JP2736994B2 - 薬液注入工法及び装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 開示技術は、遠浅海岸、河川、湖沼周辺等の軟弱地盤
等の地盤改良工事における地盤内への固化薬液の噴出注
入を行う技術分野に属する。

〈要旨の概要〉 而して、この出願の発明は軟弱地盤等の地盤の改良工
事において、当該地盤中に固化用の薬液を噴出注入する
に際し、当該地盤にケーシングパイプ等により所定の削
孔を形成し、該削孔中に注入管をシール材等を介して挿
入し、該ケーシングパイプの引抜き後削孔の内壁に対し
ダブルタイプ等の所定数複数のパッカーを拡大させて圧
接し、パッカー間に於いて薬液を噴出し、地盤中に当該
薬液を注入させ、その後パッカーを縮小してステップダ
ウン等を行い、次のステップで再び薬液の地盤中への注
入を行うようにした薬液注入工法に関する発明であり、
特に、削孔中において、注入管をステップ毎に昇降移動
させる際のパッカーの拡縮に際し上部等のパッカーの内
管外側面に沿ってホース等を添設し、水を供給すること
によりパッカー縮小プロセスにおけるパッカー間の薬液
のリークによるゲル化を阻止し、薬液を稀釈して注入管
のステップストローク移動がスムースに行えるようにし
た薬液注入工法に係る発明である。

〈従来技術〉 周知の如く国土の狭隘な我が国に於いては土地の有効
利用は極めて重大な問題であり、限られた国土の再開発
等の技術は著しく重要性を有している。

而して海岸、河川、湖沼等の周辺の地盤の軟弱地盤等
の強度を増強してビルやトンネル等の構築物を構築する
ようにすることは極めて有意義であり、従来より各種の
地盤改良工法技術が研究開発され、多くの技術が実用化
されている。

このうち、所謂サンドドレーン工法やケミコパイル工
法等に比して薬液注入を地盤に対して行う技術は当該薬
液の地盤中への浸透がし易い等の点から、又、そのゲル
タイムを当量反応の調整により自在に設計することが出
来る等の利点から広く用いられているが、一方、地盤中
の節理や層間に侵入し易く、地下水汚染等の公害問題等
の発生も伴い易い等の不都合さから設定量の薬液の地盤
中への設定領域に対する確実な量での噴出注入が行われ
ることが望まれ、外管内に設けた内管にダブルパッカー
等を設けた所謂ダブルパッカー工法やストレーナー注入
工法が開発されて有効に利用されてきている。

〈発明が解決しようとする課題〉 このうちストレーナー注入タイプの二重管ダブルパッ
カー方式について、第４図以下の図面により略説する
と、ストレーナー注入タイプのダブルパッカー注入管１
は所定の可撓性の外管２の内部に同じく所定の可撓性の
内管３が同芯的に軸装され、その所定部位にはフランジ
4,4を介し上下２段の、例えば、ゴム製等のパッカー5,5
が２段にダブルタイプに設けられており、その内側の腔
部６に対しては内管３の内部に同芯的に設けられた給水
管７のノズル８が臨されて各パッカー５をして所定に拡
大縮小自在にされている。

そして内管３と給水管７の間の断面リング状の薬液送
給通路９には薬液の噴出口10,10…が所定に穿設されて
おり、外管２の対応する所定の領域には同じく薬液の噴
出口11,11…が穿設され、該外管の外側面には熱収縮性
等の所定の合成樹脂製の薄膜状のストレーナー12が密着
状に添設され周方向所定サイズの設定数のスリット13,1
3…が穿設されて地盤中への薬液の注入を行うようにさ
れている。

かかる構造の薬液注入管１を用いて所定の軟弱地盤中
に所定の薬液を注入して地盤の強度をアップする地盤改
良工事を行うに際しては、まず第５図に示す様に、所定
軟弱地盤14に対し所定のケーシングパイプ15を打設して
削孔16を形成し、該削孔16内にケーシングパイプ15を介
しその内部に第６図に示す様に、所定のシール材17を充
填し、続いて第７図に示す様に、各パッカー５を縮小し
た状態の薬液注入管１を可及的に同芯的に挿入し、次い
で第８図に示す様に、削孔16内よりケーシングパイプ15
を引抜いて削孔16内に直接シール材17があるように、
又、該シール材17中に薬液注入管１があるようにセット
する。

そして、該薬液注入管１を所定に上下動させて所定の
ステップ１に停止させて第４図に示す給水管７内に地上
より所定圧力の水を給水すると、給水は給水口8,8より
パッカー５の内部の腔部内に充満されてパッカー５を拡
大して第10図に示す様に、削孔16の内壁面に外管２を介
して圧接され、そこで薬液供給通路９に所定の薬液を供
給すると、噴出口10から一定の薬液がパッカー5,5間の
シール材17を通り外管２の噴出口11,11…を介しストレ
ーナー２のスリット13,13…から地盤中に第９図に示す
様に薬液18を注入していく。

そして、所定量の薬液18の注入が終了すれば、薬液供
給通路９に対する製薬の供給を停止し、給水管７への給
水を停止することにより第10図に示す様に、パッカー5,
5を縮小して薬液注入管１を所定ストローク下げてステ
ップダウンを行い、次ぎのステップでの薬液注入を行う
ようにしている。

しかしながら、かかる薬液注入による地盤改良工事に
おいて注入する薬液のゲルタイムが短い場合は、パッカ
ー5,5の拡大縮小を介してのステップダウン等は可及的
にスムースに行われるものの、薬液のゲルタイムが60
分、120分等の長いゲルタイムである場合には第10図に
示す様に、図のステップ段階での薬液注入が終了した時
点でパッカー５を縮小すると、パッカー5,5の間に充填
されていた薬液が下側に於いては下方に流下するもの
の、上部のものは上側のパッカー５の上部にまわり込ん
で上昇し、ゲルが進行し、そのゲルタイムによっては薬
液のゲル化が促進される結果、ゲル19が薬液注入管１を
締めつけてステップダウンやステップアップを拘束して
極端な場合には薬液注入管１の昇降のステップストロー
クを不可能にするような不具合があった。

にもかかわらず、先述したごとくかかるダブルパッカ
ータイプやストレーナー注入タイプのストレーナー注入
間においては、パッカーの拡大、縮小は不可欠であり、
したがって、その優れた利点が損われやすいという欠点
もあった。

〈発明の目的〉 この出願の発明の目的は上述従来技術に基づくダブル
パッカー方式等のパッカー利用による地盤改良における
パッカーの上下のゲルチョークの問題点を解決すべき技
術的課題とし、本来的なパッカー利用による地盤改良の
利点を生かしながら、しかも、スムースにパッカーの拡
大、縮小が行え、薬液注入管のステップアップ、ダウン
がスムースに行え、設計通りの地盤改良等が行えるよう
にして建設産業における土木技術利用分野に益する優れ
た薬液注入工法を提供せんとするものである。

〈課題を解決するための手段・作用〉 上述目的に沿い先述特許請求の範囲を要旨とするこの
出願の発明の構成は前述課題を解決するために、海岸、
河川、湖沼周辺等の軟弱地盤等の地盤強度アップの改良
工事を行うに際し、ダブルパッカー等を有する薬液注入
管を地盤内に予め形成した削孔内に挿入し、シール材を
介し各パッカーを拡大させてパッカー間から所定の薬液
を噴出し外管のストレーナー等から地盤中に所定薬液を
注入し、薬液注入の終了後にパッカーを縮小し、その
間、パッカーの縮小間隙からパッカー間に充填された薬
液がリークして内管外側に回り込んだような場合におい
ては、パッカー上の内管に沿って添設したホースを介し
て水を供給し回り込んだ薬液を稀釈して短時間にゲル化
することなく、したがって次のステップにゲルのチョー
クによる薬液注入管の移動が妨げられることなくスムー
スに移動し、設計通りの地盤改良に係わる薬液注入が行
えるようにした技術的手段を講じたものである。

〈実施例〉 次に、この出願の発明の一実施例を第１乃至３図を参
照して説明すれば以下の通りである。

尚、第４図以下の図面と同一態様部分は同一符号を用
いて説明するものとする。

第１図に示す態様において１′はこの出願の発明の要
旨の１つの中心をなす薬液注入管であり、その構造は先
述第４図に示した在来態様の薬液注入管１とその概略の
構造は同一であり、ただ内管３の上部外側面にブラケッ
ト20を介し給水用のホース21が一体的に併設されてその
下端開口部が上部のパッカー５の上側に開口して臨され
ている点が相違するものである。

而して、パッカー5,5や薬液の供給、及び、地盤14に
対する薬液の注入等の態様は第４図の在来態様と実質的
に変りはないものであり、前述第５乃至10図に示すパッ
カー作用による地盤14内に対する所定のステップ毎の薬
液注入プロセスは同一であるために、その施行プロセス
については説明を省略する。

かかる構成の薬液注入管１′により第５乃至10図同様
の軟弱地盤14に対する薬液注入を行うに際し、第５図同
様に、ケーシングパイプ15を介して地盤14中に所定の削
孔を形成し、所定のシール材17を第６図同様に充填し、
薬液注入管１′を第７図同様に削孔16内に同芯的に挿入
し、ケーシングパイプ15を引き上げ、給水通路７に所定
の給水を行ってパッカー５の内側腔部６内に水を圧給
し、パッカー5,5をして外管２を介し削孔16内面に圧接
させ、約得供給通路に所定の薬液を供給し、噴出口10か
らパッカー5,5の間に噴出すると、薬液はシール材17を
介して外管２の噴出口11,11を介しストレーナー12の各
スリット13から地盤14内に在来態様同様に注入されステ
ップでの薬液注入を終了すると、給水通路７への水の供
給を停止することにより各パッカー5,5は縮小し、そこ
でパッカー5,5の間の薬液はパッカーを回り込んで内管
３の外側面に充填されようとする、特に、第３図に示す
様に、ステップダウン方式においてはその傾向が強く、
下側のパッカー５に於いては薬液が下方に流下するが上
部の５に於いては薬液がパッカーの該パッカー５の上部
に回り込んで内管３の外側に充填されてゲル化が進行し
ようとする。

そこで、ステップダウンのタイミングでパッカーの縮
小プロセスにおいてホース21に所定流量の水を供給する
ことにより、該ホース21からの水は上側のパッカー５の
上部に回り込む薬液18と混合されてこれを稀釈しゲル化
時間を殺減し、或は、全くこれを解消し、ステップダウ
ンプロセスにおける薬液注入管１の固定を阻止しチョー
ク作用をなくすことが出来、したがって、所定段数のス
テップダウンプロセスをたどりながら順次各ステップ毎
の薬液注入を行っていく。

このようにして、設計通りの薬液注入がスムースに行
われることになる。

尚、この出願の発明の実施態様は上述実施例に限るも
のでないことは勿論であり、例えば、ステップアップ方
式に対しても適用可能である等種々の態様が採用可能で
ある。

又、設計変更的にはパッカーは３段以上の段数にする
等も可能であることは勿論である。

そして、適用対象の施工は軟弱地盤改良のみならず他
の土木建設工事に適用出来ることも勿論のことである。

〈発明の効果〉 以上、この出願の発明によれば、基本的にストレーナ
ー等を有するダブルパッカー薬液注入工法等の注入工法
において、パッカーの拡大、縮小を介し該パッカー間に
薬液を圧給してストレーナー等から地盤中に薬液を注入
するプロセスを例えば、ステップダウン方式等より各ス
テップ毎に行うに際しパッカーを拡大、縮小するプロセ
スでパッカー間に圧給された薬液が縮小するパッカーに
回り込んで上部や下側のパッカー部分にリークして充填
され、経時的にゲル化が促進されてステップストローク
の薬液注入管の昇降プロセス等を行う間に薬液注入管を
固定してチョークし、ステップアップやステップダウン
が出来なくなるというような虞れがなく、スムースな薬
液注入が行えるという優れた効果が奏される。

而して、使用する装置においても、例えば、薬液注入
管の内管外側面に沿って吸水ホースをパッカーの端部に
臨ませる等で良いために、構造が極めて簡単であり、そ
の製造組付も容易で、低コストで出来、而も、保守点検
整備等も殆どいらず耐久性に富み、ランニング性が良い
という効果もある。

【図面の簡単な説明】

第１乃至３図はこの出願の発明の１実施例の説明図であ
り、第１図は薬液注入管の概略部分切截断面図、第２、
３図は薬液注入プロセス模式断面図、第４図は従来技術
に基づく薬液注入管の部分切截断面図、第５乃至10図は
同薬液注入プロセス模式断面図である。 １′……注入管、５……パッカー、 14……地盤、16……削孔、 18……薬液、21……ホース、

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】削孔中に複数のパッカーを有する注入管を
   挿入し、該削孔中にてステップ毎に該パッカーを拡縮し
   て注入管を移動させパッカー間への薬液圧給を介して地
   盤中に薬液を注入する工法において、上記パッカーの縮
   小時に該パッカー側部からリークする薬液に対し水を供
   給して稀釈させ、ゲル化防止するようにしたことを特徴
   とする薬液注入工法。
2. 【請求項２】上記水の供給を注入管側面に沿って設けた
   ホースを介して行うことを特徴とする特許請求の範囲第
   １項記載の薬液注入工法。
3. 【請求項３】上記ステップをダウンステップにするよう
   にしたことを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の薬
   液注入工法。
4. 【請求項４】削孔中に複数のパッカーを有する注入管を
   挿入し、該削孔中にてステップ毎に該パッカーを拡縮し
   て注入管を移動させパッカー間への薬液圧給を介して地
   盤中に薬液を注入する工法に直接使用する薬液注入装置
   において、複数のパッカーを有する内管の少くとも１つ
   のパッカーに開口を臨ませた給水ホースが内管に沿わせ
   て添設されていることを特徴とする薬液注入装置。