JP2728814B2 - 心肺補助装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は膜型人工肺と、駆動装置
に取り外し可能に装着される使い捨てポンプ作用ユニッ
トがチューブで連結された状態でハウジング内に収容さ
れた心肺補助装置、特に呼吸補助または循環補助などの
分野で、膜型人工肺を緊急に心臓バイパスの一部として
使用するのに好適な装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より生体肺の持つ機能の中で血液に
酸素を供給し、二酸化炭素を除去するガス交換機能を代
行するものとして膜型人工肺が用いられている。かかる
膜型人工肺は、例えばポリオレフィン等の疎水性高分子
からなる多孔質中空糸膜、シリコン等の気体透過性の均
質中空糸膜などを用い、中空糸膜を介して気体と血液を
接触させて、その間でガス交換を行わせるものであり、
中空糸膜の内部に血液を流し、中空糸膜の外部にガスを
流す内部灌流型（例えば特開昭６２−１０６７７０号な
ど）と中空糸膜の内部にガスを流し、中空糸膜の外部に
血液を流す外部灌流型（例えば特開昭５９−５７９６３
号など）の２つの方式が知られている。

【０００３】上記膜型人工肺を用いた従来の装置は、そ
の殆どが心臓手術の際に心臓と肺との両機能を代用させ
るために心臓に帰還する血液の全量を短期的に膜型人工
肺へバイパスさせて使用する装置として開発されてお
り、通常人体から脱血された血液は人工肺装置内のリザ
ーバーに貯えられ、このリザーバーに貯えられた血液を
血液灌流用ポンプを作動させることによって膜型人工肺
へ供給してガス交換させた後体内へ復液させる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、心原性ショッ
クや心筋梗塞などの緊急の手術の場合には、短時間で膜
型人工肺を心臓バイパス機能の一部として使用できるよ
うに患者に接続しなければならないが、従来の装置は緊
急事態でない場合に使用されるように設計されているた
め大型で、また全体を滅菌処理することができないた
め、手術中の患者の傍に設置することができず、患者か
ら離れた位置に設置せざるを得ないためにプライミング
血液量が大きく患者に大きな負担をかけ、しかもプライ
ミング等の操作が複雑なために熟練者でないと操作が困
難であった。

【０００５】したがって本発明の目的は、患者の傍に設
置できる程度に軽量、小型の心肺補助装置を提供するこ
とにある。本発明の他の目的は、構造が簡単で、操作が
容易であり、かつ未熟練者でも迅速にセットすることの
できる心肺補助装置を提供することにある。さらに本発
明の目的は、手術中に患者の傍に設置することができる
ように無菌処理された心肺補助装置を提供することにあ
る。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために駆動装置が取り外し可能なポンプ装置
に着目し、該ポンプ装置を用いた小型で操作の容易な心
肺補助装置を提供するため、さらに検討した結果、本発
明に到達したものである。

【０００７】すなわち請求項１記載の発明は、膜型人工
肺と駆動装置に取り外し可能に装着される使い捨てポン
プ作用ユニットをハウジング内に収容した心肺補助装置
において、該ハウジングの下部にポンプ作用ユニット
と、該ポンプ作用ユニットの上部に膜型人工肺を設け
て、両者を直接またはチューブを介して連結し、かつ該
ハウジングの外部でループを形成させ、最頂部にエア抜
きフィルターを取着し、ポンプ作用ユニットの血液入口
部近傍で、かつ装置の最下部となる位置にプライミング
用のチューブが接続された一本の血液チューブの両端を
それぞれハウジングに穿設された開口を通してポンプ作
用ユニットの血液入口と膜型人工肺の血液出口に接続し
たことを特徴とする心肺補助装置である。

【０００８】さらに請求項２記載の発明は、ポンプ作用
ユニットの駆動装置との装着部、酸素供給チューブ接続
部及びプライミング用のチューブを除いた全体を滅菌シ
ートで被覆し、さらに装置全体を別の滅菌袋内に収納し
て、装置を２重に滅菌袋内に収容された状熊でエチレン
オキサイドガスあるいは放射線により滅菌処理されてな
る請求項１記載の心肺補助装置である。

【０００９】

【作用】本発明の心肺補助装置は、ハウジング内に膜型
人工肺、使い捨てポンプ作用ユニットを収容し、かつ両
者が接続一体化されているため装置が小型化されてプラ
イミング血液量を減少させることができる。また構造が
簡単なため、チューブの接続、駆動装置の取り付けなど
の操作が熟練者でなくても間違いなく確実に実施でき
る。本発明の心肺補助装置は、装置全体を滅菌処理して
使用するのが好ましく、装置全体を滅菌処理することに
より、装置を無菌状態に保つことができるため手術中に
患者の傍に設置することもできる。

【００１０】

【実施例】次に本発明装置の一実施例を図面にて説明す
る。図１は本発明装置の斜視図であり、一側面が開口さ
れた四角形状のハウジング１内に膜型人工肺２が固定さ
れている。また、該膜型人工肺の下部で、かつハウジン
グの開口された一側面に駆動装置（図示せず）が装着で
きるように使い捨てポンプ作用ユニット３が取り付けら
れている。膜型人工肺の血液入口とポンプ作用ユニット
と血液出口は直接、または透明なチューブ４を介して連
結される。またポンプ作用ユニット３の血液入口と膜型
人工肺２の血液出口にはそれぞれハウジング１の上部に
穿設された開口からハウジング内に挿入されたループ状
の血液チューブ５の端部が接続されている。該血液チュ
ーブ５はハウジングに取り外し可能な支持体９に固定さ
れている。また血液チューブ５のポンプ作用ユニット３
の血液入口部近傍で、かつ装置の最下部となる位置にプ
ライミング用のチューブ７が接続される。

【００１１】ループ状の血液チューブ５を人工肺より上
部に設ける場合には、プライミング液の充填時にチュー
ブあるいは膜型人工肺のエアが短時間で除去できないた
め、図１に示すように本装置の最頂部にエア抜きフィル
ター８を取着すると、充填時間をさらに短くすることが
できる。エア抜きフィルターとしては疎水性フィルター
を内蔵したものが好ましい。

【００１２】図１に示す装置は現場でセットした後、プ
ライミング操作を実施しなければならないが、均質構造
の中空糸膜または緻密層を有する中空糸膜を収容した膜
型人工肺を用いる場合には、水漏れがないため予めプラ
イミング液を充填した状態で出荷することもできる。か
かるプライミング液が充填された装置は、直ちに使用で
きるという利点がある。

【００１３】本発明装置に使用する膜型人工肺では内部
灌流型および外部灌流型のどちらの方式の人工肺を用い
ても構わないが、圧力損失が少なく、かつガスを均等に
分配することができ、しかも血液の流れに撹拌効果が生
じ、単位膜面積当たりのガス交換能を向上させることの
できる外部灌流型の膜型人工肺が好適に使用される。

【００１４】かかる外部灌流型の膜型人工肺の一例を図
２に示す。該膜型人工肺は角筒状のハウジング１１内
に、複数の中空糸１２がハウジングとほぼ平行に収容さ
れ、中空糸１２の両端部はハウジング１１の両端を閉塞
する樹脂隔壁１３によって液密に保持されている。また
中空糸は樹脂隔壁からその開口を露出している。ハウジ
ング１１の上部は、中空糸の外部空間と連通する血液出
口１４を有する出口ポート１５で覆われており、下部は
血液入口１６を有する入口ポート１７で覆われている。
また、ハウジングの両端は中空糸の内部空間と連通する
ガス入口ポート１８およびガス出口ポート１９で覆われ
ており、ガス出口ポート１９にはガス出口２０、ガス入
口ポート１８にはガス入口２１が設けられている。該膜
型人工肺の具体的構造は特開平２−８６８１７号に記載
されている。

【００１５】また駆動装置に取り外し可能に装着される
使い捨てポンプ作用ユニットとしては、ハウジングに内
部空間と連通する血液の入口と、血液の出口を有し、内
部空間に磁気駆動装置と磁気的に結合し回転する回転子
を有し、回転子が回転することによりハウジング内部に
吐出圧または吸引圧などが生じ、それを駆動力として流
体を圧送するタイプのポンプであり、例えば特開平３−
１５１９７９号に開示されている遠心ポンプあるいは軸
流ポンプなどを用いることができる。

【００１６】上記ポンプは回路抵抗などにより流量が変
動することがあるため、別に血流量を測定することが望
ましい。かかる流量計としては、通常超音波流量計、電
磁流量計などの非接触型の流量計が好ましく用いられ
る。流量計は操作性の点で例えばポンプ作用ユニットと
膜型人工肺を連結するチューブを挟持するように設ける
ことが好ましい。

【００１７】上記装置を手術中に使用する場合には、患
者の傍に設置するために装置を滅菌処理しておくのが好
ましいが、装置全体を滅菌袋に入れて滅菌したとしても
ポンプ作用ユニットに駆動装置を装着する際にハウジン
グなどが汚染される恐れがあり、また、取り付けた駆動
装置や酸素供給チューブが汚染されている可能性があ
る。そのため本発明装置では、ポンプ作用ユニットの駆
動装置との装着部、酸素供給チューブ接続部及びプライ
ミング用のチューブを除いた全体を滅菌シートで被覆
し、さらに装置全体を別の滅菌袋内に収納して、装置を
２重に滅菌袋内に収容された状態でエチレンオキサイド
ガスあるいは放射線による滅菌処理が施される。

【００１８】ハウジング全体を滅菌シートで被覆する場
合には、血液チューブに接続されたプライミング用のチ
ューブはハウジング内に押し込んでおき、駆動装置など
を取り付ける時に、ハウジングから引き伸ばしてプライ
ミング液貯蔵バッグに接続する。また、駆動装置、酸素
供給チューブなど不潔な物を患者の近くへセットする際
にこれらを包み込む滅菌シートを予め折り畳んでハウジ
ングに取り付けて滅菌しておくことが好ましい。

【００１９】次に本発明装置の使用方法について説明す
る。まず最外層の滅菌袋を破って、該袋内に収納された
装置を取り出す。そして使い捨てポンプ作用ユニットに
駆動装置を、ガス入口ポートに酸素供給チューブを取り
付ける。また、必要により流量計のプローブを取り付け
る。次いで滅菌シートで被覆されたハウジング内からプ
ライミング用のチューブ７を取り出して先端を上部に持
ち上げてプライミング液貯蔵バッグに接続するとプライ
ミング液が落差により血液チューブからポンプ作用ユニ
ットをへて膜型人工肺へと充填される。

【００２０】プライミング液の充填が終了するとポンプ
作用ユニットに装着された駆動装置の電源を入れて駆動
させる。ポンプ装置が駆動するとプライミング液がルー
プ状の血液チューブと膜型人工肺間を循環して、血液チ
ューブ内のエアはループ状の血液チューブの頂部に設け
られたエア抜きフィルターに収容した疎水性の多孔フィ
ルター及び中空糸膜を通過してのガス側から外部に排出
される。ポンプの流量約１０ｌ／ｍｉｎでプライミング
液を約１〜２分間循環させるとエアはほぼ完全に置換さ
れてチューブ及び人工肺内にプライミング液が充填され
る。チューブ及び膜型人工肺へのプライミング液の充填
が完了するとルアーロックでプライミング用のチューブ
を閉止し、プライミング液貯蔵バッグを取り出す。

【００２１】次に滅菌袋を開き、清潔操作で血液チュー
ブを支持体から取り外した後、手術台上の患者の傍、通
常太腿の間にハウジングを設置する。装置を患者の傍に
設置する際にハウジング内に収容した血液チューブ保持
体を取り外し、かつ滅菌されていない駆動装置を滅菌袋
で覆って、開口をハウジングに気密に接着することによ
り患者の傍に設置された装置の外部を全て無菌状態に保
つことができる。

【００２２】次いで図３に示すようにループ状の血液チ
ューブを所定の位置で切断し、ポンプ作用ユニットの血
液入口に接続されたチューブの端部を脱血管に３０接続
し、膜型人工肺の血液出口に接続されたチューブの端部
を送血管３１に接続する。

【００２３】血液チューブの患者への接続が完了し、ポ
ンプ作用ユニット３に装着された駆動装置３２を駆動さ
せると、患者から脱血された血液は膜型人工肺２でガス
交換され患者へ送血される。本発明装置ではエア抜き用
のフィルターは、手術中は必ずしも必要ではなく、予め
ループ状の血液チューブにフィルターをバイパスするよ
うなチューブを接続し、ループ状のチューブを切断する
際にフィルターを切り離してもかまわない。本発明の装
置にリザーバを一体に設けると開心術用の心肺補助装置
として使用することができる。

【００２４】実施例１ 中空糸膜として、外径２６０μ、膜圧２５μのポリ４メ
チルペンテン１を１本ずつ３０デニールのポリエステル
で廉状に配列した特開平２−８６８１７号に開示された
有効面積０．８m↑2の外部灌流型人工肺と特開平３−１
５１９７９号に開示された充填量５０mlの使い捨て式ポ
ンプ作用ユニットを塩ビチューブで連結し、途中にプラ
イミング液注入のための塩ビチューブ（内径３mm、長さ
１．２ｍ）を接続したものを縦８cm、横１１cm、高さ２
８cmのアクリル製のハウジングに収容し、ハウジングと
取り外し可能な縦６５cm、横１１cm、厚さ３mmのアクリ
ル板に回路内空気が放出できるフイルターを接続した血
液チューブを保持した総充填量４００mlの図１に示す心
肺補助装置を試作した。本装置のポンプ作用ユニットに
外部駆動装置を取り付け、５００mlの生食バッグに充填
液注入のための瓶針付き塩ビチューブを挿入し、最小落
差を４０cmとなるように生食バッグを吊した。充填時間
は、生食バッグに瓶針付きチューブを挿入し生食が落下
し始めは時を時刻０とし、生食が装置内に充填され生食
バッグの液面が変動しなくなった時点までの時間を１次
充填時間、さらに外部駆動装置を稼働させ、生食を１０
ｌ／ｍｉｎで循環させて装置内残存空気を完全に除去す
るまでの時間を２次充填時間とする。装置内残存空気が
無いことは、回路内に０．２μのフイルターを取り付け
回路内の空気がフイルターに蓄積しないことで確認し、
１次と２次を合わせた時間を総充填時間とした。本装置
の総充填時間は３分であった。

【００２５】

【発明の効果】以上のように本発明装置は、膜型人工肺
と駆動装置に取り外し可能に装着される使い捨てポンプ
作用ユニットをハウジング内に一体に収容しているた
め、装置が軽量、小型でしかも未熟練者でも容易に短時
間で操作できる。しかも全体が滅菌されており患者の近
傍に置けるため特に緊急な手術の際の循環及び呼吸補助
として有用である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明装置の斜視図である。

【図２】本発明装置に使用する膜型人工肺の一部断面図
である。

【図３】本発明装置の使用状態を説明するフロー図であ
る。

【符号の説明】

１ ハウジング ２ 膜型人工肺 ３ ポンプ作用ユニット ４ チューブ ５ ループ状血液チューブ

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 膜型人工肺と駆動装置に取り外し可能に
   装着される使い捨てポンプ作用ユニットをハウジング内
   に収容した心肺補助装置において、該ハウジングの下部
   にポンプ作用ユニットと、該ポンプ作用ユニットの上部
   に膜型人工肺を設けて、両者を直接またはチューブを介
   して連結し、かつ該ハウジングの外部でループを形成さ
   せ、最頂部にエア抜きフィルターを取着し、ポンプ作用
   ユニットの血液入口部近傍で、かつ装置の最下部となる
   位置にプライミング用のチューブが接続された一本の血
   液チューブの両端をそれぞれハウジングに穿設された開
   口を通してポンプ作用ユニットの血液入口と膜型人工肺
   の血液出口に接続したことを特徴とする心肺補助装置。
2. 【請求項２】 ポンプ作用ユニットの駆動装置との装着
   部、酸素供給チューブ接続部及びプライミング用のチュ
   ーブを除いた全体を滅菌シートで被覆し、さらに装置全
   体を別の滅菌袋内に収納して、装置を２重に滅菌袋内に
   収容された状態でエチレンオキサイドガスあるいは放射
   線により滅菌処理されてなる請求項１記載の心肺補助装
   置。