JP2743487B2 - 塩化ビニルの重合方法および重合開始剤 - Google Patents

塩化ビニルの重合方法および重合開始剤

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体及
びこれと共重合可能な単量体(以下、塩化ビニル系単量
体と略記する)を重合させる際に、特定の重合開始剤を
用いることにより、物性の良い重合体が高収率で得られ
る塩化ビニルの重合方法および重合開始剤に関するもの
である。
[従来の技術] 塩化ビニル系単量体を重合するに際し重合開始剤とし
て、従来よりt−ブチルペルオキシネオデカノエート、
ビス(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート
(以下、OPPと略記する)、3,5,5−トリメチルヘキサノ
イルペルオキシド、t−オクチルペルオキシネオデカノ
エート(以下、ONDと略記する)等が用いられることは
すでに公知である。これらのベンゼン中の0.1モル濃度
液における半減期が10時間となる温度(以下、10時間半
減期温度と略記する)はいずれも40〜65℃の範囲に入る
ものである。従って、これらは比較的高い重合温度を必
要とし、しかもかなり多量使用しなければ、重合が完結
しないという点で経済性に大きな問題があった。この点
を改良するため、また重合サイクルを短縮して生産性を
高めるため、ジイソブチリルペルオキシド(以下、IBPO
と略記する)などのより低温活性の重合開始剤が開発さ
れ、単独もしくは従来の重合開始剤と併用して用いられ
ている。
このような低温活性重合開始剤としては、具体的には
IBPO及びアセチルシクロヘキシルスルホニルペルオキシ
ド(以下、ACSPと略記する)(特公昭40−16795号公
報)等の10時間半減温度がいずれも40℃以下のものであ
る。
一方、特公昭59−14481号公報には、第三級アルキル
ペルオキシエステルによるビニル重合体の重合方法が記
載されている。この場合、アシル基側が炭素数11個まで
のアルキル基を有し、そのうち高々1個がメチル基であ
る第三級カルボキシル基であり、アルキルペルオキシ側
がフェニル基である第3級アルキルペルオキシエステル
の開示があり、その実施例においてα−クミルペルオキ
シネオデカノエート(以下CNDと略記する)の記載があ
る。
[発明が解決しようとする課題] しかし、従来の低温活性重合開始剤はその活性が十分
とは言えず、重合時間短縮の効果は小さかった。この点
から、より低温活性な重合開始剤が望まれている。ま
た、このような生産性向上と同時に、最近では特に重合
体の品質が重視されるようになり、高活性だけでなく重
合体の品質を向上させるような重合開始剤が望まれてい
る。
以上のような、生産性向上及び重合体の品質向上の点
において従来の低温活性重合開始剤はそれぞれ問題があ
った。
即ち、IBPOは重合活性の持続性がなく、またACSPは分
解生成物の衛生上の問題と、得られた重合体が着色する
など熱安定性が悪かった。
また、特公昭59−14481号公報による第三級アルキル
ペルオキシエステル類は、低温活性であるが、前記IBPO
及びACSPに比べ活性が弱いため、より低温活性でかつ重
合効率の良いものが引き続き望まれている。
[課題を解決するための手段] 本発明者らは、上記の従来の低温活性重合開始剤の問
題点について長期にわたって研究した結果、特定の重合
開始剤を用いることによって、より高収率で重合体が得
られ、かつ得られた重合体が熱安定性、特に着色性に優
れたものであること、さらに特定の他の重合開始剤と併
用することによって、単独使用時よりも重合サイクルを
短縮することができることを確認して本発明を完成し
た。
即ち、本発明は塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量
体及びこれと共重合可能な単量体を重合させるに際し、
一般式、 (ここでRは水素、イソプロピル基又は )で示される有機過酸化物を重合開始剤として使用する
方法である。
即ち、本発明の第三級アルキルペルオキシエステル
は、前式に示すように、電子供与性のイソプロピル基が
2つついた第三級の脂肪酸のペルオキシエステルであ
り、文献未記載の新規化合物である。本発明者らはこの
ペルオキシエステルが既に公知の第三級アルキルペルオ
キシエステルと較べ極めて低温活性であることを見いだ
した。例えば特公昭59−14481号公報によるネオヘプタ
ノエート、ネオオクタノエート、ネオノナノエート、ネ
オデカノエートなどのクミルペルオキシ誘導体は10時間
半減期温度が36℃であるのに対し、本発明のペルオキシ
エステルの10時間半減期温度は30℃である。
また同時に、本発明の有機過酸化物が前述したポリ塩
化ビニルの生産性向上の目的に、実用的に極めて有効な
重合開始剤であることを見いだし、本発明を完成するに
到った。
本発明の有機過酸化物は塩化ビニルの重合に単独で使
用するか、あるいはベンゼン中の0.1モル濃度液におけ
る半減期が10時間となる温度が30〜65℃の範囲にあるペ
ルオキシエステル、ジアシルペルオキシド及びペルオキ
シジカーボーネートのうち少なくとも1種よりなる重合
開始剤と併用することを特徴とする塩化ビニルの重合方
法および重合開始剤である。
本発明に使用される塩化ビニル単量体と共重合可能な
他のビニル単量体としては、例えばエチレン、酢酸ビニ
ル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリル酸エステル類
等である。
本発明に使用される重合開始剤は、一般式、 (ここでRは水素、イソプロピル基又は )で示される有機過酸化物(パーエステル)である。
具体的なパーエステルを列挙すると、クミルペルオキ
シ2,2−ジイソプロピルプロパノエート、α−(2,2−ジ
イソプロピルプロパノイルペルオキシ)ジイソプロピル
ベンゼン、α,α′−ビス(2,2−ジイソプロピルプロ
パノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン等であ
る。
これらは例えば以下のようにして得ることができる。
即ち、クミルヒドロペルオキシド、メタ,パラのジイ
ソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシドのそれぞれ
の単独又はそれら二種の混合物、メタ,パラのジイソプ
ロピルベンゼンジヒドロペルオキシドのそれぞれの単独
又はそれら二種の混合物のうちから選ばれるヒドロペル
オキシドと、2,2−ジイソプロピルプロパン酸クロライ
ドとを水酸化ナトリウムか水酸化カリウム又はピリジン
のようなアミン類を触媒として、通常のペルオキシエス
テルと同様の反応条件下で得られる。
即ち、溶媒として芳香族炭化水素(例えばトルエン、
エチルベンゼン)又は脂肪族炭化水素(例えばヘキサ
ン、オクタン、石油ナフサ、ミネラルスピリット、商品
名「シュルゾール」;シェル化学社製)を用いて合成す
るか、又は合成後希釈して用いることができる。なお、
反応温度は−10℃〜20℃程度である。
本発明に用いる2,2−ジイソプロピルプロパン酸クロ
ライドとは、2,2−ジイソプロピルプロパン酸に塩素化
剤、例えばPCl3、POCl3、SOCl2等を反応させた後に、反
応混合物から酸クロライド生成物を単離させてつくるこ
とができる。
ここで原料の2,2−ジイソプロピルプロパン酸は、商
品名「エクアシッド9」として出光石油化学社で製造さ
れているものを用いてもよい。
本発明に使用される前記一般式で示される重合開始剤
の添加量は一般に、塩化ビニル系単量体の仕込量100重
量部に対して純品換算で0.001〜2重量部であり、好ま
しくは0.01〜1重量部である、その量が0.001重量部未
満では重合速度が遅くなる傾向にある。また2重量部を
超えると重合反応の制御が困難となり、得られる重合体
の物性も低下する傾向にあるので好ましくない。
本発明で併用される重合開始剤は、10時間半減期温度
が30〜65℃であるペルオキシエステル、ジアシルペルオ
キシド及びペルオキシジカーボネートの少なくとも1種
である。
具体的なペルオキシエステルとしてはOND(41℃)、
t−ブチルペルオキシネオデカノエート(46.5℃)、t
−ブチルペルオキシネオヘキサノエート(52.1℃)、t
−ヘキシルペルオキシピバレート(53℃)、t−ブチル
ペルオキシピバレート(55℃)等、ジアシルペルオキシ
ドとしては、IBPO(32.5℃)、3,5,5−トリメチルヘキ
サノイルペルオキシド(59.5℃)、ラウロイルペルオキ
シド(62℃)等、ペルオキシジカーボネートとしては、
OPP(43.5℃)、ジ(2−エトキシエチル)ペルオキシ
ジカーボネート(43.5℃)、ジ−n−プロピルペルオキ
シジカーボネート(40.5℃)、ジイソプロピルペルオキ
シジカーボネート(40.5℃)等である。
これらの重合開始剤の添加量は要求される重合条件に
応じて適宜選択すればよいが、通常、本発明の有機過酸
化物の添加量の1/4〜4倍量である。
本発明において重合方法は通常は懸濁重合であるが、
本発明における重合開始剤を用いる以外は通常の処方で
なんら問題はない。
重合温度は一般に10〜75℃であり、好ましく30〜60℃
の温度範囲である。重合温度が10℃未満では重合時間が
長くなる傾向にあり、一方75℃を超えると重合開始剤の
寿命が短くなり、高重合転化率に到達させることが困難
となるので好ましくない。
[実施例] 以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
合成例1 (クミルペルオキシ2,2−ジイソプロピルプロパノエー
トの合成) 撹拌機を備えた200ml4つ口フラスコに35%水酸化カリ
ウム水溶液64.1gを入れ、撹拌下液温を15℃に保ちなが
ら、93.1%クミルヒドロペルオキシド37.6gを添加し
た。さらに撹拌下、液温を15℃に保ちつつ2,2−ジイソ
プロピルプロパン酸クロライド(出光石油化学社製飽和
第三級脂肪酸、商品名「エクアシッド9」を通常の塩素
化を行うことによって得た)35.3gを12分間で滴下し
た。液温を20℃まで上げ1時間撹拌を続けた後、冷水70
gを加え更に5分間撹拌した。水相を分離し、5%水酸
化ナトリウム水溶液5gで洗浄した後、水で3回洗浄し
た。この溶液を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させた。
その結果、無色透明液体として生成物44.2gを得た。こ
の溶液をIRで分析した結果、クミルペルオキシ2,2−ジ
イソプロピルプロパノエートであることを確認した。そ
の活性酸素量は3.91%であり、計算により純度94.4%、
収率71.5モル%であった。
合成例2 (α−(2,2−ジイソプロピルプロパノイルペルオキ
シ)ジイソプロピルベンゼン(メタ体、パラ体混合物)
の合成) クミルヒドロペルオキシドの代わりにジイソプロピル
ベンゼンモノヒドロペルオキシド(メタ体45%、パラ体
55%の混合物)を用いた以外は、合成例1に準じた方法
で製造を行い、無色透明の液体49.2gを得た。この溶液
をIRで分析した結果、α−(2,2−ジイソプロピルプロ
パノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼンであるこ
とを確認した。この溶液の活性酸素量を測定した結果、
4.49%であった。計算により純度93.9%、収率69.0モル
%であった。
合成例3 (α,α′−ビス(2,2−ジイソプロピルプロパノイル
ペルオキシ)−パラ−ジイソプロピルベンゼンの合成) クミルヒドロペルオキシドの代わりにパラ−ジイソプ
ロピルベンゼンジヒドロペルオキシドを用いた以外は、
合成例1に準じた方法で製造を行い、無色透明の液体3
7.9gを得た。この溶液をIRで分析した結果、α,α′−
ビス(2,2−ジイソプロピルプロパノイルペルオキシ)
−パラ−ジイソプロピルベンゼンであることを確認し
た。この溶液の活性酸素量を測定した結果、5.99%であ
った。計算により純度94.6%、収率70.8モル%であっ
た。
合成例4 (α,α′−ビス(2,2−ジイソプロピルプロパノイル
ペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(メタ体、パラ体
混合物)の合成) クミルヒドロペルオキシドの代わりにジイソプロピル
ベンゼンジヒドロペルオキシド(メタ体37%、パラ体64
%の混合物)を用いた以外は、合成例1に準じた方法で
製造を行い、無色透明の液体38.9gを得た。この溶液をI
Rで分析した結果、α,α′−ビス(2,2−ジイソプロピ
ルプロパノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼンで
あることを確認した。この溶液の活性酸素量を測定した
結果、6.01%であった。計算により純度95.1%、収率7
3.0モル%であった。
実施例1 容量400mlのステンレス製オートクレーブに、イオン
交換水200mlとポリビニルアルコール0.1重量部とを入れ
溶解させた。次に、合成例1で得たクミルペルオキシ2,
2−ジイソプロピルプロパノエート(以下、CNNと略記す
る)を純品換算で0.07重量部を添加した後、−80℃以下
に冷却し、塩化ビニル単量体100重量部を加えた、オー
トクレーブの空間部分を窒素ガスで十分に置換した後密
栓した。それを45℃に保った恒温水槽中に6時間浸し重
合させた。撹拌は、オートクレーブを水槽中で32r.p.m
で回転させることにより行った。重合を行った後、冷却
し未反応の塩化ビニル単量体を除き、得られた白色粉末
を、2回100mlの水で洗浄した後、真空で乾燥した。重
量から塩化ビニル重合体の収率は80%であった。
得られた塩化ビニル重合体の熱安定性試験として下記
に示す着色性試験を行った。その結果を表−1に示す。
(着色性試験) 塩化ビニル重合体100重量部、ジオクチルフタレート5
0重量部、ジブチルスズマレート2.5重量部を混合し、16
0℃のロール上で10分間混練し、1mm厚みのシートを取り
出し、そのシートの着色度合を目視にて観察した。
実施例2〜4 重合開始剤のCNNに代えて合成例2〜4で得た有機過
酸化物を用いた以外は、実施例1に準じて塩化ビニル単
量体の重合を行った。これらの結果をそれぞれ表−1に
示す。なお、重合開始剤の略号は、次の意味を表す。
PBNN:α−(2,2−ジイソプロピルプロパノイルペルオキ
シ)ジイソプロピルベンゼン(メタ体、パラ体混合物) pDBNN:α,α′−ビス(2,2−ジイソプロピルプロパノ
イルペルオキシ)−パラ−ジイソプロピルベンゼン DBNN:α,α′−ビス(2,2−ジイソプロピルプロパノイ
ルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン 実施例5、6 重合開始剤のDBNNの添加量、重合温度を変えた以外
は、実施例1に準じて塩化ビニル単量体の重合を行っ
た。これらの結果をそれぞれ表−1及び表−2に示す。
実施例7 表−2に示されるように、重合開始剤としてDBNN0.03
重量部に加えOPP0.03重量部を用いた以外は、実施例1
に準じて塩化ビニル単量体の重合を行った。その結果を
表−2に示す。
実施例8、9 表−2に示されるように、重合開始剤としてOPPの代
わりにOND及びIBPOをそれぞれDBNN0.03重量部に加えて
用いた以外は、実施例1に準じて塩化ビニル単量体の重
合を行った。
実施例10 表−2に示されるように、重合開始剤としてPBNN0.07
重量部を用い、さらに塩化ビニル単量体100重量部の代
わりに塩化ビニル単量体90重量部と酢酸ビニル単量体10
重量部を用いた以外は実施例1に準じて重合を行った。
比較例1〜3 重合開始剤としてCNNに代え、従来から使用されてい
るIBPO、ACSP及びCNDをそれぞれ用いた以外は、実施例
1に準じて塩化ビニルの重合を行った。これらの結果を
表−3に示す。
比較例4〜6 表−3に示されるように、重合開始剤としてOPPを0.0
3重量部加え、従来から使用されているIBPO、ACSP及びC
NDをそれぞれ0.03重量部用いた以外は実施例1に準じて
塩化ビニル単量体の重合を行った。
上記表−1〜表−3中の略号は次の意味を表す。
(1):純品換算値(重量部) (2):重合時間 6時間 以上、表−1〜表−3から明らかなように、重合開始
剤として従来の重合開始剤(IBPO、ACSP及びCND)を用
いた方法では、単独で用いてもまた他の重合開始剤と併
用した場合でも、重合体収率が低く、さらに得られる重
合体の耐熱性(着色性)が悪いのに対し、本発明の重合
開始剤を用いた方法では物性の良い重合体が収率良く得
られる。
[発明の効果] 以上詳述したように、特定の重合開始剤を用いる本発
明によれば、従来の重合開始剤(例えばIBPO)を用いた
方法に比べて重合活性の持続性が高く、また従来の重合
開始剤(例えばACSP)を用いた方法に比べ、得られる重
合体の熱安定性、特に着色がない点で優れているという
効果を奏する。また、従来の重合開始剤(例えばCND)
を用いた方法に比べて重合速度が速く、従って結果とし
て重合体収率が高くなる点で優れているという効果を奏
する。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体及
    びこれと共重合可能な単量体を重合させるに際し、重合
    開始剤として一般式、 (ここでRは水素、イソプロピル基又は )で示される有機過酸化物を用いることを特徴とする塩
    化ビニルの重合方法。
  2. 【請求項2】塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体及
    びこれと共重合可能な単量体を重合させるに際し、 (A)一般式、 (ここでRは水素、イソプロピル基又は )で示される有機過酸化物及び (B)ベンゼン中の0.1モル濃度液における半減期が10
    時間となる温度が30〜65℃の範囲にあるペルオキシエス
    テル、ジアシルペルオキシド及びペルオキシジカーボネ
    ートの少なくとも1種よりなる重合開始剤を用いること
    を特徴とする塩化ビニルの重合方法。
  3. 【請求項3】一般式、 (ここでRは水素、イソプロピル基又は )で示される有機過酸化物を有効成分とする塩化ビニル
    系単量体の重合開始剤。
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