JP2730558B2 - 超伝導薄膜の製造方法 - Google Patents

超伝導薄膜の製造方法

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JP2730558B2 JP1008638A JP863889A JP2730558B2 JP 2730558 B2 JP2730558 B2 JP 2730558B2 JP 1008638 A JP1008638 A JP 1008638A JP 863889 A JP863889 A JP 863889A JP 2730558 B2 JP2730558 B2 JP 2730558B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔概 要〕 本発明は、酸化物超伝導薄膜の製造方法に関し、 アニール後の組成が適正化されるように堆積工程を改
良した超伝導薄膜の製造方法を提供することを目的と
し、 基板上に酸化物超伝導体の成分酸化物を物理的に堆積
させる工程とそれにより得られた堆積層をアニールする
工程とを含む酸化物超伝導薄膜の製造方法において、 上記物理的堆積工程において、上記成分酸化物のうち
で相対的に蒸気圧高い成分酸化物の堆積量の比率を、こ
の堆積工程の終了時点を含む所定期間全体にわたって連
続的に増加させるように構成する。
〔産業上の利用分野〕
本発明は酸化物超伝導薄膜の製造方法に関する。
〔従来の技術〕
近年のコンピュータシステムの高速化の要求に伴い、
配線によるロスを低減するために、半導体の高密度実装
が進められている。しかし、高密度化のために配線を微
細化すると抵抗の増加が避けられず、高速信号の歪や大
幅な減衰をもたらす。そこで、抵抗がゼロの超伝導体で
配線を形成することが試みられている。
酸化物超伝導体、特に、CuおよびOを含む結晶面を有
するBi−Sr−Ca−Cu−O系等の酸化物超伝導体は臨界温
度(Tc)が高いため、このような配線を形成するための
材料として実用上極めて有利である。
従来、酸化物超伝導体の配線は、加熱した基板上に目
的とする酸化物の構成元素をスパッタまたは蒸着等によ
って物理的に堆積させ、形成された堆積層をアニール
(焼成)して薄膜(厚さ数μm以下)として形成するの
が一般的である。
スパッタや蒸着によって堆積した堆積層中の相対的に
蒸気圧の高い成分酸化物(たとえばビスマス、バリウム
等の酸化物)は、その後のアニール処理によって著しく
含有量が変化する。しかも、その組成のずれは、膜厚方
向に対して連続的に変化する。これは、堆積した成分酸
化物によって蒸気圧が異なるためで、アニール温度です
でに融点を超える酸化物もあり、気体となって抜けてゆ
く酸化物は、表面から飛び出してゆくからである。その
ため、アニールされた薄膜内に超伝導特性を有する部分
と有さない部分が膜厚方向に不均一に分布してしまうと
いう問題があった。
アニールによる組成変動はバルクや厚膜(厚さ10μm
程度以上)の超伝導体でも同様に発生するが、組成変動
領域は自由表面から深さ数μm程度であるので、これら
の場合にはその影響が比較的小さく、特にバルクの場合
には用途によっては無視できる程度である。
しかし、厚さ数μm程度以下の薄膜の場合には、アニ
ールによる組成変動はほとんど膜厚全域に及ぶため、超
伝導薄膜を製造するために致命的な障害となっていた。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明は、アニール後の組成が適正化されるように堆
積工程を改良した超伝導薄膜の製造方法を提供すること
を目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
上記の目的は、本発明によれば、 基板上に酸化物超伝導体の成分酸化物を物理的に堆積
させる工程とそれにより得られた堆積層をアニールする
工程とを含む酸化物超伝導薄膜の製造方法において、 上記物理的堆積工程において、上記成分酸化物のうち
で相対的に蒸気圧の高い成分酸化物の堆積量の比率を、
この堆積工程の終了時点を含む所定期間全体にわたって
連続的に増加させることを特徴とする酸化物超伝導薄膜
の製造方法によって達成される。
本発明においては、堆積層中の相対的に蒸気圧の高い
成分酸化物の堆積量の比率を、必要な深さから自由表面
に到る領域で連続的に増加させることによって、アニー
ル中に堆積層から気散して失われる上記成分酸化物の損
失量を相殺して、アニール後に得られる超伝導薄膜内の
組成を均一に適正比に制御する。
本発明は酸化物超伝導体の薄膜一般に適用できる。特
に、超伝導体の成分酸化物として、相対的に著しく蒸気
圧が高いものを含む場合に適用することが極めて有利で
ある。このような超伝導体としては、Bi−Sr−Ca−Cu−
O系のようにCuとOを含む結晶面を有するものが代表的
である。BiおよびSrの代りに、それぞれTlおよびBaで置
換した系も特にTcが高く優れた超伝導特性を有すること
が知られている。
しかし、これらのうちBi,Ba,Tlの酸化物は超伝導体を
構成する他の元素−Sr,Ca,Cu−の酸化物と比べて蒸気圧
が相対的に高い。そのため、堆積層のアニール中にこれ
らの元素の酸化物が堆積層の自由表面から選択的に気散
し、堆積層の自由表面からある深さまではこれらの元素
の濃度が所定濃度よりも低下する。すなわち、ある深さ
から自由表面まで、これらの元素の濃度が連続的に低下
する。したがって、その深さまでは超伝導体としての組
成が得られない。この深さは酸化物の蒸気圧およびアニ
ールの温度や時間等の処理条件によって決まるが、通常
数μm程度、少なくとも1μm程度に及ぶ。この値は薄
膜の厚さに匹敵するので、実質的に薄膜の全厚に近い領
域が超伝導体の組成にならず、超伝導薄膜が得られな
い。
本発明では、アニール中の組成変動が起る深さに相当
する領域を堆積させる際に、この組成変動を相殺するよ
うに成分酸化物の堆積量の比率を刻々と連続的に調整す
る。すなわち、組成変相当領域での高蒸気圧の成分酸化
物の堆積量の比率が、組成変動が開始する深さから自由
表面にかけて連続的に増加する分布となるように堆積さ
せる。
これは、成分酸化物のうちで相対的に蒸気圧の高い成
分酸化物の堆積量の比率を、堆積工程の終了時点を含む
所定期間全体にわたって連続的に増加させることによっ
て行なう。
連続的に増加させる期間、および増加の程度は全厚に
わたって均一な超伝導体組成比率で堆積させた堆積層に
実際のアニール処理を行なって決定する。
物理的に堆積させる方法としては、従来行なわれてい
るスパッタ、蒸着等の方法を用いる。
アニールとしては、超伝導体の成分酸化物の堆積層に
従来行なっているアニールを行なう。
〔作 用〕
本発明では、予め堆積工程で、アニールによる組成変
動分を相殺するような比率で堆積させるので、アニール
後に薄膜の厚さ全体にわたって均一に必要な超伝導体と
しての組成が得られる。
以下に添付図面を参照し実施例によって本発明を更に
詳しく説明する。
〔実施例〕
本発明にしたがって、Bi2Sr2Ca2Cu3Oxの超伝導薄膜を
作製した。
第1図に、用いた多元同時スパッタ装置を示す。この
装置は真空チャンバ(図示せず)内に設けてあり、チャ
ンバ内はO2とArの混合ガス(圧力=1.3×10-2Torr、分
圧比=O2:Ar1:1)で満たされている。図中、1および2
はそれぞれBi2Sr2Ca2Cu3OxターゲットおよびBi2O3ター
ゲットである。MgO単結晶の基板3をヒータブロック4
上に載せて基板おさえ5で保持してある。
構成元素Bi,Sr,Ca,Cuの酸化物のうちでBi酸化物(Bi2
O3)の蒸気圧が特に高く、アニール中に気散し易い。
まず、組成変動領域の深さと変動の分布曲線を知るた
めに、従来と同様にBi2Sr2Ca2Cu3Oxのターゲット1のみ
を用いて一定パワー100Wでスパッタを行い、厚さ1μm
の堆積層を形成した。これに大気中で860℃2時間のア
ニールを行なった。その結果、第3図の曲線Bで示すよ
うにほぼ膜厚全体にわたってBi濃度が低下した。この場
合、形成された薄膜は超伝導を示さない。
次に、別に用意したMgO単結晶の基板1を第1図のよ
うにスパッタ装置にセットし、Ba2Sr2Ca2Cu3Oxのターゲ
ット1とBi2O3のターゲット2を用いてスパッタを行な
い厚さ1μmの堆積層を形成した。スパッタパワーはタ
ーゲット1については一定100Wに維持したが、ターゲッ
ト2については、スパッタ開始時点の40Wからスパッタ
終了時点の100Wまで連続的に増加させた。増加させる程
度は、第3図の曲線Bを参照して刻々調整した。これに
よって堆積する堆積量の比率をターゲット1および2に
ついてそれぞれ第2図の曲線d1およびd2で示す。ターゲ
ット1によるBi2Sr2Ca2Cu3Oxの堆積量は、一定スパッタ
パワーとすることによって一定とし、これにターゲット
2に連続的に増加するBi2O3の堆積量を加算したものが
刻々の堆積量となる。ただし、第2図は、堆積するSrの
量に対するBiの量の比率で表わしてある。Srの酸化物は
安定であり、後のアニールでも変動が認められないため
基準量として用いた(第3図についても同様)。
堆積終了後、大気中で860℃2時間のアニールを行な
った。得られた薄膜は、第3図の曲線Aで示すように、
厚さ全体にわたって均一に所定のBi濃度であった。
〔発明の効果〕
以上説明したように、本発明によれば、堆積時の組成
比を連続的に変化させることによって、アニール後の組
成を均一に制御することが可能となり、均一な所要組成
を有する超伝導薄膜を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の方法を行なうために用いられる多元
同時スパッタ装置の一例を模式的に示す配置図、 第2図は、本発明にしたがって堆積した堆積層中のBiの
量とSrの量の比率を示すグラフ、および 第3図は、アニール後の膜中のBi量/Sr量の比率を本発
明法および従来法について比較して示すグラフである。 1……Bi2Sr2Ca2Cu3のターゲット、 2……Bi2O3のターゲット、 3……MgO単結晶の基板。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01L 39/24 ZAA H01L 39/24 ZAAB

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板上に酸化物超伝導体の成分酸化物を物
    理的に堆積させる工程とそれにより得られた堆積層をア
    ニールする工程とを含む酸化物超伝導薄膜の製造方法に
    おいて、 上記物理的堆積工程において、上記成分酸化物のうちで
    相対的に蒸気圧の高い成分酸化物の堆積量の比率を、こ
    の堆積工程の終了時点を含む所定期間全体にわたって連
    続的に増加させることを特徴とする酸化物超伝導薄膜の
    製造方法。
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