JP2711296B2 - 耐熱性アルミニウム合金 - Google Patents

耐熱性アルミニウム合金

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遵 清水
修 岩尾
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、粉末冶金用低密度アルミニウム合金に関
し、より詳しくは、常温から200℃に至る温度範囲にお
いて、優れた機械的特性(引張り強度、疲労強度、延
性、靭性など)を発揮する低密度耐熱性粉末冶金用アル
ミニウム合金に関する。
従来技術とその問題点 近年、アトマイズ法、スプラット クエンチング法、
リボン キャスト法などの急冷凝固法の急速な発展によ
り、高強度耐熱性アルミニウム粉末(Al−PM)合金の耐
用温度は、300〜350℃程度にまで改善されている。この
耐熱性改善のためには、Alに対する溶解性および分散性
の低い合金元素が大量に使用されている。Fe、Cr、Zr、
Ti、V、Mo、W、Mn、Niなどを代表例とするこれらの合
金元素は、溶湯からの急速凝固により、Alマトリックス
中に過飽和に溶解し、引続く熱的および機械的処理によ
って、Alマトリックス中に所望の状態で析出する。かく
して得られたAl−PM合金中では、微細な均一に分散した
粒子(通常0.1〜0.5μm程度)が形成されており、これ
が転位障害となって、Al−PM合金の微細構造を安定化さ
せ、Al−PM合金の特性を改善する。Al−8Fe−2Mo、Al−
8Fe−4Crなどの合金が、350℃までの温度域で優れた熱
安定性と強度を備えていることは、よく知られている。
しかしながら、高強度耐熱性Al−PM合金の多くは、硬く
且つ脆い金属間化合物相を大量に含むので、成形性およ
び延性に劣っている。これらの欠点のために、公知の高
強度耐熱性Al−PM合金は、高度の成形性と延性とが最も
必要とされる中間温度域(150〜250℃)での使用が不可
能であった。したがって、上記の如き高強度耐熱性Al−
PM合金の使用分野は、未だ限られている。
問題点を解決するための手段 本発明者は、上記の如き従来技術の問題点に鑑みて鋭
意研究を重ねた結果、Fe及び/又はCrとZrの含有量を適
度に抑え且つ特定量のMgを配合したAl合金が、Al−PM合
金として極めて優れた性能を発揮することを見出した。
すなわち、本発明は、下記に示す組成を有するAl合金を
提供するものである: (i)Mg0.5〜5重量%、 (ii)Zr0.2〜3重量%、 (iii)Feおよび/またはCr0.5〜5重量%、および (iv)残余が実質的にAlからなり、 不純物として含まれるSiが1重量%未満であることを特
徴とする耐熱性粉末冶金用アルミニウム合金。
(i)Mg0.5〜5重量%、 (ii)Zr0.2〜3重量%、 (iii)Feおよび/またはCr0.5〜5重量%、および (iv)残余が実質的にAlからなり、 不純物として含まれるSiが1重量%未満およびCuが0.4
重量%未満であることを特徴とする耐熱性粉末冶金用ア
ルミニウム合金。
以下、本発明粉末冶金用アルミニウム合金の各添加成
分について説明する。これらの各添加成分は、一般の合
金における添加成分と同様に、相互に関連しつつ合金全
体の物性に影響するものであり、それぞれの限定理由を
個別に論ずることは、必ずしも妥当であるとはいえない
が、一応の限定理由を示せば、以下の通りである。
I.Mg 0.5〜5%の範囲内のMgは、Al合金に固溶体硬化を与
えるのみならず、加工硬化率を高め、合金密度を低下さ
せる。Mgの量が、0.5重量%(以下単に%とする)未満
の場合には、添加による効果が十分に発揮されず、一方
5%を上回る場合には、Al合金が応力腐蝕を生じやすく
なる。さらに、Mgが5%を上回る場合には、Mgが他の添
加元素と反応して粗大な二次相粒子を形成し、疲労抵抗
を阻害することがある。Mgが0.5〜5%の範囲内にある
本発明合金は、Mgを含まない対応する組成のAl合金に比
して、室温と200℃との間でより高い強度を示し、且つ
熱間鍛造温度のような高温下での延性にも優れている。
Mgの含有量は、1〜3%とすることがより好ましい。
II.Si Siの含量は、出来るだけ少ないことが好ましく、実用
上の観点からは、1%以下、より好ましくは0.5%以下
とする。Siの量が1%を上回る場合には、AlFeSi、初晶
Si、Mg2Siなどの種々の粒子が形成されて、Al合金の延
性及び疲労強度を低下させる。
III.Zr Al中のZrは、分散性及び溶解性が低く、凝固時及び過
飽和Al粉末合金の350〜500℃での熱処理時にマトリック
スにコヒーレントな微細な球状析出物分散相(準安定Zr
Al3立法晶)を形成する。これらの分散相は、微小構造
を安定化させ、熱的安定性を改善し、強度を増大させ
る。Zrの含有量は、0.2〜3%、より好ましくは0.5〜2.
0%とする。Zrの量が、0.2%未満の場合には、添加によ
る効果が十分に発揮されず、一方、3%を上回る場合に
は、Al合金の溶融温度が急激に上昇し、製造が困難とな
る。
IV.Fe及び/又はCr これら元素は、粉末冶金用アルミニウム合金の強度及
び熱的安定性を改善するための基本的成分である。Fe及
び/又はCrは、他の添加元素と結合して比較的粒径の小
さい、均一に分散した金属間化合物を形成する。これら
の分散相は、転位及び粒界移動を阻止し、その結果、熱
的安定性を改善する。Fe及び/又はCrの量が、0.5〜5
%の範囲内では、高い疲労強度及び延性並びに低密度を
維持しつつ、必要な強度と熱安定性が確保される。Crの
量は、1〜3%とすることがより好ましい。
V.Cu Cuの量は、0.4%未満とする。Cuを添加する場合に
は、Al合金のマトリックスに固溶して、常温における機
械的強度を向上させるが、延性を著るしく低下させる。
また、約200℃以上の高温における強度を低下させるた
め、本発明においては、Cuの量はできるだけ低いことが
好ましい。
本発明のAl−PM合金は、常法にしたがって、各成分を
溶解し、エアアトマイズ法、単ロール法、双ロール法、
スプラット、クエンチ法などの急冷凝固法により粉末化
し、あるいは機械的な粉砕法を組み合わせて粉末化し、
必要ならばふるい分けすることにより得られる。得られ
た粉末は、やはり常法にしたがって、冷間予備成形し、
適切な温度で押出・鍛造加工により成型し、必要なら
ば、機械加工することによって所望の製品とされる。
発明の効果 本発明によれば、以下の様な効果が達成される。
(イ)従来の耐熱Al−PM合金に比して、軽量のAl−PM合
金が得られる。
(ロ)得られたAl−PM合金は、機械的性質、熱間成形加
工性及び耐疲労特性に優れている。
(ハ)得られたAl−PM合金は、常温から200℃までの温
度域において、熱的安定性に優れている。
(ニ)したがって、本発明Al−PM合金は、高温での成
形、例えば鍛造により製造され、200℃近傍の高温で使
用される機械部品(例えば自動車用エンジンのコンロッ
ドなど)の材料として有用である。
(ホ)また、本発明Al−PM合金は、その優れた性能の故
に、既存のAl−PM合金が使用できなかった種々の分野で
使用可能であり、Al−PM合金の利用分野を大きく拡大す
るものである。
実 施 例 以下に実施例を示し、本発明の特徴とするところをよ
り一層明確にする。
実施例1 第1表に示す組成のAl−PM合金をそれぞれ調製した
後、平均凝固速度1×103℃/秒でエアアトマイズ法に
より粉末化し、ふるい分けして100メッシュ通過粉体(1
50μm以下)を得た。第2表に各合金粉体の粒度分布を
示す。
上記で得られた各合金粉体をコールド アイソスタテ
ィック プレス(CIP)法により円筒型試料(直径30mm
×高さ80mm,相対密度70〜80%)に成形し、空気中400℃
で30分間予熱した後、押出し比10:1、ラム速度2.5mm/秒
で直径10mmのロッドに押出成形した。該ロッドを機械加
工して、平行部長さ40mm×直径4.4mmの試験片を製造
し、引張り試験及び疲労試験に供した。これらの試験結
果をロッドの密度ともに第3表に示す。
第1表乃至第3表に示す結果から、本発明のAl−PM合
金は、AA2618に匹敵する延性と密度を有しており、疲労
強度の点では、AA2618を大きく上回っている。
また、比較合金Gとの対比では、本発明Al−PM合金
は、引張り強度及び疲労強度においては同等であるが、
延性に優れ、密度も小さい。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(i)Mg0.5〜5重量%、 (ii)Zr0.2〜3重量%、 (iii)Feおよび/またはCr0.5〜5重量%、および (iv)残余が実質的にAlからなり、 不純物として含まれるSiが1重量%未満であることを特
    徴とする耐熱性粉末冶金用アルミニウム合金。
  2. 【請求項2】(i)Mg0.5〜5重量%、 (ii)Zr0.2〜3重量%、 (iii)Feおよび/またはCr0.5〜5重量%、および (iv)残余が実質的にAlからなり、 不純物として含まれるSiが1重量%未満およびCuが0.4
    重量%未満であることを特徴とする耐熱性粉末冶金用ア
    ルミニウム合金。
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