JP2731462B2 - 抵抗溶接用電極 - Google Patents

抵抗溶接用電極

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JP2731462B2
JP2731462B2 JP14937791A JP14937791A JP2731462B2 JP 2731462 B2 JP2731462 B2 JP 2731462B2 JP 14937791 A JP14937791 A JP 14937791A JP 14937791 A JP14937791 A JP 14937791A JP 2731462 B2 JP2731462 B2 JP 2731462B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は被溶接体に加圧力を加え
つつ、通電を行う抵抗溶接技術において使用される抵抗
溶接用電極に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、スポット溶接又はシーム溶接等
の抵抗溶接に使用される電極には、短時間とはいえ大電
流が流れる。そして、この電極には抵抗発熱が生じると
共に、溶接部に投入した熱量の多くは電極に逃げるた
め、電極先端部の温度は 400乃至700℃にも達する。従
って、抵抗溶接用電極材料としては、耐熱性、高温強
度、及び高導電性等が要求されており、このため、抵抗
溶接用電極は通常Cu−Cr合金により形成されてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年、車両
等の軽量化を目的として、アルミニウム板が使用される
ことが多くなってきた。しかし、アルミニウムは熱伝導
率が高いため、電極には短時間で大電流を流す必要があ
る。このため、電極の損傷が極めて大きくなる。而し
て、Cu−Cr合金は他の従来の電極材に比して導電性
が優れているものの、アルミニウム板の抵抗溶接のよう
な苛酷な使用状況下においては、必ずしも必要な特性を
十分に満足しているとはいえない。即ち、このCu−C
r合金は、アルミニウムの溶接に際し、耐熱性及び高温
強度が十分とはいえず、電極先端部の変形が生じること
がある。また、Cu−Cr合金は溶融Alに対して濡れ
性が良いため、その表面で脆い合金層が生成しやすい。
このため、従来のCu−Cr合金製電極はアルミニウム
の溶接に際して寿命が短いという欠点がある。そして、
電極の寿命が短ければ電極材のコストが高くなるだけで
なく、電極の取り替え及びドレッシングのために、多大
の時間と労力とを費やすことになる。
【0004】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、耐熱性、高温強度及び導電性が優れ、電極
先端部が変形し難いと共に、溶融Alに対する耐濡れ性
が優れていて、脆い合金層の生成が少なく、優れた寿命
を持つ抵抗溶接用電極を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る抵抗溶接用
電極は、引張強度が 600N/mm2 以上であると共に導電
率が30%IACS以上、酸素含有量が100ppm以上の粉末焼結
体からなる芯材と、この芯材の周囲に配置され導電率が
80%IACS以上の溶製金属材料からなる外層とにより構成
され、その全体での引張強度が 400N/mm2 以上であ
り、平均導電率が60%IACS以上であることを特徴とす
る。
【0006】また、前記芯材と前記外層との間には、引
張強度が 600N/mm2 以上であると共に導電率が30%IA
CS以上の溶製材からなる中間層、又は常温における引張
強度が 550N/mm2 以上であると共に 500℃における引
張強度が 450N/mm2 以上であるステンレス鋼等のFe
基合金、Ni基合金及びCo基合金からなる群から選択
された磁性をもたない合金からなる中間層が設けられて
いることが好ましい。
【0007】
【作用】本願発明者等は前述した従来技術の欠点を解消
するために、アルミニウム材の抵抗溶接用電極として必
要な強度及び熱伝導度等の特性を満足する合金材料を開
発すべく種々実験研究を行なった。その結果、アルミニ
ウム材の抵抗溶接用電極としては、引張強度が 400N/
mm2 以上であり、導電率が60%IACS以上、より好ましく
は70%IACS以上であることが必要であることが判明し
た。強度が高いと共に被溶接材との耐濡れ性が優れた合
金としては、例えばCu合金粉末に酸化物、硼化物、炭
化物及び窒化物等のセラミックス粉末又はMo、Nb、
Ta、V及びW等の高融点金属粉末を分散させた粉末焼
結体がある。しかし、これらの粉末焼結体は導電率の点
で十分な特性を満たしているとはいえない。
【0008】そこで、本願発明者等は高強度の粉末焼結
体を芯材とし、この芯材の周囲に導電率が高い溶製金属
材料を配置した複合材に着目した。即ち、抵抗溶接用電
極材料に求められる強度と高導電性は本来相反する特性
であるため、単独の材料でこれらの両特性を満足させる
ことは難しい。このため、強度と耐濡れ性を必要とする
芯部に導電率をある程度犠牲にした分散強化合金を配
し、この芯部(芯材)の外側に純銅等の高導電材を配し
て電極チップを構成する。この場合に、分散強化合金は
粉末冶金法等により製造されるため高価なものであり、
できるだけ芯部の径は小さくすることが好ましい。しか
し、芯部の径を小さくし過ぎると、苛酷な溶接条件にお
いては、マッシュルーミング等のような電極先端部の変
形が生じやすい。
【0009】本発明においては、芯材を粉末焼結体とし
て強度と耐濡れ性を確保する。そして、この芯材の周囲
に外層又は中間層と外層とを配置して、2層構造又3層
構造とする。例えば、外層に導電性が良い無酸素銅を配
置し、その内側の中間層にNiが 1.1乃至 2.1重量%、
Siが0.25乃至0.45重量%、Coが 0.3乃至 0.5重量
%、Crが0.001 乃至0.01重量%、Mgが0.001 乃至0.
01重量%であり、残部が実質的にCuよりなる合金を配
して強度を向上させる。
【0010】なお、電極の芯材、中間層及び外層の複合
比は例えば以下のようにして決定することができる。先
ず、電極の外径が例えば16mmの場合には、ナゲット径が
約 5mmであり、この大きさのナゲットを形成して被溶接
材を接合するためには、その強度を確保するために芯材
の径を 5mm以上にする必要がある。また、中間層と外層
との比率は、目標とする特性値を満足するようなものに
する。例えば、全体での引張強度を 500N/mm2 とし、
平均導電率を70%IACSとすると、各層の引張強度は、芯
材 650N/mm2 、中間層 650N/mm2 、外層 310N/mm
2 とすることができる。また、導電率は芯材が50%IAC
S、中間層が54%IACS、外層が100 %IACSとすることが
できる。
【0011】芯材は、その引張強度が 600N/mm2 以上
であることが必要である。一般的に、抵抗溶接用電極の
外径は約16mmであるので、芯材の引張強度が 600N/mm
2 未満の場合は、電極の全体での引張強度を 400N/mm
2 以上とすることが困難である。図3に示すように、電
極11は、アルミニウム材5の溶接時には、シャンク1
2から約 880Kgの応力で押圧される。このため、電極
の平均強度が 400N/mm2 未満であると、図中矢印で示
すように、電極の端部が座屈変形してしまう。従って、
芯材の引張強度は 600N/mm2 以上であることが必要で
ある。
【0012】また、芯材の導電率が30%IACS未満である
と、芯材自体が抵抗発熱して、軟化してしまう。また、
芯材自体の温度が高温になるため、被溶接材と融着しや
すくなる。更に、芯材に流れる電流が少なくなるため、
リングナゲットが発生し、溶接不良になる。このため、
芯材の導電率は30%IACS以上、より好ましくは45%IACS
以上であることが必要である。
【0013】外層の導電率が80%IACS未満であると、電
極の平均導電率を60%IACS以上とすることが困難にな
る。従って、外層の導電率は80%IACS以上であることが
必要である。なお、この外層は、異なる材料からなる複
数の層により構成されたものであってもよい。
【0014】外層が銅系材料のみからなる場合は、特に
高温での強度が不足して、電極先端部の座屈変形を招来
し、電極の寿命が短くなることがある。このような不都
合を防止するために、又は芯材と外層との密着性を向上
させる緩衝材として、芯材と外層との間に中間層を設け
てもよい。この場合は、中間層の引張強度及び導電率を
夫々 600N/mm2 以上及び30%IACS以上とする。なお、
この中間層は、異なる材料からなる複数の層により構成
されたものであってもよい。また、ステンレス鋼は高温
における強度が高いという性質がある。従って、中間層
としてステンレス鋼を使用する場合は、その常温におけ
る引張強度が 550N/mm2 以上であり、且つ、 500℃の
温度における引張強度が 450N/mm2 以上であればよ
い。
【0015】芯材を構成する粉末焼結体は、引張強度が
600N/mm2 以上であると共に導電率が30%IACS以上で
あり、且つ、酸素含有量が100ppm以上であることが必要
である。このような特性を有する粉末焼結体としては、
1例として、具体的には以下に示すものがある。
【0016】本発明に係る抵抗溶接用電極の芯材は、例
えば、銅合金粉末に、硼化物、酸化物、窒化物、炭化物
並びに、Mo、Nb、Ta、V及びWからなる群から選
択された少なくとも1種の粉末を含有する粉末焼結体か
らなる。また、前記芯材は、平均粒径が30μm以下のC
u−Ni−Si−Co−Ag混合粉末に、平均粒径が10
μm以下の硼化物粉末を0.1 乃至5.0 重量%混合してな
る粉末焼結体であってもよい。この場合は、前記Cu−
Ni−Si−Co−Ag混合粉末中の各粉末の配合比
は、Ni粉末が1.1 乃至2.1 重量%、Si粉末が0.25乃
至0.45重量%、Co粉末が0.3 乃至0.5 重量%、Ag粉
末が0.01乃至0.1 重量%、残部がCu粉末である。
【0017】また、この混合粉末に、更に、平均粒径が
30μm以下のZr粉末をCu−Ni−Si−Co−Ag
−Zr混合粉末に対する配合比で、0.01 乃至0.3 重量%
混合することが好ましい。
【0018】更に、前記Cu、Ni、Si、CoはCu
合金粉末として添加してもよい。この場合に、このCu
合金中における各成分は、Cu合金粉末及びAg粉末の
総量中における含有量で、Ni:1.1 乃至2.1 重量%、
Si:0.25乃至0.45重量%及びCo:0.3 乃至0.5 重量
%の組成を有し、残部実質的にCuからなり、平均粒径
が30μm以下である。
【0019】更にまた、前記Cu合金は、Cu合金粉末
及びAg粉末の総量中における含有量で、Zr:0.01乃
至0.3 重量%を更に含有する。
【0020】なお、前記硼化物粉末は、例えば、ZrB
2 粉末である。
【0021】次に、上述の抵抗溶接用電極の芯材の各成
分添加理由及びその組成限定理由について説明する。
【0022】[芯材]硼化物、酸化物、窒化物、炭化物、Mo、Nb、Ta、
V及びW ZrB2 等の硼化物は導電性セラミックスとして知られ
ている。これらは高温になると熱伝導率が高くなるとい
う金属とは逆の性質を示す。更に、セラミックスの性質
として一般的な高融点溶融金属(特に、Al)に対する
耐濡れ性が優れているという特性も有している。即ち、
Alが濡れにくく、電極へのAlの融着が生じにくい。
従って、このような硼化物の性質は特にアルミニウム抵
抗溶接用電極の構成材料として有用である。ZrB2
末の含有量が0.1 重量%未満の場合はその効果が小さ
く、5 重量%を超えるとその添加効果が飽和するばかり
でなく、延性の低下及び被削性の低下等の電極チップ加
工上の弊害が大きくなるため、好ましくない。更に、延
性の低下等により、溶接時の加圧によって電極先端部に
割れが発生しやすくなり、電極寿命を縮める原因ともな
る。従って、ZrB2粉末の含有量は 0.1乃至5.0重量%
とすることが好ましい。なお、ZrB2 以外の他の硼化
物粉末、例えばTiB2 ,HfB6 ,LaB6 を使用し
てもよく、またこれらの混合物(例えば、ZrB2 +T
iB2 )であってもよい。
【0023】硼化物の外に、酸化物、窒化物及び炭化物
等のセラミックス粉末並びにMo、Nb、Ta、V及び
W等の高融点金属の粉末を銅合金粉末中に分散させた粉
末焼結体としてもよい。これらの酸化物等も、被溶接材
であるアルミニウム材との耐濡れ性が優れ、常温から高
温における強度が高い。従って、芯材には、硼化物、酸
化物、窒化物、炭化物、Mo、Nb、Ta、V及びWか
らなる群から選択された1種又は2種以上の粉末を含有
することが好ましい。
【0024】Ni粉末; 1.1乃至 2.1重量% Niは強度向上に寄与する元素である。Ni含有量が
1.1重量%未満ではSiが0.25乃至0.45重量%含有され
ていても強度向上効果は少ない。また、Ni含有量が2.
1 重量%を超えると強度向上効果が飽和し、導電率も低
下する。従って、Ni粉末の含有量は 1.1乃至 2.1重量
%とすることが好ましい。
【0025】Si粉末;0.25乃至0.45重量% SiはNiと共に強度向上に寄与する元素である。Si
含有量が0.25重量%未満ではNiが 1.1乃至 2.1重量%
含有されていても強度向上効果は少なく、また0.45重量
%を超えて含有されると、合金の導電率が低下する。従
って、Si粉末含有量は0.25乃至0.45重量%とすること
が好ましい。
【0026】Co粉末; 0.3乃至 0.5重量% CoはSiとの化合物を形成して強度の向上に寄与し、
また、導電率の向上にも寄与する。更に、温度上昇に伴
う結晶粒の粗大化を防止して耐熱性にも寄与する。Co
含有量が 0.3重量%未満ではその効果が小さい。また、
Co含有量が 0.5重量%を超えると上述の効果はあるも
のの、含有量が増える割には効果向上が少なく、且つ高
価となる。従って、Co粉末含有量は 0.3乃至 0.5重量
%とすることが好ましい。
【0027】Ag粉末;0.01乃至 0.1重量% AgとCuの共晶温度は-779℃であるため、Cu粉末に
Ag粉末を混合することによって、導電率を劣化させる
ことなく、焼結を促進させ充填率を高める効果がある。
AgはAgろうに置き換えても良く、その効果は何ら変
わりはない。Ag粉末の含有量が0.01重量%未満ではそ
の効果は小さく、0.1 重量%を超えて含有しても効果は
飽和するばかりでなく高価となる。従って、Ag粉末含
有量は0.01乃至 0.1重量%とすることが好ましい。
【0028】Zr粉末;0.01乃至0.3 重量% Zrは、酸素と化合して高強度のZrO2 を生成する。
このZrO2 の分散強化及び析出効果により、強度がよ
り一層向上し、電極の寿命を延ばすことができる。Zr
粉末の含有量が0.01重量%未満の場合は、上述の効果が
少なく、Zr粉末の含有量が0.3 重量%を超えると、そ
の添加効果が飽和するばかりでなく導電率の低下をもた
らす。従って、Zr粉末の含有量は0.01乃至0.3 重量%
であることが好ましい。
【0029】酸素;100ppm以上 酸素は、耐Al濡れ性を向上させる作用を有する。酸素
含有量が100ppm未満であると、芯材の耐Al濡れ性向上
効果を得ることができない。従って、酸素含有量は100p
pm以上、より好ましくは500ppm以上とすることが必要で
ある。また、酸素は、上述の如く、Zrと化合してZr
2 を生成し、電極芯材の硬度を向上させる効果もあ
る。
【0030】次に、各粉末の平均粒径の限定理由につい
て説明する。
【0031】Ni,Si,Co,Ag,Cu粉末;30μ
m以下 粉末の平均粒径が30μmを超えると、電極製造時におけ
る高温静水圧押出し工程及びその後の冷間加工工程によ
っても充填率を97%以上にすることは難しい。この充填
率が97%未満であると、延性及び導電率の低下が生じる
ため、好ましくない。従って、これらの粉末の平均粒径
は30μm以下とすることが好ましい。
【0032】ZrB2 粉末等の硼化物粉末;10μm以下 ZrB2 粉末等の硼化物粉末はCu合金中に分散して、
溶融Alに対する耐濡れ性を向上させるという効果を有
しているが、平均粒径が10μmを超えるとこの分散が不
均一となるため、その効果が十分に発揮されない。従っ
て、ZrB2 粉末等の硼化物粉末の平均粒径は10μm以
下とする。
【0033】また、Zr粉末の平均粒径が30μmを超え
ると、分布が不均一となり、その効果が低減される。従
って、Zr粉末の平均粒径は30μm以下とする。
【0034】なお、本発明に係る抵抗溶接用電極は、前
述の如く、Ni粉末、Si粉末、Co粉末、Ag粉末、
Zr粉末及びCu粉末の各金属粉末を硼化物粉末に混合
した混合物に限らず、所定量のNi、Si、Co、Zr
を含有するCu合金の粉末に、Ag粉末及び硼化物粉末
を混合したものでも良い。
【0035】[中間層]次に、中間層の組成限定理由に
ついて説明する。
【0036】なお、Ni,Si及びCoの含有量につい
ては上述の粉末組成の場合の理由と同様であるので、M
g及びCrについてのみ説明する。
【0037】Mg; 0.001乃至0.01重量% MgはCu合金中に不可避的に混入してくるSを、安定
な化合物MgSとして母相中に固定し、Cu合金の熱間
加工性を向上させる元素である。Mg含有量が0.001重
量%未満の場合はこの効果は少ない。また、Mgが0.01
重量%を超えて含有されると、Cu合金の鋳塊中にCu
+MgCu2 の共晶(融点が722 ℃)が生じ、722 ℃以
上の温度に加熱したときに割れが発生して熱間加工性が
劣化する。従って、Mg含有量は 0.001乃至0.01重量%
とすることが好ましい。
【0038】Cr; 0.001乃至0.01重量% Crは鋳塊の粒界を強化し、熱間加工性を向上させると
共に、耐熱性及び高温強度の向上に寄与する元素であ
る。Cr含有量が 0.001重量%未満の場合はこのような
効果は少ない。また、0.01重量%を超えてCrを含有し
てもその添加効果が飽和するのに加え、Cu合金の鋳造
性も劣化する。従って、Crの含有量は 0.001乃至0.01
重量%とすることが好ましい。
【0039】このような組成を有する銅合金を中間層に
配し、芯部に前述の混合粉末焼結体を配し、外層に無酸
素銅を配置した電極は、強度及び導電率が優れていると
共に、溶融Alに対する耐濡れ性も優れている。従っ
て、この電極はAl板の抵抗溶接に使用する電極として
極めて有益である。
【0040】[外層]次に、外層の組成限定理由につい
て説明する。
【0041】Ag;0.01乃至0.5 重量% Agは無酸素銅の導電率を概して低下させることなく、
強度及び耐熱性を向上させる元素である。Ag含有量が
0.01重量%未満の場合はこの効果は少ない。また、Ag
が0.5 重量%を超えて含有しても、その添加効果は飽和
するばかりでなく、コストの上昇を招来する。従って、
Ag含有量は0.01乃至0.5 重量%とすることが好まし
い。
【0042】Zr;0.01乃至0.3 重量% ZrはCu中に微細なCu3 Zrとして析出し、導電率
を殆ど低下させることなく、強度及び耐熱性を向上させ
る元素である。Zr含有量が0.01重量%未満の場合はこ
の効果は少ない。また、Zrが0.3 重量%を超えて含有
しても、その添加効果は飽和するばかりでなく、巨大な
Cu3Zrの晶出による特性の劣化を招来する。従っ
て、Zr含有量は0.01乃至0.3 重量%とすることが好ま
しい。
【0043】Sn;0.01乃至0.3 重量% Snも、無酸素銅の導電率を殆ど低下させることなく、
強度及び耐熱性を向上させる作用がある。Sn含有量が
0.01重量%未満の場合は、この効果が少ない。また、S
nを0.3 重量%を超えて含有しても、強度及び耐熱性向
上の効果が飽和するばかりでなく、導電率が大きく低下
する。従って、Sn含有量は0.01乃至0.3 重量%とする
ことが好ましい。
【0044】
【実施例】次に、本発明の実施例について、添付の図面
を参照して説明する。
【0045】図1は、本発明の実施例に係る抵抗溶接用
電極を示す模式図である。
【0046】電極1は、芯材2、この芯材2の周囲に配
置された中間層3及びこの中間層の周囲に配置された外
層3により構成されている。そして、この電極1の下部
(先端部)は、所定の曲率で湾曲している。また、この
電極1の上部には溝7が設けられており、アルミニウム
材5を溶接する際には、シャンク(図示せず)を介し
て、冷却媒体により電極1が冷却されるようになってい
る。
【0047】アルミニウム材5の溶接部、即ちナゲット
6の直径は、通常 5mm程度とする。このためには、電極
1の直径dは、例えば16mmとする。また、下部中央の曲
率半径Rは例えば40mmであり、下部縁部の曲率半径rは
例えば 8mmである。
【0048】芯材2は粉末焼結体からなり、その引張強
度が 600N/mm2 以上であり、導電率が30%IACS以上で
ある。また、この芯材の酸素含有量は100ppm以上であ
る。この芯材は、例えば、平均粒径が30μm以下のCu
−Ni−Si−Co−Ag混合粉末に、平均粒径が10μ
m以下の硼化物粉末を0.1 乃至5.0 重量%混合した粉末
焼結体からなる。
【0049】中間層3は、例えばNi:1.1 乃至2.1 重
量%、Si:0.25乃至0.45重量%、Co:0.3 乃至0.5
重量%、Cr:0.001 乃至0.01重量%、Mg:0.001 乃
至0.01重量%及び残部実質的にCuからなる銅合金から
なり、その引張強度は 600N/mm2 以上である。また、
この中間層3としては、常温における引張強度が 550N
/mm2 であると共に、 500℃における引張強度が 450N
/mm2 のステンレス鋼等のFe基合金、Ni基合金及び
Co基合金からなる群から選択された合金であってもよ
い。なお、鋼板を溶接する場合及び鉄製溶接ツールを使
用する場合のことを考慮して、中間層としてのこれらの
合金は磁性を持たないことが好ましい。
【0050】外層4は、導電率が80%IACS以上の無酸素
銅等の溶製金属材料からなる。
【0051】そして、この電極1全体での引張強度は 4
00N/mm2 以上であり、平均導電率は60%IACS以上にな
っている。
【0052】本実施例に係る抵抗溶接用電極は、上述の
如く、芯材2、中間層3及び外層4の3層構造からな
り、各層の引張強度及び導電率が所定の範囲に設定され
ていると共に、電極全体での引張強度及び平均導電率が
特定の値以上に設定されているから、耐熱性、高温強
度、導電性及び溶融Alに対する耐濡れ性が優れてい
て、寿命が長い。
【0053】なお、本実施例においては、先端部が湾曲
した形状の電極について説明したが、例えば図2に示す
ように、先端部が平坦な電極10についても同様の効果
を得ることができ、電極の形状及びサイズにより限定さ
れるものでないことは勿論である。
【0054】次に、本発明の実施例に係る抵抗溶接用電
極を実際に製造し、その特性を調べた結果について説明
する。
【0055】実施例1として、下記表1の組成、構成及
び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電極を
形成した。この電極全体での引張強度は510N/mm2
あり、平均導電率は73%IACSである。
【0056】
【表1】
【0057】実施例2として、下記表2の組成、構成及
び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電極を
形成した。この電極全体での引張強度は520N/mm2
あり、平均導電率は72%IACSである。
【0058】
【表2】
【0059】実施例3として、下記表3の組成、構成及
び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電極を
形成した。なお、この実施例は、中間層が2層構造にな
っている。この電極全体での引張強度は500 N/mm2
あり、導電率は75%IACSである。
【0060】
【表3】
【0061】実施例4として、下記表4の組成、構成及
び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電極を
形成した。なお、この実施例においては、外層が2層構
造になっている。この電極全体での引張強度は520 N/
mm2 であり、平均導電率は73%IACSである。
【0062】
【表4】
【0063】実施例5として、下記表5の組成、構成及
び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電極を
形成した。即ち、本実施例は、中間層としてステンレス
鋼を使用したものである。この電極全体での引張強度は
450N/mm2 であり、平均導電率は74%IACSである。
【0064】
【表5】
【0065】実施例6として、下記表6の組成、構成及
び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電極を
形成した。この実施例も、中間層としてステンレス鋼を
使用したものである。この電極全体での引張強度は 450
N/mm2 であり、平均導電率は74%IACSである。
【0066】
【表6】
【0067】実施例7として、下記表7の組成、構成及
び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電極を
形成した。この電極全体での引張強度は510N/mm2
あり、平均導電率は73%IACSである。
【0068】
【表7】
【0069】実施例8として、下記表8の組成、構成及
び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電極を
形成した。この電極全体での引張強度は 510N/mm2
あり、平均導電率は73%IACSである。
【0070】
【表8】
【0071】実施例9として、下記表9の組成、構成及
び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電極を
形成した。この電極全体での引張強度は 520N/mm2
あり、平均導電率は73%IACSである。
【0072】
【表9】
【0073】実施例10として、下記表10の組成、構
成及び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電
極を形成した。この電極全体での引張強度は 520N/mm
2 であり、平均導電率は73%IACSである。
【0074】
【表10】
【0075】実施例11として、下記表11の組成、構
成及び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電
極を形成した。この電極全体での引張強度は 510N/mm
2 であり、平均導電率は73%IACSである。
【0076】
【表11】
【0077】実施例12として、下記表12の組成、構
成及び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電
極を形成した。但し、本実施例は芯材の酸素濃度を300p
pmとしたものである。この電極全体での引張強度は 510
N/mm2 であり、平均導電率は73%IACSである。
【0078】
【表12】
【0079】実施例13として、下記表13の組成、構
成及び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電
極を形成した。但し、本実施例は芯材の酸素濃度を900p
pmとしたものである。この電極全体での引張強度は 510
N/mm2 であり、平均導電率は73%IACSである。
【0080】
【表13】
【0081】比較例1として、下記表14の組成、構成
及び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電極
を形成した。この電極全体での引張強度は 620N/mm2
であり、平均導電率は58%IACSである。
【0082】
【表14】
【0083】比較例2として、下記表15の組成、構成
及び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電極
を形成した。この電極全体での引張強度は 380N/mm2
であり、平均導電率は91%IACSである。
【0084】
【表15】
【0085】比較例3として、下記表16の組成、構成
及び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電極
を形成した。この電極全体での引張強度は 500N/mm2
であり、平均導電率は74%IACSである。
【0086】
【表16】
【0087】比較例4として、下記表17の組成、構成
及び特性の芯材、中間層及び外層により構成された電極
を形成した。但し、この比較例は芯材の酸素濃度を 50p
pmとしたものである。この電極全体での引張強度は 510
N/mm2 であり、平均導電率は73%IACSである。
【0088】
【表17】
【0089】これらの実施例及び比較例の電極につい
て、電極寿命(打点数)を測定した。その結果を下記表
18に示す。
【0090】
【表18】
【0091】この表18から明らかなように、本発明の
実施例に係る1乃至13の電極は、いずれも電極寿命が
1910打点以上と長いものであった。一方、比較例1乃至
4の電極は、その電極寿命が1830打点以下と短いもので
あった。
【0092】次に、芯材の組成が異なる電極を製造し、
その特性を調べた。
【0093】下記表19に示す成分を同表に示す配合比
で含有する混合粉末を、外層が無酸素銅、中間層がCu
−1.6 重量%Ni−0.35重量%Si−0.4 重量%Co−
0.005 重量%Mg−0.005 重量%Crの組成を有するC
u合金からなる二層構造(内径が43mm、中間層外径が55
mm、外径が69mm)のケースに封入した。但し、Cu,N
i,Si,Co,Ag,Zrの各粉末の平均粒径は20μ
mであり、ZrB2 粉末の平均粒径は1 μmである。こ
れを真空脱気した後、850 ℃で1時間加熱し、その後、
静水押出しを実施し、外径が20mmの押出し材を得た。こ
れを 850℃で1時間溶体化熱処理した後、直ちに水冷し
た。その後、スエージング加工により外径を17.5mmに
し、更に500 ℃で2時間焼鈍した。その後、スエージン
グ加工を施して外径16mmの電極材料を得た。そして、こ
れらの各材料の断面を観察した結果、芯部の外径が 8m
m、中間層の外径が12mmであることを確認した。
【0094】次いで、これらの材料の芯部について、常
温及び 500℃における引張試験を実施した。また、耐熱
温度も求めた。この耐熱温度は1 時間加熱後のビッカー
ス硬さが加熱前の硬さの80%に減少する温度によって評
価した。更に、導電率の測定も行った。
【0095】抵抗溶接試験に際しては、前述の如くして
製造した外径16mmの3層構造棒材を、先端直径が16mm、
先端曲率が100mm 、長さが55mmの水冷孔付き電極チップ
に加工した。被溶接材として、1.0mm の厚さのアルミニ
ウム板(Al−4.5 重量%Mg)を25mm×50mmに切断し
たものを用いた。そして、これらの被溶接材に対し重ね
溶接を施し、溶接継手の引張せん断強度値がJISZ3140A
級(1.61KN)を1点でも下回った時の打点数を電極寿命と
した。なお、溶接機は三相低周波式のものを用いた。溶
接条件は、溶接電流が35kA(1サイクル)、減衰電流が
12kA(4サイクル)、溶接加圧力が3.33kN、鍛造加圧力
が8.62kNである。
【0096】以上の評価結果を下記表20に示す。比較
材として市販のクロム銅合金(Cu−1 重量%Cr)を
用いた。比較例5乃至8は強度と導電率のバランスが悪
いので電極寿命の評価試験は実施していない。また、比
較例15は電極チップ加工時の切削加工性及び冷間鍛造
性が悪いため、電極寿命の評価を省略した。なお、比較
例12は特性及び電極寿命とも良好であるが、Ag含有
量が多いため、コストが高い。このため、本発明の組成
範囲から外れる。
【0097】
【表19】
【0098】
【表20】
【0099】この表20から明らかなように、本実施例
14乃至17の場合は、常温及び高温における強度、伸
び、耐熱温度並びに導電率のいずれも十分な特性を有
し、電極寿命が比較例5乃至15よりも著しく長い。
【0100】次に、外層として、無酸素銅にAgを添加
した電極を製造し、その特性を調べた結果について説明
する。
【0101】Ni粉末が 1.6重量%、Si粉末が0.35重
量%、Co粉末が0.4 重量%で残部がCu粉末である混
合粉末にZrB2 粉末を 1重量%混合した粉末を、下記
表21に示す組成のAg入り無酸素銅、中間層がCu−
1.6 重量%Ni−0.35重量%Si−0.4 重量%Co−0.
005 重量%Mg−0.005 重量%Crの組成を有するCu
合金からなる二層構造(内径が43mm、中間層外径が55m
m、外径が69mm)のケースに封入した。但し、Cu,N
i,Si,Co,Ag,Zrの各粉末の平均粒径は20μ
mであり、ZrB2 粉末の平均粒径は1 μmである。こ
れを真空脱気した後、850 ℃で1時間加熱し、その後、
静水押出しを実施し、外径が20mmの押出し材を得た。こ
れを 850℃で1時間溶体化熱処理した後、直ちに水冷し
た。その後、スエージング加工により外径を17.5mmに
し、更に500 ℃で2 時間焼鈍した。その後、スエージン
グ加工を施して外径16mmの電極材料を得た。そして、こ
れらの各材料の断面を観察した結果、芯部の外径が 8m
m、中間層の外径が12mmであることを確認した。
【0102】次いで、これらの材料の芯部及び中間層に
ついて、常温及び 500℃におけるビッカース硬さを測定
した。外層については、常温及び 300℃におけるビッカ
ース硬さを測定した。また、耐熱温度も求めた。この耐
熱温度は1 時間加熱後のビッカース硬さが加熱前の硬さ
の80%に減少する温度によって評価した。更に、平均導
電率の測定も行った。
【0103】抵抗溶接試験に際しては、前述の如くして
製造した外径16mmの3層構造棒材を、先端直径が16mm、
先端曲率が100mm 、長さが55mmの水冷孔付き電極チップ
に加工した。被溶接材として、1.0mm の厚さのアルミニ
ウム板(Al−4.5 重量%Mg)を25mm×50mmに切断し
たものを用いた。そして、これらの被溶接材に対し重ね
溶接を施し、溶接継手の引張せん断強度値がJISZ3140A
級(1.61KN)を1点でも下回った時の打点数を電極寿命と
した。なお、溶接機は三相低周波式のものを用いた。溶
接条件は、溶接電流が35kA(1サイクル)、減衰電流が
12kA(4サイクル)、溶接加圧力が3.33kN、鍛造加圧力
が8.62kNである。
【0104】
【表21】
【0105】以上の評価を、ビッカース硬さ及び耐熱温
度と併せて下記表22に示す。比較例として市販のクロ
ム銅合金(Cu−1重量%Cr)を用いた。比較例17
は特性及び電極寿命とも良好であるが、外層のAg含有
量が多いため、コストが高く、経済的な点から好ましく
ない。
【0106】
【表22】
【0107】この表22から明らかなように、実施例1
8乃至21の場合は、特に外層の常温及び高温における
硬さ並びに耐熱温度が優れている。しかも、複合材とし
ての導電率も良好であり、電極寿命が比較例16,17
及びCu−1重量%Cr合金よりも著しく長い。
【0108】次に、外層として、無酸素銅にZrを添加
した電極を製造し、その特性を調べた結果について説明
する。
【0109】Ni粉末が 1.6重量%、Si粉末が0.35重
量%、Co粉末が0.4 重量%で残部がCu粉末である混
合粉末にZrB2 粉末を 1重量%混合した粉末を、下記
表23に示す組成のZr入り無酸素銅、中間層がCu−
1.6 重量%Ni−0.35重量%Si−0.4 重量%Co−0.
005 重量%Mg−0.005 重量%Crの組成を有するCu
合金からなる二層構造(内径が43mm、中間層外径が55m
m、外径が69mm)のケースに封入した。但し、Cu,N
i,Si,Co,Ag,Zrの各粉末の平均粒径は20μ
mであり、ZrB2 粉末の平均粒径は1 μmである。こ
れを真空脱気した後、850 ℃で1時間加熱し、その後、
静水押出しを実施し、外径が20mmの押出し材を得た。こ
れを 850℃で1時間溶体化熱処理した後、直ちに水冷し
た。その後、スエージング加工により外径を17.5mmに
し、更に500 ℃で2 時間焼鈍した。その後、スエージン
グ加工を施して外径16mmの電極材料を得た。そして、こ
れらの各材料の断面を観察した結果、芯部の外径が 8m
m、中間層の外径が12mmであることを確認した。
【0110】次いで、これらの材料の芯部及び中間層に
ついて、常温及び 500℃におけるビッカース硬さを測定
した。外層については、常温及び 300℃におけるビッカ
ース硬さを測定した。また、耐熱温度も求めた。この耐
熱温度は1 時間加熱後のビッカース硬さが加熱前の硬さ
の80%に減少する温度によって評価した。更に、平均導
電率の測定も行った。
【0111】抵抗溶接試験に際しては、前述の如くして
製造した外径16mmの3層構造棒材を、先端直径が16mm、
先端曲率が100mm 、長さが55mmの水冷孔付き電極チップ
に加工した。被溶接材として、1.0mm の厚さのアルミニ
ウム板(Al−4.5 重量%Mg)を25mm×50mmに切断し
たものを用いた。そして、これらの被溶接材に対し重ね
溶接を施し、溶接継手の引張せん断強度値がJISZ3140A
級(1.61KN)を1点でも下回った時の打点数を電極寿命と
した。なお、溶接機は三相低周波式のものを用いた。溶
接条件は、溶接電流が35kA(1サイクル)、減衰電流が
12kA(4サイクル)、溶接加圧力が3.33kN、鍛造加圧力
が8.62kNである。
【0112】
【表23】
【0113】以上の評価を、ビッカース硬さ及び耐熱温
度と併せて下記表24に示す、比較例として市販のクロ
ム銅合金(Cu−1重量%Cr)を用いた。
【0114】
【表24】
【0115】この表24から明らかなように、実施例2
2乃至25の場合は、特に外層の常温及び高温における
硬さ並びに、耐熱温度が優れている。しかも、複合材と
しての導電率も良好なため、電極寿命が比較例18,1
9及びCu−1重量%Cr合金よりも著しく長い。
【0116】次に、外層として、無酸素銅にSnを添加
した電極を製造し、その特性を調べた結果について説明
する。
【0117】Ni粉末が 1.6重量%、Si粉末が0.35重
量%、Co粉末が0.4 重量%で残部がCu粉末である混
合粉末にZrB2 粉末を 1重量%混合した粉末を、下記
表25に示す組成のSn入り無酸素銅、中間層がCu−
1.6 重量%Ni−0.35重量%Si−0.4 重量%Co−0.
005 重量%Mg−0.005 重量%Crの組成を有するCu
合金からなる二層構造(内径が43mm、中間層外径が55m
m、外径が69mm)のケースに封入した。但し、Cu,N
i,Si,Co,Ag,Zrの各粉末の平均粒径は20μ
mであり、ZrB2 粉末の平均粒径は1 μmである。こ
れを真空脱気した後、850 ℃で1時間加熱し、その後、
静水押出しを実施し、外径が20mmの押出し材を得た。こ
れを 850℃で1時間溶体化熱処理した後、直ちに水冷し
た。その後、スエージング加工により外径を17.5mmに
し、更に500 ℃で2 時間焼鈍した。その後、スエージン
グ加工を施して外径16mmの電極材料を得た。そして、こ
れらの各材料の断面を観察した結果、芯部の外径が 8m
m、中間層の外径が12mmであることを確認した。
【0118】次いで、これらの材料の芯部及び中間層に
ついて、常温及び 500℃におけるビッカース硬さを測定
した。外層については、常温及び 300℃におけるビッカ
ース硬さを測定した。また、耐熱温度も求めた。この耐
熱温度は1 時間加熱後のビッカース硬さが加熱前の硬さ
の80%に減少する温度によって評価した。更に、平均導
電率の測定も行った。
【0119】抵抗溶接試験に際しては、前述の如くして
製造した外径16mmの3層構造棒材を、先端直径が16mm、
先端曲率が100mm 、長さが55mmの水冷孔付き電極チップ
に加工した。被溶接材として、1.0mm の厚さのアルミニ
ウム板(Al−4.5 重量%Mg)を25mm×50mmに切断し
たものを用いた。そして、これらの被溶接材に対し重ね
溶接を施し、溶接継手の引張せん断強度値がJISZ3140A
級(1.61KN)を1点でも下回った時の打点数を電極寿命と
した。なお、溶接機は三相低周波式のものを用いた。溶
接条件は、溶接電流が35kA(1サイクル)、減衰電流が
12kA(4サイクル)、溶接加圧力が3.33kN、鍛造加圧力
が8.62kNである。
【0120】
【表25】
【0121】以上の評価を、ビッカース硬さ及び耐熱温
度と併せて下記表26に示す。比較例として市販のクロ
ム銅合金(Cu−1重量%Cr)を用いた。
【0122】
【表26】
【0123】この表26から明らかなように、実施例2
6乃至29の場合は、特に外層の常温及び高温における
硬さ並びに耐熱温度が優れている。しかも、複合材とし
ての導電率も良好であり、電極寿命が比較例20,21
及びCu−1重量%Cr合金よりも著しく長い。
【0124】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る抵抗
溶接電極は、常温から高温における機械的性質、耐熱性
及び導電率の各特性が優れているのに加えて、アルミニ
ウムの抵抗溶接時の電極寿命を著しく長くすることがで
きるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る抵抗溶接用電極を示す模
式図である。
【図2】同じくその変形例を示す模式図である。
【図3】抵抗溶接方法の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1,11;電極 2;芯材 3;中間層 4;外層 5;アルミニウム材 6;ナゲット 12;シャンク
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩井 彰 福岡県北九州市門司区大里戸ノ上二丁目 12−35 (72)発明者 日野 光雄 栃木県真岡市熊倉町3621の15 (72)発明者 櫻井 健夫 栃木県真岡市大谷台町8 (72)発明者 西部 実 兵庫県神戸市北区泉台5−1−10 (72)発明者 笹部 誠二 神奈川県中郡大磯町高麗2−21−3− 334 (72)発明者 江間 光弘 神奈川県鎌倉市手広731−1 神鋼西ケ 谷寮 (72)発明者 山田 忠昭 神奈川県鎌倉市七里が浜東2−27−10 (56)参考文献 特開 昭64−78683(JP,A) 特開 昭61−162285(JP,A) 特開 昭47−38856(JP,A) 実開 平2−16281(JP,U)

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 引張強度が 600N/mm2 以上であると共
    に導電率が30%IACS以上、酸素含有量が100ppm以上の粉
    末焼結体からなる芯材と、この芯材の周囲に配置され導
    電率が80%IACS以上の溶製金属材料からなる外層とによ
    り構成され、その全体での引張強度が 400N/mm2 以上
    であり、平均導電率が60%IACS以上であることを特徴と
    する抵抗溶接用電極。
  2. 【請求項2】 前記芯材と前記外層との間に介在し、引
    張強度が600 N/mm2 以上であると共に導電率が30%IA
    CS以上の溶製金属材料により構成された中間層を有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の抵抗溶接用電極。
  3. 【請求項3】 前記芯材は、銅合金粉末に、硼化物粉
    末、酸化物粉末、窒化物粉末、炭化物粉末及び高融点金
    属粉末からなる群から選択された少なくとも1種の粉末
    を含有する粉末焼結体からなり、前記高融点金属粉末は
    Mo、Nb、Ta、V及びWからなる群から選択された
    ものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の抵
    抗溶接用電極。
  4. 【請求項4】 前記芯材は、平均粒径が30μm以下のC
    u−Ni−Si−Co−Ag混合粉末に、平均粒径が10
    μm以下の硼化物粉末を0.1 乃至5.0 重量%混合した粉
    末焼結体からなり、前記Cu−Ni−Si−Co−Ag
    混合粉末中の各粉末の配合比は、Ni粉末が 1.1乃至
    2.1重量%、Si粉末が0.25乃至0.45重量%、Co粉末
    が 0.3乃至 0.5重量%、Ag粉末が0.01乃至 0.1重量
    %、残部がCu粉末であることを特徴とする請求項1又
    は2に記載の抵抗溶接用電極。
  5. 【請求項5】 前記芯材は、平均粒径が30μm以下のC
    u−Ni−Si−Co−Ag−Zr混合粉末に、平均粒
    径が10μm以下の硼化物粉末を0.1 乃至5.0重量%混合
    した粉末焼結体からなり、前記Cu−Ni−Si−Co
    −Ag−Zr混合粉末中の各粉末の配合比は、Ni粉末
    が 1.1乃至 2.1重量%、Si粉末が0.25乃至0.45重量
    %、Co粉末が 0.3乃至 0.5重量%、Ag粉末が0.01乃
    至 0.1重量%、Zr粉末が0.01乃至0.3 重量%、残部が
    Cu粉末であることを特徴とする請求項1又は2に記載
    の抵抗溶接用電極。
  6. 【請求項6】 前記芯材は、平均粒径が30μm以下のC
    u合金−Ag混合粉末に、平均粒径が10μm以下の硼化
    物粉末を0.1 乃至5.0重量%混合した粉末焼結体からな
    り、前記Ag粉末は前記Cu合金粉末及びAg粉末の総
    量中における配合比で0.01乃至0.1 重量%であり、前記
    Cu合金の組成は前記Cu合金粉末及びAg粉末の総量
    中における含有量でNi:1.1 乃至2.1 重量%、Si:
    0.25乃至0.45重量%及びCo:0.3 乃至0.5 重量%を含
    有し、残部実質的にCuであることを特徴とする請求項
    1又は2に記載の抵抗溶接用電極。
  7. 【請求項7】 前記芯材は、平均粒径が30μm以下のC
    u合金−Ag混合粉末に、平均粒径が10μm以下の硼化
    物粉末を0.1 乃至5.0重量%混合した粉末焼結体からな
    り、前記Ag粉末は前記Cu合金粉末及びAg粉末の総
    量中における配合比で0.01乃至0.1 重量%であり、前記
    Cu合金の組成は前記Cu合金粉末及びAg粉末の総量
    中における含有量でNi:1.1 乃至2.1 重量%、Si:
    0.25乃至0.45重量%、Co:0.3 乃至0.5 重量%及びZ
    r:0.01乃至0.3 重量%を含有し、残部実質的にCuで
    あることを特徴とする請求項1又は2に記載の抵抗溶接
    用電極。
  8. 【請求項8】 前記硼化物粉末は、ZrB2 粉末である
    ことを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載
    の抵抗溶接用電極。
  9. 【請求項9】 前記中間層がNi:1.1 乃至2.1 重量
    %、Si:0.25乃至0.45重量%、Co:0.3 乃至0.5 重
    量%、Cr:0.001 乃至0.01重量%、Mg:0.001 乃至
    0.01重量%及び残部実質的にCuからなる銅合金である
    ことを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載
    の抵抗溶接用電極。
  10. 【請求項10】 前記外層は、無酸素銅であることを特
    徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の抵抗溶
    接用電極。
  11. 【請求項11】 前記外層は、Zr、Ag及びSnから
    なる群から選択された少なくとも一種の元素を含有する
    ことを特徴とする請求項10に記載の抵抗溶接用電極。
  12. 【請求項12】 前記外層が、Zr:0.01乃至0.3 重量
    %、Ag:0.01乃至0.5 重量%、Sn:0.01乃至0.3 重
    量%及びCr:0.2 乃至1.2 重量%からなる群から選択
    された少なくとも1種の元素を含有し、残部が実質的に
    Cuであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか
    1項に記載の抵抗溶接用電極。
  13. 【請求項13】 引張強度が 600N/mm2 以上であると
    共に導電率が30%IACS以上の粉末焼結体からなる芯材
    と、この芯材の周囲に配置され導電率が80%IACS以上の
    溶製金属材料からなる外層と、前記芯材と前記外層との
    間に配置され常温における引張強度が 550N/mm2 以上
    であると共に、 500℃における引張強度が 450N/mm2
    以上であるステンレス鋼等のFe基合金、Ni基合金及
    びCo基合金からなる群から選択された磁性をもたない
    合金からなる中間層とを有することを特徴とする抵抗溶
    接用電極。
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