JP2735422B2 - ルチル単結晶の処理方法 - Google Patents

ルチル単結晶の処理方法

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JP2735422B2 JP3319051A JP31905191A JP2735422B2 JP 2735422 B2 JP2735422 B2 JP 2735422B2 JP 3319051 A JP3319051 A JP 3319051A JP 31905191 A JP31905191 A JP 31905191A JP 2735422 B2 JP2735422 B2 JP 2735422B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、融液、溶液、気体から
成長したルチル単結晶の品質をより向上させるための処
理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】方解石の代替品として、偏光プリズムな
ど高精度光学機器部品に利用されるルチル単結晶は、結
晶内でサブグレインなどの格子欠陥を発生しやすく、従
来は、単結晶育成時の条件を調節したり、その後の熱処
理を慎重に制御することで、このような格子欠陥を抑
え、高品質の結晶を得るように試みられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来行
われてきたやり方では、単結晶中の格子欠陥を完全に除
去することができていない。
【0004】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たもので、格子欠陥のない高品質のルチル単結晶を効率
よく得ることができるルチル単結晶処理方法を提供する
ことを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明にしたがい、ルチル単結晶を、その結晶軸の
c軸、即ち、(001)面を45度以上の角度をもって
切るようにウエハ状に切断し、そのウエハ表面上にTi
2、Al23、SiO2、Ga23、K2CO3、Na2
CO3、ZrO2のいずれか一種を薄膜コーティングした
後、所定条件で熱処理し、次いで上記薄膜コーティング
された表面を鏡面研磨する。
【0006】また、一旦熱処理して、割れやサブグレイ
ンを生じたルチル単結晶のウエハに対して、その表面に
TiO2、Al23、SiO2、Ga23、K2CO3、N
2CO3、ZrO2のいずれか一種を薄膜コーティング
した後、所定条件で熱処理し、次いで上記薄膜コーティ
ングされた表面を鏡面研磨することによっても、上記課
題を解決することができる。
【0007】
【作用】薄膜コーティングした上で熱処理することで、
薄膜成分が作用して、ルチル単結晶の原子配列が理想的
に整理され直され、格子欠陥が除去される。また、熱処
理中に発生する格子欠陥の発生を防止することもでき
る。
【0008】薄膜コーティングは、結晶軸のc軸に平行
でない、即ち、c軸を切るような面に施す。とりわけ、
c軸に対して45度以上の角度をもって切るのがよい。
これは、ルチルの原子密度に関し(001)面が極端に
小さく、そのために原子が拡散し易く、薄膜成分がウエ
ハ表面に効果的に作用すると考えられるからである。
【0009】薄膜コーティングに用いる成分は、TiO
2、Al23、SiO2、Ga23、K2CO3、Na2
3、ZrO2のいずれか一種であるが、特に好ましく
は、Al23、Ga23、K2CO3である。
【0010】薄膜の形成方法は限定されず、例えば、薄
膜原料を水溶媒に懸濁させ、刷毛で塗ったり、ディップ
コーティングする。またゾル-ゲル法やスパッタ法等で
薄膜を形成させるのも有効である。
【0011】熱処理の際の温度とその保持時間について
は、処理温度を変化させると適切な保持時間も変化す
る。例えば、800℃の処理温度であれば、30時間程
度、当該温度を保持する必要があるが、1000℃にす
れば、10時間程度の保持で足りる。
【0012】薄膜コーティングするウエハの表面は、コ
ーティングの際に薄膜との密着性がよくなる程度に研磨
するのがよく、実施例にも示すように、熱処理後と同じ
く鏡面研磨するのが適切である。これにより、薄膜成分
がウエハ表面に効果的に作用することになる。
【0013】
【実施例】以下に本発明の実施例をあげてさらに具体的
に説明する。
【0014】実施例1 フローティングゾーン法で育成した直径25mm、長さ
130mmのルチル単結晶を、結晶軸のc軸に垂直に切
断し、厚さ2mmのウエハを複数作製し、それぞれの両
端面を鏡面研磨した。
【0015】一方、純度が99%以上のTiO2、Al2
3、SiO2、Ga23、K2CO3、Na2CO3、Mg
O、CaCO3、Fe23、ZrO2のそれぞれの粉末5
gを、それぞれ10ccの純水に混入して、ガラス棒で
撹拌させた後、10分間超音波洗浄器で分散させて、懸
濁液を調製した。
【0016】これらの調製液を刷毛でそれぞれウエハの
両面に塗り、室温20℃、湿度55%の部屋で自然乾燥
させた。完全に乾燥させてから、これら薄膜コーティン
グ済みウエハと表面をコーティングしていないウエハと
を電気炉に入れ、酸素雰囲気中で100℃/hrで温度
を上昇させ、1000℃で12時間保持した後、100
℃/hrで常温まで温度を下降させた。
【0017】熱処理後のこれらのウエハの両面を再び鏡
面研磨して、レンズで5mmの直径に集光した白色光を
ウエハの研磨面に対して平行に照射し、白濁並びにサブ
グレイン(小傾角粒界)の程度を観察した。その結果を
表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】実施例2 実施例1と同様に、フローティングゾーン法で育成した
直径25mm、長さ130mmのルチル単結晶を、結晶
軸のc軸に垂直に切断し、厚さ2mmのウエハを複数作
製し、それぞれの両端面を鏡面研磨した。これらのウエ
ハを薄膜コーティングすることなく、実施例1と同じ条
件で熱処理を行い、ウエハに白濁とサブグレインとを生
成させた。
【0020】一方、純度が99%以上のTiO2、Al2
3、SiO2、Ga23、K2CO3、Na2CO3、Zr
2のそれぞれについて、実施例1と同様にして、懸濁
液を調製した。
【0021】これらの調製液を、実施例1と同様にウエ
ハ両面にコーティングし、室温20℃、湿度55%の部
屋で自然乾燥させた後、電気炉に入れ、酸素雰囲気中で
1000℃で12時間の間、再熱処理した。熱処理温度
までの加温速度、及び熱処理後の冷却速度は、実施例1
の熱処理工程と同じく、100℃/hrである。
【0022】再熱処理後のこれらのウエハの両面を再び
鏡面研磨して、実施例1と同様にして白濁並びにサブグ
レインの程度を観察したところ、Al23、Ga23
2CO3のウエハにおいては、白濁、サブグレインが完
全に消滅していた。またTiO2、SiO2、Na2
3、ZrO2のそれぞれについても、ほとんど白濁、サ
ブグレインが存在していなかった。
【0023】実施例3 実施例1で用いたと同じルチル単結晶を、結晶軸のc軸
に対して垂直、45度及び平行にそれぞれ切断し、それ
ぞれ厚さ2mmのウエハとし、両端面を鏡面研磨した。
それぞれのウエハに対して、純度99%以上のTi
2、Al23、K2CO3から実施例1と同様に調製し
た懸濁液を薄膜コーティングし、実施例1と同じ条件で
乾燥、熱処理、鏡面研磨した。そして実施例1と同様に
して白濁並びにサブグレインの程度を観察した。その結
果を表2に示す。
【0024】
【表2】
【0025】この結果から、薄膜コーティングを施すこ
とによる効果は、結晶軸のc軸を切る方向でコーティン
グ処理するときに得られることが判明する。ルチルの原
子密度は(001)面が極端に小さいことが知られてお
り、そのため原子が拡散し易く、薄膜とウエハ表面とで
反応が促進されると考えられる。
【0026】実施例4 熱処理温度及びその保持時間の変化による薄膜コーティ
ング処理の効果の程度を知るために、Al23につい
て、熱処理温度及びその保持時間を変えて、実験を行っ
た。その結果を表3に示す。なお、熱処理温度及びその
保持時間以外の条件は、実施例1と同じである。
【0027】
【表3】
【0028】
【発明の効果】請求項1の処理方法においては、ルチル
単結晶を、その結晶軸のc軸を45度以上の角度をもっ
て切るようにウエハ状に切断し、そのウエハ表面上に所
定成分を薄膜コーティングした後、所定条件で熱処理す
るので、ルチルの原子密度が小さい方向に対して薄膜成
分が効果的に作用して、ルチル単結晶の原子配列が理想
的に整理され、格子欠陥が防止され、また除去される。
更にウエハ表面が薄膜コーティングに先立って鏡面研磨
されれば、薄膜との密着性がよくなり、薄膜成分がウエ
ハ表面に効果的に作用し、所期の目的が容易に達成され
る。
【0029】請求項2の処理方法においては、一旦熱処
理して格子欠陥を生じたルチル単結晶のウエハに対し
て、その表面に所定成分を薄膜コーティングした後、所
定条件で再び熱処理するので、薄膜成分が作用して、ル
チル単結晶の原子配列が理想的に整理され直し、格子欠
陥が除去される。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ルチル単結晶を、その結晶軸のc軸を4
    5度以上の角度をもって切るようにウエハ状に切断し、
    そのウエハ表面上にTiO2、Al23、SiO2、Ga
    23、K2CO3、Na2CO3、ZrO2のいずれか一種
    を薄膜コーティングした後、所定条件で熱処理し、次い
    で上記薄膜コーティングされた表面を鏡面研磨すること
    を特徴とするルチル単結晶の処理方法。
  2. 【請求項2】 熱処理したルチル単結晶のウエハ表面に
    TiO2、Al23、SiO2、Ga23、K2CO3、N
    2CO3、ZrO2のいずれか一種を薄膜コーティング
    した後、所定条件で熱処理し、次いで上記薄膜コーティ
    ングされた表面を鏡面研磨することを特徴とするルチル
    単結晶の処理方法。
  3. 【請求項3】 ルチル単結晶のウエハ表面上に薄膜コー
    ティングする前に、当該ウエハ表面を鏡面研磨すること
    を特徴とする請求項1又は2に記載の処理方法。
  4. 【請求項4】 上記熱処理での所定条件が、800℃の
    処理温度を30時間程度保持するものであるか、100
    0℃の処理温度を10時間程度保持するものであるかの
    いずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれ
    か一項に記載の処理方法。
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