリクロロ
フルオロメタンなどの有機溶剤が希釈剤として用いられ
ている。しかしながら、これらの有機溶剤は揮発性であ
り、固結後放出されて環境を損うことがあるため、でき
るだけ使用しないほうが好ましい。
【0021】そこで(B)成分の希釈剤として、(B)
成分と混合してもイソシアネート基とは反応せず、
(B)成分の貯蔵安定性や減粘にすぐれ、一方、(A)
成分と混合接触したばあいには、前記のごとくただちに
反応して硬化し、環境への影響も少ない反応性希釈剤を
配合することが好ましい。
【0022】前記反応性希釈剤は、(B)成分を希釈し
て注入時の粘度を低下させる働きを有するとともに、
(A)成分と接触することによってアルカリ加水分解を
受け、(A)成分および/または(B)成分と反応して
該(A)成分と(B)成分との硬化反応に積極的に関与
し、より強い無水ケイ酸−ウレタン複合体や無水ケイ酸
−尿素架橋複合体、網状の無水ケイ酸ゲルを主体とする
無機−有機複合固結体を形成せしめ、かつ反応固結時の
発泡性を向上させることができるエステルやエーテルで
あることが好ましい。
【0023】前記反応性希釈剤の代表例としては、たと
えば低分子量二塩基酸のジエステル類、1価または多価
アルコール類の酢酸エステル類、アルキレンカーボネー
ト類、エーテル類、環状エステル類、酸無水物、(メ
タ)アクリル酸エステルなどがあげられる。
【0024】低分子量二塩基酸のジエステル類として
は、たとえばグルタール酸、コハク酸、アジピン酸、マ
ロン酸、シュウ酸、ピメリン酸などのジメチルエステ
ル、ジエチルエステルなどのジアルキルエステルなどが
あげられる。
【0025】1価または多価アルコール類の酢酸エステ
ル類としては、たとえばメチルセロソルブ、エチルセロ
ソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールメチ
ルエーテル、エチルカルビトール、ブチルカルビトール
などのグリコールエーテル類のアセテート;3−メトキ
シブチルアルコール、3−メチル−3−メトキシブチル
アルコールなどのアルコキシアルキルアルコール類のア
セテート;エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、トリエチレングリコールなどのグリコール類のジア
セテートなどがあげられる。
【0026】アルキレンカーボネート類としては、たと
えばプロピレンカーボネート、各種希釈剤に溶解した液
状エチレンカーボネートなどがあげられる。
【0027】エーテル類としては、たとえばテトラヒド
ロフラン、ジオキサン、脱水ヒマシ油などの環状エーテ
ルなどがあげられる。
【0028】環状エステル類としては、たとえばγ−ブ
チルラクトンなどのラクトン類;ε−カプロラクタムな
どのラクタム類などがあげられる。
【0029】酸無水物としては、たとえば無水プロピオ
ン酸、無水酪酸、無水マレイン酸などがあげられる。
【0030】(メタ)アクリル酸エステルとしては、た
とえば(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、ブチルな
どのアルキルエステル、(メタ)アクリル酸とエチレン
グリコール、ジエチレングリコール、重量平均分子量が
100 〜1000のポリエチレングリコール、プロピレングリ
コール、ジプロピレングリコール、重量平均分子量が10
0 〜1000のポリプロピレングリコール、重量平均分子量
が100 〜5000のエチレンオキシドやプロピレンオキシド
共重合ジオールまたはトリオールなどのアルコール類と
の(メタ)アクリル酸エステルなどがあげられる。
【0031】反応性希釈剤の配合量は、(B)成分100
部(重量部、以下同様)に対して5〜100 部、なかんづ
く10〜50部であることが好ましく、かかる範囲内で
(B)成分の種類や粘度、使用目的などによって適宜選
定することが好ましい。かかる反応性希釈剤の配合量が
少なすぎるばあいには、(B)成分に対する減粘効果や
固結強度向上効果が充分に発現されにくくなる傾向があ
り、また多すぎるばあいには、逆に固結体強度が低下す
るようになる傾向がある。
【0032】本発明に用いられる(C)成分である分子
量が120 以上のアルコール性水酸基を1個または2個有
する三級アミンは、前記(A)成分、(B)成分および
必要に応じて用いられる後述する(D)成分の反応硬化
を促進するための触媒としても作用するものであり、該
(C)成分は、(A)成分との相溶性が良好で、皮膚や
衣服に付着しても水洗によって容易に除去され、しかも
引火点が比較的高いことから、かかる(C)成分が配合
された注入薬液組成物は、パイプの熔断などの施工時に
用いられる火源に対する安全性も高い。またかかる
(C)成分中のアルコール性水酸基は、芳香環に直結し
た水酸基であるフェノール性水酸基とは異なり、(B)
成分中のイソシアネート基と容易に反応し、固結体中で
遊離することがないので、かかる(C)成分は、土中の
成分によって溶出したり、涌水によって流出したりする
ことがなく、きわめて安全な反応硬化促進触媒である。
【0033】前記(C)成分としては、たとえばN−ジ
オキシエチレン−N,N−ジメチルアミン、N−トリオ
キシエチレン−N,N−ジメチルアミン、N,N−ジメ
チルアミノヘキサノール、N,N,N´−トリメチルア
ミノエチルエタノールアミン、N,N,N´,N´−テ
トラメチルヒドロキシプロピレンジアミン、N−(2−
ヒドロキシエチル)モルホリン、1−メチル−4−ヒド
ロキシエチルピペラジン、N,N−ジメチル−N´,N
´−ジ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミンなどや、
これらアミンにエチレンオキシドを付加した付加化合物
などのアルコール性水酸基を1個または2個有する三級
アミンで、その分子量が120 以上のものがあげられる。
【0034】なお、前記(C)成分である三級アミンの
分子量がトリエチレンジアミンやN−ジメチルエタノー
ルアミンなどのように120 未満であるばあいには、反応
固結時の反応熱によって空気中に飛散しやすくなり、臭
気が大きく、安全性に劣るようになる。またかかる
(C)成分である三級アミンの分子量は、安全性を考慮
すると 130〜270 であることが好ましい。
【0035】また、前記(C)成分である三級アミン中
のアルコール性水酸基の数が3個以上であるばあいに
は、反応促進効果が小さくなる。
【0036】前記(C)成分の配合量は、前記(B)成
分100 部に対して0.1 〜20部、なかんづく0.5 〜15部で
あることが好ましい。かかる(C)成分の配合量が前記
下限値未満であるばあいには、硬化しにくく固結反応が
不充分で、目的とした性能の固結体がえられにくくなる
傾向があり、また前記上限値をこえるばあいには、硬化
反応が速すぎて前記(A)成分、(B)成分および後述
する必要に応じて用いられる(D)成分が均一に混合さ
れにくくなる傾向がある。
【0037】また、本発明の注入薬液組成物には、前記
(A)成分、(B)成分および(C)成分のほかに
(D)成分であるポリオール成分を配合することができ
る。
【0038】本発明に用いられる(D)成分であるポリ
オール成分としては、たとえば前記(B)成分である末
端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに用いら
れるポリオールなどがあげられ、これらは単独でまたは
2種以上を混合して用いることができる。また、これら
のポリオールの重量平均分子量は40〜20000 であること
が好ましい。
【0039】前記(D)成分の配合量は、用いる(B)
成分の種類などによって異なるので一概には決定するこ
とができないが、通常(B)成分と(D)成分との配合
割合が、(B)成分中のNCO基と(D)成分中のOH
基との当量比(NCO基/OH基)が0.5 〜500 、なか
んづく1〜120 となるように調整することが好ましい。
かかる当量比が前記下限値未満であるばあいには、注入
薬液組成物からえられる固結体が柔かすぎて実用に供し
にくくなる傾向があり、また前記上限値をこえるばあい
には、固結体が脆くなる傾向がある。
【0040】さらに本発明の注入薬液組成物には、必要
に応じて、セメント、高炉スラグ、石こう、炭酸カルシ
ウム、粘土、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、
生石灰、消石灰、ベントナイトなどの無機充填剤や、各
種界面活性剤、希釈剤、レベリング剤、難燃剤、シリコ
ーン系整泡剤、老化防止剤、耐熱性付与剤、抗酸化剤、
触媒などを適宜配合量を調整して配合することができ
る。
【0041】本発明の注入薬液組成物を調整する際の前
記(A)成分、(B)成分および(C)成分、ならびに
必要に応じて用いられる(D)成分の混合順序にはとく
に限定がないが、たとえば(A)成分、(C)成分およ
び(D)成分をあらかじめ混合したのち、これらと
(B)成分とを混合するばあいは、(A)成分、(C)
成分および(D)成分の混合物と(B)成分との二成分
系として用いることができる。
【0042】本発明における特殊な注入薬液である
(A)成分、(B)成分および(C)成分、ならびに必
要に応じて(D)成分からなる注入薬液組成物は、空隙
やクラックの多い軟質ないし不安定な地盤、岩盤、破砕
帯層、さらにはクラックや空隙を有する人工構造物など
に注入され、固結ないし封止されるが、このように注入
して固結ないし封止する方法についてはとくに限定がな
く、公知の方法を採用しうる。その一例をあげれば、た
とえば(A)成分、(B)成分および(C)成分、なら
びに(D)成分の注入量、圧力、配合比などをコントロ
ールしうる比例配合式ポンプを用い、(A)成分および
(C)成分、ならびに(D)成分の混合物と(B)成分
とを別々のタンクに入れ、岩盤などの所定箇所(たとえ
ば 0.5〜3m程度の間隔で穿設された複数個数の孔)
に、あらかじめ固定されたスタチックミキサーや逆止弁
などを内装した有孔のロックボルトや注入ロッドを通
し、この中に前記タンク内の各成分を注入圧 0.5〜50kg
/cm2 ・Gで注入し、スタチックミキサーを通して所定
量の前記混合物と(B)成分とを均一に混合させ、所定
の不安定岩盤ないし地盤箇所に注入浸透、硬化させて固
結ないし封止し、安定化する方法などがある。
【0043】なお、本発明において、封止とは、空洞や
空隙に注入薬液組成物を充填し、間隙を埋めることをい
う。
【0044】また、たとえばトンネル切羽先端の天盤部
に注入するばあいには、注入に先立ち、たとえば約1m
の所定の間隔でたとえば42mmφビットでジャンボ機を用
いて削孔し、深さ2m、削孔角度10〜25°の注入孔を設
け、この注入孔にスタチックミキサーを内挿した長さ3
mの中空炭素鋼管製注入ボルトを挿入し、注入薬液組成
物を前記した方法で注入することが好ましい。注入作業
は、注入圧が急激な上昇した時点で終了する。一般に、
注入孔1個あたり薬液量は30〜200 kgであることが好ま
しい。
【0045】また、人工構造物のクラックなどの安定強
化止水は、たとえば該クラック面に対して20〜50cm間隔
で直径10mm、深さ5〜10cmにドリルで削孔し、孔内の削
りくずや粉塵を圧縮空気で吹きとばし、削孔上に脱脂綿
を約5mm厚にのせ、その上から直径約10mm、長さ20〜30
mmの注入パイプを打ち込み、注入薬液組成物のリークの
ない状態にセットする。また、クラックや漏水などの発
生箇所に対して約30cmピッチでU字またはV字カット
し、注入パイプを急結セメントで固定する。つぎにスタ
チックミキサーなどを内装したY字管またはT字管を通
し、(A)成分および(C)成分、ならびに(D)成分
の混合物と(B)成分とを比例配合式ポンプまたは手押
し式ポンプなどを用いて所定の配合比で注入圧0.5 〜20
kg/cm2 ・G、好ましくは0.5 〜2kg/cm2 ・Gで所定
量注入する。注入量は、一般に、推定空隙体積量プラス
αでよい。
【0046】本発明の安定強化止水工法では、粘性が低
い注入薬液組成物が用いられるため、不安定地盤、クラ
ックおよび破砕帯などへの浸透性がよく、広範囲にわた
って不安定岩盤や地盤、さらには人工構造物などの安定
化や止水を図ることができる。また、形成された硬化固
結物は、高強度で耐久性を有し、岩盤などへの付着、密
着性にすぐれ、かつ難燃性を呈し、しかも経済的なもの
であるので、実用上きわめて有利である。
【0047】つぎに本発明の地盤や人工構造物などの安
定化用注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化止水
工法を製造例および実施例に基づいてさらに詳細に説明
するが、本発明はかかる製造例および実施例のみに限定
されるものではない。
【0048】製造例1〜3および比較製造例1〜2 表1に示す配合割合で成分Aと成分Bとをそれぞれ別々
に調製したのち、成分Aに成分Bを撹拌下で添加して混
合し、注入薬液組成物をえた。
【0049】なお、成分Aの安定性、ゲルタイム、固結
時の臭気、ならびにえられた固結体の発泡倍率および均
一性を以下の方法にしたがって調べた。これらの結果を
表1に示す。また総合評価は、発泡倍率が2倍以上であ
り、かつそのほかの物性の評価がすべて○であるばあい
を○、それ以外のばあいを×と評価した。その結果もあ
わせて表1に示す。
【0050】(イ)成分Aの安定性 (A)成分および(C)成分、ならびに(D)成分を混
合撹拌して5分間以上均一な状態が保持されたばあいを
○、5分間未満で分離するかまたはゲル化物を生じたば
あいを×と評価した。
【0051】(ロ)ゲルタイム 20℃における成分Aと成分Bとの混合時からのゲル化す
るまでの時間(秒)を測定した。
【0052】(ハ)固結時の臭気 固結時の水蒸気の発生とともにアミン臭がしなかったば
あいを○、アミン臭がしたばあいを×と評価した。
【0053】(ニ)固結体の発泡倍率 固結体の容積を成分Aおよび成分Bの合計容量で除して
求めた。
【0054】(ホ)固結体の均一性 固結体が均一で破壊されにくければ○、不均一で脆けれ
ば×と評価した。
【0055】なお、(A)成分には、ケイ酸ソーダ水溶
液を用い、(C)成分および(D)成分は(A)成分へ
添加混合した。
【0056】(B)成分には、反応性希釈剤を添加して
混合したものを用いた。
【0057】表1中の当量比は、(B)成分中のNCO
基と(D)成分中のOH基との当量比である。
【0058】また、表1中の各略号はつぎのことを意味
する。
【0059】((B)成分) C−MDI ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメ
リックMDI) PEG−5000MDI ポリオキシエチレングリコール(重量平均分子量5000)
150 部に対してC−MDIを850 部反応させた末端NC
O基含有ウレタンプレポリマー PEG−2000MDI ポリオキシエチレングリコール(重量平均分子量2000)
100 部に対してC−MDIを900 部反応させた末端NC
O基含有ウレタンプレポリマー GPE−3000MDI−L プロピレンオキシドとエチレンオキシドとの混合比が50
/50(重量比)の混合アルキレンオキシドをグリセリン
に付加重合してえられるトリオール(重量平均分子量30
00)100 部に対して液状ジフェニルメタンジイソシアネ
ートを900 部反応させた末端NCO基含有ウレタンプレ
ポリマー (反応性希釈剤) EGDA エチレングリコールジアセテート EC/POC エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混
合比が25/75(重量比)の混合物 MMB−AC 3−メチル−3−メトキシブチルアセテート ((C)成分) (C)−1 N,N,N´−トリメチルアミノエチルエタノールアミ
ン(分子量 146) (C)−2 N,N,N′,N′−テトラメチルヒドロキシプロピレ
ンジアミン(分子量146) (C)−3 N,N−ジメチル−N´,N´−ジ(ヒドロキシエチ
ル)エチレンジアミン1モルにエチレンオキシド2モル
を付加した付加化合物(分子量 264) (C)−4 2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノー
ル(芳香族マンニッヒ塩基、分子量265 ) (C)−5 N−メチルジエタノールアミン(分子量 119) ((D)成分) (D)−1 エチレングリコール (D)−2 トリメチロールプロパン
【0060】
【表1】
【0061】表1に示された結果から、製造例1〜3で
えられた注入薬液組成物は、固結時の臭気の発生がまっ
たくなく、えられた固結体は、発泡倍率が高く、均一性
にすぐれたものであることがわかる。
【0062】実施例1 破砕帯を有するトンネル切羽先端の天盤部にトンネルア
ーチの中心から左右に60°、合計120 °の扇状範囲内
で、ジャンボ機で42mmφビットにより1m間隔で削孔角
度15°(トンネル掘削方向に対しての角度)で10個削孔
し、えられた孔内に炭素鋼製(JIS G 3445、STKM 17C)
の注入ボルト(外形27.2mm、内系15mm、長さ3m、静止
ミキサーおよび逆止弁内装)を挿入し、口元部分約30cm
を2液硬質発泡ウレタン樹脂を含浸させたメリヤス製ウ
エスを鉄棒で押し込みシールした。
【0063】表1における製造例3の注入薬液組成物の
成分A20.5kgを薬液タンクAへ、成分B20kgを薬液タン
クBへそれぞれ入れ、成分A、成分B各々につき約1〜
2分間ポンプ循環を行なった。
【0064】つぎに成分Aおよび成分Bの各吐出ホース
先端をT字型ユニットに接続後、前記地山に固定した、
各注入孔のボルトにジョイントし、注入圧1〜40kg/cm
2 ・G、注入スピード5〜12kg/分で1孔あたり約50〜
180 kgをスムーズに注入することができた。
【0065】薬液を注入してから約 120分間後に、掘進
により地山の改良状態を調査したところ、固結範囲は半
径50cmの半球状であり、固結安定化していた。
【0066】注入固結部分をサンプラーで5cmφ×10cm
の円柱形状にサンプリングし、一軸圧縮強度を測定する
と 245kg/cm2 であった。なお、未改良部は破砕帯のた
めサンプリングが不可能であった。この結果、本発明の
注入薬液組成物は、その有効性が充分に証明され、固結
安定化層が形成されることが判明した。
【0067】実施例2 不安定なトンネル切羽先端の天盤部(大きな空隙を有す
る花崗岩破砕帯)の空隙充填および安定化を図るため
に、表1における製造例1の薬液注入による安定化を行
なった。施工方法は以下のようにして行なった。
【0068】すなわち、トンネル切羽先端の天盤部にト
ンネルアーチの中心から左右に60°、合計120 °の扇状
範囲内で、ジャンボ機で42mmφビットにより80cm間隔で
深さ3mの注入孔を10個削孔した。削孔角度は20°であ
った。えられた孔内に実施例1と同様の炭素鋼製(JIS
G 3455、STKM 17C)の注入ボルトを挿入し、口元部を実
施例1と同様にしてシールした。なお、各注入孔のボル
トは、掘削方向に対して左60°の位置のものから右60°
の位置のものへ向かってNo.1〜10とした。
【0069】表1における製造例1の注入薬液組成物の
成分A40kgを薬液タンクAへ、成分B40kgを薬液タンク
Bへそれぞれ入れた。
【0070】つぎに成分Aおよび成分Bの各吐出ホース
先端をT字型ユニットに接続後、前記地山に固定した、
各注入孔のボルト(No.1〜5)にジョイントし、N
o.1、3、5、2、4の順で注入圧1〜10kg/cm2
G、注入スピード5〜12kg/分で1孔あたり約120 kg、
No.1〜5で合計600 kg注入した。なお、比較のため
に、注入孔のボルトNo.6〜10については比較製造例
1の注入薬液組成物を用い、No.6、8、10、7、9
の順で同様にして合計600 kg注入した。
【0071】注入薬液組成物を注入してから約90分間経
過後に地山の安定化状況を確認するために注入孔周辺を
掘進し調査したところ、No.1〜5の左側天盤部は、
固結範囲が半径約40cmで半球状に固結しており、かつ大
きな空隙部も高密度でよくシールされていた。また、掘
削時にも天盤部からの崩落はなく、よく安定化されてい
た。
【0072】一方、No.6〜10の右側天盤部について
は、固結範囲が半径約11cmで半球状に固結していたが、
固結土と固結土との間隙に薬液が浸透していない未固結
土部が存在し、掘進時に一部土砂の崩落が発生し、改良
が不充分であった。
【0073】実施例2の結果より、本発明の注入薬液組
成物は注入ボルトより大きな空隙を有する花崗岩破砕帯
部に注入することにより空隙を完全にシールしかつ破砕
帯部にもよく浸透固結し、岩盤の安定化を図ることがで
き、トンネル掘削工事において非常に有益であることが
立証された。
【0074】実施例3 鉄筋コンクリート3階建ビルの屋上スラブの立上がりコ
ーナー部にクラックが発生し、降雨時に階下に漏水して
いた。この漏水部に製造例2の注入薬液組成物を注入
し、止水工事を行なった。
【0075】まずクラックに沿ってφ10mmのドリルを用
いて約30cmピッチで深さ約5cmの孔を35個削孔し、孔内
の削りくずや粉塵を圧縮空気で吹き飛ばしたのちに削孔
上に脱脂綿を約5mm厚にのせ、その上から外径約10mmの
注入パイプを木製ハンマーで打ち込んだ。
【0076】つぎに成分A10kgを手押ポンプ付薬液タン
クAへ、成分B15kgを手押ポンプ付薬液タンクBへ入れ
た。
【0077】タンクAおよびタンクBの吐出ホースの先
端を静止ミキサーを内装したY字管に継ぎ、各注入パイ
プにワンタッチジョイント形式でセットし、成分Aと成
分Bとの配合割合(重量比)約1/1.5 で手押ポンプを
上下に作動させて1孔あたり約1kg注入した。約1.5 時
間で35個全部の注入作業が完了した。
【0078】注入後、注入パイプを取り除き、コルク栓
を打ち込み、モルタルを塗布して仕上げた。約2週間後
に激しい降雨があったが、以前のような漏水はまったく
発生せず、クラックシールおよび止水に大変有効なこと
が立証された。
【0079】
【発明の効果】本発明の地盤や人工構造物などの安定化
用注入薬液組成物およびそれを用いた安定強化止水工法
は、以下に述べる〜の効果を奏する。
【0080】 (A)成分であるアルカリケイ酸塩水
溶液および(B)成分である有機ポリイソシアネート化
合物によって、さらに必要に応じて用いられる(D)成
分であるポリオール成分を用いたばあいにはかかる
(D)成分によって確実な尿素−無水ケイ酸複合体、ウ
レタン−無水ケイ酸複合体および網状の無水ケイ酸ゲル
体を主体とする発泡状の複合固結体が形成される。した
がって、固結硬化性能が高く確実に岩盤ないし地盤の安
定強化を達成することができ、かつ漏洩部では確実な止
水効果が奏される。
【0081】 (A)成分、(B)成分および(C)
成分である分子量が120 以上のアルコール性水酸基を1
個または2個有する三級アミン、ならびに(D)成分と
もに粘性が低く、さらに(A)成分と(C)成分との相
溶性が良好であり、確実に発泡固結するため浸透性にす
ぐれている。
【0082】 確実に発泡硬化し、固結体強度が大き
いため、空隙が大きいまたはクラックが多い、強度が要
求される不安定岩盤、地盤、構造物などの充填、安定強
化に有効である。
【0083】 (A)成分および(C)成分が水に溶
解しやすいことから、注入薬液組成物が取扱い者の皮膚
や衣服に付着したばあいでも、簡単に水洗して除去する
ことができ、安全性がきわめて高い。また(C)成分は
臭気が小さく、反応熱によって蒸気化して空気を汚染す
ることがない。さらに無溶剤系で、しかも(C)成分が
(B)成分と反応し、溶出することがないことからも労
働安全衛生面において安全性が高く、固結体の耐久性に
もすぐれている。
【0084】このように本発明の工法はすぐれた特徴を
有しており、一般山岳トンネルはもちろんのこと、大断
面トンネル掘削工事や大深度地下土木工事などにおいて
要求される、より確実かつ高強度で、経済的であり、安
全性にすぐれた不安定岩盤ないし地盤の安定強化、封止
および止水を達成するのにきわめて有効な工法である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)アルカリケイ酸塩水溶液、(B)
    有機ポリイソシアネート化合物および(C)分子量が12
    0 以上のアルコール性水酸基を1個または2個有する三
    級アミンからなる地盤や人工構造物などの安定化用注入
    薬液組成物。
  2. 【請求項2】 (D)ポリオール成分を含有してなる請
    求項1記載の安定化用注入薬液組成物。
  3. 【請求項3】 岩盤ないし地盤に所定間隔で複数個の孔
    を穿設し、前記孔内に中空の注入ボルトを挿入し、ボル
    トの開口部より請求項1または2記載の安定化用注入薬
    液組成物を岩盤ないし地盤に注入し、固結ないし封止せ
    しめることを特徴とする岩盤ないし地盤の安定強化止水
    工法。
  4. 【請求項4】 人工構造物に注入パイプを挿入し、該注
    入パイプを介して請求項1または2記載の安定化用注入
    薬液組成物を人工構造物および/またはその背面に注入
    し、固結ないし封止せしめることを特徴とする人工構造
    物の安定強化止水工法。
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