JP3228518B2 - 人工心肺装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は主に開心術時に用いられ
る人工心肺装置に関し、さらに詳しくは、患者のそばに
セットすることができ、体外血液循環回路の血液充填量
と体外循環に伴う血液の溶血量を最小限にすることので
きる人工心肺装置に関する。

【０００２】

【従来の技術と発明が解決しようとする課題】従来か
ら、開心術時には、患者の心機能と肺機能とを代行させ
る人工心肺装置が使用されている。

【０００３】この人工心肺装置は、患者の血液循環を維
持する血液ポンプとこの血液ポンプとは別体になってい
るとともに循環血液中のガス交換を行なって酸素分圧を
高めるための人工肺とを主要構成要素とする。前記血液
ポンプと前記人工肺とは血液チューブで連結されてい
る。また、この人工心肺装置は、その外に補助装置とし
て、血液を貯留するための血液リザーバーや血液の温度
を一定に保つための熱交換器等が血液循環回路に取り付
けられることもある。

【０００４】従来の人工心肺装置は、血液ポンプとして
殆どローラーポンプが用いられている。

【０００５】このローラーポンプと人工肺とを用いる従
来の代表的な人工心肺装置の使用方法を図７に示す。

【０００６】同図において、人工肺ａに血液リザーバー
ｂと熱交換器ｃとが一体に組み合わされ、これらから離
れた位置にローラーポンプｄがセットされている。そし
てこれらの機器の間は、人間の心臓Ｈに連絡された血液
循環回路ｅで連絡されている。

【０００７】このように、従来では血液ポンプとして殆
どローラーポンプが用いられているので、以下に挙げる
ような大きな問題点を抱えていた。

【０００８】（イ） ローラーポンプは非常に大型なの
で、術中に患者のそばにセットすることができず、医師
の作業の妨げにならないようにベッドから離れた位置に
設置されていた。

【０００９】このため、患者と血液ポンプとの間を、内
径３／８インチ前後の血液チューブが往復することにな
り、その結果、回路の血液充填量は非常に多くなってい
た。

【００１０】血液の体外循環量が多いと、術中に実際に
患者の体内を流れる血液量は低減し、正常な血液循環を
維持することができないことに起因する合併症の原因に
なりやすかった。

【００１１】これを防ぐため、大量の輸血を行なう場合
もあるが、血液供給事情の厳しい今日では、血液の確保
そのものが非常に困難になっている。

【００１２】しかも、輸血量が確保できた場合でも、そ
の血液は患者本人のものではないために、血液不整合や
肝炎、エイズなどの感染症の原因になることが多い。

【００１３】したがって、開心術は極力、他人の血液を
輸血すること無しに行なうことが望ましく、この方向に
沿って従来から次のような対策が検討されてきた。

【００１４】一つは、術前に患者自身の血液を予め何回
かにわたって採血・保存しておき、それを術中の輸血に
利用する方法である。

【００１５】しかし、この方法には、血液の長期保存が
できないこと、一度に採血できる血液量に限度があるこ
と、急病の患者には手術のタイミングを失うというリス
クを伴うので実施が難しいこと、そして必ずしもすべて
の患者に適用できるわけではないこと、つまり貧血およ
び血行働態不良の患者には適用不可であること、等々の
問題点がある。

【００１６】もう一つの方法は、患者の血液を少しでも
維持するため、体外循環回路を術前に生理食塩水で満し
てから循環を開始するという方法であるが、これは血液
が希釈されるので貧血などの原因になるばかりでなく、
低ヘマトクリットの血液を長時間循環させたことによる
術後の後遺症を併発することもある。

【００１７】（ロ） ローラーポンプを長時間運転する
と、溶血が著しく起こり、これが輸血量を増加させる一
因となっていた。

【００１８】また、ローラーポンプは塩化ビニル樹脂製
のチューブをしごくことにより血液を移送するものであ
るが、手術が長引いた場合など塩化ビニル樹脂製チュー
ブに亀裂が生じ、それが血液漏洩の原因になることがし
ばしばあった。

【００１９】さらに、ローラーポンプの吐出側の塩化ビ
ニル樹脂製チューブが折れ曲がったり、クランプの外し
忘れなどがあった場合、吐出圧が短時間に急速に上昇
し、回路の一部が破裂するという患者の生命に係る大事
故発生につながる危険性もあった。

【００２０】以上に加えて、ローラーポンプに塩化ビニ
ル樹脂製チューブを取り付ける作業が煩わしく、作業者
の負担の一因となっていた。

【００２１】（ハ） 前述したように、従来の人工心肺
装置は補助装置として血液リザーバー（脱血用および送
血用）、熱交換器、それに血液フィルターなどの要素を
組み合わせたものが多いが、これらの要素はすべて塩化
ビニル樹脂製チューブで接続して用いられてきた。これ
は接続作業が煩わしいため作業者の著しい負担になるば
かりでなく、すべての要素をチューブで接続するため血
液充填量を増加させる原因になっていた。

【００２２】本発明は上記事情を改善するためになされ
たものである。すなわち、本発明の目的は、小型で患者
のそばに容易にセットすることができるとともに、体外
血液循環回路の血液充填量を最小限にすることができ、
しかも体外循環中の血液の溶血量を最小にすることがで
きる人工心肺装置を提供することにある。

【００２３】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の請求項１に記載の本発明は、外筒体とこの外筒体の中
心軸線を共有する内筒体とを備え、前記外筒体の内壁面
と前記内筒体の外壁面とで囲まれてなる環状の閉鎖空間
にはガス透過性の中空繊維束が収容され、前記内筒体に
は、内筒体内を内側空間領域と遠心ポンプ室とに隔絶
し、前記内側空間領域から前記遠心ポンプ室へと連通す
る血液導入穴を備えてなる隔壁と、遠心ポンプ室から閉
鎖空間へと連通する血液導入口とを備え、前記外筒体は
閉鎖空間内にある血液を外部に導出する血液導出口を有
してなるケーシングと、前記内側空間領域内に少なくと
も一部が配置され、且つ前記ケーシングと一体に形成さ
れてなり、前記内側空間領域内に導入された血液を加温
する熱交換器と、前記内側空間領域内に配置された熱交
換器により加温された血液を前記ポンプ室内に吸引し、
前記血液導入口を通して前記閉鎖空間に吐出するよう
に、形成されてなる遠心ポンプと、を備えることを特徴
とする人工心肺装置であり、前記人工心肺装置の好まし
い態様としては、前記請求項１に記載の人工心肺装置に
おいて、前記請求項１における熱交換器の他端部に接続
されてなり、前記熱交換器及び前記請求項１のケーシン
グの少なくとも一方と一体に形成されてなる血液リザー
バーを有する人工心肺装置を挙げることができ（請求項
２）、前記人工心肺装置の他の好ましい態様としては、
前記請求項１又は２に記載の人工心肺装置において、遠
心ポンプが、一端がモータの回転軸に接続されたフレキ
シブルシャフトの他端に着脱自在に形成されてなる回転
軸を備える人工心肺装置を挙げることができる（請求項
３）。

【００２４】

【作用】前記人工心肺装置においては、内筒体の内壁面
と隔壁とにより囲繞される内部空間である内部空間領域
内に血液が導入される。内部空間領域内に供給された血
液は、熱交換器により加温される。加温された血液は、
隔壁に設けられている血液導入穴を通って遠心ポンプ室
内に入り、遠心ポンプにより血液導入口を通って遠心ポ
ンプ室内から閉鎖空間内に導出される。閉鎖空間に送ら
れた血液は、閉鎖空間内に収容された中空繊維束により
ガス交換される。ガス交換により、血液中の酸素濃度が
高まる。酸素濃度の高まった血液は、外筒体に設けられ
た血液導出口を通って外部の血液回路へと導出される。
この場合、人工肺と遠心ポンプとが一体に構成されてい
るので、従来のように、人工肺と血液ポンプとをチュー
ブで接続する煩雑さがなくなり、人工肺と血液ポンプと
を接続するチューブ内に収容される分の血液充填量をな
くすることができ、溶血現象も少なくなる。

【００２５】本発明の人工心肺装置においては、筒状の
ケーシングにおける環状の閉鎖空間内にガス透過性の中
空繊維束が収容され、環状の閉鎖空間の内側に存在する
内側空間領域に遠心ポンプが収容配置されているので、
換言すると、筒状のケーシング内に中空繊維束、熱交換
器及び遠心ポンプ全てを収容しているので、全体形状が
簡素になり、使い勝手が向上する。しかも環状に束ねら
れた中空繊維束の環の内側から外側に向かって血液の流
れが形成されるので、ガス交換の効率が著しく向上す
る。

【００２６】しかも、前記ケーシングの内側空間領域に
は熱交換器が装着されているから、血液の温度調節が容
易になる。

【００２７】本発明の人工心肺装置においては、患者か
ら取り出された血液は、循環血液回路及び熱交換器を流
れ、遠心ポンプから人工肺を経たのち、循環血液回路を
流れて患者の体内に回収される。

【００２８】この血液の流れを図示すると、例えば図６
のようになり、人間の心臓Ｈに接続された血液循環回路
Ａに、人工肺Ｂと遠心ポンプＣとを一体に組み合わせて
なる人工心肺装置と、例えば血液リザーバーＤと熱交換
器Ｅとを取り付け、血液は矢印のようにこれらの機器と
心臓Ｈとの間を循環する。なお、遠心ポンプＣは、図６
に示すようにフレキシブルシャフトＦを介して、コント
ローラＧに内蔵されたモータの駆動軸に接続するのが好
ましい。

【００２９】この発明のさらに他の態様として、前記血
液リザーバーと、血液導入口および血液排出口を有する
ケース内にガス透過性の中空繊維束を備えて成る人工肺
と、前記中空繊維間に血液を供給する遠心ポンプと、血
液を加温する熱交換器とを一体に組み込んだ人工心肺装
置を挙げることができる。前記人工心肺装置では、従来
において、手術中の患者の側に並べ立てられていた、血
液リザーバー、血液ポンプ、血液加温装置およびこれら
を接続する血液チューブにより占有されていた面積を小
さくすることが可能になる。したがって、手術中におけ
る術者の自由度が高まる。また、床面やその他の部署に
這わされていた血液チューブがなくなり、少なくともこ
の発明の人工心肺装置と患者の血管とを結ぶ血液チュー
ブだけで良いので、血液回路の充填血液量をそれだけ低
減することになる。

【００３０】このように、血液リザーバー、熱交換器、
遠心ポンプおよび人工肺をこのように配列すると、血液
の流れにおいて、血液リザーバーよりも上流側に圧力損
失を有するユニットがないので、落差脱血し易いという
利点がある。熱交換器で血液を加温してから加温された
血液を遠心ポンプにより人工肺に送り込むことになるの
で、従来のように、人工肺で酸素を富化した血液が熱交
換器で加温されることによる気泡の発生が低減される。
本発明に係る人工心肺装置においては、熱交換器で加温
されることにより血液中に気泡がたとえ発生したとして
も、内側空間領域内にその気泡が止まり、遠心ポンプに
より内側空間領域内の加温された血液が閉鎖空間内の中
空繊維束に送られるので、この人工心肺装置から送り出
される血液中の気泡量が低減する。また、遠心ポンプに
より人工肺に血液を送り込むことにより、逆に人工肺か
ら遠心ポンプで血液を吸引するときに生じる人工肺での
陰圧による血液が受ける打撃が低減される。

【００３１】本発明に用いる遠心ポンプは小型であり、
実開平２−１２１０３５号公報に記載された遠心ポンプ
を初め、公知のタイプを用いることができるが、それ以
外に例えば、本願の出願時点では公開されていない特願
平２−９９６５３号の明細書に開示された遠心ポンプも
好ましく用いることができる。このように、本発明で
は、小型の遠心ポンプと人工肺とが一体に組み合わされ
ているので、ローラーポンプを用いる場合に見られる弊
害を無くすことができる。また、本発明の人工心肺装置
は、小型であるので患者のそばに容易にセットすること
ができる。

【００３２】

【実施例】次に、本発明を実施例に基いて図面を参照し
ながら説明する。

【００３３】図１及び図２に本発明の一実施例である人
工心肺装置を示す。図１及び図２に示す人工心肺装置
は、外筒体１と内筒体２とで形成されるケーシングＣｓ
を有する。前記外筒体１は、両端開口部を、その一部を
除いて塞いだ筒状に形成され、その外筒体１の内部に、
その外筒体１の中心軸を共有するように挿入された内筒
体２を有する。上記外筒体１の内壁と上記内筒体２の外
壁との間に閉鎖空間１ａを有する。この閉鎖空間１ａ
は、外筒体１の中心軸に直交する平面について見ると環
状（ドーナッツ状）になっている。

【００３４】図１においては、この内筒体２は、その内
部において略下方に内筒体２の内部を二つに分ける隔壁
２ａを備える。この隔壁２ａは、円筒体２の内部空間を
内側空間領域２ｍと遠心ポンプ室２ｃとに分け隔ててい
る。この隔壁２ａは、前記内側空間領域２ｍに向かって
円錐形に突出するように形成され、しかもその円錐形の
先端で、血液導入穴２ｂが開口していて、前記内側空間
領域２ｍ内の血液が遠心ポンプ室２ｃ内に流入可能にな
っている。隔壁２ａの外側（図１においては下方）に配
置する遠心ポンプ室２ｃは、その側部に例えば環状に開
口する血液導入口２ｄを有していてこの血液導入口２ｄ
によって遠心ポンプ室２ｃ内の血液が前 記閉鎖空間１ａ
に流入可能になっている。またこの内筒体２における前
記内側空間領域２ｍ内には、熱交換器３の一要素である
コイル３ａが設けられていてこのコイル３ａ中を熱交換
媒体が流通するようになっている 。 この内筒体２の前記
隔壁２ａに相対向する端部には、前記内側空間領域２ｍ
に血液を導入する血液導入管４ａ、コイル３ａ内に熱交
換媒体を導入する熱交換媒体の導入口５およびコイル３
ａ内から熱交換媒体を排出する熱交換媒体の排出口６が
設けられている。

【００３５】他方、上記遠心ポンプ室２ｃの内部には、
略円錐形状の台座２ｅと、その円錐面に立設してなる複
数の羽根車２ｆとが収納されている。この台座２ｅは、
遠心ポンプ室２ｃの底部２ｋを貫通する回転軸２ｇに支
持される。その回転軸２ｇは外周に軸受け２ｊを有する
とともに、フレキシブルジョイント２ｈを介してフレキ
シブルシャフト２ｉに接続され、フレキシブルシャフト
２ｉは、制御用コンソール内のモータＭの回転軸（図示
せず。）に連結されている。

【００３６】一方、上記閉鎖空間１ａには両端部をそれ
ぞれ支持体７ａ、７ｂで固定した中空繊維束８が充填さ
れている。中空繊維束８は、前記閉鎖空間１ａの図１に
おける水平断面が環状を呈しているので、この中空繊維
束８の水平断面も環状をなしている。また、外筒体１の
外周であって、支持体７ａよりも中央よりの位置に、ガ
ス交換された血液が外部に排出される血液排出口４ｂが
設けられる。

【００３７】各支持体７ａ、７ｂと外筒体１の両端部と
の間は小室９ａ、９ｂが形成されており、小室９ａには
酸素ガス導入口１０が、また小室９ｂには酸素と炭酸ガ
スとの混合ガスを排出する混合ガス排出口１１が設けら
れている。

【００３８】この実施例の人工心肺装置は次のように動
作する。すなわち、血液導入管４ａから内筒体２におけ
る内側空間領域２ｍ内に血液が導入される。この内側空
間領域２ｍ内のコイル３ａに熱媒体が流通しているの
で、導入された血液が適度の温度に加温される。加温さ
れた血液は、血液導入穴２ｂを通って遠心ポンプ室２ｃ
内に入る。

【００３９】フレキシブルシャフト２ｉを介してモータ
Ｍの駆動により回転する羽根車２ｆによって、血液は血
液導入口２ｄを通って閉鎖空間１ａ内に入る。

【００４０】閉鎖空間１ａにおいては、酸素ガスが酸素
ガス導入口１０から小室９ａに供給され、小室９ａから
中空繊維束８中を通って小室９ｂに至る。閉鎖空間１ａ
中に送り込まれた血液は、前記中空繊維間を流通する。

【００４１】この実施例においては、血液と酸素ガスと
は中空繊維を介して向流接触することになる。

【００４２】中空繊維の膜を通じて、血液中のガス交換
が行なわれる。すなわち、中空繊維中に血液中の炭酸ガ
スが供給され、血液中には酸素ガスが供給される。

【００４３】炭酸ガスを含んだ混合ガスは小室９ｂに至
り、混合ガス排出口１１から排出される。酸素に富んだ
血液は血液排出口４ｂから排出され、人体内に戻され
る。

【００４４】図３および図４に示す人工心肺装置は、図
１および図２に示す人工心肺装置に血液リザーバー１２
を取り付けてなる外は、図１および図２に示す人工心肺
装置と同様の構造を有する。

【００４５】図３および図４に示す人工心肺装置におい
ては、血液導入口４ａは血液リザーバー１２の底部に連
結されている。

【００４６】この人工心肺装置にあっては、人体から抜
き出した血液を一旦リザーバー１２に貯留しておくこと
の外は前記図１および図２に示す人工心肺装置と同様の
作用を有する。ただし、リザーバー１２に一旦血液を貯
留しておくので、遠心ポンプが空回りすることがない。

【００４７】図５に示す人工心肺装置は、外筒体１３と
内筒体１４とを備えたケーシングＣｓを有する。外筒体
１３は、その両開口部をその一部を除いて塞いだ円筒体
を成し、その内部に、その外筒体１３の中心軸を共有す
るように挿入された内筒体１４を有し、上記筒状の外筒
体１３の内壁と上記内筒体１４の外壁との間に閉鎖空間
１５を有する。

【００４８】この閉鎖空間１５は、外筒体１３の中心軸
に直交する平面について見ると環状になっている。

【００４９】図５においては、この内筒体１４は、その
内部のほぼ中間に、内筒体１４の軸線に直交するラジア
ル方向において平らな底部１４ａとこの底部１４ａに向
かう面が上端開口部に向かって円錐状に形成されると共
に中心部に血液導入穴１６ｂを開口する内面円錐形隔壁
１４ｃとを有する。この内筒体１４における前記内面円
錐形隔壁１４ｃからこの内筒体１４の上端開口部までの
内部空間が、内側空間領域１４ｄである。この内筒体１
４の下端は開口部１４ｂとなっている。

【００５０】平板状隔壁１４ａと前記内面円錐形隔壁１
４ｃとで挟まれる空間により、遠心ポンプ室１６が形成
されている。この遠心ポンプ室１６は、その両側部に環
状に開口する血液導入口１６ａを有していてこの血液導
入口１６ａによって前記閉鎖空間１５と遠心ポンプ室１
６とが連続している。遠心ポンプ室１６は、前述したよ
うに、その頂部（前記平板状隔壁１４ａに対向する部
位）に血液導入穴１６ｂを備えている。

【００５１】そして、上記遠心ポンプ室１６の内部に
は、略円錐形状の台座１７ａと、その円錐面に立設して
なる複数の羽根車１７ｂとが収納されている。この台座
１７ａは、前記底部１４ａを貫通する回転軸１８に支持
される。その回転軸１８は外周に軸受け１８ａを有する
とともにフレキシブルジョイント１８ｂを介してフレキ
シブルシャフト（図示せず。）に接続され、フレキシブ
ルシャフトは、図示しない制御用コンソール内のモータ
Ｍの回転軸（図示せず。）に連結されている。一方、上
記閉鎖空間１５には両端部をそれぞれ支持体１９ａ、１
９ｂで固定した中空繊維束２０が充填されている。中空
繊維束２０は、前記閉鎖空間１５の図５における水平断
面が環状を呈しているので、この中空繊維束２０の水平
断面も環状をなしている。

【００５２】各支持体１９ａ、１９ｂと筒状の外筒体１
３の両端部との間は小室２１ａ、２１ｂが形成されてお
り、小室２１ａには酸素ガス導入口２２ａが、また小室
２１ｂには酸素と炭酸ガスとの混合ガスを排出する混合
ガス排出口２２ｂが設けられている。

【００５３】なお、２２ｃは、外筒体１３における支持
体１９ａの上部近傍に設けられた血液導出口である。

【００５４】前記遠心ポンプ室１６における血液導入穴
１６ｂには、熱交換器付きの血液リザーバー２３が装着
されている。すなわち、熱交換器付きの血液リザーバー
２３は、大径の血液貯留部２３ａとその血液貯留部２３
ａの底に設けられると共に、前記内側空間領域１４ｄに
一部挿入された小径の熱交換器収納部２３ｂとを備え
る。この血液貯留部２３ａの上端開口部には、血液流入
口２４ａが設けられた蓋部材２４で閉鎖されている。こ
の熱交換器付きの血液リザーバー２３における熱交換器
２５は、前記熱交換器収納部２３ｂとその内部に収容さ
れたところの、熱交換用媒体の流通するコイル２５とを
備えて成る。

【００５５】この実施例の人工心肺装置は次のように動
作する。すなわち、血液流入口２４ａから血液を血液リ
ザーバー２３に血液を導入する。血液リザーバー２３に
は、患者の血管に接続された血液回路からの血液が貯留
される外、手術中に発生する吸引血液を貯留しても良
い。血液リザーバー２３に導入された血液は、熱交換器
収納部２３ｂで所定の温度に加熱され、血液導入穴１６
ｂから遠心ポンプ室１６内に血液が送られる。台座１７
ａの回転により羽根車１７ｂが回転する。送られて来た
血液が血液導入口１６ａを通って閉鎖空間１５内に入
る。閉鎖空間１５においては、酸素ガスが酸素ガス導入
口２２ａから小室２１ａに導入され、小室２１ａから中
空繊維束２０中を通って小室２１ｂに至る。閉鎖空間１
５中に送り込まれた血液は、前記中空繊維間を流通す
る。この実施例においては、血液と酸素ガスとは中空繊
維を介して向流接触することになる。中空繊維の膜を通
じて、血液中のガス交換が行なわれる。すなわち、中空
繊維中に血液中の炭酸ガスが供給され、血液中には酸素
ガスが供給される。炭酸ガスを含んだ混合ガスは小室２
１ｂに至り、混合ガス排出口２２ｂから排出される。酸
素に富んだ血液は血液導出口２２ｃから排出され、人体
内に戻される。

【００５６】以上の実施例に明らかなように、本発明で
は、人工肺と血液ポンプとが一体になった構成を有する
ので、従来のように、人工肺と血液ポンプとを血液チュ
ーブで連結する煩雑さから解放される。

【００５７】人工肺と一体になった血液ポンプが遠心ポ
ンプであることから、溶血現象が著しく小さく抑制され
る。また、遠心ポンプと人工肺との間に血液チューブが
存在しないことと、人工肺をベッド近くに持ってくるこ
とができることから、血液充填量を小さくできる。

【００５８】また、本発明に用いる遠心ポンプの動力伝
達方式も、前記実施例に限定されず、基本的には任意で
あるが、ベッドサイドの所有スペースを極力小さくする
という点で、制御用コンソールに内蔵させた駆動用モー
タの出力軸と遠心ポンプの回転軸とを脱着可能なフレキ
シブルシャフトで接続するのが好ましい。

【００５９】本発明では遠心ポンプについても前記実施
例に限定されず、これまで公知の遠心ポンプを用いるこ
とができる。

【００６０】さらに、人工肺そのものも前記実施例に限
定されず、酸素ガスと血液中の炭酸ガスとのガス交換可
能な中空繊維を利用するタイプであれば、本発明に用い
ることが可能である。

【００６１】

【発明の効果】本発明の人工心肺装置においては、人工
肺と血液ポンプである遠心ポンプとを一体に組み合わせ
てあるため、装置そのものが非常に小型化・軽量化し、
患者のベッドサイドに容易にセットすることができる。

【００６２】そして、従来のように人工肺と血液ポンプ
とをチューブで一々接続する作業が不要になるから、作
業者の負担が著しく軽減する。

【００６３】また、遠心ポンプはローラーポンプなどと
違って溶血が殆ど起こらないし、その遠心ポンプと人工
肺とはチューブを往復させて連結することがないので、
溶血現象を著しく小さく抑制しつつ体外血液循環回路の
血液充填量を著しく低減することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、本発明の一実施例を示す人工心肺装置
の概略断面図である。

【図２】図２は、図１に示された人工心肺装置の概略斜
視図である。

【図３】図３は、本発明の他の実施例を示す人工心肺装
置の概略断面図である。

【図４】図４は、図３に示された人工心肺装置の概略斜
視図である。

【図５】図５は、本発明の更に他の実施例を示す人工心
肺装置の概略断面図である。

【図６】図６は、本発明の人工心肺装置の使用方法を示
す説明図である。

【図７】図７は、従来の人工心肺装置の使用方法を示す
説明図である。

【符号の説明】

１…外筒体、 １ａ…閉鎖空間、 ２…内筒体、 ２ａ…隔壁、 ２ｂ…血液導入穴、 ２ｃ…遠心ポンプ室、 ２ｄ…血液導入口、 ２ｅ…台座、 ２ｆ…羽根車、 ２ｇ…回転軸、 ２ｈ…フレキシブルジョイント、 ２ｉ…フレキシブルシャフト、 ２ｊ…軸受け、２ｍ…内側空間領域、 Ｃ…ケーシング、 ３…熱交換器、 ３ａ…コイル、 ４ａ…血液導入管、４ｂ…血液導出口、 ５…熱媒体の導入口、 ６…熱交換媒体の排出口、 ７ａ…支持体、 ７ｂ…支持体、 ８…中空繊維束、 ９ａ…小室、 ９ｂ…小室、 １０…酸素ガス導入口、 １１…混合ガス排出口、 １２…血液リザーバー、 １３…外筒体、 １４…内筒体、１４ａ…底部、 １４ｂ…開口部、 １４ｃ…内面円錐形隔壁、 １４ｄ…内側空間領域、 １５…閉鎖空間、 １６…遠心ポンプ室、１６ａ…血液導入口、 １６ｂ…血液導入穴、 １７ａ…台座、 １７ｂ…羽根車、 １８…回転軸、 １８ａ…軸受け、 １８ｂ…フレキシブルジョイント、１９ａ…支持体、 １９ｂ…支持体、 ２０…中空繊維束、 ２１ａ…小室、 ２１ｂ…小室、 ２２ａ…酸素ガス導入口、 ２２ｂ…混合ガス排出口、 ２２ｃ…血液導出口、 ２３…血液リザーバー、 ２３ａ…血液貯留部、 ２３ｂ…熱交換器収納部、 ２４…蓋部材、 ２４ａ…血液流入口、２５…熱交換器、 ２５ａ…コイル、 Ａ…血液循環回路、 Ｂ…人工肺、 Ｃ…遠心ポンプ、 Ｃｓ…ケーシング、 Ｄ…血液リザーバー Ｅ…熱交換器、 Ｆ…フレキシブルシャフト、 Ｇ…コントローラ、 Ｈ…心臓、 Ｐ…遠心ポンプ。

フロントページの続き (72)発明者 伊藤 和之 東京都渋谷区恵比寿３丁目43番２号 日 機装株式会社内 (72)発明者 軸屋 智昭 鹿児島県鹿児島市清水町28−15−305 (72)発明者 佐々木 達哉 岩手県盛岡市愛宕町11−10 (56)参考文献 特開 平２−41172（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−34490（ＪＰ，Ａ) 特開 昭61−289243（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−95378（ＪＰ，Ａ)

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】外筒体とこの外筒体の中心軸線を共有する
   内筒体とを備え、前記外筒体の内壁面と前記内筒体の外
   壁面とで囲まれてなる環状の閉鎖空間にはガス透過性の
   中空繊維束が収容され、前記内筒体には、内筒体内を内
   側空間領域と遠心ポンプ室とに隔絶し、前記内側空間領
   域から前記遠心ポンプ室へと連通する血液導入穴を備え
   てなる隔壁と、遠心ポンプ室から閉鎖空間へと連通する
   血液導入口とを備え、前記外筒体は閉鎖空間内にある血
   液を外部に導出する血液導出口を有してなるケーシング
   と、 前記内側空間領域内に少なくとも一部が配置され、且つ
   前記ケーシングと一体に形成されてなり、前記内側空間
   領域内に導入された血液を加温する熱交換器と、 前記内側空間領域内に配置された熱交換器により加温さ
   れた血液を前記ポンプ室内に吸引し、前記血液導入口を
   通して前記閉鎖空間に吐出するように、形成されてなる
   遠心ポンプと、 を備えることを特徴とする人工心肺装置。
2. 【請求項２】前記請求項１における熱交換器の他端部に
   接続されてなり、前記熱交換器及び前記請求項１のケー
   シングの少なくとも一方と一体に形成されてなる血液リ
   ザーバーを有する請求項１に記載の人工心肺装置。
3. 【請求項３】前記請求項１における遠心ポンプは、一端
   がモータの回転軸に接続されたフレキシブルシャフトの
   他端に着脱自在に形成されてなる回転軸を備える請求項
   １又は２に記載の人工心肺装置。