JP2732863B2 - 光学素子成形用型 - Google Patents

光学素子成形用型

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、光学素子成形用型に関する。
〔従来の技術〕
一般に、光学ガラスを加熱プレスにより成形して所望
の光学素子を得ることが広く行われている。ところで、
この加熱プレス手段による場合は、成形用型の離型性の
良いことが非常に重要であり、この離型性は成形用型の
材料が有するガラス濡れ性(ガラスとの接着力)に大き
く依存している。
従来、光学素子成形用型としては、金属材料からなる
型基材の表面に窒化チタン(TiN)層を形成したもの
(特開昭59−123629号公報)、型基材の表面にクロム
(Cr)メッキを施したもの、成形用型全体をsus400系ス
テンレス鋼で形成したもの等が用いられていた。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、上記従来の光学素子成形用型にあっては、高
温下(500℃以上)での連続成形においてガラスとの離
型性が悪く、その結果としてガラスとの融着が生じてし
まった。また、メッキ等を施した成形用型の場合には、
表面硬度が低いために傷が付き易く、また変形も生じ易
かった。すなわち、従来の光学素子成形用型は、金型寿
命が著しく短いという問題があった。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもの
で、離型性が良好で型の鏡面性を保持できるとともに、
適当な硬度を有した光学素子成形用型を提供することを
目的とする。
〔課題を解決するための手段) 上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも成
形面に、クロム(Cr)窒化物,クロム(Cr)酸化物,ア
ルミニウム(Al)窒化物およびアルミニウム(Al)酸化
物の混合体からなる薄膜層を形成して光学素子成形用型
を構成した。
ガラスが濡れにくい材料の条件としては、熱力学的に
安定でかつ不活性でなければならない。熱力学的に安定
でかつ不活性な単体は、酸化物になった場合でも、その
特性を維持できる。そこで、まず、熱力学的に安定でか
つ不活性な単体としてCrおよびAlを選択した。また、熱
力学的に安定か否かは、標準生成Gibbsエネルギーによ
り判断できる。表1に6種の物質の標準生成Gibbsエネ
ルギー(ΔG)を示す。
表1から判るように、窒化物に比べて酸化物の方が熱
力学的に安定であり、Al2O3,Cr2O3,TiO2の順に安定して
いる。
本発明において、Cr窒化物,Cr酸化物,Al窒化物および
Al酸化物の混合体からなる薄膜層を形成するには、Crと
Alとの金属間化合物を被覆材料とし、金属またはセラミ
ックス等からなる金型の表面に、例えばPVD法により被
着する。
〔作用〕
上記構成の光学素子成形用型によれば、Cr窒化物とAl
窒化物(例えばCrNとAlN)とにより、硬度および表面粗
度特性を保持し、Cr酸化物とAl酸化物(例えばCr2O3とA
l2O3)とにより、良好な離型性を確保し、ガラスとの融
着を防止する。
〔実施例〕
(第1実施例) 本実施例の光学素子成形用型は、第1図に示すような
もので、超硬合金またはこれと近似した熱膨張率を有す
る型基材1の成形面1aには、薄膜層2が形成されてい
る。薄膜層2の表面は、表面粗度Rmax=0.03μm以下に
研磨加工仕上げされており、この表面により直接光学素
子を成形する。また、薄膜層2は、Cr窒化物,Cr酸化物,
Al窒化物およびAl酸化物の混合体により形成されてい
る。
薄膜層2は、PVD法であるイオンプレーティング法に
より形成され、蒸着材料は、重量組成比でCr:Al=7:3の
Cr−Al化合物を用いた。かかるCr−Al化合物を蒸着する
ことにより、薄膜層2の原子組成比は、Cr:Al:N:O=2:
1:1:1.5〜1:1:1:1.5となった。また、薄膜層2の膜厚
は、機械的膜厚d=1μmとした。
上記実施例の光学素子成形用型における薄膜層2の表
面硬度を微小硬度計により測定したところ、ビッカース
硬度Hv=1200kgf/mm2(25gf荷重)であり、良好な硬度
を有していた。
また、光学素子成形用型は、特に高温状態においてプ
レス成形を行う場合には、高温耐酸化性、高温酸化安定
かつ不活性、表面粗度,硬度等の特性要求を満足するこ
とを基本とし、成形時の離型性の良いことが第一の要求
である。そこで、上記実施例の光学素子成形用型を用い
て、フリント系光学ガラスを金型温度500℃以上で連続
成形を行ったところ、5000ショット以上経過しても良好
な離型性を有し、ガラスの融着は発生しなかった。さら
に、表面粗度,硬度もほとんど変化が認められなかっ
た。また、光学顕微鏡(×200)で拡大して観察したと
ころ、クラック等の発生は一切認められなかった。
表2は、離型性,表面粗度および硬度の測定結果を示
す。
(第2実施例) セラミックス(SiC)からなる型基材の成形面に、Cr
窒化物,Cr酸化物,Al窒化物およびAl酸化物の混合体から
なる薄膜層を形成した。薄膜層の表面は、表面粗度Rmax
=0.08μm以下に研磨加工仕上げされており、この表面
により直接光学素子を成形する。
薄膜層は、PVD法であるスパッタリング法により形成
され、蒸着材料は、前記第1実施例と同様に重量組成比
でCr:Al=7:3のCr−Al化合物を用いた。また、薄膜層の
原子組成比および膜厚も、第1実施例と同様であった。
本実施例の光学素子成形用型における薄膜層の表面硬度
を微小硬度計により測定したところ、ビッカース硬度Hv
=1380kgf/mm2(25gf荷重)であり、良好な硬度を有し
ていた。
また、本実施例の光学素子成形用型を用いてフリント
系光学ガラスを金型温度500℃以上で連続成形を行った
ところ、5000ショット以上経過しても良好な離型性を有
し、ガラスの融着は発生しなかった。上記表2中に、本
実施例の光学素子成形用型の特性を示す。
また、比較のために、sus400系ステンレス鋼またはモ
リブデン(Mo)により型基材を形成しかつその成形面に
TiNの薄膜層を形成した従来例のものについて、前記各
実施例のものと同様に成形を行った場合の結果を表2中
に示した。
なお、上記各実施例では、蒸着材料のCr−Al化合物の
重量組成比をCr:Al=7:3としたが、本発明はかかる実施
例に限定されるものではなく、Cr:Al=9:1〜5:5の重量
組成比をもつCr−Al化合物であれば良好な薄膜層を得る
ことができる。Cr:Al=9:1よりAlが少ない場合には、Al
2O3生成による濡れ性効果が低減してしまう。一方、Cr:
Al=5:5よりAlが多い場合には、蒸着材料としてのCr−A
l化合物の生成が困難で、特にCrとAlとが均一に混じり
合わず、またAl2O3からの発熱により、溶融,混合さ
せ、徐冷する際、割れ易く、さらに溶融時、Alの大半が
溶融るつぼに酸化反応状態でこびりついてしまう。
また、上記各実施例では、薄膜層の膜厚をd=1μm
としたが、d=0.5〜1.5μmの膜厚であれば良好であ
る。
〔発明の効果〕
以上のように、本発明の光学素子成形用型によれば、
少なくとも成形面に、Cr窒化物,クロム酸化物,Al窒化
物およびAl酸化物の混合体からなる薄膜層を形成してい
るので、離型性が良好であり、また表面粗度,硬度およ
び密着性も良好で、型寿命が著しく長くなる。
【図面の簡単な説明】
図は本発明の光学素子成形用型の第1実施例を示す縦断
面図である。 1……型基材 1a……成形面 2……薄膜層

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも成形面に、クロム窒化物,クロ
    ム酸化物,アルミニウム窒化物およびアルミニウム酸化
    物の混合体からなる薄膜層を形成したことを特徴とする
    光学素子成形用型。
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