JP2736819B2 - 改良された細胞分離膜 - Google Patents

改良された細胞分離膜

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弘幸 石井
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、異種細胞の分離、若しくは各種細胞と細胞
からの代謝物質を分離するための分離膜に関するもので
ある。
[従来の技術] 各種細胞分離膜はセルロース系のものが多用されてお
り、分離する細胞の大きさにより孔径を決定することが
多いが、孔自体は網膜構造であるため、その網膜に細胞
が目詰まりして、本来透過するはずの細胞や各種物質が
透過しなくなる欠点があった。
この対策として、ポリカーボネートやポリエステルか
らなる薄膜に電子線を衝突させて、ほぼ円形の孔をあけ
る試みが行われている。
しかしながら、この方法では分離特性を向上させるこ
とが可能であるが、細胞に存在するアミノ酸の重合速度
を増大させるので、分子量増大等あまり好ましいもので
はない。
また、ポリカーボネートやポリエステル系の分離膜で
は、血液中の白血球を吸着するという欠点がある。
[発明が解決しようとする問題点] 従って、細胞分離膜として使用されているセルロース
系の膜に円孔をあけることは極めて困難であり、ポリカ
ーボネートやポリエステル系の分離膜に至っては、円形
の孔をあけることは可能であるが、各種細胞に悪影響を
与えるという欠点がある。
[問題を解決するための手段] 発明者らは、これらの問題点である。円形の孔形成並び
に各種細胞に与える悪影響について鋭意研究を続けた。
その結果、従来円形の孔をあけることが可能なポリカ
ーボネートと、各種細胞に悪影響を与えないポリメタク
リル酸の中間的重合物は、円形の孔をあけることが可能
なうえ、各種細胞にほとんど悪影響を与えないという予
想外な事実を発見した。
これにより、上記問題点は一挙に解決し、本発明を完
成するに至った。
本発明は、 一般式(A) (ただし、式中、A1及びA2は同一若しくは異なってい
て、水素原子、炭素原子数が1乃至3のアルキル基、又
はシアノ基を意味し、R1〜R10は同一若しくは異なって
いて、水素原子、又は炭素数が1乃至3のアルキル基を
意味する) で表される化学物質を、厚さ1.0mm以下の薄膜状重合
物に成形し、孔径が5μ以下の孔を1000個/cm2以上あ
けた細胞分離膜である。
この発明に係る細胞分離膜の主原料である一般式
(A)で表される化学物質は、末端にエチレン性二重結
合を有するアクリル酸又はその誘導体とビスフェノール
−A又はその誘導体のエステルである。
上記一般式(A)において、A1及びA2は基本的にメチ
ル基であることが望ましいが、親水性/疎水性の調節を
する意味において、炭素原子数が2又は3のアルキル
基、又は水素原子であってもよく、重合速度を増加させ
る意味においては、シアノ基であることが望ましい。ま
た、R1〜R10は水素原子又は炭素原子数が1乃至3のア
ルキル基を意味するが、R1及びR6がメチル基であり、R2
〜R5及びR7〜R10は水素原子であることが原料供給の面
で安定しており、望ましいが、親水性/疎水性の調節を
する意味において、それぞれ、水素原子、及び、炭素原
子数が1乃至3のアルキル基であってもよい。
これらのエステルの誘導体としては、例えば、ビスフ
ェノール−A−ジアクリラート、ビスフェノール−A−
ジメタクリラート、ビスフェノール−A−ジミアノアク
リラート、2,2′−ジヒドロキシジフェニールメタンジ
アクリラート、2,2′−ジヒドロキシジフェニールメタ
ンジメタクリラート等を挙げることができるが、原料供
給の面からすれば、ビスフェノール−A−ジアクリラー
ト又はビスフェノール−A−ジメタクリラートが望まし
い。
ところで、本発明の細胞分離膜は、円形の孔をあける
ことが可能なポリカーボネート、及び細胞に悪影響を与
えないポリメタクリル酸の中間的重合物を使用すること
に大きな特徴があるが、この中間的重合物を得るための
原料である、一般式(A)で表される化学物質は、従来
公知の方法により重合させることができる。重合手段と
しては、過酸化ベンゾイル等の熱重合開始剤を添加して
重合させる方法、及び、ベンゾインメチルエーテル等の
光重合開始剤を添加して光照射により重合させる方法が
あるが、作業性の面からして、後者の光重合による重合
方法が望ましい。
尚、重合の際に使用する重合開始剤は、光を照射しな
い限り、化学的に安定である点でも、熱重合開始剤より
も光重合開始剤である方が好ましい。このような光重合
開始剤としては、例えば、紫外線壊裂型のものとして
は、ベンゾインメチルエーテル、1−ヒドロキシシクロ
ヘキシルフェーニルケトン、ベンジルジメチルケタール
等を挙げることができ、可視光線重合型のものとして
は、カンファーキノン、チオバルビツール酸、2−クロ
ルチオキサントン、チオミヒラーズケトン等を挙げるこ
とができるが、2−クロルチオキサントン及びチオミヒ
ラーズケトンは最も望ましい。上記重合開始剤は、一般
式(A)で表される化学物質に対して、0.1重量%乃至
5.0重量%、好ましくは2.0重量%乃至3.0重量%、添加
すれば、容易に重合させることができる。
一般式(A)で表される化合物は一般に液体である
が、粘度が100c.p.s以上であることが多く、重合開始剤
を均一に分散させることは困難である上に、厚さ1mm以
下の膜状に塗布することも困難である。発明者らは、こ
の問題点を解決するには、末端にエチレン性二重結合を
有する希釈剤を使用すれば良いことを発見した。該化合
物に添加する希釈剤としては、例えば、メタクリル酸メ
チル、メタクリル酸エチル、エチレングリコールジメタ
クリラート、2−ヒドロキシエチルメタクリラートなど
を例示することができる。これらの希釈剤を一般式
(A)で表される化学物質に対して1重量%乃至10重量
%の割合で添加することにより、重合開始剤を容易に均
一分散させることができ、又、厚さが10μの薄膜に塗布
して重合させることも可能となる。
尚、上記方法で調製させた薄膜は従来公知の方法によ
り円形の孔を形成させることが可能である。即ち、上記
方法により得られた薄膜に原紙炉より得られた電子線を
垂直に衝突させて、0.3nm〜5nmの細孔をあけ、更にアル
カリでエッチングをすれば、容易に円形の孔を形成する
ことができる。孔径及び孔密度を変えるためには、それ
ぞれ、電子線の衝突速度及び電子線の密度を必要に応じ
て変えれば良い。尚、孔密度は、1000個/cm2以上好ま
しくは、100000〜300000個/cm2あれば望ましいが、孔
密度が2000000個/cm2以上になると、孔自体が重なる場
合があるため、好ましくない。
尚、一般式(B)で表される 一般式(B) は、それぞれ実用使用上の透過物質の種類、及び透過速
度により決定するが、一般の細胞一代謝物質の分離膜に
おいては、0.003乃至0.03が望ましく、人血の白血球分
離膜においては、0.008乃至0.01が望ましい。尚、上記
開孔率が、0.003未満では、透過速度が小さくなり、分
離時間が多くなるので好ましくない。また上記開孔率が
0.03を越えると、孔径が2μを超える場合は問題ない
が、孔密度が2000000個/cm2を超えるので余り好ましく
ない。従って、開孔率は、0.003乃至0.03、好ましくは
0.08乃至0.01に設定すれば、効率よく異種細胞の分離、
及び各種細胞と代謝物質を分離することができる。
[発明の効果] 本発明の細胞分離膜は、異種細胞の分離、各種細胞培
養において、細胞と代謝物質の分離を目的として開発さ
せたものである。即ち、従来のセルロース系の分離膜、
ポリカーボネート並びにポリエステル系の分離膜とは異
なり、細胞が孔に目詰まりすることなく、また、細胞自
体に悪影響を与えることなく必要な成分分離をする事が
できるなどの長所がある。
上記のごとき特徴を持った細胞分離膜は、細胞と細胞
からの代謝物質を分離するための培養器の分離膜として
極めて有用である。また、血液中の赤血球と白血球の分
離も可能であり、白血球の分離膜としても有用である。
本発明の細胞分離膜は上述した目的の為に開発された
ものであるが、孔径と孔密度を容易に変えることが可能
であることを利用して、粒径が0.1μ以下の超微粒子の
分離膜や、クリーンルームの防塵膜としても応用するこ
とができる。
以下に示す実施例並びに比較例をもって、本発明を詳
細に説明する。
[実施例−1] 2lの3つ口セパラブルフラスコにビスフェノール−A2
30g、メタクリル酸200g、P−トルエンスルフォン酸20
g、及びトルエン1を入れ、窒素雰囲気中で120〜140
℃で常圧下5時間脱水縮合反応を行い、次いで減圧度50
mmHg〜300mmHg、180℃で5時間反応させて、ビスフェノ
ール−A−ジメタクリラートを合成した。この合成物を
5回水洗いして、P−トルエンスルフォン酸を除去し
た。
この合成物90重量%、メタクリル酸メチル5重量%、
チオミヒラーズケトン2.5重量%及びトルメチルアミン
2.5重量%をよく混合して、粘度が3.6c.p.s(23℃)の
組成物を調整した。この組成物を厚さ0.1mmの膜状に塗
布し、出力500Wのハロゲンランプを10分間照射して、膜
状重合物を得た。
該膜状重合物に、電子線密度が300000個/cm3の電子
線を秒速30km/secの速度で衝突させた。次いで、20%水
酸化ナトリウム溶液に2時間浸した後、純水で減圧濾過
法により20分間洗浄して、本発明に係る細胞分離膜を得
た。
該細胞分離膜の代表的な物性を表−1に示す。
[実施例−2] 内容積が200mlのアクリル製の円筒容器(直径50mm)
の中間を、実施例−1で得られた本発明細胞分離膜で仕
切り、一方の相(相I)には溶質濃度が0.9%の培養液
(イーグルMEMリキッド:日水製薬株式会社製造)を、
もう一方の相(相II)には生理食塩水(大塚製薬株式会
社製造)を入れた場合の、両相の培養液濃度の経時変化
を測定した結果、表−2を得た。
表−2から明らかなとおり、培養液は自由に透過して
いることが解る。従って、培養液中には細胞からの代謝
物質が多量に存在していることから、該細胞分離膜は代
謝物質を透過することが解る。
[実施例−3] 実施例−2で使用した装置の、相Iには実施例−2で
使用した培養液と豚の肝細胞(細胞の大きさが5〜10
μ)を、相IIには実施例−2で使用した培養液のみを入
れて、両相の細胞の量の経時変化を測定した結果、表−
3を得た。表−3から明らかなとおり、膜の孔径2μよ
り大きい細胞は一切透過しないことが解る。
[実施例−4] 実施例−2で使用した装置の、相Iには、人血を実施
例−2で使用した生理食塩水で10倍に希釈し、クエン酸
ナトリウムを100ppmの濃度になるように添加した溶液
を、相IIには、実施例−2で使用した生理食塩水のみに
クエン酸ナトリウムを100ppmになるように添加した溶液
を入れ、両相における赤血球数及び白血球数の経時変化
を測定した結果、表−4及び表−5を得た。
双方の表から明らかなとおり、該細胞分離膜は、赤血
球は透過しないが、白血球は透過していることから、白
血球の分離膜としても有用であることが解る。
[比較例] 実施例−1で得られた本発明細胞分離膜、酢酸セルロ
ース膜、ポリエステル膜、ポリカーボネート膜につい
て、膜の表面積1cm2当たり2mlの人血を浸漬させて、白
血球数の経時変化を測定した結果、表−6を得た。表−
6から明らかなとおり、本発明に係る細胞分離膜は白血
球をほとんど吸着しないことが解る。従って、本発明に
係る細胞分離膜が生体に与える悪影響は、先の酢酸セル
ロース膜、ポリエステル膜及びポリカーボネート膜に比
較して小さいといえる。
表−6中の単位は個/mm3、数値は十の位を四捨五入
したものである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(A) (ただし、式中、A1及びA2は同一若しくは異なってい
    て、水素原子、炭素原子数が1乃至3のアルキル基又は
    シアノ基を意味し、R1〜R10は同一若しくは異なってい
    て、水素原子、又は炭素原子数が1乃至3のアルキル基
    を意味する) で表される化学物質を、厚さ1.0mm以下の薄膜状重合物
    に成形し、孔径が5μ以下の孔を1000個/cm2以上あけ
    たことを特徴とする改良された細胞分離膜。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲(1)の一般式(A)で表
    される化学物質に、末端にエチレン性二重結合を有する
    希釈剤を添加し薄膜状重合物に成形したことを特徴とす
    る改良された細胞分離膜。
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